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Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第4章  夢現フィールドと再起の遺構
99/123

Locus 89 

 前回より2時間早く更新できました。

 え? 変わらない?

 (´;ω;`)ぶわっ


 で、ではどうぞ(震え声)

 視界全てを埋め尽くした光の粒子が消えた後俺達は合流し、先程の戦闘の事を互いに(ねぎら)う。

 

 アリルやナギ、ユンファの顔には少し疲労が現れていたが、先の戦闘勝利の高揚(こうよう)感が強いのか、動きには疲れた様子はなかった。

 しかし、リーゼリアだけは、何故かすっきりとした顔していた。


 ……いったい何があったのだろうか?

 聞いてみたい気もするが、好奇心猫をも殺すと言うし、何よりさっきから俺の(かん)が『聞いてはいけない! ダメ! 絶対!』っと激しく警鐘(けいしょう)を鳴らしているので、ココは放って置くことにしよう。

 

「お疲れ様でした」


「お疲れ様! いやぁ~結構大変だったね」


「お疲れ様です~。そうですね~。でも~、皆無事でよかったですよ~」


「だな! お疲れ様」


『おつかれさまー!』


「キュキュウ!」


「お疲れ様! そういえば、2つ目の条件はモンスターから循環の制御球を取り返せってなってたけど、それって今はどうなってるのかな?」


「そうでしたね。それでは、1度確認してみましょうか」


「分かりました~」


 そうして全員でドロップアイテムの確認をしたところ、それらしきアイテム?球?というものが見つかったので、実体化して鑑定してみた。

 因みに、制御球は直径5cm程の透明感のある灰色の球体で、制御球を所持していたのはリーゼリアだった。


イベントアイテム  循環の制御球:とある先史文明の遺構の制御兼、動力としての役割を果たす部品にして、装置。現在は内包する魔力が枯渇(こかつ)しているため、作動及び、起動させることができない。

また、対応する属性魔法を打ち込むことで、魔法を変換し、魔力を回復する機能を有する。

但し、対応しない属性魔法を打ち込んだ場合、それまでに溜めた魔力を全て発散・放出してしまうので、魔力が完全に溜まるまで、注意する必要がある。


「説明を見た感じ、循環の制御球の魔力を回復させないといけないっぽいね」


「だね~。まぁ、でも一応クエストの詳細を見て置こうよ。こうして循環の制御球は取り返せた訳だし、次の条件が開示されてるはずだしね」


「だな」


 その後クエスト詳細を見てみると、案の定この地下水路で出来る最後の条件が表示されていた。


『キークエスト【復活! 古の遺構】  0/3


・制御球を循環せし魔力で満たし、制御球が示す場所に安置して、機構を再稼動させろ   0/300MP  ●●○


・?????


・?????                                                                                                    』


「どうやら制御球の魔力を回復させないと、制御球を安置する場所が分からない仕組みらしいな」


「みたいですね」


「それにしても、循環せし魔力かぁ。たぶん属性魔法のどれかだと思うけど……どの属性魔法が対応するかが、分からないんだよね。どうしよう?」


「その事についてなのですが、恐らくその1つは水属性だと思いますよ? 水には三態(さんたい)がありますから、まず間違い無いかと」


「なるほど~! 確かに三態なら~、固体(こおり)液体(みず)気体(すいじょうき)と状態を変化して地球(ほし)を循環しますね~」


「他は残念ながら分かりませんが……リオンさんは何かありませんか?」


「ん? そうだなぁー……たぶんだけど風属性がそうなんじゃないかと思う」


「風、ですか?」


「ああ。少しうろ覚えだが、大気大循環って言葉があったはずだ」


「タイキダイジュンカン? お兄ちゃん、何ソレ?」


「確か大気大循環は、全地球的規模での大気の運動のことだったはずだ。それで質問だけど、大気って何だと思う?」


「えっと~……空気でしょうか~?」


「ああ、大体そんな認識で合ってるな。その事を踏まえて言うと、空気の流れや動きのことを『風』というんだ」


「……あっ、なるほど。そういうことですか」


「えっ? どういうこと?」


「つまり、大気が動けば自然と風が生まれ、大気が循環することを言い換えれば、風が循環していると言えるってことですよ」


「ほうほう、流石お兄ちゃん。雑学好きなだけあって、色々なこと知ってるね!」


「はー……。本当にリオンさんは物知りですね。それも、雑学なんですか?」


「んー……いや、化学の授業で習ったことだけど。まぁそのことは一旦置いておいて、今は試しに風と水の魔法を撃ってみないか? ダメだったその時は、総当りで試してみれば良い訳だしさ」


「ですです~」


「それもそうですね」


「あ、でもこの制御球どうしようか?」


「どうって、どうゆうこと?」


「いや、この制御球に向かって魔法を撃ち込むんだよね? だったら、人が持ってたら魔法の誤射とかあったら危ないし、床に置いても魔法の反動とかでどっかに転がって、水路にポチャしちゃったら大変だと思ってさ」


