Locus 86
仕事に忙殺され、少し過労で倒れていたら、投稿が遅れました。
すみません。
では、どうぞ。
……14体か。
カインさん達を助けに入った時より、少し多いな。
まぁでも、こちらもあの時に比べ、人数(?)も7人と多いから、たぶん大丈夫だろう。
……ん? 7人?
あれ? 7人ってことは、共闘ペナルティってどうなるんだ?
今回のクエストでは、上限人数が10人と決まっているタイプみたいだけど、まさかクエスト毎によって、共闘ペナルティを解除できる仕組みにでもなっている……とか?
んー……考えてても良く分からないし、備えあれば憂い無しとも言うし、ここは素直に聞いてみるとしよう。
『なぁ、皆。少し気になった事があるんだが、良いか?』
『なぁに、お兄ちゃん?』
『あ、はい。何でしょう?』
『何ですか? リオンさん』
『気になった事~、ですか~?』
『ああ。今俺達ってさ、俺・アリル・リーゼリア・ナギ・ユンファ・ネロ・シエルと7人(?)居て、パーティはシエルを除くメンバーだけで組んでいる状態なんだけど……今の状態の時って、共闘ペナルティとかはどうなるのかなって、思ってさ』
『ああー……』
『すっかり忘れてましたね。共闘ペナルティのこと』
『リオンさん、ナイス気が付き!』
『ですね~。危ないところでした~』
『その反応からして、やっぱり共闘ペナルティはあるんだな。それで、どうするんだ? 1人、パーティから溢れるなら、シエルかネロに装飾化か宿紋化してもらうけど?』
『それには及びませんよ。第一、クエストの上限人数は10人になっているのに、6人1パーティしか組めないなんて、おかしいと思いませんか?』
『まぁ、確かに。もしかして、6人1パーティしかって言う口振りから考えるに、ちょっと変だけど、2パーティ以上でパーティが組めたりする、のか?』
『ピンポン! ピンポン! お兄ちゃん、大・正・解!! 2人以上のパーティ同士って制限はあるけど、同盟を組めば、共闘ペナルティは発生しなくなるよ!』
『へー、そうなのか』
『でも~、パーティ申請と一緒で~、一定範囲内でないと~、アライアンスも組めませんから~、1度戻って来てもらう必要がありますけどね~』
『それなら、こうやってチャットで会話できないシエルちゃんやネロちゃんとも、情報を共有しなきゃだし、丁度良いんじゃないかな?』
『だな。それで、どうパーティを2つに分けるんだ?』
『召喚獣や調教獣は、召喚主や調教主が居るパーティに自動で組み込まれるから、私達が今組んでいるパーティから外れて、新しくパーティを組み直せば良いと思うよ』
『そうか、分かった。それじゃナギの偵察が終わり次第、そっちに戻るとするよ』
『はーい、気を付けて来てね』
『ああ、分かってる』
それから少し経ち、ナギから敵情視察が終わったことを告げられ、モンスターが居る踊り場に注意を向けつつ、ゆっくりと後退してアリル達と合流した。
そして先程話し合った通り、一旦アリル達がパーティを抜け、新たにパーティを1つ組み、アライアンス申請を経て、無事アライアンスを組むことができた。
因みに、2人以上のパーティ同士という条件はあれど、最大で12パーティまでパーティ同士を組むことができ、パーティの数によって、その呼び名が変わるそうだ。
2人以上6人以下の1組 ⇒ 一行
2~3パーティ ⇒ 同盟
4~6パーティ ⇒ 急襲部隊
7~12パーティ ⇒ 連合
「それでは、ナギ。モンスターの情報をお願いできますか?」
「ほいほい、了解だよ! モンスターのレベルは15~17で、全部で14体居たよ。内訳は、ダーティゼライスが7体、ポイズンラットが4体、アーミーフライが3体(?)だったよ。」
「なるほど~、こちらの人数の丁度倍ですね~」
「それで、ナギちゃん。識別結果は?」
