表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第4章  夢現フィールドと再起の遺構
95/123

Locus 85

 ……ん?

 何かこのクエスト、汎用魔法を習得するにしては、条件が厳しくないか?

 いくら、魔法を2つ入手できるからって、汎用魔法は戦闘用ではないみたいだし、以前受けた無属性魔法を習得するための限定クエストだって、今回みたいに無操作状態で一定時間経過すると、クエストが自然消滅するってことはなかったはずだ。


 てか、せっかくクエストを受けに来たのに、自然消滅したらダメだろ。

 いや、待てよ?

 発生ってあるから、もしかしてこのクエストって、突発イベントという可能性もあるんじゃ……。


 そこまで考えると、先程から何やらごそごそしていた、受付の人から声を掛けられる。


「それでは、こちらが依頼書になります。ご確認下さい」


 そう言われ、手渡された紙を見ると、さっき見たクエストとは別の内容だった。


『依頼名:地下水路に蔓延(はびこ)るモンスターの駆除(くじょ)


依頼内容:

最近、自浄(じじょう)作用があるはずの水路から流れる水が汚れて困っています。

この水路に流れる水は、ディパート全体で使われる水なので、このままでは街全体が干上がるのも時間の問題です。

調査員からの報告によると、原因はダーティゼライスであるとのこと。

(すみ)やかにコレを排除し、地下水路に流れる水の汚染を食い止めて下さい。

また、地下水路の水を汚染しているダーティゼライスを全て駆除できれば、自浄作用により水路の水も浄化されるはずです。


依頼目的:

地下水路に出没(しゅつぼつ)するダーティゼライスの全駆除。


依頼報酬:

汎用魔法習得結晶・火  汎用魔法習得結晶・水  』

      

 やっぱりこっちは、突発イベントみたいだな。

 制限時間もあることだし、すぐに受けたいところだけど、今はパーティを組んでいるから、俺の独断(どくだん)で決めちゃダメだよな。

 時間の方は……後4分弱あるし、一応伺(いちおううかが)いは立てて置くことにしよう。


 そう思い、俺は依頼書を熟読(じゅくどく)するフリをしつつ、パーティチャットでアリル達に話し掛けた。


『なぁ皆、ちょっといいか?』


『何々ー、どしたのー?』


『どうかしましたか?』


『うん、大丈夫ですよ』


『は~い~』


『実は、汎用魔法を習得するクエストと一緒に、キークエストっていう突発イベントが発生したみたいなんだ。普段だったらすぐに受けるんだけど、今はパーティを組んでるし、一応伺いは立てた方が良いと思ってさ。それでこのキークエストなんだが、無操作状態でほっといても自然消滅するタイプらしいから、受けるかどうかだけ答えてくれるか?』


『え?! そうなの? だったら、お兄ちゃんすぐに受けて!』


『だね! ゲーマーだったら、そんなクエスト()がすなんて、ありえないもんね!』


『ですね。リオンさん、まだ自然消滅してないなら、受けて下さい』


『ですです~♪ リオンさん~、よろしくお願いします~』


『分かった。それじゃ受けとくな』


 そう皆に返事をしつつ、俺はYesを押してキークエストを受注し、それと同時に依頼書の熟読のフリも止めた。


「確認しました。それで、この地下水路って何処にあるんでしょうか?」


「それは当ギルドで用意した地図がありますので、コレを見て頂ければ分かると思います。それから、こちらが地下水路に入るための鍵になります。鍵は、クエスト完了の報告と一緒に返却して下さい。また、地下水路に下りる場合は、入った扉の鍵を内側から閉めるのを忘れずにお願いします。間違って入った人が、怪我でもすると大変ですから」


「はい、分かりました」


 そう言って、俺は受付の人から地下水路への入り口が描かれた地図と、2本の鍵を受け取った。


「それでは、吉報(きっぽう)をお待ちしております。いってらっしゃいませ」


「はい、ありがとうございます! いってきます」


 そうして俺は2つのクエストを受注し、掲示板付近に居たアリル達と合流して、ギルドを出て行った。




 ◇◇◇



 ギルドから出てすぐ、俺達は通行人の邪魔にならない所へ集まり、ギルドから渡された地図を見てみると、街のマップデータ上に黄色い光点が灯った。

 おそらくこの黄色い光点の場所が、地下水路への入り口なのだろう。

 そして、依頼書をまだ見ていないアリル達に渡しながら、俺はふと疑問に思ったことを口にする。

 

