2019年1月分
№1177~1207
1177.『引きたくなる』
#twnovel おみくじを引くと大吉が出た。すると巫女さんが「おめでとうございます。去年は初詣に来ていただけなかったので、カムバックボーナスです」と告げてきた。引く前に特に何も申告しなかったけど…なら毎日参拝したらログインボーナスあるんですか。「はい。この通り私の覚えがよくなります!」
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1178.『山の悪神』
#twnovel 記録が伸びない俺が、駅伝走者に選ばれるにはどうすれば…『速さが、欲しいか…』この声は…山の神!?『速さが欲しければくれてやる…ただし代償は』構わない!駅伝に全てを懸けられるなら、俺は…!『代償は、駅伝で注目された後、特に記録を残せず消えた人扱いされること』キャンセルで。
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1179.『いいひと』
#twnovel 記念写真を撮っている家族連れがいた。カメラを構える父親に、自分が撮るから一緒に写って、と声をかける。その一部始終を見ていた連れが「いい人ぶっちゃって」と照れたように言った。そうだよ、いいところを見せたくて、いい人ぶった。君がいると、よりよい人間であろうとがんばれるんだ。
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《今日の献立報告》
1180.『にぎりばっと』
#twnovel「今日はにぎりばっとですよ」「何これ、そばがき?」「山形県の『そばは殿様が食べるもの』とされていた地域で『麺じゃなきゃいいんだろ!?』と編み出された郷土料理です」「たくましい。やっぱ日本人は禁止されたぐらいじゃ食への欲求は…」「とかいって、夜食禁止は別問題ですよ」「ハイ」
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1181.『伝統の保存』
#twnovel このところ役人がよく来る。伝統の保存のため、職人の持つ技術を機械化したいと言うが、何度来ても断るだけだ。「では、仕方ない」取り押さえられた。邪魔だから消すってのか。「とんでもない。消えないよう、機械化するんですよ…技術がダメなら、職人自身をね!」やめろ!ぶっとばすぞー!
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【『図書室』を舞台に、『流星』と『水玉』と『蒸気』の内二つをテーマにした話】
1182.『水玉模様の空』
#twnovel 子どもの頃に描いた絵は、いつも空が水玉模様になっている。これは星だ。私は夜空にはもちろん、青空にも必ず星を描いた。そこには星があると知っていたから。そして流れ落ちるのを待っていた。願いごとが叶うというから。図書室の中で知る情報としての空だけじゃなく、本当の空が見たくて。
1183.『引用文献』
#twnovel 蒸気機関は水の状態変化を利用するものだ。そのために、絶えず火を燃やす手間を省けるようにと開発されたのが『水玉』だ。予め熱したことを記憶させた水玉を投入することで、即座に膨張する力を得られる。そんな夢の技術を図書室で見つけたんで論文に引用しまし「お前これ分類:小説やんけ」
1184.『コズミック・スチーム・パンク』
#twnovel 図書室には色んな物語がある。例えば、流星と蒸気の話。水の星と呼ばれる惑星に巨大な隕石を落とし、星そのものを宇宙規模の蒸気機関としようとした。その動力で、外宇宙へと進出しようとしたんだ。もちろんうまくいかなかったさ。だからこの宇宙図書室で、地球の最後として記録されている。
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1185.『雨の音』
#twnovel 雨の音って、揚げ物を揚げる音に似てるよね。昔から言っているが、賛同を得たことは少ない。理解はされないけど、私にとっては当たり前で、直結することなのだ。強い雨が降ると揚げ物を食べたくなるのは。台風の中、雨がアスファルトを打ち付ける音を聞きながら、私はコロッケを買いに行く。
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【『吹雪』を舞台に、『自転車』と『雨雲』と『音色』の内二つをテーマにした話】
