2016年9月分
№275~306
275.『何も成長していない』
#twnovel 去年は非常食用にカップラーメンを溜めこんでいると言ったら「お湯がなきゃ食えないだろ!」とツッコまれてしまった。今年は一味違うところを見せるために、佃煮用の調味料を用意した。そのへんのイナゴを捕まえて食べられるように。「だから、お湯がなきゃ煮れないだろ!」「!!」
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276.『引け』
#twnovel 何でもいいから運試しをしたくてくじを買った。まさか大当たりするなんて。貰えたのは、1ランク上のくじを引く権利だった。僕はツイている。どんどん引き進め、最上ランクの手前で外した。でも相応の金を払えばまた最上ランクに挑戦できる。引かなくちゃ。僕はツイているんだから。
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277.『帳尻合わせ』
#twnovel 僕はタイムマシンがいずれ完成することを知っていました。未来人に教えてもらいましたからね。でも、いつまで経っても誰も作ってくれないから、慌てて自分で作ることにしたんです。間に合うように。子どもの頃に会った未来人と、変わらない容姿のうちに、過去の自分に会えるように。
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《今日の献立報告シリーズ②》
278.『炭酸ソーメン』
#twnovel「今日のお昼は炭酸ソーメンですよ」「めんつゆを炭酸水で割るの?」「いえ炭酸水で茹でました」「それもう炭酸水使った意味なくないですかね!?」「じゃあ炭酸水で流しソーメンにしましょう」「勿体無い!」「ならソーメンを炭酸水に浮かせて」「めんつゆを!割らせてください!!」
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279.『ロストテクノロジー』
#twnovel 俺のじいさんは昔、機関車で働いていた。ボイラーに石炭を放り込むだけの簡単な仕事なんて言っていたけど、時代の流れで技術を誰かに伝えそびれたのは残念そうだった。そのじいさんを思い出しながら、俺は何とかやっている。助けになるんだ、こういう文明が巻き戻った後の世界では。
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280.『白と黒』
#twnovel 白と黒ならどちらが正義でどちらが悪と思うだろうか。世間一般では、白を正義と思うだろう。だが司法の世界では、何物にも染まらない黒こそが正義の象徴だ。白は同時に純粋さを表すが、無知には正義も悪も伴わない。君も識り、貫く道を選ぶべきだ。これ以上染まらなくなった後で。
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【ついのべ三題ったー「お茶」「乳」「包丁」】
281.『意識高い人をキレさせる方法』
#twnovel 意識高くて気難しいお客さんだから失礼のないようにもてなすんだぞ、と釘を刺されていたので、相手の希望通りのものをと思いミルクティーを作った。それで「バカにしてるのか」と包丁を持ち出されるなんて思わなかった。盲点だったよ。緑茶に牛乳ぶちこめばいいわけじゃないんだね。
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【ついのべお題ったーマニアック「ばちがあたった」「揚羽蝶」】
282.『ばちがあたったあげはちょう』
#twnovel「ばちがあたったあげはちょう」。あげはちょうは、えいごですわろうている。みてのとおり、つばめのしっぽににているからです。めんどくさがりのあげはちょうは、つばめのしっぽのふりをしてくっついていれば、とばずにすむとかんがえました。ぞくにいうふりーらいだー…何この童話。
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283.『いつも、いつでも』
#twnovel
急に言われても、恋なんてしたことない。
誰かを本気で好きになるって、どういうことかわからなかったから。
あんたらしいと笑われ、こっちは真剣だとムキになる。
これが普通じゃわからないはずだよ。
僕はいつだって恋をしていた。
#手癖で恋に落ちる瞬間を表現してください
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284.『ダンジョンレスキューにインタビュー』
#twnovel 救急隊員やってて、一番苦労するのはダンジョンから救援要請があったとき。何せ時間との勝負だから、モンスターは基本一撃で倒さなきゃいけないし、罠なんか解除しないでかかる前に駆け抜けるのが普通。よく、あんたら冒険者になれよって言われるけど…遊んでる暇は、ないんだよね。
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285.『悪人の支配から逃れる話』
#twnovel「捨てるなら俺が拾う」と、あなたは私を手に入れた。「拾った命をどうしようと俺の勝手」と、嫌がる私にいろんなことを教え込んだ。「しっかり稼いで貰わんとな」と、仕事までさせられた。「お前は用済みだ。手間かけさせおって」と、結婚式で泣いてくれた。ありがとう、おとうさん。