「もち! 分かってるよ。ダーティゼライスの属性は無し、耐性は毒と水属性、弱点は火属性だね。ポイズンラットの属性も無しで、耐性は麻痺、弱点は火と斬属性。アーミーフライの属性は風属性で、耐性は物理全般、弱点は火と風属性だったよ。後、外見だけどダーティゼライスは通常のゼライスの色違いで、ポイズンラットは灰と黒の斑模様がある赤い目の鼠だから、見ればすぐに分かると思うよ。アーミーフライだけど名前の通り、複数のモンスターが集合して1体ってカウントするタイプのモンスターみたいだったね。見た目は黒っぽい塊が空中を漂ってる感じかな?」
「気を付けるべきは、ダーティゼライスの毒とポイズンラットの麻痺かな? 大体今までの経験から、状態異常の耐性持ちのモンスターは、状態異常にする攻撃手段を持っていたりするからね」
「それとユンファの場合は、水魔法による攻撃もでしょうか? ダーティゼライスの耐性に水属性があるようですし、MP回復手段が無い現状、効果が薄い攻撃は控えた方が得策だと思いますしね」
「ですね~」
「そうすると……最初は範囲魔法で奇襲を掛けて、モンスターが怯んでいる隙に接敵して、各個撃破って流れに持ち込むのがベストかな?」
「だね。できれば最初の奇襲で、残りHPの少ないモンスターを狙って倒せれば尚良いけど、欲張って無駄にダメージもらってもアレだし、無理の無い範囲で追撃をしてもらえると良いかな」
「最初の奇襲で優先的に狙うなら、やはり物理耐性がある、アーミーフライでしょうか? 弱点属性も丁度風ですし、うまくすれば何もさせずに倒すこともできそうですしね。ただ問題なのが、アーミーフライがどの辺りに居たかですが……どうでしたか?」
「さっき見た限りでの位置なら、俺達が居る通路から近い順に、ダーティゼライス、ポイズンラット、アーミーフライだったな。感じとしては通路を中心に同心円状に広がっている感じかな」
「なるほど、分かりました。それでは、作戦を詰めていきましょう。まず、踊り場に入る前に範囲魔法による奇襲を掛けます。この時の優先目標は、物理耐性のあるアーミーフライ。弱点が風属性であることから、アリルの風魔法でアーミーフライを集めつつ、シエルちゃんとネロちゃんの範囲魔法で集まったモンスターを巻き込むようにして攻撃。この時、アリルが魔法を放って、ある程度モンスターが集まってから範囲魔法を使ってもらえると助かりますね」
「了解だよ!」
『はーい!』
シエルは元気良く手を上げ、了承の意を伝える。
「キュウ!」
ネロもシエルを真似するように、頷きつつも右前足を上げ、返事を返す。
シエルとネロの仕草を見て、アリル達がなにやらほっこりしていると、シエルが何かに気付いたように、疑問の声を上げる。
『……あれ? リオンは、いっしょにやらないの~? リオンもまほう、つかえるよね?』
シエルはリーゼリアに返事をした格好のまま、小首を傾げ、俺にそんな質問をぶつけてくる。
『ああ。確かに使えるけど、まだ1度も範囲魔法を使ったことが無いから、射程……範囲魔法がどこまで届くかが分からないんだよ。こういう奇襲時には、少しでもダメージが多い方が良いのは分かるけど、もしも放った魔法が届かなかったら、悲しくなるだろうし、魔力も無駄にしちゃうから、不確定なことはしない方が良いんだよ。まぁ、牽制位はできるだろうけど、今はする必要が無いからね』
『そっかー……うん。たしかに、とどくかわからないまほうは、つかわないほうがよさそうだよね。まりょくももったいないし!』
『分かってくれて、何よりだよ。ああそれと、アーミーフライは小さいモンスターが集まっているモンスターみたいだから、奇襲時に使う範囲魔法は、レイビームよりライトバーストの方が、効果的だと思うぞ』
『そうなんだー。うん、わかったー!』
そうやってシエルと会話をしていると、シエルの動作が気になったのか、アリルが声を掛けてきた。
「お兄ちゃん、もしかしてシエルちゃんと話でもしてた?」
「ああ、よく分かったな。奇襲時に使う範囲魔法のことで少しな」
「ふ~ん? いいなぁ。私もシエルちゃんとお話したいなぁ」
「ははっ。まぁ、こればっかりは仕方無いさ。その内シエルが肉声を出せるようになるか、テレパシーみたいなスキルを覚えるようになるよう、祈っててくれよ」
そうやってアリルと話してると、シエルとネロの可愛い仕草に当てられたリーゼリアが、正気に戻った。
