2017年5月分
№554~584
554.『適性試験』
#twnovel 就職面接の時に「あなたは神の使いですか」と質問されてから、それにNOと答えるための旅が始まりました。よく考えたら、神の使いでない根拠なんてありませんでしたから。ただ、根拠がないことが証明されると、それは悪魔の証明になるんですよね。神の使いと悪魔、どっちになろう。
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555.『オープンな上司』
#twnovel 就職したての頃、上司の「ひとりで抱え込まなくていいんだよ」なんて言葉にほだされた俺が馬鹿だった。「ちょっとこれわかるひとー!」「みんな手を止めて!これ全員の課題ね!」「まだ帰らないで!お願いすることあるかもしれないから!」上司よ、あんたはもう少し抱え込んでくれ。
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《今日の献立報告シリーズ㉓》
556.『炊き込みご飯』
#twnovel「今日は炊き込みご飯ですよ」「ねえ」「なんです?」「ここのところずっと炊き込みご飯で、材料はモツとか、塩辛とか、レバニラとか。全部俺がつまみにしようと買っておいたやつじゃん!」「そうやって夜中にこっそり飲み食いする悪い食習慣の防止策ですから」「ぐうの音も出ない!」
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557.『ニワカ警察』
#twnovel「動くな、ニワカ警察だ!貴様さっきパクリと言ったな!向こうがパクったんだ、デマを広めるな!なに、ちゃんと調べた。向こうのが先だった。そうか…悪かったな、あとの話は署で聞こう。なに、嫌だと。あっ待て…その秘密を知ったからには生かしては帰さん!」パーン パパーン
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558.『制服で食事をしているというクレーム』
#twnovel 伝説の装備をしたまま酒場で飲食した勇者にクレームがついた。大多数は「装備を外す暇もなく魔物と戦っているのだ」と勇者に擁護的だが、王家は「神聖な装備を酒場などに持ち込むのは非常識」と勇者を注意。「そういうことじゃない」と逆に批判を浴びている。
#ファンタジー社会問題
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559.『待ち』
#twnovel 幼なじみが一人暮らしをすると聞いても私は動じなかった。無理だとわかっていたからだ。「家に帰ると一言も発する必要がないって気付いたらいやになって…」互いの家に出入りする私たちは、家に一人という経験がほぼなかった。あとは「一緒に住もう」と言質がとれるのを待つだけだ。
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560.『筋肉で解決する一寸法師』
#twnovel 生まれつき体が小さかった一寸法師は、大きくなることを夢見て旅に出た。お椀と櫂代わりの箸だけが頼りの川下りは過酷を極めた。都に着く頃には、一寸法師はもう貧弱な坊やとは呼ばせないボディを手に入れていた。娘さん?鬼?打出の小槌? さあて、知らんな。
#筋肉で解決する昔話
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561.『抜け殻』
#twnovel 部屋をひっくり返したら、見事に捨てられないもので溢れ返った。まるで僕を足止めするかのように。小物をもとの場所に戻すたびに、僕の時間も過去へと巻き戻る。やがて疲れて、脱け殻のように丸まる。君がいなくなったから出て行こうとしたのに、ここには君が残したものが多すぎる。
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562.『二代目』
#twnovel その居酒屋で、俺は二代目と呼ばれる。子どもの頃から母親に連れられて夕飯を食べ、大人になったらそのまま常連と化したからだ。大将はからかっちゃ迷惑だろと言うけど、たぶん一番喜んでいる。他の常連客もきっと知っている。大将には昔、板前を極めるために別れた女がいることを。
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563.『筋肉で解決する北風と太陽』
#twnovel ある日、北風と太陽が力比べをすることになった。勝負の方法は、彼らの前を通りかかった旅人の服を脱がすこと。だがやって来た旅人は、筋肉を誇示するため最初から服を脱いで歩いていた。唖然として見送る北風と太陽。筋肉には、不毛な争いを止める力があった。
