2017年1月分
№424~462
424.『おみくじ課金』
#twnovel おみくじを引くと凶が出た。すると巫女さんが「奉納金の上乗せで引き直しが可能です」と告げてくる。「金額に応じて、より吉以上が出やすいくじ箱から引くことができます。最高だと大吉確定護符との交換です。引く前にお見せください」別に大吉を引くのが目的では…おいくらですか。
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425.『午前8時59分60秒』
#twnovel うるう秒の導入により懸念された問題は、何も表出しなかった。あったのかもしれないが、その瞬間を目撃したとされる人々は依然として行方知れずである。午前8時59分60秒を境に時間のずれに飲みこまれた人々は、見損ねた我々を残して、今も異なった時間を生きているのだろうか。
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426.『月と金星の大接近』
月と金星が近くにあるのでかれぴっぴに教えたら「俺たちみたいじゃん」って言って貰う…#twnovel という展開を考えるのは簡単だ。でもその通りことが進むかは…。緊張して撮った写真は月も金星もブレブレだった。写真を覗き込んだ彼は「俺たちみたいじゃん」と、緊張が和らいだように言った。
※某先生のツイートにのっかった140字です
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427.『ダブルスタンダード』
#twnovel 地方自治体の過疎化が危ぶまれる昨今、正月に回ってきた回覧板の特集も「いのちをだいじに」といった老人を対象にしたものだった。ただでさえ若い者は出て行くのに、残った者まで減ってはたまらないのだろう。そしてその隣の記事は「毎年恒例!おもち早飲み大会!」うーんこの(ry
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428.『夕方に鳴る鐘』
#twnovel…除夜の鐘の夕方からの導入に関して、神側と神社側の交渉が難航しています。もともと夜間は神の勤務時間ではなく、大晦日はシフトをずらして対応していましたが、夕方からも初詣を受け入れた場合に発生する労使協定外の時間はボランティアにあたるとした神社側に、神側は遺憾の意を…
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《今日の献立報告シリーズ⑮》
429.『いちご大福』
#twnovel「今日のお茶菓子はいちご大福ですよ」「ええっ! 普通に考えたらいちごの果汁を餡や生地に練り込んだお菓子だろうなという大方の予想を裏切って大福の中にいちごが1個まるごとぶちこまれているという、あの狂気に満ちた産物かい!?」「いちご大福に何の恨みがあるっていうんです」
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【ついのべ三題ったー「タルト」「CD」「時計」】
430.『ライブ音源とかにありがち』
#twnovel タルトが焼き上がるまでの時間、タイマー代わりにCDをかけて優雅に過ごす。何度も聴いた曲だ。演奏が何分間あるか時計を見ずともわかる。だからこそ気づく。心なしか最後の手拍子とラララがなかなか終わらないような…あっこれアレンジ版の長いやつだそっかーあははタルトぉーッ!