「こほん。それでは続けますね。範囲魔法の後、私とユンファはダーティゼライスと戦いますので、リオンさんとナギは、ポイズンラットの相手をお願いします」
「分かった」
「ういうい!」
「は~い~」
「その後は、各々臨機応変に対応していって下さい。それと無いとは思いますが、後衛組みは乱戦に入ったら範囲魔法での攻撃は控えて下さいね。同士討ちとか、本当に洒落になりませんから、お願いしますよ?」
そうして大まかな作戦を立てた後、俺達は先程偵察した踊り場の手前まで行き、行動を開始していった。
「それじゃ、いくよ? ―――グラビティボルテックス!」
「「「ブブブッ?!」」」
「「「「ヂッ?!」」」」
「「「「「「「ッ?!」」」」」」」
アリルが宝玉が嵌った方の杖の先端をモンスター達に向けながらそう唱えると、モンスターが居る中心からやや後方に、突如として逆巻く竜巻が発生した。
竜巻は半径3m程もあり、急速に流れる気流によりモンスター達を切り裂きながら、その竜巻の中心へと引き寄せていく。
竜巻の発生している範囲に居ないモンスター達も、竜巻の中心へと吸い寄せられまいと必死に踏ん張っているのか、その身を低くし踊り場の床から離れないようにしている。
「今だよ! シエルちゃん、ネロちゃん!」
アリルがシエルとネロにそう合図を出すと、それに答えるようにシエルとネロが範囲魔法を放つ。
『ライトバースト!』
「ホオォォォ!」
「「ブブッ!!」」
「「「「ヂヂャーッ!!」」」」
「「ッ!!」」
シエルがそう唱えると、拳大の光球がグラビティボルテックスによって集められたモンスター達の中心に現れる。
そして次の瞬間、眩い光の爆発が発せられ、モンスター達を強烈な熱光線で焼き焦がす。
更にネロから放出された薄黒い波紋のような影の波動を、踏ん張って居たモンスター諸共を覆うようかのように拡散させ、浴びせ掛けていく。
範囲魔法による連続攻撃によって巻き上がった水煙が消えるとそこには、いくつかのモンスターが光の粒子となって消えていくところが見えた。
残ったモンスターのHPバーを確認してみると、通路に近くアリルのグラビティボルテックスに巻き込まれなかったダーティゼライスA・E・Gが残り7割、ダーティゼライスDが残り7割5分、ダーティゼライスFが残り8割だった。
アリルのグラビティボルテックスに巻き込まれたモンスターの方はかなりひどく、ポイズンラットB・Cは残り4割強、アーミーフライAに至っては残り1割を切っており、これが本当の虫の息というやつを体現していた。
これなら、そんなに苦戦せずに倒せそうかな?
やっぱり先制攻撃で連続してダメージを与えられると、後の戦闘が楽になるよなぁ。
っとそう考えていると、リーゼリアから合図が掛かる。
「それでは、手筈通りにお願いします!」
「分かった。それじゃ俺は、ポイズンラットBをやるよ」
「ほいさ! ならボクは、ポイズンラットCですね」
「任されました~」
俺はリーゼリアにそう返事をしつつ、素早くアーツを使う。
「ハイドストーク」
そしてポイズンラットBを目指して、警戒しているダーティゼライス等を無視し、一気に駆け抜け接敵していく。
「「「「「ッ?!」」」」」
気休め程度と思って使ったアーツだったが、ハイドストークによって反応が遅れ、ダーティゼライスからの行動はなかった。
「逃がさないよ! ―――エアハンマー!」
「ブブチュ?!」
無事ダーティゼライスの間を抜ける最中そんなアリルの声が聞こえ、ポイズンラットBの更に奥に居たアーミーフライAが空気の槌に押し潰され、光の粒子になっていったのが見えた。
これは俺も負けてられないな。
そう思いながら、アドヴァンスドソードを抜剣してポイズンラットBに駆け寄り、攻撃をし掛かる。
「ヂヂュッ!」
俺が近付いていくと、ポイズンラットBはその場で体を横にターンさせ、鼠特有の長い尻尾を鞭のようにしならせ、突っ込んでいく俺に合わせてカウンターのように振るう。
そのポイズンラットBの迎撃行動が視界に入ると、見切りのスキルによってポイズンラットBの攻撃の到達予測線が、赤いラインとして視覚化される。