「そういえば、キークエストを受けたのはいいけど。キークエストの詳しい内容とか分からないんだよな、どうしよう?」


「ん? あぁ、そのことか。大丈夫だよ、お兄ちゃん! クエストを受けると、メニュー画面にクエストタブが追加されるから、そこを見れば、受注したクエストの詳細(しょうさい)が分かるようになってるよ♪」


「そうなのか? 分かった。それじゃ見てみるよ。ありがとな、アリル」


 そうアリルに礼を言い、俺は早速言われた通りメニュー画面を出し、追加されているクエストタブを見付け、受注したキークエストの詳細を見ていった。


『キークエスト【復活! 古の遺構】  0/3


・地下水路に出没するモンスターを8割以上倒せ  0/100%  ○○○


・?????


・?????                                                           』


 どうやらこのキークエストは、汎用魔法を習得するためのクエストと連動しているようだな。

 その証拠(しょうこ)に、今受けているクエストの場所の地下水路のことが出ているし、発生したのも汎用魔法を習得するためのクエストを受ける意志表示をした時だったから、たぶん間違いないだろう。

 それと、条件達成度の後ろに付いている○は恐らく、地下水路で達成できるキークエストの条件の総数で、達成していくと○が染色されていったりするんじゃないかと思う。

 

 そう考えながらクエストの詳細を見ていると、渡した依頼書を読み終わったらしく、アリル達が声を掛けてくる。


「お兄ちゃん、お待たせ」


「お待たせしました」


「いや、クエストの詳細を見てたから、大丈夫だぞ。それより……このキークエストってどんなクエストなのかアリル達は知ってるか?」


 俺がそう問い掛けると、アリル達は互いに顔を見合わせ、ナギとユンファは首を横に振り、アリルとリーゼリアは首肯する。

 そして、俺の質問の意図を確かめるように、アリルが声を上げる。


「どんなって……クエストの詳細がって意味じゃないんだよね?」


「ああ」


「う~ん、何て言えばいいかなぁ?」


「そうですねぇ……()いて言うなら、何かを解放するための前段階のクエストでしょうか?」


「前段階?」


「んと、このゲームでのキークエストはね、何段階かに分かれた条件の最初の1つなんだよ。だけどキークエスト自体は完全に独立してるから、最初の1つのキークエストをクリアした後、キークエストに関わってない人が2つ目以降の条件を満たすことができるクエストなの」


「へー、変わったクエストもあったもんだな。あれ? そうすると報酬とかはどうなるんだ?」


「報酬は、キークエストをクリアした時点で入手できますが、2つ目以降全ての条件が満たされないと、使用することができないですね」


「でもでも、最初の1つのキークエストさえクリアしていれば、その後の条件かクエストを誰かがクリアしてくれるかもしれないし、自分達でクリアすることもできるようになるんだから、全く意味が無い訳じゃ無いよ?」


「それに、こういった突発クエストに出てくるモンスターは手強いものが多いですし、称号も入手できる可能性が高いですから、報酬のことを抜きにしても、十分やる価値はあると思いますよ」