1186.『体を張る』
#twnovel 遠くに雨雲があるのは見えていたが、まさか雪へと変わるとは。しかも吹雪いてくるとは。ネカフェまでチャリで来たが、こんなホワイトアウトの中を乗って帰るわけにはいかないし、もうしばらく延長させてもらおう。「チャリで来た」ってネタで言うためだけに、ずいぶん代償を払っちまったな…
1187.『雪の音』
#twnovel 雨雲は真上にあるのに、冬の寒さは雨の音色を奪ってしまう。降ってくる雪は、音も無く消えてゆくだけ。不意に強い風が吹いた。舞った雪は、自らの音色を届けようとするかのように、私の耳を打つ。物理的に。いや、ほんと調子こいてすんませんした。だから耳の中は勘弁…おい吹雪くなやめろ。
1188.『ホワイトアウト』
#twnovel 吹雪いてきたときは、生きた心地がしなかった。粉雪が巻き上がると、視界は真っ白で前に何があるかもわからない。ポキポキと妙に小気味いい音色がしたときは木の枝でも踏んだかと思ったが、そうか、自転車だったのか。自転車、だけだよな。残骸の傍に車を停め、視界が晴れるのを震えて待つ。
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1189.『石像盗難事件』
#twnovel 石像専門業者「いしざんまい」から、石像が盗難される事件がありました。無くなっていたのは、社長がオークションで3億円以上の高値で落札した男女の像。警察は、社長に「その像は生きた人間だ」と主張していたという不審者が何らかの形で関与していると見て、捜査を…
#ファンタジー社会問題
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【twnvday2019/1/14 お題「告白」】
1190.『実は私は』
#twnvday「ごめんなさい」どっちを断ったの。「両方。成人式には行けないし、結婚が前提のお付き合いもできない」どうして。「実は私は…」食い下がると、彼女は人間とは別の長寿種族で、成人するまでに僕は寿命を迎えるだろうと教えてくれた。だからこの前連れていた男も人間じゃないんだろう。絶対。
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【『郵便局』を舞台に、『靴紐』と『タネ明かし』と『数学』の内二つをテーマにした話】
1191.『靴紐職人』
#twnovel うちの郵便局では靴紐をよく取り扱う。タネを明かしてしまえば、郵送の方が配達より安く済むかららしい。靴紐職人がそう言っていた。山にこもり、靴に合う紐を一つ一つ届ける職人。その手伝いをしていると思うと誇らしいが、靴紐って街で作れねえもんかなあ、と山を上り下りするたびに思う。
1192.『一時預かり』
#twnovel うちの郵便局では手荷物の一時預かりもやっている。でも「訪ねて来た子に封筒を渡してくれ」という使い方はできないので、個人的に請け負うことにした。封筒の中にはなぞなぞのタネ明かしがあるのだとか。その『なぞなぞ』は数学の証明問題だと、訪ねて来た大勢の教え『子』に詰め寄られた。
1193.『頭脳労働』
#twnovel うちの郵便局には数学に詳しい職員がいる。家と家とを縫うようにバイクで走ることになる年賀状配達を、最短で済ませられる『靴紐理論』を毎年考えている。そして解答を皆に教えたら、仕事は終わったとばかりにサボる。実際にやらないから、何年経っても机上の空論で役に立たないんだっての。
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1194.『ポン酢のポン』
#twnovel ポン酢のポンって何なの。私がそう訊くと、あなたは「酢はもともと外国から来たものだろ。日本で作った酢だから、ポン酒とかポン刀と同じノリでポン酢って言うんだよ」と答えた。結局ウソだったんだけど、まだ頭に残っている。信じさせるプロだと言ってた意味が、今ならわかる。詐欺師めが。
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1195.『どんがら汁』
#twnovel どんがら汁っていうのは、寒い時期に漁れる鱈の鍋のことでね。ぶつ切りにして、アラも内臓も煮込む、魚を丸ごと使った料理なんだ。だから骨も大きいのがそのまま入ってて、とても噛み砕けるものじゃないから、それを残すのが普通なんだ。ねえ。どうして君のお碗には何も残ってないんだい…?