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【「早朝のデパート」で登場人物が「嘘をつく」、「幸福」という単語を使ったお話】
431.『デパート幸福論①』
#twnovel 己の力の及ぶものと及ばないものを識別し、自己抑制をもって生きる、それが幸福論。だから獲れるはずもないデパートの福袋争奪戦に参加したくはない。「嘘。ほんとは欲しいんでしょ。顔に出てるよ」と仰るが、そりゃ君の方だろう。そんな下手な嘘に乗せられたふりをする俺も俺だが。
432.『デパート幸福論②』
望むものを手に入れるために戦い、敗北しても悔いない、それが幸福論。そしてバーゲンハンターの掟だ。皆、それぞれの生活を賭けてデパートの初売りセールへとやってくる。たとえボウズでも、そのときは相手の健闘を讃えてこう言うのだ。#twnovel「買えるまで店回るよ!」「超悔いてるだろ!」
433.『デパート幸福論③』
己の関心を外部に向け、活動的に生きる、それが幸福論。#twnovel デパートの初売りのために朝から並ぶなんて、阿呆のすることだと思っていた。今年は俺も阿呆になった。もみくちゃにされてくたばる寸前でも、彼女の手前「全然大丈夫」と嘘をつく。俺に活動的であることを強いる、幸福の象徴。
434.『デパート幸福論④』
#twnovel くたくたになって手に入れた戦利品を開ける。わかってはいたけど、福袋の中には大して欲しくないものだらけ。だけど何だか笑えてくる。君が俺より先に笑ったから、楽しかったという嘘は、嘘じゃなくなった。すべての不運やつまらぬ物事に対して、 上機嫌にふるまう、それが幸福論。
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435.『マジックショーの心得』
#twnovel「#一から十二 の中から好きな数字を選んで…と指定した時点でピンキリを選ぶ人はまずいません。真ん中も避けます。あとは答える前に数字を織り交ぜて語りかければ、そのとき耳にした数字は無意識に除外します。この理論通りに誘導されてください。でないとサクラは務まりませんよ」
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436.『大いなる飲酒には大いなるリスクが伴う』
#twnovel うちの地元には成人を祝う恐ろしい風習がある。拘束された新成人は車に押し込められ、そこに市長が酒を飲みながら登場。べろべろになった市長の危なげな運転で、市内を一周する。顔面蒼白になった新成人に飲んでいた酒をひっかけ、実は水だったとネタばらし。「な? 酒は怖いだろ」
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437.『成人式』
#twnovel いきましょ、と澄ました顔で彼女は言った。振り袖姿に何か言えと詰め寄られるかと身構えていた僕は、慌てて追いかけて横に並ぶ。そのとき覗いた白いうなじ。「きれいだ」という言葉を飲み込んで溜息に替える。子どもではいられなくなった自分を思い知る、大人に成りに行く道の途中。
※イラストに添えさせていただいた140字です。
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438.『彼シャツ喫茶』
#twnovel 彼シャツ喫茶なる店にいってみた。喫茶とは名ばかりで、指名した女の子が客の持ち込んだシャツを着て接客してくれるシステムになっている。もう一度店まで足を運んで貰う意味も込めて、シャツは洗ってから客に返される。なお、クリーニング業界が裏で糸を引いているという噂がある。
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《今日の献立報告シリーズ⑯》
439.『お雑煮』
#twnovel「今日はお雑煮ですよ」「鏡開きか…ってあの」「なんです」「この雑煮、わんこそばみたいにシンプルなんですが」「お雑煮って地域でだいぶ違うらしく、地域色出して戦争になったら困ると思って」「何入れようとしたの」「小豆を」「お汁粉じゃねーか!」「戦争です」「マジなの!?」
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440.『失言勇者』
#twnovel 先日の会見で「タンスを漁らない勇者がいたら逆に教えて欲しい」と開き直った発言をした勇者に抗議が殺到、魔王との決戦を欠席する事態にまで発展した。勇者は冒険を停滞させないため辞任を表明したが、魔王はもう倒されており、対応の遅さが指摘されている。
#ファンタジー社会問題
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《今日の献立報告シリーズ⑰》
441.『米と卵』
#twnovel「I have a rice.」「うん」「I have a egg.」「うむ」「…Ah!オムライス」「作業工程!?」「オムライス」「お」「焼きそば」「おっ」「…Ah!オムそば飯」「やったね!」「はい、今日は卵かけご飯ですよ」「なぁんでだよォ!!」「泣かなくても…」
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【twnvday 2016/1/14 お題「翼」】