「おおー! それは、やりがいがあるね♪」


「ですね~。それに~、手強いモンスターなら~、良い素材何かも落としてくれそうですし~、今からが楽しみです~♪」


「だな。よし! それじゃそろそろ移動して行こうか。それとも何か足りない消耗品とかあるなら、今の内に買い足すこともできるけど……どうする?」


「私は大丈夫だよ、お兄ちゃん」


「私も特に足りないものはありませんね」


「ボクもないよー!」


「私も~、大丈夫ですよ~」


「んじゃ、行こうか」


 そうして、俺達はマップデータ上に灯る黄色い光点を目指し、向かって行った。




 ◇◇◇




 黄色い光点を目印にしばらく進んでいくと、幅6~7m、奥行き5m程の小さい広場に到着した。

 黄色い光点と重なる場所を見てみると、そこには頑丈(がんじょう)そうな金属で出来た倉庫があった。


「えっと、ここ……だよね?」


「ああ、見た目は頑丈そうな倉庫だけどな」


「たぶん、中に地下水路への入り口があるのではないでしょうか?重要な施設なら、この警戒(けいかい)ようにも、納得できますし」


「だね! それに、行ってみればすぐに分かるんだし、早く中に入ってみようよ!」


「ナギちゃん~、もうちょっと落ち着いて~。無いとは思うけど~、もしも待ち伏せされてたりしたら~、危ないよ~」


「あーそだね。ごめん、何か気が()いちゃったみたい」


「まぁ、その気持ちは分かるよ。俺もこんな所に来るの初めてだし、こう……何と無くわくわくするよな」


「そうそう! 流石(さすが)リオンさん、良く分かってるね!」


「むぅ……お兄ちゃんとナギちゃんが通じ合ってる」


「あらまぁ~♪」


「ほらほら、アリルも()ねないの」


 そうやって多少緊張感の無いやり取りをした後、俺達は先程ギルドで渡された鍵を使い、倉庫の扉を開けた。

 倉庫の中は薄暗くガランとしており、特にコレといった物は置いていなかったが、倉庫の中央と思しき床に、地下へと続く階段があるのが見えた。

 俺達は倉庫の中へと入って行き、ギルドの受付で言われた通り倉庫の内側から鍵を閉め、人目が無くなったところでシエルを装飾化から解き、そして(くだん)の階段へと進んで行く。


 倉庫の入り口を閉めたことで暗闇が一段と濃くなったが、シエル自身が光っているので、若干暗いが移動に支障(ししょう)がでない程度の光量に(とど)まった。

 件の階段は人が2人ギリギリ並んで降りられる位の幅で、少し降りた所には鉄格子(てつごうし)(はま)った金属製の扉があり、鉄格子の隙間(すきま)から(わず)かな光が()れ出しているのが見えた。


「どうやら、あの扉の向こうが地下水路へと降りられる場所っぽいけど、やっぱり隊列とか組んだ方が良いのか?」


「そうですね。その方がその時その時に、素早く対応できるでしょうし」


「問題はどう組むかだけど……。お兄ちゃんはパーティで戦う時は、どの辺りのポジションなの? やっぱり前衛?」


「だな、パーティを組む時は大体前衛で、たまに遊撃。シエルは後衛よりの遊撃で、ネロは場合によりけりで戦う場所が変わるから、遊撃になるな」


「ふむふむ、なるほど。それでしたら、移動中の隊列はリオンさんと斥候系(せっこうけい)のナギが前衛、私とユンファが中衛で、アリルとシエルちゃんが後衛、ネロちゃんが遊撃でしょうか」


「だね。それで、接敵(せってき)したらボクとリアが入れ替わって、戦闘かな?」


「そうなりますね~。それと~、もしも広い場所で戦うなら~、前衛をリオンさんとリアちゃんがやって~、ナギちゃんが遊撃をすると良いと思いますよ~」


「うん、確かに……。それじゃ大体決まったところで、各自の戦闘準備が出来次第、地下水路に下りて行こうか」


 そうして、アリル達は武装具を次々実体化させ装備していき、俺はスキルの入れ替えを行っていった。


 因みに各自の武器は、アリルが1m弱の杖で、全体的に薄緑色をしている。

 杖の先端には赤い宝玉を嵌め込まれ、鈍器として使うためか、宝玉の縦の周囲を銀色の金属で補強し、宝玉が付いていない方の先端は鋭く(とが)っているという、殺意の高い代物だ。

 サブウェポンは短剣のようで、それを腰に差している。


 リーゼリアの武器は、よく海賊(かいぞく)なんかが使っている、やや湾曲(わんきょく)した刃とナックルガードが付いた、カットラスを2本背負っており、サブウェポンと思しきショートソードを腰に下げている。


 ナギの武器は、()(にぎ)りの部分が完全に分かれた、独特な形状をした大型の短剣のジャマダハルで、それを右手に装備している。

 改造(カスタム)されているのか、手の甲の部分には小さい盾のようなものが付いており、見ようによっては、手甲の先から刃が出ているようにも見える。

 サブウェポンは短剣で、それを後ろ側の腰に差している。


 ユンファの武器は、穂先(ほさき)の左右に突起が付いた槍のパルチザンを持っている。

 全長がおよそ1.5m、穂先が30cm程もあり、穂先の刃が槍のように鋭く、グレイブのように重圧なので、突くのにも斬るのにも優れたデザインをしているのが特徴だ。

 腰には、サブウェポンの短剣を下げている。


 そして準備が整うと、先程決めた隊列を組んで進み、鉄格子が嵌った扉を開けて、光が差す階下へと降りて行った。

 しばらく階段を下りていくと階段が終わり、そこにはおよそ幅5m、高さ3m程の通路と、床・壁・天井にある基盤の回路のような形をした幾つもの(みぞ)が、蛍火(ほたるび)のような淡い光を発していた。