俺はその足払いのような攻撃の到達予測線の手前で急停止し、盛大にポイズンラットBが空振ったところで、ガラ空きになっている背後から首筋を狙い、×の字に斬り付ける。
「ダブルスラッシュ!」
「ヂュヂュウッ!」
ポイズンラットBは悲鳴のような声を上げ、その身を仰け反らせる。
HPバーを確認してみると、流石に弱点属性での攻撃とレベル差があったためか、ポイズンラットBのHPバー残り1割を切っていた。
その隙を逃さないよう追撃を仕掛けようとするが、俺の行動にすぐ様気付き、俺を近づけさせないように再度その場でターンし、尻尾の鞭を振るってくる。
それはさっきも見たんだよな。
そう思いつつ、俺は即座に後ろに飛び退きつつ、アドヴァンスソードを真一文字に振り抜きながら、アーツを使う。
「リープスラッシュ!」
「ヂューーー!」
振り抜きながら放たれた青白い斬撃は、狙い違わず、まるでポイズンラットBに吸い込まれるように飛んで行き、残っていたHPを削り切り、光の粒子へと変えた。
特に問題無く倒せたな。
麻痺にする状態異常攻撃が来るかと思ったけど、テンパってたせいか動きが単調で、思いの他対処が簡単だったというのも大きいかったかな。
さて、俺に割り当てられたモンスターは倒しちゃったけど、他の皆はどうしてるかな?
そう考えつつ、周囲を見回してみると、ナギが相手をしてるはずのポイズンラットCと目が合った。
「は?」
「ヂャーーー!」
ポイズンラットCは、仲間?が倒されたことに怒ったのか、俺を睨み付けながら体毛を膨張させ、威嚇している。
てか、こいつの相手はナギだろうが。
いったい何処に行ったんだよ!
そう思いながら俺はアドヴァンスドソードを構え、迎撃の態勢を取ると、ポイズンラットCの背後に忍び寄ったナギの姿が目に映った。
「ハイドアタック」
「スラッシュバイト!」
「ヂュッ?!」
背後から音も無く忍び寄り、2度に渡る素早い斬撃により、ポイズンラットCの首を切り裂く。
正確無慈悲に切り裂かれたポイズンラットCは、何が起こったのか分からないような声を上げ、その身を光の粒子に変えていった。
「あ、リオンさん囮みたいにして、すみませんでした」
「いや、実害があった訳じゃないし、良いけど。ナギはそういう戦い方をするんだな。所謂暗殺スタイルってやつか?」
「そうなんですよ。対象に音も無く忍び寄り、物陰や背後からブスリってな感じです! この見つかるか見つからないかのスリルも良いですけど、うまく対象を倒せた時なんかは、すっごく気持ち良いんですよ!」
ナギはそんな物騒なことを言いつつ、ガッツポーズをするように力説してくる。
「そ、そうなのか?」
「はい! って、あ。そろそろあっちも終わりみたいですね」
そう言われナギが見ている方を見ると、確かに残ったダーティゼライス達を丁度倒し切るところだった。
リーゼリアとユンファは連携して、カットラスとパルチザンの腹でダーティゼライスを次々に殴り付け、その動きの一切を封じ切っている。
「後衛組み! 今ですよ!」
「リアちゃん、ユンファちゃんナイス足止め! いくよ! ―――リリース・エアカッター!」
『ライトアロー!』
「ホオォォォー!」
リーゼリアとユンファの打撃により動きを一時的に封じられたダーティゼライスA・D・F・E・Gに20以上もある風の刃と、10本の光の矢、それに10本の影の剣身が殺到して行き、残っていたHPを一気に削り取り、光の粒子へと変えていった。
「ふぅ! 終わった終わったー!」
「お疲れ様、やはり人数が多いと、戦闘も早いですね」
「ですね~。シエルちゃんもネロちゃんもお疲れ様です~」
『おつかれさまー!』
「ホオォー、ホオォー!」
どうやら初戦は特にコレといったアクシデントも無く、無事に終わったようだ。
「あっちも終わったみたいですね」
「だな。それじゃ俺達もアリル達の方に行って、無事の報告をしようか」
「はい!」
そうして、俺とナギはアリル達と合流し、その後踊り場に通じていた別の通路を通って行き、2つのクエストクリアに向け、行動を開始して行った。