「あぁーそう言われれば、確かに。んと……どうしようか?」


「それなら、シエルに持っててもらえば良いんじゃないか? 制御球もそんなに重くないし、たぶん大丈夫なはずだ」


 そう言いつつ心話を使い、シエルに確認を取る。


『シエル、できそうか?』


『うん、だいじょうぶだよ!』

 

「え?! シエルちゃんって物を持てるの?」


「というかそれでは、シエルちゃんを危ない目に合わせることになりますし、根本的な解決にはならないんじゃ……?」


「まぁ、見てみれば分かるんじゃないか? ここは、論より証拠(しょうこ)ってやつだよ。シエル、頼んだ!」


『はーい!』


 シエルはそう返事をすると共に、両手の平を前に(かか)げる。

 すると、俺の手に乗っていた循環の制御球がふわりと空中に登り、少しして空中にぴたりと静止する。


「おおー!」


「すごーい! ねぇねお兄ちゃん、コレどうなってるの?」


「ああ、コレはシエルの持つ念動ってスキルの効果だな。所謂(いわゆる)サイコキネシスみたいなもので、ある程度実際に手を使わないでも、念じるだけで物体に干渉(かんしょう)できるんだ」


「なるほど~。確かにコレなら~、シエルちゃんにも私達にも危険はなさそうですね~」


「納得しました。それでは、シエルちゃんにはアリルとユンファの背後に居てもらい、5~6m前方の高さ1m位の空中に固定してもらいましょうか。お願いできますか?」


『うん、だいじょうぶだよ!』


 シエルはできるということを伝えるため、向日葵(ひまわり)のような笑顔を浮かべながら(うなず)く。


「それでは、アリル、ユンファの順に、魔法を打ち込んでみて下さい。一応試しということなので、消費MPが一番軽い基本魔法でお願いします」


「うん、分かった!」


「はいです~」


 その後、まずアリルが基本魔法のエアカッターの詠唱を終え、魔法を打ち込む準備が整う。


「それじゃ、いくよ? ―――エアカッター!」


 アリルが構えた杖の先端から10個の風刃が次々と循環の制御球目掛けて、飛んで行く。

 すると、後少しで制御球に当たる!というところで風刃はまるで吸い込まれるように続々と消えていき、最後の風刃が消えると同時に、飛んで行った風刃と同じ淡い緑色をした光が循環の制御球に(とも)る。


「えっとー、コレは回復できた……のかな?」


「どうなんでしょう~?」


「いえ、大丈夫みたいですよ。クエストの詳細のところがさっきは0/300MPでしたが、今は2/300MPになっていますし、ちゃんと回復できてるようですよ」


「お! ほんとだ。……ん? なぁ、基本魔法の消費MPって確か3じゃなかったか?」


「あー、それはね。杖に付いてる消費MP減少とスキルの消費MP削減の効果で減った結果だから、特におかしいことはないよ」


「なるほど、そういうことか」


「それでは~、次は私ですね~」


「ユンファちゃん、ゴーゴー!」


「いきます~ ―――アクアストライク~!」


 ユンファが構えたパルチザンの穂先(ほさき)から一抱え程もある水球が発生し、次の瞬間循環の制御球目掛け発射される。

 すると、先程のアリルが放ったエアカッターと同じように、循環の制御球に当たる寸前に水球が跡形も無く消え、そして淡い緑色の光に青色が混じる。


 クエストの詳細を見てみれば、5/300MPとなっていたので、どうやら問題なく変換されたようだ。


「……大丈夫のようですね。それでは、アリル、ユンファ残りMPに気を付けながら魔法の打ち込みをお願いしますね」


「了ー解です!」


「分かりました~」

 

「シエルの方も、引き続き頼むな」


『うん、まかせてー!』


 そうして、循環の制御球の内包魔力が回復しきるまで、アリルとユンファが魔法を循環の制御球に打ち込んでいく。

 その間、俺は特にやることもなかったので、ステータスの確認とドロップアイテムの鑑定を行っていった。


 やはり格下ばかりということもあって、俺の種族レベルは上がっていなかったが、スキルのレベルアップに(ともな)い、ステータスは少し上昇していた。

 それと、スキルがレベルアップしたおかげか、新しいアーツと魔法を習得しており、また新しいスキルに派生進化できるものがあったので、説明を読み込み進化させた。

 