 床の両端には細い水路が引かれており、その水路を流れている水は依頼書にあったように、黒っぽく(にご)っているのが確認できた。


「水、濁ってるね」


「それに何だか、少し物が腐ったような()えた臭いがする……ような?」


「確かに。でも、まぁ我慢(がまん)できない程でも無いかな?」


「ですね!」


「せっかく綺麗な風景?なのに~、残念ですね~」


「それじゃ、ここからは気を引き締めて行きますよ。ナギ、反応はありますか?」


「んー……もう少し行った先に、固まってるみたいだね」


「汎用魔法のクエストは、ダーティゼライスの全駆除で、キークエストの方がこの地下水路にいるモンスターの8割を倒すことだったよな」


「うん、そうだね。でも、8割とか中途半端(ちゅうとはんぱ)だし、全滅させる気でいけばいいんじゃないかな?」


「ですね~。せっかくですし~、汚物(モンスター)はキレイに排除(はいじょ)しましょう~。ヘタに残して~、また問題を起こされても~、嫌ですからね~」


「それもそうだな。よし!それじゃ、その方向で駆除して行こうか。目標は、地下水路内に居るモンスターの全滅な」


「うん♪」


「はい!」


「はーい!」


「了解です~!」


 そうして、俺達は隊列を組んだまま進み、ナギが言っていた辺りに向かって行った。

 地下水路の道?をそのまま移動して行くと、左に折れた曲がり角にぶつかり、気配察知を使ってみれば、この曲がり角を少し行った先に結構な数の反応があった。

 ナギもその反応に気付いたようで、そのことを俺達に知らせてくる。

 

 その後、ナギが偵察(ていさつ)、俺がナギの護衛(ごえい)として付いて先行して行き、モンスターの反応があった場所へと到着した。

 モンスターの反応があった場所は、どうやら(おど)り場のようで、幅10m弱、奥行き15m弱、高さが5m弱という直方体の空間が広がっていた。


 水路は長方形を十字に切るように流れており、更に長方形の床の周りをぐるりと囲むようにも水路があった。

 水路は先程通っていた通路にあったものよりも幅があり、戦闘中に足を取られないよう、注意する必要がありそうだな。


 そう思いつつ、俺は踊り場にいるモンスターへと、視線を走らせていく。

 どうやら、ここにいるモンスターは全部で3種類のようだ。


 この踊り場にいるモンスターで最も多く、ヘドロの様な色合いのジェルに、緑色をした核があるのは恐らく、今回のクエストのターゲットであるダーティゼライスだろう。


 そんなダーティゼライスの周囲にまばらに居るのは、全長1m程もある、灰と黒の斑模様(まだらもよう)が付いた(ねずみ)だ。

 鼠の目は赤く、水路から反射する光と相まって、不気味に光っている。


 そして、それ等の更に外側にブブブブブブっと羽音を響かせ、滞空(たいくう)している3つの黒っぽい塊が存在していた。

 どんなモンスターなのかよく分からないが、見た目で一番近いものは、蚊柱(かばしら)位……かな?


 そう考えつつ、俺は踊り場全体が視界に入るようにして、識別を使って見た。


ダーティゼライスA・B・E・G:Lv15・属性:-・耐性:毒・水・弱点:火


ダーティゼライスC・D:Lv16・属性:-・耐性:毒・水・弱点:火


ダーティゼライスF:Lv17・属性:-・耐性:毒・水・弱点:火


ポイズンラット:A・D:Lv16・属性:-・耐性:麻痺・弱点:火・斬


ポイズンラット:B・C:Lv17・属性:-・耐性:麻痺・弱点:火・斬


アーミーフライA:Lv17・属性:風・耐性:物理・弱点:火・風


アーミーフライB:Lv15・属性:風・耐性:物理・弱点:火・風


アーミーフライC:Lv16・属性:風・耐性:物理・弱点:火・風



 ~おまけステータス~


アリル:羽人族(フェアリー)・Lv17・属性:風・耐性:風・弱点:-


リーゼリア:鬼人族(オーガノイド)・Lv17・属性:-・耐性:火・弱点:-


ナギ:洗熊人族(ウォッシュベアーマン)・Lv16・属性:-・耐性:毒・弱点:-


ユンファ:水人族(ニンフ)・Lv16・属性:水・耐性:水・弱点:-


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