Locus 7
ログインしたのは、午後2時少しすぎだ。
相変わらずこの中央広場では、人が溢れ返っていた。
俺は他の人にぶつからないように、広場から移動した。
とりあえず料理もしたいし、ステータスポイントの割り振りもしたいのだが、落ち着いて作業をしたかったので、ちょうどそこの道を歩いている恰幅の良いおばさん(NPC)に聞いてみることにした。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「お尋ねしますが、落ち着いて生産作業ができるところを知りませんか?」
「生産活動ねぇ……。それなら、共同生産ギルドがいいんじゃないかな」
「共同生産ギルド、ですか?」
「ああそうさ。共同生産ギルドっていうのはね、生産職を目指す人達が最初に利用する施設なの。もちろん、生産職につきたい人だけじゃなく、生産活動をしたい人でも利用できる所なのよ」
「へー、良さそうな所ですね。場所って分かりますか?」
そう俺が聞くと、おばさんは丁寧に共同生産ギルドの場所を教えてくれた。
すると、街のマップデータに黄色い光点が灯った。
おそらく、共同生産ギルドの場所なのだろう。
「ありがとうございます。では行ってみます」
「ああ、がんばっておいでよ」
俺は、先程聞いた道筋を辿りつつ、マップデータの黄色い光点を目指して歩いていった。
歩くこと十数分でその施設へと到着した。
ギルドに入ると、そこそこ混んでいた。
俺はまず、受付窓口に行ってみる。
「いらっしゃいませ。本日は当ギルドにどのようなご用件でしょうか」
「生産スペースの利用をお願いしたいのですが、空きはありますか?」
「はい、ございます。生産スペースには、共同生産スペースと個人生産スペースとがありますが、どちらになさいますか?」
落ち着いて作業をしたいから、個人生産スペースにしよう。……でも一応スペースの値段を聞いておこうかな。足りないとなんか恥ずかしいし。
「因みに、値段の方はどうなっていますか?」
「お値段は、共同生産スペースでは1時間50R、個人生産スペースでは1時間100Rとなっています」
あまり高くなくて安心した。これなら当初の予定通り、個人生産スペースでお願いしよう。
「個人生産スペースでお願いします」
「はい、かしこまりました。終了時間5分前になりますと、合図のベルが鳴るようになっています。何時間ご利用になられますか?」
「とりあえず、2時間でお願いします」
俺はそう答え、受付の人に200Rを支払った。
「はい、ではこのプレートをお持ち下さい。このプレートをあちらの階段の前にいる者に見せれば、2階に上がることができます。そのプレートの番号がお客様が利用なされる、個人生産スペースの部屋番号であり、そのプレートが部屋の扉の鍵の役割をしています。入室されますと、ご利用開始となりますので、注意して下さい」
俺はプレートを受け取り、階段の前にいる人にプレートを見せ、2階へと上がった。
プレートには、221と番号が刻まれており、プレートの下の方には、複雑な紋様が描かれていた。
プレートの番号の221を探しつつ、廊下を歩くこと数十秒、プレートの番号と同じ数字の221と書かれている扉を見つけた。
扉の取っ手の上にスリットがあったので、先程のプレートを差し込むと、カチャリと音を立て扉が開いた。
部屋の中へ入ると、そこには木製の机と椅子があり、広々とした印象が持てる所だった。
俺は料理に入る前に、ステータスポイントの割り振りを行うことにした。
今の俺のステータスは、こんな感じだ。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv3
job:自由人 rank-
class:ノービスLv3
HP:176 MP:102
STR:21
VIT:11⇒17
AGI:21
INT:14⇒15
MID:17
DEX:25
LUK:11⇒13
STP:9⇒0
所持金:1180R⇒980R 虚空庫:11/16
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv0〕
スキル:〔STR増加Lv3〕、〔AGI増加Lv3〕、〔鑑定Lv5〕、〔識別Lv2〕、〔剣Lv4〕、〔料理Lv0〕、〔気配察知Lv3〕、〔虚空庫 rank1〕、〔梟の目Lv3〕、〔発見Lv2〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕
とりあえずステータスポイントは、低い3つに割り振った。
VITはMIDに合わせ、11⇒17へ
INTは切りがいいように、14⇒15へ
残りはLUKに入れて、11⇒13へ
さて、ステータスポイントの割り振りも終えたことだし、料理作りを始めるぞ!
