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2016年11月分

№343~378

343.『共通の敵』


#twnovel 長年、互いを泥水と醜く罵り合ってきた紅茶とコーヒー。どちらがより泥水に近いのか。コーヒーは見た目がそのものだ。落葉が浸かっているいる水たまりは紅茶の味がするのだろう。そして両派の架け橋となる見た目コーヒー、味紅茶の完璧な泥水を供したが、両派に囲んで棒で叩かれた。


  *


344.『ヒーローの供述』


#twnovel なぜ全身タイツはヒーローのスタンダードとなり得たのか。それは普段着の下に着込み、上着を脱げば即変身できるからだ。問題は、タイツも所詮服。慌てていて着忘れたことに気づかない、ということも…「君、ネットで全裸マンって名前になってるぞ」面目ない、刑事さん。#タイツの日


  *


345.『ヤバい勇者』


#twnovel「勇者様、早く傷の手当を…」「貴重な薬草は他の仲間に使ってください。この程度の傷、治った気になって乗り越えてみせます」そして勇者は葉っぱを袋に詰めて深呼吸した。「これで大丈夫。何の痛みも感じません。さらにこのまま魔王まで倒せそうな万能感!」「あっこれやべーやつだ」


  *


346.『文化的活動』


#twnovel 文化の日だから文化的活動をしよう。そう思ったが文化的活動って何だ。調べるため図書館を訪れたが新刊フェアを物色するうちに忘れた。そのあと一般開放された企業の食堂で腹ごしらえし、入館無料の美術展をぶらぶら。酒蔵のふるまいでほろ酔いになって帰宅。ああ、とっても文化的。


  *


【ついのべ三題ったー「入道雲」「火星」「サイコロ」】


347.『宇宙横断サイコロの旅』


#twnovel「火星にも入道雲ってあるんですね」テラフォーミングが進み、今では行先を決めるサイコロに「火星」を混ぜられるほど自由に行き来できるようになった。「地球に戻る予算がないので、もうしばらく入道雲を追いかけましょうか」科学が日進月歩しても、人類は未だに無計画な旅が好きだ。


  *


348.『男女の縁ってやつ』


日本中の神様が一堂に会する、一年に一度の縁結び会議の日。でもどうせ宴会の末にあみだくじとかで決めてるんですよ。間違った相手を。無責任な神様が留守にしている間くらい、私と。#twnovel そんな言葉に流されて関係を持ったのが間違いだった。神様が戻ってきても、カミさんはもういない。


  *


349.『偽装カップル』


#twnovel あ、と声が出た。婚活パーティに出る度に鉢合わせするあの女だ。いつも通り「まだ相手見つかってないのか」と嫌味を言い合い、それぞれ相手を探しに行く。結局お互い見つからず、見栄を張るためにカップル成立したフリをして会場を出る。俺は本気のつもりだと、今日も言えなかった。


  *


《今日の献立報告シリーズ⑦》


350.『闇鍋』


#twnovel「今日は闇鍋ですよ」「一人しか具材を用意しないのは闇鍋とは言わねえよ!」「カレールー、おじや、うどん」「初っ端からシメばっかじゃん!」「ラーメン」「主食多過ぎィ!しかもうどんと麺かぶってるぞ!」「うどんとラーメンは違います。バカなんですか」「何で俺が怒られたの…」


  *


【「夜の川縁」で登場人物が「探す」、「手」という単語を使ったお話】


351.『落とし物』


#twnovel もう見つからないよ。日が暮れても、ざぶざぶと水の中を探す君を川のほとりから眺めている。ちょっと残念そうな顔をすれば、こうしてくれることはわかっていた。意地になっているのだ。私も川に足を入れ、冷たいを通り越して、痛々しいくらい赤くなった手を握った。また明日に、ね。


  *


352.『1989ベルリンの壁崩壊』


#twnovel ベルリンの壁は壊されるべきではなかった。時間移動した私は、民衆に壁を破壊させるに至った“世紀の誤報”を食い止め、民衆に「絶対に壊すんじゃないぞ」と呼びかけた。なのに壁は崩壊した。最初にハンマーを叩きつけた男は「フリかと思って」と語った。これが歴史の修正力なのか。


  *


353.『ワールドタイトルマッチ』


#twnovel 大統領戦は、擁立された候補同士のバトルロイヤルによって行われる。知恵と腕っぷしを駆使し、最後まで立っていた者が大統領になるのだ。国民は一大イベントに大いに沸き立つが、これは世界大戦のいわば予選に過ぎない。戦争とは国のトップ同士がタイマンで決着をつけるものである。


  *


【お題「まな板の上の初恋(私手も足も出ませんわ)」/「貧乳」】


354.『まな板さん』


#twnovel まな板さん、と呼ばれる女性がいる。きっと恋に対してとことん受け身なんだろう。いつでも初恋のように相手の挙動に一喜一憂する、まな板の上にいるようなひと。そういう意味なんだろう!と意気揚々と尋ねたら「いや、まな板みたく貧乳だから」と教えられた。へー、あっそ、ふーん。