 シエルとネロの方は俺と違い、格上との戦闘により互いに種族レベルが1上がっていたので、ステータスの割り振りを順次行っていった。


 現在の俺のステータスはこのようになっている。


name:リオン

sex:男

age:16

race:人族(ハーフドラゴン)Lv19

job:冒険者(エクスプローラー) rank:E

class:マジックソードマンLv6

HP:466  MP:362

STR:131 

VIT:58

AGI:129 

INT:70

MID:64

DEX:114

LUK:51

所持金:23575R  虚空庫 142/400 


種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕


専科スキル:〔魔法剣・無Lv6〕


装備スキル:〔STR増加Lv38〕、〔AGI増加Lv38〕、〔剣術Lv8〕、〔暗殺術Lv5〕、〔無属性魔法Lv16〕、〔梟の目Lv41〕、〔見切りLv28〕、〔調教Lv26〕、〔賦活Lv6〕、〔詠唱破棄Lv9〕、


控えスキル:〔鑑定Lv37〕、〔識別Lv37〕、〔料理Lv18〕、〔発見Lv26〕、〔虚空庫 rank2〕、〔錬成Lv0〕、〔気配感知Lv5〕、〔毒耐性Lv2〕、〔麻痺耐性Lv3〕


称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕


称号スキル:〔念話Lv0〕、〔怪力乱心Lv2〕、〔韋駄天Lv2〕


固有スキル:〔狂化Lv21〕、〔軽業Lv8〕、〔頑健Lv6〕



〔PS〕パッシブスキル:〔心話Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔念話Lv0〕


〔PS〕パッシブスキル:〔念話Lv0〕

友好的存在(調教獣・召喚獣・獣魔・フレンド等)と心で会話することが可能になり、SLv上昇と共に心で会話可能な範囲が広がる。  MAXSLV50


□  クロススラッシュ:瞬時に斬撃を交差するように斬り付ける技。

消費MP:8  リキャストタイム:5秒


□  マジックウェポン:武器に属性の無い魔力を纏わせ、一時的に武器攻撃による物理ダメージを魔法ダメージにする、変換魔法。

この魔法の効果時間及び威力は、使用者のINT・DEX・LUK の値に依存する。

消費MP:12  リキャストタイム:10秒


□  ヒーリングボルト:魔力を癒しの効果がある、純粋なエネルギーに性質変換させた回復魔法。

使用者から半径20m以内の対象に対して生命力を回復させることができる。

この魔法の威力は、MID・LUK の値に依存する。

消費MP:8  リキャストタイム:5秒

 

 どうやら、念話に進化したことで調教獣(テイムモンスター)のみという縛りはなくなったようだな。

 これで獣魔であるネロとも会話できるようになるから、作戦の指示をシエル経由で伝えなくても良くなるから、戦闘の幅も広がりそうで嬉しい限りだ。

 

 クロススラッシュは恐らく、ダブルスラッシュをよく×の字にして斬っていたことで、派生した技なんじゃないかと思われる。

 これは、スラッシュで首を狙って斬り裂き、ネックハントというアーツになった現象? に酷似(こくじ)しているから、まず間違いないだろう。


 因みに、マジックウェポンはクラススキルのレベル上昇によって習得した魔法で、ヒーリングボルトは無属性魔法のスキルレベル上昇によって習得した魔法だ。


 次はシエルのステータスだ。


name:シエル

sex:女

race:サニー・スピリットLv8

HP:200  MP:272

STR:0

VIT:41≫67

AGI:37⇒39≫65

INT:42≫68

MID:41≫67

DEX:37⇒39≫65

LUK:31≫57

STP:4⇒0

≫調教の効果を加算した値


種族スキル:〔陽光活性(昼)〕、〔物理半減〕


スキル:〔光魔法Lv31〕、〔光耐性Lv9〕、〔影耐性Lv7〕、〔浮遊飛空Lv17〕、〔装飾化Lv8〕、〔念動Lv4〕、〔再生Lv9〕、〔再精Master〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv3〕



固有スキル:〔STR返上〕


 ステータスポイントは、回避力と命中率を高めるために、AGIとDEXに2ポイントずつ割り振った。


 AGIにプラス2ポイントで、37⇒39へ

 DEXにプラス2ポイントで、37⇒39へ


 それと、光魔法のレベルが上がったことで、新しい魔法を習得していた。


□  ライトウォール:光を収束し、魔力で壁の形に固めたものを使用者を中心に半径20m以内に任意で出現させる魔法。

壁の大きさはINT・MID・LUK の値に依存し、強度はINT・MID・DEX・LUK の値に依存する。

消費MP:20  リキャストタイム:60秒


 次はネロのステータスだ。


name:ネロ

sex:女

race:シャドービーストLv18

HP:280  MP:380

STR:41

VIT:41

AGI:44

INT:48⇒51

MID:41

DEX:51

LUK:41

STP:3⇒0


種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕


スキル:〔影魔法Lv27〕、〔影抵抗Lv1〕、〔影耐性Lv5〕、〔潜影移行Lv12〕、〔宿紋化Lv2〕、〔潜伏Lv21〕、〔賦活Lv2〕、〔索敵Lv18〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv3〕