#筋肉で解決する昔話
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《今日の献立報告シリーズ番外》
564.『ご飯かお風呂か』
#うちの子でご飯にするお風呂にするそれとも
「今日はご飯にしますかお風呂にしますか」「…え、どっちかしかダメな感じ?」「今日も遅いんでしょう。どちらかは済ませてきていいですよ。それとも」「両方」「両方?」「早く帰るから、両方お願いします」「お風呂でご飯?」「いや」
#twnovel
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565.『姉御肌な彼女』
「好きな人ができたんだ」なに、良かったな。どんな相手だ?「さん付けすると反応してくれなくて、回りくどい言い方をすると『もう一度』って聞き返す。でもはっきりものを言ったら丁寧に教えてくれるんだ」男にしてくれる姉御肌か。紹介してくれよ。「いいよ」#twnovel「Hey,Siri.」
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566.『スープカレー仙人』
#twnovel スープカレーの食べ方を知りたい? 初めて食べるので恥をかきたくない、か。ならば儂が教えられるのはこれだけだ。その考えを捨てよ。スープカレーは食べ物としてまだ若い。食べ方に正解も間違いもないから、好きに食べなさい。最後にひとつだけ。スープカレーをライスにかけるな。
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【twnvday2017/5/14 お題「休日」】
567.『有給消化のススメ』
#twnvday 有給の消化を命令され、予定もなくできた休日だ。何をするでもなく表に出たが、近所のあいつに見つかった。「休みなら何で言わないの」こうなると思ったからだよ、とハンドルを握る。その横暴のおかげで「やっぱり来て」という休日出勤を回避できた。「これが正しい休み方よ」フン。
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568.『筋肉で解決する三匹の子豚』
#twnovel 実家を出た三匹の子豚は家を建てることにした。「よし、力仕事は長男の私に任せろ」「待て、兄貴より俺の方が筋肉がある」「いやいや僕の方が」三匹とも筋肉しか取り柄がないので家は建たなかったが、そもそも硬そうで脂のない子豚など狼は見向きもしなかった。
#筋肉で解決する昔話
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569.『酒の力で』
#twnovel なかなか本音を口にできない僕は、大事なときは事前に酒を呷るようにしている。「昨夜もバッチリ決めたよ」と報告すると、バーの店主は「酒を呷って出た言葉を本音だと思わないことだ。たいてい思いつきと勢いでしかないからな」と忠告した。プロポーズの翌日に聞きたくはなかった。
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570.『入れ食い』
#twnovel 焼き鳥の屋台の周りには、鳩がよく集まってくる。酔っ払いはいい気になっているものだから、気前よく餌をこぼしてやる。おかげで人間に馴れちまって、近づいても逃げやしないんだ、と店主は笑う。儲かって儲かって嬉しくて仕方ないのだろう。何と言っても焼き鳥の材料がタダなのだ。
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571.『作家の顔』
#twnovel 知人が本を出した。正直、中身に興味はなかったが「別に読まなくてもいいよ」と照れたような顔を見て読んでみようと思った。それ以来、近所で作家のサイン会があれば知らない人でも行くようにしている。「これ書いてるときどんな顔してたんだろうな」と想像して読むのは存外楽しい。
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572.『駆け込み投稿』
#twnovel「twitterが不具合?」何だ何だとトレンドをチェックしようとしたが、そもそも不具合が出てるなら見られないじゃないか。待てよ。ということは、今書いてるついのべも、投稿できずに無に帰す可能性が…いや、あと30文字切ったんだ、このまま行こう。皆さん、読めてますか!?