  *


【お題「ご馳走になります」/「貧乳」】


355.『商品名はステータス』


#twnovel 低脂肪乳とは、牛乳から脂肪分を抜いた加工食品だ。牛乳よりも低カロリーで、値段も安い。しかし味気無い、という問題があるが、プレゼンされた新商品をさっそく御馳走になってみると、なるほど一種のステータスとも言える独特の味わいがした。だからって商品名が「貧乳」ってのは…


  *


《今日の献立報告シリーズ⑧》


356.『ポッキー』


#twnovel「今日はポッキーですよ」「食事じゃないだろこれ」「節約のため1本だけです」「えっ…まさか」「ほら、端と端を咥えて」「しねえよ!」「好き嫌いはいけません」「してねえよ!」「チョコの方食べていいですから」「塩気のあるプリッツがいいです!」「好き嫌いは」「して…ます…」


  *


【寂しがり屋な料理人とその人物に飼われている《ペット》が「お別れ」するまでの話】


357.『料理人とタマ』


#twnovel 名前はタマ。料理人が動物なんか飼うなって怒られたけど、寂しがりな俺のそばにいてくれる大事な友達だ。彼女ができたからお前が邪魔になったわけじゃないんだ。ただ、彼女がさ。俺の特別なお客さんがさ。どうしても猫肉料理が食べてみたいっていうからさ。だから…ごめんな、タマ。


  *


【「早朝の坂道」で登場人物が「貪る」、「トランプ」という単語を使ったお話】


358.『こうなるとは思わなかった』


#twnovel 近所の坂道ってこんなにキツかったっけか。久しく拝んでいなかった朝日に照らされながら、惰眠を貪る日々が懐かしくなって膝を折りそうになる。でも、もし実現したら就職するって、公言してしまったものな。「トランプショックか…」辛いのは俺だけじゃない。何せ世界的ですからね。


  *


【twnvday2016/11/14 お題「雲」】


359.『曇』


#twnvday 雲を掴むような話だね、と笑われても、それぐらいでないと雲の上の人には届かないと嘯いてきた。もっとも、その雲行きも怪しくなってきてるんだけどな。雲となり雨となるように、今は自分のもとに降ってくるのを待っているんだ。そんな俺を、あの頃とは雲泥の差だね、と君は嗤った。


  *


360.『女男女』


#twnovel 二つ上の従姉と二つ下の従妹。七五三をまとめて祝うために揃えたようなものだと言われたときはさすがに呆れた。それからは親族一同が集まる際に顔を合わせるぐらいで、だからこそ学生服姿に驚かれたのだろう。七五三の五歳を担当したばっかりに、二人に男だと思われていた私である。


  *


【ついのべお題ったーマニアック「絶滅危惧種」「師匠と弟子」】


361.『職人』


#twnovel うちの師匠に限らず、あらゆる「職人」が絶滅危惧種となっている。技術が失われるのは勿体ない、マニュアルを作ってくれ、と弟子の俺が頼んでも、師匠は取り合わない。師匠は無愛想に言った。「誰でもできるようにしちまったら、今までついてきてくれた弟子に申し訳ないじゃねえか」


  *


362.『ボジョレー・ヌーボー』


#twnovel ワイン好きの知人にボジョレー・ヌーボーってどんな味なのと訊くと「『くっ、俺をここまで追い詰めるとはな…遂に解禁するときがきてしまったか。くらえ、これが封印されし禁忌の力…ヴォジョレー・ヌーヴォー!』って感じの味」と答えた。ガキ向けにちょうどいいって意味だろうか。


  *


【ついのべお題ったーマニアック「カウントダウン」「うぐいす」】


363.『ホ、ホ、ホ、』


#twnovel「ホ、」奇妙な声に誘われて、我々探検隊は森の奥地へと足を踏み入れた。「ホ、」ふと誰かが、まるでカウントダウンのようだと呟いた。この先に何が待つと言うのか。「ホ、」果たして声の主は…なんだうぐいすか。隊員たちの間に安堵が広がる。「滅びのバーストストリーム」グワーッ!


  *


364.『ちょっとかいしゃに』


#twnovel「かいしゃ」という名前の飲み屋がある。大将が脱サラする前、奥さんに「ちょっと会社に行ってくる」と嘘をつき飲み歩いた経験からこの店名にしたらしい。「行き先は『かいしゃ』なんだから嘘じゃねえだろ。やっぱ嘘はいけないからなあ」奥さんについて、大将に深く尋ねる客はいない。


  *


365.『レンタルビデオ屋にて』


#twnovel 品揃えのいいレンタルビデオ屋なのに、ダークナイトがなかった。どれだけ「た」行を探しても、注目映画コーナーの別棚に移動しているわけでもなかった。まさかと思って「は」行を見に行くと、バットマンビギンズの隣に。俺の20分を返せと思いつつ、この「わかってる」感が嬉しい。


  *


366.『世界のトイレ』


#twnovel いつからバミューダ海域が「世界のトイレ」と呼ばれるようになったのだろう。未だ実態は解明されていないが、とりあえず「消失する」現象を利用して世界中から処分に困った廃棄物が送られる。後のことは考えず。トイレだというなら、流れ着く先があるぐらいわかっているはずなのに。