固有スキル:〔専化影装〕


 ステータスポイントは魔法の威力を上げるため、INTに全振りした。


 INTにプラス3ポイントで、48⇒51へ


 それと、影魔法のレベルが上がったことで、新しい魔法を習得していた。


□  シャドーブロウ:影を収束し、魔力で(こぶし)の形に固めたものを、指定した影から出現させ対象を打ち()える、攻性魔法。

出現する拳の大きさはINT・DEX・LUK の値に依存し、威力はINT・MID・LUKの値に依存する。

但し、指定できる影は、使用者から半径20m以内に居る敵対者から、10m以内の影に限る。

消費MP:20  リキャストタイム:60秒


 最後はドロップアイテムの鑑定だ。


素材アイテム  ゼラチン質な汚卵殻(おらんかく)片:ゼラチナス・ダーティエッガーの卵殻片。暗青色をしており、ぷにぷにとした触り心地とひんやりとした質感が気持ち良い物体。ゼラチン質なため熱すると溶けて毒性を帯びるが、人肌程度の熱では無害。熱して水分を全て飛ばすことで毒性を帯びたゼラチンを作ることができ、害獣駆除の毒食品の材料として使われる。


素材アイテム  ゼラチン質な汚触手:ゼラチナス・ダーティウィッパーの触手。触手自体に出血毒を有しており、接触するだけで毒素が注入される構造になっている。熱することで毒素を注入する構造がなくすことができるが、毒性は強まるため、取り扱いには十分な注意が必要。大捕り物や害獣駆除用の毒として使われる。


素材アイテム  ゼラチン質な汚ジェル:ゼラチナス・ダーティウィッパーのジェル。熱することで毒性を帯びる性質を持ち、川や池、湖等の水に溶かすことで水を汚し、水中に住まう生物にダメージを与え、変質させる効能があるため、取り扱いには十分な注意が必要。薬物を扱うギルドでは高値で取引される、第2級指定特定危険物の1つ。


【部位破壊ボーナス】

素材アイテム  癒球(ゆきゅう)液:ゼラチナス・ダーティウィッパーの(こぶ)内の液体。細胞の再生能力を飛躍的に高める働きを持つため、レストアポーションを始め様々な復元・賦活作用のある回復系薬品の材料になる。入手自体困難であるため、非常に高い値段で取引される。


【部位破壊ボーナス】

素材アイテム  黒硬吸盤殻(こくこうきゅうばんかく):ゼラチナス・ダーティウィッパーの吸盤殻。非常に硬く重いため、破城槌(はじょうつい)の先端や盾の材料として重宝され、また滅多に市場に姿を現さないことから、別名:(まぼろし)の黒き硬殻(こうかく)とも呼ばれている。

また、利用価値がとても高いため、非常に高い値段で取引される。


【部位破壊ボーナス】

素材アイテム  ゼラチナス・ダーティウィッパーの核片:透き通った黄色い核片。核片なため杖の材料には適さないが、魔力伝導率が高く、魔法具や装飾品の材料として重宝される。


 強化素材は、ゼラチナス・ダーティエッガーから鍛錬石が各1つずつ、計4個を入手でき、ゼラチナス・ダーティウィッパーから鍛錬石が2個出た。


 ゼラチナス・ダーティエッガーは6体いたのだが、ゼラチナス・ダーティウィッパーのHP回復に使われた個体の分は入手できなかったということなのだろう。

 もったいなかったなぁ。


 そうやってステータスポイントの割り振りやドロップアイテムの鑑定等をし終えてから、アリル達の方を見てみるとまだ、循環の制御球に魔法を打ち込んでいた。

 クエストの詳細を見てみれば、284/300MPと表示されているので、後1~2発で循環の制御球の内包魔力が満タンになりそうだ。


「ふぅ~、はぁ~、これで~、最後です~ ―――フラッドウォータ~!」


 ユンファはパルチザンを杖のようにしてもたれ掛かりながら、左の手の平を前方に掲げる。

 すると、掲げた左の手の平に人の頭程の水球が発生し、その水球から勢い良く水流が放水される。

 放水された水流は、狙い違わず循環の制御球へと差し(せま)り、接触する間際で吸収されたのか霧散し、消え去る。


 そして次の瞬間、循環の制御球が青緑色の光をぽぅっと纏い、『リィィィィィン!』という(すず)やかな(すず)()を辺りに響かせると、今度は循環の制御球から緑と青が入り混じった光の帯が照射される。


 カキンッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 照射された光の帯は最奥部の更に奥にある(たき)に当たると、何かを外したような音が響き、次いで最奥の壁から流れ出る一番大きな滝が左右に割れ、次第に新たな通路が口を開けていく。

 

 ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン……!

 

 更にその通路の口が開くのと連動するように、水路の中から次々に床が()り上がり、新しい通路と最奥の床を(つな)ぐ道ができていく。


 …………ガガコンッ!