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286.『アンチはこうして生まれる』
#twnovel 親父はどこかの球団のファンってわけじゃないが、強いて言うなら「アンチ巨人」だ。強過ぎるのが気に入らないらしい。そんな親父に「強い者、気に食わない者には歯向かう気概を持て」と教わって育てられた。だから俺は、巨人ファンじゃなくてアンチアンチ巨人ってとこか。親父嫌い。
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287.『あったはずの青春』
#twnovel 懐かしい相手から電話がきた。『実はさっき、ある映画を観て…急に会いたくなったんだ。まだ、間に合うかな』私もその映画を観て、最初に思い出したのはあなたでした。でも…遅すぎるよ。どうして、DVDが出てからじゃなく公開中の間に観て連絡くれなかったの。うちの人みたいに。
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【「夕方の畳の上」で登場人物が「選ぶ」、「跡」という単語を使ったお話】
288.『跡』
#twnovel 目が覚めて、頬を触ると涙の跡があった。ぼんやりと夕焼けを眺める。待ち合わせをしていたのを思い出す。どちらかに決めなきゃいけないんだっけな。おばあちゃん、手伝って。今年の夏祭りは、浴衣を着て行きたいの。「おめかしするなら、まずほっぺの畳の跡をどうにかしないとねえ」
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【twnvday2016/9/14 お題「名前」】
289.『あだな』
#twnvday 最初は反応できなかった。そんな風に呼ばれたのは久しぶりだったから。おざなりな会話をするうちに、ああ大して仲良くもなかった相手だと悟る。思い出せないわけだ。じゃあ、と別れてから喪失感に気づく。気取らずに訊けばよかった。昔の俺を知っている、君はいったい誰だったんだ。
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290.『ハーモニカじいさん』
#twnovel 小学生の頃、帰り道にいつもハーモニカを吹いているおじいさんがいた。その音色が好きで、よく足を止めて聴いていた。進学して通学路が変わったのでしばらく見なかったが、大人になって久々に見かける。おじいさんも僕を覚えていたようで、手を差し出した。演奏料のツケを払え、と。
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291.『絶望の夜明け』
\仮眠ダケダー!/
仮眠ダケダーは社畜である。
彼を採用したショッカーはブラック企業である。
仮眠ダケダーは抱えている仕事を今日中に終わらせるため、
疲労で低下した作業効率を取り戻すべく仮眠をとるのだ!
おやすみ、仮眠ダケダー!
#twnovel
\…モウダメダー/ チュンチュン
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292.『鬼気迫る』
#twnovel 君は、僕の真剣な横顔が好きだと言ってくれたね。ロマンチックだって。ごめん、そういうとき、君のことは考えていない。仕事のことだけだ。君のことを考えてるときの顔は…こっちだ。だらしないだろ。だから、君に好かれる僕でいられるように、仕事をさせてくれ。僕は中毒じゃない!
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293.『殺意の芽吹き』
#twnovel スプラウト食材が体に良いと聞いたので、かいわれ大根を栽培した。食卓に並べると旦那が「かいわれ大根は食い物じゃねえ」と目の敵にしたので、別の芽を育てて出してみることにする。「別に大根じゃなきゃいいってわけでも…ところでこれ、何の芽」「じゃがいも」「俺が悪かった」
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294.『じいさんとテレビ』
#twnovel 珍しく、じいさんが昼間からテレビに食いついているのを見て、今日は一日中音楽番組をやっているのを思い出した。番組の企画も。そうか、昔の映像をきれいにして放送するのは、敬老の日を意識してのことかもしれない。「いやあ、最近のねえちゃんは露出が多くてええのう!」じじい…
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【「朝のキッチン」で登場人物が「始める」、「手錠」という単語を使ったお話】
295.『分かち合う』
#twnovel「それでは今日の朝食の準備を始めます。まずこちらに、手錠で拘束した旦那を用意します」「この時点で嫌な予感しかしません」「火をかけました。お湯が沸騰して、これからキッチンはガンガン暑くなっていきます」「暑!あっつ!」「料理できないならせめて苦労を分かち合いましょう」
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296.『ミステリの大前提』