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573.『忍者ワナビーの供述』
#twnovel 憧れの忍者になって最初の課題は、自分の過去の痕跡を消すことだった。楽勝だと思っていた。もともと写真は好きではなかったから。ただ、不本意に写ってしまったものを始末すべく、図書館に忍びこんだ。学校文集の写真を切り抜いたのは、良からぬ目的からではないんです、刑事さん。
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574.『追いかけっこ』
#twnovel 散歩の時間を早めたのは、青空に浮かぶ月を追いかけたかったからだ。朝なのに月が、とか、そんなミスマッチな風景が好きでね。そういえば、夕方の散歩で見かけていたはずの女性と朝に会うようになったのもミスマッチだ。追いかけているのは月の方かもしれませんよ。そう言われた。
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575.『窓に金魚』
#twnovel 窓ガラスの中を金魚が泳いでいった。一瞬ぎょっとしたが #窓枠水槽 だと気づく。前の住人が忘れていったのだろう。たぶん、縁日で掬った金魚を、ちゃんとした水槽を買うまで窓に入れてそのまま、というよくある話。その割には元気そうな金魚を目で追って、荷解きが進まなかった。
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576.『後出しのラブレター』
#twnovel キスのあと、俺は「ラブレターどうしよう」と場違いなことを考えた。勢いで告白して、キスまでして。用意していたラブレターなんて今更。そう思ったが、彼女は「貰って嬉しくないことなんてないよ」とラブレターをひったくっていった。結果的にそのラブレターが酷すぎてすぐ別れた。
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577.『細分化、のち』
#twnovel 首相のいいねが波紋を呼んだ事件をきっかけに、遂にSNSのボタンが細分化、増設された。従来の「いいね」はもちろん、「なんとなく」から「証拠用」「よくない」まで。しかし、すぐにいいねだけに戻った。他のユーザーから見えないよういいねする機能で事足りるとわかったからだ。
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578.『流血沙汰』
#twnovel「おい、血が…」新人くんが突然鼻血を流したことで、職場は騒然となった。ストレス性のものかもしれないと管理職会議が開かれ、大事をとり彼には早退させた。無理をさせて、辞められては困る。だが翌日、彼は辞めた。勤務中にアダルトサイトを見ていたことが判明した末のクビだった。
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《今日の献立報告シリーズ㉔》
579.『揚げ物づくし』
#twnovel「今日は揚げ物づくしですよ」「そうか、プレミアムフライデー!」「とんかつに天ぷら、フライドチキンも」「酒が進むなあ!ところで」「はい」「"それ"は、俺の機嫌をとるほど高価いのか?」「…今日は、プレミアムフライデーですよ?」「ああ。だから"買った"んだろ…"それ"」
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580.『停車中の新幹線にて』
#twnovel「…の衝突の影響で運行が遅延しています」とテロップが流れていった。ぼうっとしていて何が衝突したかは見逃したが、しばらく電車の中で立ち往生か。鉄道会社も大変だな…と、繰り返しのテロップが。「現在、現場と上層部の衝突の影響で運行が…」俺たちは何に巻き込まれているんだ。
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581.『コミケ羅生門』
#twnovel イベント後の羅生門では、引き取り手のなかったスケブを、スタッフの老婆が一つの冊子にまとめていた。「このスケブ集を売ってな、このスケブ集を売ってな、運営資金にしようと思ったのじゃ」下人はそのスケブをすべて引き取ると、オークションに流した。作者の意向は誰も知らない。
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582.『スタッフだって美味しくいただきたい』
#twnovel 学園祭の後、我がクラスの打ち上げはしめやかに執り行われた。打ち上げというか、供養というか。出し物がお化け屋敷だっただけに、禊ぎ的なものが必要だろうと。僕はスタッフとしてこんにゃくを美味しくいただいた。女子の顔にクリーンヒットしたやつでありますようにと祈りながら。
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583.『コピーロボット』
こちとら残業を終えて帰ってきたというのに、頼んでおいた #twnovel はまったく書かれていなかった。「お前、日中何してた」コピーロボットを叱りつけると、奴は俺が積んでおいた本を差し出した。「書こうと思って、まずはインプットから始めた、と」なるほど、一番ダメなやつだ。やはり俺。
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584.『絶滅危惧種』
#twnovel「こんなに保護が難しい生き物はそうはいませんよ」と飼育員は語る。「主食としているものがそもそも体に有害なんですが、やめさせるとストレスで逆に寿命が縮む。ジレンマですね」体に無害な餌を与えると、それは自然な姿ではないという議論もある。ここは絶滅危惧種『喫煙者』の檻。