 2種類の音が鳴り止むと、そこには地下水路の最奥部から更に壁の中へと続く、新たな通路ができあがっていた。

 シエルの念動で支えられた循環の制御球からは、先程から変わらず緑と青が入り混じった光の帯を、新たな通路の先へと照射したままだ。


「ほぇー。こりゃ、すごいね」


「だねー。こんな仕掛けがあるだなんて、びっくりだよ」


『おおー! すっごーい!』


「ホオォォォ! ホオォォォ!」


「ですがこれで、制御球が示す場所という所に行くことができますね」


「だな。後は循環の制御球を安置して、ここの機構を再稼動させれば、この地下水路での条件はクリアできるな」


「ですね~。少し疲れましたけど~、後少しでクリアだと思えば~、がんばれますので~、ちゃちゃっと行っちゃいましょ~」


 それから俺達は、循環の制御球から照射される光の帯を頼りに、最奥部から新しい通路へと結ぶ水路上にある道を進んで行った。

 水路上にある道は若干水に()れて(すべ)り易かったが、何とか誰も転んだり、水路へと落ちること無く、移動することができた。


 因みに、循環の制御球はスキルのレベル上げも兼ねて、引き続きシエルが念動で持っている。

 

 新たな通路口に入りしばらく行くと、通路の勾配(こうばい)が下がり、下り坂になっていった。

 下り坂はおよそ50m程もあり、下り坂の先は周囲の明かりより暗いためか、どうなっているか分からない。


「えー……まだ、下がるのー?」


「ちょっと用心し過ぎなんじゃないかな? いくら何でも通路長過ぎだよ」


「確かに長過ぎる気もしますが、恐らくこの施設の中枢(ちゅうすう)かそれに準ずる場所なのでしょうから、仕方ありませんよ」


「だな。循環の制御球は制御兼、動力らしいから、それを安置する場所も重要な機構になるだろうし、厳重な仕掛けがあっても、然程(さほど)不思議じゃないだろ。(むし)ろ循環の制御球を安置するまでの通路自体に何も無い方が、不自然じゃないかと思うけどな」


「ん~……ですけど~、その循環の制御球を持っているから~、安全であるという可能性も~、ありますよ~? 重要な物なら~、誤って壊したりしたくは~、ないでしょうし~」


「なるほど! そういう考えもあるか。……っと、着いたみたいだな」


 そうやって皆と雑談をしながら長い通路を下って行くと、通路が終わりそこには、地下水路の踊り場より幾分か小さい部屋へと辿(たど)り着いた。

 

 部屋の中は閑散(かんさん)としており、部屋の中奥付近に高さ1m程の8角柱の台座のようなものがあるだけだった。

 シエルの持つ循環の制御球からは依然(いぜん)として、緑と青の入り混じった光の帯を照射しており、その光は台座の中心部にある(くぼ)みを指していた。


「どうやらアソコが、制御球の示す場所で間違い無いみたいだね」


「だったら早速、循環の制御球を置いてみようよ! ということで、シエルちゃん、よろしく!」


『はーい!』


 シエルは元気良く右手を上げ、了解の意を示し、循環の制御球を持ちながらふよふよと飛んで行こうとすると、リーゼリアから待ったが掛かる。


「あ、シエルちゃん。少し待ってもらえませんか? 無いとは思いますが、念のため循環の制御球は念動を使って、間接的に置いてみて下さい。何もなければソレで良いので」


『わかったー!』


 シエルは大きく頷くと、滑るように俺達の近くへ移動する。

 そこから念動を使って、循環の制御球を部屋の中央にある台座の上まで運び、台座の窪みへと()め込んだ。


 コトッ……カチッ! フォンッ! フォンッ! フォンッ! フォンッ! フォンッ!