442.『イカロス』
#twnvday その翼は嘘を塗り固めて出来ていた。もがれても平気だし、目的を果たせば失ってもよかった。全ては太陽に近づくため。翼をなくした俺を見た太陽は、私が奪ってしまったのねと離れていく。俺の翼は、いつの間にかたいそう立派になっていたらしい。心よりもあったはずの場所が痛んだ。
443.『天使』
鳥は恐竜の進化した姿で、恐竜は絶滅などしていない。明らかになっていく事実に私は震えている。鳥は恐竜、ならば、数年前に現れて以来“天使”として君臨している有翼人種は、決して進化した人類などではなく…「その通り」#twnvday「人類が滅ぼしたと思い込んだ竜人種の子孫。それが我々だ」
444.『君は翼』
翼をもつ者と、もたない者。私はその、もたない方。頭でっかちで、誰かに背負われでもしないと、どこにもいけない人間。いつも悪いね。
#twnvday
僕の背中には翼がある。行先を教えてくれるおかげでどこへでも行ける。まあ口煩いけどって言うと蹴られる。悪いねって言われるよりはマシかな。
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445.『雪国シビルウォー』
#twnovel 東北の冬は寒い。白い息を吐きながら雪かきをするが、終わってみれば汗でぐっしょりになるほど体温が上がる。だからこそ「なっとらん!引っ込んでろ若造め!」「危ねぇんだからとっとと引退しろジジイ!」という無言の世代間戦争が見られるのもこの時期である。東北人の冬はアツい。
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【「深夜の車内」で登場人物が「つよがる」、「月」という単語を使ったお話】
446.『月がきれいだから』
#twnovel 雪で終電が運行休止、ホテルに泊まると連絡したら「迎えに行く」と。その迎えの車の中で日付が更新された。だからいいよって言ったのに。「計画通りだし」何で強がんだよ結局帰りは俺が運転だし…でも誕生日を祝ってくれたのは、まあ…渋滞で進まないけど、月がきれいだからいいか。
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447.『文学的なふたり』
「月が綺麗ですね」#twnovel あっ、と気づいた。“そういう意味”にとられただろうか。様子を窺うと、じっとこっちを見ている。次に口にした言葉に心臓が跳ねた。どこまで知っていて出た台詞なのだろう。答えに詰まった僕に、微笑んでもう一度促す。#月が綺麗ですねへのイエス「それから?」
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【「月」と「鋭い目」、登場人物が「疼く」というお題】
448.『夜のケダモノ』
#twnovel 月のきれいな夜は、自分が完全な人間ではないことを思い知らされる。俺は不完全な自分を偽って生きる狼なのだ。月明かりに正体を暴かれて体が、心が、失う度についた歪つな傷が疼く。鋭い目のような欠けた月に見下ろされる今夜は、今すぐに君を抱きしめて満月のように満ち足りたい。
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【ついのべ三題ったー「銃弾」「リスク」「サイト」】
449.『狙い撃ち』
#twnovel ターゲット・インサイト。狙い撃つ準備は整った。こちらの存在に気づかれてしまうリスクはあるが、奴のハートを赤く染める絶好の機会だ。銃弾の如き勢いでキーボードを叩く俺の指。フォローして以来意識しすぎて交流のなかったあの人へ「いいね」を送り、俺は正座して反応を待った。
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【「丑三つ時」と「邂逅」、登場人物が「脱力する」というお題】
450.『恋敵』
丑三つ時、長屋の隣人とばったり会った。「どうしたんです、こんな遅くに」「ちょっと丑の刻参りによ」「奇遇ですね」#twnovel「ところで相手は?」「贔屓の花魁にちょっかい出してる奴がいるようでな」「あっ私もです」「しかし、釘打つ度に…力が…抜けるような…」「あれ、奇遇です…ね…」
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451.『裏メニュー』
#twnovel 父娘でやっているという居酒屋に通い詰めて一年。常連だけの裏メニューで、まかないを食べさせて貰えるようになった。これが俺好みの味付けで、まるで俺のために作っているかのよう。そう言うと「まあな」と大将が目を逸らす。視線を追うと、暖簾の隙間越しに、娘さんと目が合った。
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452.『最低でも一千万から』
#ベンツネタを自分の文章で表現しよう「あそこにベンツが停まっていますね」「ええ」「あなたが煙草を吸わなければあれくらい買えたんですよ」「本当にそれだけで?」「家賃も費やして買いました」「あなたのだったんですか。今のお住まいは?」「あそこのベンツに泊まっていますね」#twnovel