#twnovel「もうすぐ探偵が来る。準備はいいか?」「はい。証言者もちゃんと業務用のを用意しました」「この前の3年前のことすら覚えてない奴は酷かったからな…お前達も業務用警察として、真相に迫るような発言は慎むように。警察が優秀だと探偵は要らないぞ」#業務用をつけると安心感が増す
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297.『未来からのプロポーズ』
#未来生まれっぽい発言をしろ 信じられないかもしれないけど、君は僕と結婚する。今から十年後の未来で、そうなるって決まっているんだ。離れ離れになっても、そのときが来たら迎えに行く。何もおかしいことなんてないよ。だって僕たち、十歳しか違わないじゃないか、おねえちゃん!#twnovel
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298.『悪魔の仕業』
#twnovel 依頼人が激昂する。探偵のくせに、悪魔の仕業で片づけるなど何事かと。「謎解きの結果、そうなっただけです。事件で使われたトリックは、あなたの旦那が犯人であると示している。一見ね。それを承知で探偵に依頼して解かせ、旦那に罪を着せようとする者を悪魔と呼ばずして何と呼ぶ」
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299.『いづな落とし』
#twnovel 臨時ニュースです。本日の取り組みで上空へと消えた力士2名ですが、宇宙空間を漂っている様子を人工衛星が捉えました。「いづな落とし」の決まり手を巡って攻防が続いている模様です。しかし大気圏突入の摩擦熱で、両者不浄負けの可能性が高いと思われます。#新しい相撲の決まり手
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300.『撃っていいのはとか人を呪わばとか』
#twnovel「ツイッターで初めてブロックを使うときは、2人の人間をブロックすることになる。ブロックした相手と、ブロックをしたことがなかった今までの自分だ。ブロックを知らなかった自分とはもう会うことはない。思い出したくなって解除した頃には、もうそのアカウントは削除されてるのさ」
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301.『さすらいの太陽』
#エウロパで発見された驚くべき事象 が発表されるというので特番の枠を用意した。土壇場で発表中止になる可能性も考慮し、熱い神対応で場繋ぎできる“彼”にオファーしたいが…どこにいるやら。そして肝心の発表は、エウロパの氷が謎の熱で溶け出しているということだった。まさか。#twnovel
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《今日の献立報告シリーズ③》
302.『ソーメン』
#twnovel「今日はソーメンですよ」「いやもうその季節終わったよね」「だから安売りしてたんですよ」「じゃあ…あったかいソーメンにして食べない?」「いいですね。お湯に流して」「お湯で流しソーメンとか危険だから!」「でもソーメンらしくないですし」「チャンプルーに!してください!」
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【「夜の玄関」で登場人物が「見つめ合う」、「指輪」という単語を使ったお話】
303.『イベントスキップ』
#twnovel 玄関の前で立ちつくし、見つめ合う僕たち。まさか鍵を失くして、こんな夜中に締め出されるとは。この日のために用意したあれもこれもすべてドアの向こう。辛うじて持っているものといえば…僕は跪いて小箱を差し出した。「今日呼んだのは、結局はこのためだよ」箱の中には、指輪が。
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304.『真面目な編集者の供述』
#twnovel 私は編集者としての仕事を全うしようとしただけです。締切が近いというのにツイッターで遊んでいる先生が「#自分を倒したら落としそうなアイテム」で「原稿」と言ったので…なのに、何回倒してもドロップしないんですよ。おかげでこっちが原稿を落としてしまいましたよ、刑事さん。
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305.『姉の部屋』
#twnovel 姉は養子だ。音楽の才能を見出され我が家に来た、らしい。父は姉にご執心で、姉の部屋に入るとしばらく出て来なくなる。魅入られたのは父の方だったのだろう。その部屋は完璧な防音が施された密室で中の音は漏れ出ない。だから誰も父の死因を知らない。何がいたんだ、この部屋には。
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【「夜の玄関」で登場人物が「選ぶ」、「プレゼント」という単語を使ったお話】
306.『間違いばかりだけれども』
#twnovel 夜にプロポーズしたのは良し、プレゼントが指輪なのも良し。ただ、場所が玄関前なのは…なんというか、よく間違う人なのだ。彼も「あれは間違いだった」と認めている。「タイミングは間違えたかもしれないけど、相手を間違えたとは思ってないから」私も。だから受けることを選んだ。