 すると循環の制御球を嵌め込んだ(ふち)が迫り上がり、循環の制御球を台座から離れないよう拘束(こうそく)・固定する。

 次いで、循環の制御球を中心に台座から基盤の回路の様な模様が浮かび上がり、更に部屋全体にも基盤の回路のような模様が浮かび上がる。

 そして突然、脳内に普段のインフォメーションとは違う、機械的な声が響き渡る。


《循環の制御球の再接続及び、魔力の再供給を確認》

《これより当機の再稼動準備を開始---完了》

《再稼動にあたり、当機の命令権限を有する保持者をサーチ---エラー、エラー、エラー、エラー》

《マスター権限及び、サブマスター権限の失効を確認》

《状況把握のため、過去視を使用し、過去1週間の出来事を確認---完了》

《現在当機の制御室内に存在する生命体をサーチ---完了》

《生命体の内2体は他の生命体との契約を確認》

《権限発行条項第391条及び、特例条項第7条に(のっと)り、現在当機の制御室に存在する生命体の内5体に、ゲスト権限を発行・付与します》


 すると機械的な声に反応して、台座の周辺に5つの光が収束していき、ホログラムで出来たカードのようなものが徐々に生成されていく。

 生成し終わると、ホログラムで出来たカードのようなものは、俺、アリル、リーゼリア、ナギ、ユンファの元へと空中を滑るようにして飛んで来た。


 咄嗟(とっさ)(つか)むと、そのカードのようなものは、力の欠片を使った時のように光の粒子へと変わり、俺達の体内へと『スー』っと入っていった。


 その直後、脳内に『ピロン♪』という音が鳴り、インフォメーションが流れる。


『イベントアイテム:特定機構再稼動臨時命令権限を入手しました』


 ふむ、つまりこの機械的な声もイベントの内ってことだろうか。

 さっき言ってゲスト権限というは、たぶんさっき入手したもののことだろう。

 ってことは、再稼動の命令を出せば、ここの機構をまた動かすことができるということかな?


 そう考えていると、また機械的な声が脳内に響いてくる。


《ゲスト権限の発行・付与が、正常に作用していることを確認》

《ゲスト権限保有者に、当機の再稼動許可を申請(しんせい)します》


 機械的な声がそう言うと、俺達5人の前にウィンドウが現れ、『魔力循環機構の管理者が、ゲスト権限保持者に対し、魔力循環機構の再稼動を申請しました。申請を受諾(じゅだく)しますか? Yes/No 』と出た。


 俺はすぐにボタンを押さず、やることは決まっているだろうが、念のため皆に意見を求める。


「一応聞くけど、どうする?」


「もち! Yesを押すよ!」


「まぁ、ここまで来た目的を考えれば、そうするよね」


「確かにその通りですが、何かしら不都合を感じたり、衝動的にNoを押したくなったりする、困った人が居たりしますから、一概(いちがい)に意見のすり合わせがいらないとは言い切れないんですよ」


「でも~、少なくともここには~、そういう不都合を感じた人や困った人はいないはずですよね~?」


「そうだな。それじゃ、全員再稼動には賛成ってことで良いんだよな?」


「「はい!」」


「うん!」


「はい~!」


「それじゃ、Yesを押していくか」


 そうして俺達は次々にYesを押していくと、いつものように確認ウィンドウが現れ、『魔力循環機構の再稼動申請を受諾すると、魔力循環機構自体が故障及び、破損するまで停止させることができなくなります。本当に魔力循環機構の再稼動申請を受諾しますか? Yes/No 』と出たので、皆に目配せしてから頷き合い、Yesを押した。


 すると再び、機械的な声が脳内に響いてくる。


《ゲスト権限保持者全員から申請受諾を確認》

《これより当機:魔力循環機構の再稼動を始めます》

《魔力循環機構内の魔素の乱れを精査---魔素の乱れを2%検知》

《再稼動許容範囲内であるため、そのまま実行---完了》

《当機は正常に再稼動しました》


 機械的な声が魔力循環機構が正常に稼動したと告げると、部屋の中央にある台座と部屋全体に浮かび上がった基盤の回路のような模様が、さっきまで居た地下水路の天井や壁のように(へこ)んで(みぞ)のようになる。

 更に、昨日見たインスタンスダンジョンのダンジョンコアと繋がった光る根のように、時折スーっと光が基盤の回路のような模様に沿()って流れて行く。


「終わった……んだよね?」


「そのはず、ですが……。一応、クエストの詳細を見てみましょうか」


「ですね~」


 リーゼリアの言葉に従い、クエストの詳細を見てみたところ、クエスト条件が表示されていた場所に、第1クエストクリアの文字が表示され、その隣にあった3つの丸も全て染色されていた。


『キークエスト【復活! 古の遺構】  1/3


・第1クエストクリア!  ●●●


・?????


・?????                                                                                                    』


「ふぅー……よかったぁー。無事クエストクリアできたみたいだねー」


「ほんと心臓に悪いよね。いつもはクエストをクリアすれば、インフォメーションが流れたのに、それが流れないから、何か失敗でもしたのかと思って、(あせ)っちゃったよ」


「まぁそれでも~、3つある内の1つしかまだクリアしてないから~、仕方の無い事かもしれませんよ~?」


「確かに在り得なくはなさそうですね。今後もインフォメーションが流れないことも考えて、こまめにクエストの詳細を見ることにしましょう。とりあえず今は、クエスト達成報告をしにギルドへ戻るとしましょうか」