  *


367.『ピザだと何故かいけるやつ』


#twnovel 出会いは、ピザが美味しいレストランバー。この店のピザが好きだと意気投合し、そのあとはトントン拍子。だから、僕はチーズ、彼女はトマトがダメだという事実にはお互い驚いた。何度も言い合いになったが、「ピザは食べられるのに!」という着地点があるので大事には至っていない。


  *


【「早朝の畳の上」で登場人物が「疑う」、「テレビ」という単語を使ったお話】


368.『リテラシー』


#twnovel 朝っぱらからテレビを睨みつけて、ニュースに「妙だな…」と呟いている。リテラシーって、何でも疑ってかかれってことじゃないんだけどな。いずれ、こうして畳の上で寛いでいることすら胡蝶の夢だと言い出すかもしれない。でも、現実を疑っても、私がここにいることは疑わないのね。


  *


《今日の献立報告シリーズ⑨》


369.『レトルト』


#twnovel 地震に叩き起こされた散々な一日を終えて帰ると、食卓にレトルト食品が並んでいた。これは…慌てて非常食を買ったはいいが普通の食材を買い忘れたな。無言の視線に、今日は、といつものように切り出す。「いい夫婦の日だから怒りませんよね?」「『非常食ですよ』じゃねえのかよ!」


  *


370.『勤労バトル』


「オラッ、勤労感謝の日だぞ!日頃働いてやってる俺を労われ!」「ざけんな!こちとら休日出勤だ、こんな日まで働いてる俺を尊べ!」「その休出手当を出してやってるのはどこの誰だ!?お前らこそ働けることに感謝して俺を崇めろ!」#twnovel「本当は誰に感謝したらいいの?」「自分に…かな」


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【ついのべ三題ったー「頭痛」「螺旋」「意識」】


371.『階段落ち』


#twnovel 頭痛がする。螺旋階段を転がり落ちて、意識を失っていた。誰かに突き飛ばされたのか。いや…自分で落ちたんだ。思い出した。俺は役者だ。でも誰の役だった。こういう役か。こういう役の役者の役か。はっきりしないまま、その誰かの台詞が口を衝いて出た。「銀ちゃん、かっこいい…」


  *


【無意味に偉そうな機械技師と身に覚えのない罪で逃走してる人物とのハートフルボッコな物語】


372.『機械人間の供述』


#twnovel 彼は相棒だった。殺人の濡れ衣を着せられた俺に、機械の体を提供し、真犯人を明らかにするまで生身の肉体はよそに保管してやろうと尊大に語っていた。その彼が、商売道具として人体を手に入れるために俺に罪を着せたと知ったのがついこの前。俺の罪が本物になった日です、刑事さん。


  *


373.『鴉 -KARAS-』


#twnovel つい長風呂してしまった。いつも一緒に観てるドラマまであと15分。さすがにそれまでに上がるのは無理だろうと思って謝ると「任せろ」と立ち上がる。「俺は“カラス”と呼ばれた男」そして本当に10分でカラスの行水をしてきたが決め台詞がツボに入ってドラマどころじゃなかった。


  *


374.『一世一代のコンボ』


#twnovel 俺のターン!今まで伏せていた性癖をオープンにして彼女にアタック!リバース効果でマジックカード「土下座」が同時発動、攻撃力を上げる!相手が断ろうとしたらトラップカード「外堀」「金返せ」発動!コストとして恥と外聞と好感度を墓地に送ってターンエンドだ!俺の人生もな!!


  *


375.『期待賞』


#twnovel 若くしてノーベル期待賞を受賞したときから、私の人生は研究一筋と決まったようなものだった。時間と私財を費やし、いつか本当の賞を受賞するために成果を出そうと努めた。そして遂に二度目のノミネートがされたとき、私は研究をやめた。ノーベル残念賞なんてものを受賞する前にね。


  *


376.『まぼろしの色』


#twnovel あの色めきは何だったのか。皆が騒ぎ立てるから、その熱気にあてられただけ。携帯の履歴を削除する。自分の過去に一瞬のきらめきを探した夢のあと。たかが映画と思いつつ胸の内に生まれた衝動も、季節も、久しぶりに見えていた小指の糸も、記憶とともに色を失っていく。

#色褪せて秋


  *


《今日の献立報告シリーズ⑩》


377.『お肉』


#twnovel「今日はお肉ですよ」「漠然としすぎ。何の肉」「いいお肉です。いい肉の日ですからね」「なるほど。で、何の肉」「高いお肉です。奮発したんですよ」「高いってそれどういう基準で高いの。何の肉」「さて、どう料理しましょうか」「なんで執拗に何の肉か明かさないんだよ!怖いよ!」


  *


378.『出塁王』


#twnovel 足が速くもなく、ホームランを打てもしない僕は、何とかして塁に出る方法を考えなければならなかった。そこで打球を操る術を鍛えた。フライで捕られないようピッチャーの足下で跳ねさせ、顔面を狙う。正確なピッチャー返しを繰り返した僕は、出塁率100%の打者になった。敬遠で。

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