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《今日の献立報告シリーズ⑱》
453.『カレー&デイリー』
#twnovel「今日はカレーの日ですよ」「はぁ…」「どうしました」「今日カレーが出るってことは、明日は寝かしたカレー、明後日は残ったカレー、来る日も来る日もカレー。これじゃ生きてるって気がしないよ!」「生きてる実感と刺激が欲しいんですね。では今日は30倍の激辛カレーです」「 」
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454.『マスクドヒーロー』
#twnovel 誰もが嘆いていた。ヒーローなんていないのだと。素顔を隠すのは、こんなときに雲隠れするためだったんだって。それは違うと思う。仮面を被るのは、いつもとは違う、勇気ある自分になるためだ。帽子を目深に被って呟いた。私はヒーロー。ヒーローは、涙で目を腫らしたりしないのだ。
※イラストに添えさせていただいた140字です
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455.『おかわり自由の裏ワザ』
#twnovel まず白米を用意する。その上にキャベツの千切りをたっぷり乗せる。最後にケチャップをかけてほどよくかき混ぜれば、タコスっぽい飯の完成だ。これはいいぞ。濃いめの味なのに低カロリー、何よりこの店では定食を頼めばおかわり自由の素材で作れるんだ。じゃ、こっちの定食は俺のな。
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【膨大な借金を抱えることになった電波少女と重度のマニアである図書館司書の「はじめまして」から「さようなら」まで】
456.『サイバーパンクの司書事情』
#twnovel 肉体を担保にされ電子世界の住人になった私は、電子書籍専門の司書として働いている。正職員が重度の物理書籍マニアで電子書籍を認めないからだ。私は体なんかなくても良かったけど、あなたが触れて、読まれる本になりたいと思った。最後まで、その気持ちを読んではくれなかったね。
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457.『いいわけ』
チーズは宿敵だが、奴が酒のつまみとして度々紹介されるのを見ると悔しくなる。もしや酒と一緒ならいけるのではと試したが…#twnovel リバースした僕を、飲み仲間が気遣う。やっぱ無理だった、と嘘をついた。本当は飲み過ぎ。情けない。奴を隠れ蓑にして借りを作っちまったが…これ、使える。
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458.『頃合い』
#twnovel 今日は求婚の日なんだよ、なんて言っても見向きもしないのだろう。あなたは終末時計なんてどうでもいいことを気にしている。「あと2分30秒か」ふーん。「前に、3分は長すぎるって言ってたよね」言ったっけ…何の話?「2分30秒くらいなら、夫婦になって過ごしてくれるかな?」
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【無邪気に狂った感性の女性とそいつを養うことになってしまった人物、彼らの最初で最後の「大喧嘩」のお話】
459.『逆説的な彼女』
#twnovel「私のこと嫌いな人が好き」正気か、と昔から思っていた。こんな奴、嫌々ながら俺が引き受けるしかないと思っていた。そんな調子でうまくいってたのに、結婚の話をしたら「私のこと好きなの」と初めて大喧嘩になった。その場は納めたが、俺はいつまで、こいつを嫌いでいられるだろう。
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460.『黙って啜る』
#twnovel 山形はラーメン日本一という話題になると「うちの地元の方が美味しいと思うんだけど」と言われることがある。勘違いしてるようだけど、日本一は味じゃなくて、消費量。つまり一番ラーメンを食べてる県民ってこと。君の地元も、美味いと思ってるならもっと食えよ…とまでは言わない。
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【「望遠鏡」と「決心」、登場人物が「立ちあがる」というお題】
461.『最後くらい』
#twnovel 僕の仕事は一日中椅子に座り、巨大な望遠鏡を通して宇宙を観測すること。人類にとって大事な仕事だからと、自分にとって大事な人のことは二の次にしてきた。でも、残された時間の計算が終わったことで決心がついた。君に会いに行こう、あの隕石が地球を砕く前に。僕は立ち上がった。
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462.『五回り差』
#twnovel ふと時計に目を遣ると、もう半日が経つところだった。いつから時計の針の回りを気にしないようになっていたのか。気が付けば十二の暦を通り越し、もう十二支の回りぐらいしか数えていなかった。これだけは楽しみにしていたからな。年男でお揃いだな、と孫に笑いかける。
#一から十二
2年目に入りました。これからもよろしくお願いします。