「だね! さんせーい!」


「残りMPも少ないですし~、早く一休みしたいですね~」


「報酬は汎用魔法だっけ? どんな魔法なのか楽しみだなぁ。ねっ! お兄ちゃん」


「えっ、あ、ああ。そうだな。どんな魔法なんだろうな」


「んん? どうしたのお兄ちゃん、考え事?」


「ああ、少し気になったことがあったんだけど、まだ何も分からない状態だから、何か分かったら話すよ」


「そっか……。分かった、期待せずに待ってるね。それじゃ、行こっか。皆を待たせちゃ悪いだろうしね」


「そうだな。よし! 戻るか」


 その後、俺達はゼラチナス・ダーティウィッパーと戦った広い部屋へと戻るため、移動を開始していった。


 俺は移動の最中、先程気になった魔素の乱れの2%のことを、過去ログやクエストの詳細を見る等して、調べていった。

 そして、ゼラチナス・ダーティウィッパーと戦った広い部屋に戻る直前、クリアした第1クエストの第1条件のモンスター討伐率が98%になっていることを発見した。


 今までのことから状況を整理すると、魔力循環機構を正常に再稼動させるためには、魔力循環機構内にいるモンスターを80%以上倒す=魔素の乱れを20%以下に抑えるという条件が、あったということなのだろう。

 だけど、今に至っては魔力循環機構は正常に再稼動しているので、その条件については特に問題は無い。

 

 問題なのは、モンスターの討伐率が98%……つまり、まだこの地下水路にモンスターが居るということだ。

 HPの方はまだしも、俺やシエル、ネロは再精や賦活があるからMPの心配はそこまでしなくても良いが、他の皆はそうもいかない。

 

 特に、循環の制御球に魔法を打ち込んだアリルとユンファは枯渇(こかつ)寸前だ。

 リーゼリアとナギも十分な戦闘を行える程、残ってはいないだろうから、そんな時にモンスターからの奇襲を受ければ、最悪死に戻りすら在り得てしまう。


 せっかく第1クエストをクリアして、浮かれている時に水を差すのは忍びないが、モンスターからの奇襲を受けて死に戻りするよりかはマシなはずだから、ここは心を鬼にして注意勧告するとしよう。

 さっきアリルと、何か分かったら話すと約束もしてしまったしな。


 そうして俺はゼラチナス・ダーティウィッパーと戦った広い部屋の中央部付近で、皆に気付いたことを話した。


「そうですか~、まだモンスターが~……」


「でも、このボス部屋に来るまで、結構隅々まで(くま)無く探したはずなのに、まだ居たんだね」


「可能性としては、特定エリアに縛られず、自由に行動できる、徘徊(はいかい)型。私達の目を(あざむ)き、完全に隠れていた、隠遁(いんとん)型。特定条件を満たした後、出現するようになる、限定型の3つでしょうか?」


「どのタイプにしても、せっかくここまでやったんだから、絶対に見つけ出して討伐率を100%を目指したいよね?」


「確かに、できればそうしたいところですが、アリルもユンファもMPがほとんどありませんし、私も残り2割弱では、戦力的に厳しいと言わざるを得ないですよ」


「それに、クエストや条件自体はクリアしているんだから、無理に戦うことも無いんじゃないか? もしも無理して全滅なんてことになったら、目も当てられないし、何より時間もそれほどなさそうだしな」


「え? 時間?」


「ギルドでクエストを受けに行く時、リーゼリアが言ってただろ? 夜に用事があるから、18時30分位までなら大丈夫だって」


「…………ああ! そういえば、そうでしたね。色々な事があって、すっかり忘れてましたよ」


「っておい! 本人が忘れるなよ!」


「んー……それでも、できれば全部倒したいかなぁ。なんかこう物が(はさ)まってるっていうか、汚れが少しだけ残ってて、気持ち悪いんだよねぇ」


「あぁ~、何となく分かる気がします~」


「私もできれば全部綺麗にして行きたいなぁ。終始一貫の精神だよ! うん!」


「っということですけど、どうしましょうか、リオンさん」


「そうだなぁ……。それなら、折衷案(せっちゅうあん)を出して、妥協(だきょう)するしかないんじゃないか?」


「折衷案、ですか? 例えばどんな?」


「う~ん。今の時間は午後5時13分だから、リーゼリアがログアウトするまで後、およそ77分ある。地下水路の入り口から冒険者ギルドまでの道のりは歩いて15分、走れば10分位で着くから、受付で少し待つことも考え、報酬を受け取るまで7分とする。残りは60分だが、対象のモンスターが見つかった場合、戦闘する時間も考慮(こうりょ)するとして、探索しながらの移動に使える時間は2~30分といったところだな」


「えーっと……つまり、どういうことなんですか?」


「つまり、探索する時間を決めて行動して、見つからなかったら、すっぱり諦めて、地下水路を出る。もしも見つかったら、短期決戦で一気に攻めて、討伐する。ってことでどうだろう?」


「なるほど、分かり易くて良いですね。私はその案に乗ります」


「ボクもそれで良いよ」


「まぁ、リアちゃんだけ除け者にする訳にもいかないし、私もお兄ちゃんの案で良いよ」


「私も~、賛成です~」


「満場一致か。それじゃ、時間も押しているから、早速出発しようか」


 そうして俺達はまだ残っているモンスターを探しつつ移動して行った。


 しかし、通路や踊り場を幾つも回り、念入りに探してみたが、一向にモンスターの影や形はもちろん、気配すらも(とら)えられずに、推定中間地点のドーム状の空間付近まで戻って来てしまった。