始めに、串焼きを作ってみよう。
モノコーンラビットの肉が多いので、モノコーンラビットの肉を使ってみる。
まず、焼いたときに縮んで固くならないように、包丁でモノコーンラビットの肉の筋を切っていく。
その後、包丁の背でモノコーンラビットの肉を叩く!
肉を叩くことにより、焼いた肉が柔らかくなるからだ。
食べるなら柔らかく美味しい方がいいからな。
次に、塩・胡椒で下味を付ける。
ある程度馴染んできたら、1口大に切って、串に刺す。
この時、切った肉の真ん中に刺さるようにすると、焼くときに均等に熱が通りやすくなる。
生焼けや焦げ肉なんて、美味しくないしね。
最後は料理キットにある、コンロ?の様な魔道具っぽいもので焼いていく。
焦がさない様に注意しつつ、丁寧に焼く。
俺は、一人暮らしをして早半年、限られた食材で本当に美味しいものを食べたいなら、手間隙を惜しんではいけないことを、この身をもって学んだ。
だから……美味しいものを食べたいなら、手間隙を惜しんではいけません!
(大切なことなので2回言った。)
そして出来上がったのがこちら。
食品アイテム 串焼き(塩・胡椒味):モノコーンラビットの肉を塩・胡椒で味付けして、丁寧に料理され、焼き上げられた串焼き。
効果:HP15%回復
おお!HP回復効果が付いている。がんばって丁寧にやったかいがあったな。
俺は味見がてら、できた串焼きを口に運んだ。
外はパリパリ、中はジューシー。塩の辛味と胡椒のピリリとした刺激が、良いアクセントになっていて美味しい。
肉を噛めば中から肉汁と脂が漏れ出し、仄かな甘みを出している。
「美味い! うん。良い出来だな。やっぱり美味いもの食べるなら手を抜いちゃダメだよな」
そして、残りの肉も同じ手順で、塩・胡椒味と塩・香草味とを作った。
もちろん!手間隙を惜しまずに。
そして出来上がったのがこれ等だ。
食品アイテム 串焼き(塩・香草味):モノコーンラビットの肉を塩・香草で味付けして、丁寧に料理された串焼き。
効果:HP10%・MP5%回復
食品アイテム 串焼き(塩・胡椒味):ワイルドドッグの肉を塩・胡椒で味付けして、丁寧に料理された串焼き。
効果:HP10%回復
食品アイテム 串焼き(塩・香草味):ワイルドドッグの肉を塩・香草で味付けして、丁寧に料理された串焼き。
効果:HP5%・MP5%回復
これ等全てを作り終えたら〔料理〕のLvが4も上がっていた。
ここで驚いたのが、MP回復が付いていたことだ。
MP回復効果が付いた串焼きの共通点は、香草を使ったことだ。
現実でも香草は、爽やかな香りと共に精神をリラックスさせるとか言われているから、そういうことが反映されているのかな?
まぁ何にしても、巷で噂の不味い回復ポーションの代わりにできそうでよかった。
因みに、このゲームでは回復薬の味は最悪だ。
まんま、青汁の味がするのだ。
それなら、掛けて使えばいいじゃないかと、試した人がいたようだ。
確かに、この回復薬掛けても効果はある。
但し、飲んで使うよりも効果が格段に落ちるのだ。
掛けて使うと、ざっと回復量が1/10位になる。
つまり初級者ポーションでいうと、飲むとHPが30回復するのに対して、掛けて使うとHPは3しか回復しないのだ。
なので大半の人は、ポーションの他にも口直しができる果物なんかを、持つようにしているらしい。
串焼きを作り終えると、終了5分前の合図であるベルが鳴った。
串焼きは、食べる時出来立てを食べたかったので、虚空庫に入れた。
料理キットを片付け、忘れ物がないかを確認して、ギルドを出た。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
STRとSTPが見にくいとの指摘を頂いたので、ステータス表記の所以外を修正しました。
ステータス表記の所も直してしまうと、おかしく見えるので、そのままになっています。
何卒ご了承下さい。