初期作品集
№1~9
1.『死に至る癖』
#twnovel 僕は喪服が好きだ。そして好きな人には自分好みの服を着て欲しい。だから僕は彼女の身近な人に不幸を起こし続けた。喪服姿を間近で見ようと寄り添っていたためか、彼女に振り向いて貰うことができた。乾杯の後、血を吐いて倒れた僕に彼女は告げた。私、死に装束が好きなの。
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2.『3つの願い』
#twnovel 3つだけ願いを叶えるという女が現れたので、面白半分に「付き合ってくれ」と願ってみた。やがて独占したいと思い、本気で「結婚してくれ」と願った。幸せだったが、次に願い事を言えば女はいなくなる。不安と重圧に耐え切れなくなり、俺は最後の願いを言った。「別れてくれ」
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3.『隅に置いて』
#twnovel 部屋の隅に少女が住み着いた。「それ」について分かるのは、触れれば壊れる、ということだけ。その正体に気づいたのは、久しぶりに帰省し、あの男と並んで歩く彼女を見たときだった。部屋に戻ると、少女は隅におらず、「彼女」が出迎えた。抱きしめれば壊れると、分かっていた。
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【twnvday2015/9/14 お題「つくる」】
4.『二人の思い出』
#twnvday 彼女に頼まれ、彼は二人の思い出を作りに出かけた。旅先では手続きの一切を引き受け、彼女との旅行であることを吹聴した。旅行から戻った彼は彼女とのことを訊かれ嬉々として土産話をしたが、程なく逮捕された。現行犯逮捕されていた彼女にとって、アリバイ作りは最早無意味だった。
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【twnvday2015/11/14 お題「どっち」】
5.『究極の問い』
#twnvday 「仕事と私、どっちが大事なの!?」もちろん君だと咄嗟に思ったが、言葉だけでなく根拠が必要だ。過去の事例を調べ上げ、大事の意味を定義し、あらゆる条件を想定し、遂に答えを見出して帰ったとき、彼女はもういなかった。「仕事」と答えるつもりだったのでちょうどよかった。
お題がお題だけにオチをもう1パターン。
6.『完璧な答え』
#twnvday「仕事と私、どっちが大事なの!?」もちろん君だと咄嗟に思ったが、言葉だけでなく根拠が必要だ。過去の事例を調べ上げ、大事の意味を定義し、あらゆる条件を想定し、完璧な答えを携えて帰ったとき、彼女はもういなかった。答えなんて求めていなかったという、その発想はなかったわ。
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7.『傘』
#twnovel 僕は雨に打たれるのが好きなので、傘を押し付けられても迷惑だ。人の話も聞かず濡れながら行ってしまった彼女。彼女に見つけて貰うため、僕は返すべき傘を差す。本当は知っている。もう誰かの傘の中にいるから、ずっと見つからない。僕が探すべきは、この傘を押し付ける次の相手だ。
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8.『探偵が死んだ』
#twnovel 探偵が死んだ。連続殺人事件の捜査中であった。事件は迷宮入りと思われたが、ある意外な人物の登場により事態は思わぬ展開を見せる。「今回の探偵役です」「じゃああれは誰だったんだ」「最近の職業探偵は素人に手がかりを残して死ぬものなんです」「探偵は死んだのか…」
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【twnvday2015/12/14 お題「暁」】
9.『陽はまた昇る』
#twnvday 夜通し歩いても、どこに行けるわけでもない。遂に座り込んだ男を白い靄が覆う。途方に暮れて、それでも顔を上げると、朝日はどこで見てもきれいだな、と呟く。暁に魅せられて、一人、また一人と朝靄から顔を出す。皆がこの時を待っていたのだ。男の微笑みを朝焼けが照らす。
2016年から1日1本をノルマに書き始める前の散発的に書いていた作品群。
改めて見直すと、この頃は「小説を書くぞ!」と肩に力が入ってる気がします。