 推定中間地点のドーム状の空間まであと少しという時、ふと気配感知に引っ掛かる気配があった。

 ナギもその気配に感付いたようで、パーティチャットで、静止の言葉を放つ。


『ストップ! 居たよ。中間地点の周囲にあった水中を泳いでるみたいだね』


『おおっ! やったね、ナギちゃん。それで、お兄ちゃん。残り時間はどの位あるの?』


『ん? そうだな、残りの地下水路を直行で戻るとして、戦闘に使える時間は最大で30分位かな?』


『それならMP量が残り少なくてもどうにかなるかもしれませんね』


『でも~、モンスターは水中を泳いでいるんですよね~? どうやって~、攻撃を当てるんですか~?』


『あ……。そう言えばそうだね。どうしよう?』


『モンスターが出て来易いように、囮をするとか?』


『そうすると誰が囮になるかですが、万全の状態で無い今はあまり無茶しない方が良いと思いますよ?』


『ですね~。モンスターは倒したいですけど~、それで誰かが犠牲(ぎせい)になるのは~、ダメだと思いますよ~』


『だな。まぁ、モンスターが自分で上がってくるまで、待つしかないな』


『むぅ~。すぐ近くに居るっていうのに、手が出せないなんて、生殺しだよ~』


『確かに、時間を掛ければ倒せる可能性もありますが、時間が短ければ残りMPが少ない状態では、ダメージ量が足りなくなりそうですね』


『……はぁ、仕方無い。MPを微量回復できるアイテムを提供するよ。4人で食べればすぐ無くなりそうだけど、使わずにいるよりかはマシかな』


 そうパーティチャットで話つつ、俺は装備スキルを入れ変え、虚空庫から木製の皿と串焼きを次々に取り出していき、アリル達に渡していった。


『ちょっ! お兄ちゃん? MP回復アイテムってどういう事? そんなのまだ出回ってないよ?! しかも製作者お兄ちゃんだし!』


『そうなのか? でも、俺のフレンドも俺が作ったアイテムとは別物だけど、普通にMP回復アイテム持ってたから、出回って無いだけなんじゃないか?』


 クレアさんが持ってたのはハーブティだったけど、確かにMP回復効果が付いていたから、間違い無いはずだ。


『うぅ? そう、なのかな? でも、こんな序盤でMP回復アイテムを製作するなんて、やっぱりお兄ちゃんは目の付け所が違うんだね』


『ま、まぁな。それより、早く食べてMP回復をしたらどうだ? モンスターが何時水から上がるか分からないんだし、早目早目に行動して(そな)えて置いた方が良いだろう。あーそれと、肉ばっかじゃ(のど)(かわ)くから、(ライフウォーター)も出しとくな』


『わぁー! ありがとう、お兄ちゃん!』


『ごちになります!』


『リオンさん、助かります』


『ご馳走様です~♪』

 

『それじゃ俺は向こうでモンスターの様子を(うかが)っているから、動きがあったら知らせるな。時間があまり無いからといって、あんまり焦って食べなくても良いからな。喉に()まらせて、死に戻りしたんじゃ、笑えないからな』

 

『うん、了ー解だよ!』


『はーい! 分かってますって』

 

 俺はやや口早にしゃべると、そそくさとモンスターの様子を見に、推定中間地点のドーム状の部屋の入り口付近へと進んで行った。


 い、言えない。

 香草を使ったら、偶然MP回復効果が付いただなんてこと。

 

 アリル達は戦闘の疲れからか、俺の作った串焼きをよく()んで味わっているようだから、多少俺の言動が怪しくてもどうやら気付いてはいないようだ。 

 まぁ、ばれたところでどうにかなるなんてことは無いだろうが、ばれなきゃばれない方が何となく良い気がするから、このまま(だま)って置くことにしよう。


 そうして、モンスターの動向に気を付けながらしばらく待つと、泳ぎ疲れたのか、水中を泳いでいたモンスターが水から上がり、腕時計のベルトを伸ばしたような形の通路の中央部にその姿を見せる。


 モンスターの全長はおよそ3m(尻尾は含まない)、体高は1m程で、外見は青黒い外皮を持った蜥蜴(とかげ)といったところだろうか。

 よく見ると腹側の外皮はミルク色をしており、ぬらぬらと外壁から出る光を反射し、正直気持ちの良いものではなかった。

 よく見るんじゃなかったな。


 そんな風に少し後悔(こうかい)しつつ、識別を使いそのモンスターを見てみた。


ディザルヴニュート:Lv18・属性:酸・水・耐性:水・魔法・弱点:斬・火




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