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1196.『策士バンクシーに溺れる』
#twnovel 建造物の取り壊しを妨害するために反対派が考えたのは、壁に落描きをしてバンクシー作品と言い張ることだった。研究を重ねてそれっぽい絵を描き、騙された専門家が「これは本物だ」と認定した。そして壁画は保管されることになり、壁をくり抜く工事のついでに建造物も取り壊されたのだった。
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1197.『夢じゃ食えない』
#twnovel「いいかげん目を覚ませ」うるさい。夢を見続けて何が悪い。「夢じゃ飯を食えない」たとえ腹いっぱいになれなくても…「違う。何も食えないんだ」えっ、と声が出る。弾みで目蓋が開く。俺は病院にいた。「ずいぶん長く眠っていたんですよ」とりあえず腹が減った。夢の中じゃ食えなかったから。
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【「夜のコンビニ」で登場人物が「選ぶ」、「手」という単語を使ったお話】
1198.『何もいいことがなかった日』
#twnovel 今日も何もいいことがなかった。残業帰りに寄ったコンビニで、いつものように強めの酒に手を伸ばす。こんな一日はさっさと記憶からとばそう。ふと思い直して、甘いチューハイを選ぶ。これなら飲めそうと君が言っていたやつ。一日の終わりに聞いて欲しい。今日は何もいいことなかったんだよ。
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【「夕方のキッチン」で登場人物が「好きにする」、「月」という単語を使ったお話】
1199.『報復な食卓』
#twnovel「私は好きにした。君も好きにしろ」以上が、月イチで連絡もなしに居酒屋で食べてくる犯人の供述。注意すると名案のように言ってきた。まずは今日からと。それならばと夕方、キッチンに立つ。外食に行かなかったのと訊かれて、好きにしてるんですと答えた。酒に合わないヘルシー料理を食らえ。
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1200.『うどんで地域おこし』
#twnovel「うどんで新しく地域おこしを考えた」「どんな?」「阿波踊りと組み合わせるんだ」「うどんの踊り食いパフォーマンスとか言うんじゃないだろうな」「いや、生地を踏むとき、その上で阿波踊りをするんだ」「ほう」「阿波踊りサークルの若い女の子に踏ませて…」「そっち方面の商売はダメだろ」
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1201.『迷惑出勤』
#twnovel 勇者パーティの1人がインフルエンザにかかった。本人はそんなことで休むわけにはいかないと主張したが、それでパーティ全員が感染して全滅する方が問題だと諭され、パーティの離脱を選択する。そして控えのメンバーとして酒場に戻り、酒場はインフルエンザで全滅した。
#ファンタジー社会問題
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1202.『地球最後の鍋』
#twnovel「地球滅亡するってときに鍋料理ですか」見た者はみんなそう言うが、必ず「前から入れてみたかった」一品を持ち寄って参加してくる。当然の如くひどい味の闇鍋になったが、地球最後の鍋と思えば笑い話にできた。うっかり滅亡を回避してしまったから「よくもあんなもん入れたな」と殺し合いに。
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1203.『ブラインド型訓練』
#twnovel 治安維持の強化に必要との理由で、国民に注意を促すために特例的な訓練を実施すると王宮が発表しました。魔王が倒されるまでの間、勇者が無差別に民家へ侵入しタンスを漁るというもので、実質的に不法侵入と泥棒を国が容認するということに、懸念の声が広がっています。
#ファンタジー社会問題
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【「深夜(または夜)の駅」で登場人物が「なぐさめる」、「吐息」という単語を使ったお話】
1204.『慰めと応酬』
#twnovel 終電がなくなった。「高いけどタクシーで帰れるよ」それは何の慰めにもならない。朝までやってる居酒屋ないかな。「ないけどホテルなら朝までいられるよ」それは何の慰めにもならない。ああもう、失恋した夜に踏んだり蹴ったりだ。「でも私がいるよ」それは、何の…とびきり白い吐息が出た。
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1205.『全力ビンタ』
#twnovel 夫とは演劇で出会った。ビンタを当てるふりができずに悩んでいた私に、避けるから思いきり振り抜けと言ってきたのが彼だ。彼は避けずにビンタを受けて「君の全力程度じゃ何ともない。安心してビンタしろ」と言った。その言葉を信じて、夫が命乞いしようが仕置きのビンタは全力だ。ガッデム。
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【「夜の歩道橋」で登場人物が「愛される」、「試験」という単語を使ったお話】
1206.『愛の資格』
#twnovel 愛し愛される資格とか、試験でもあればいいのに。歩道橋の上で雨に打たれながら思う。愛する人をまた傷つけた。行き交うライトの光りをぼうっと眺めていると、雨が止んだ。違う。傘を差された。「追いかけて来た人がどうして差してないの」雨に濡れると優しくなる程度に、愛し愛されている。
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1207.『ハードボイルド・ビターズエンド』
#twnovel ブラックは大人の味じゃねえ。自分好みの甘さを探求しないガキの飲み物だ。そしてベストな調合に出会ってから飲むブラックは、敗北者の味がする。格好つけて好きにしろなんて言うんじゃなかった。俺は砂糖の在処もわからない。好きにするわと旅行に出られて、やっと大切さがわかる愛妻の日。
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番外 300字小説『おみくじ』
上着のポケットからおみくじが出てきた。大吉。あー思い出した。初詣で引いて、せっかくの大吉だからなくさないようにとポケットに仕舞って、そのまま忘れて衣替えしたんだった。
「そう。忘れられたおかげで、この一年効力を発揮できなかった」
くじがそう訴える。
「残された力は僅かだが、最後にいい思いをさせてやろう」
お言葉に甘えて、ポケットに入れたまま街に出る。どんないいことあるかな。おっと、その前にやることをやっておこうと、今年の初詣を済ませたその足でおみくじを引いた。大吉。
「役目は果たした。さらばだ……」
何かループしてる感じがするけど、今年もいいことありますように。さて、なくさないように上着のポケットに……。




