Locus 77
―――1時間後
「いやー、マジで鉱石が拾えるなんて、どんな畑だよ! ファンタジーすぎるだろ……」
「しかも、少数ではありますが、掘り出しものとして売ってる、1つ1000Rの鉄鉱石まで拾えるだなんて……予想外すぎます!」
「更に言えば、リオンの言っていた回数限定ではあるが、良いことがあるってのも、ある意味すごかったな」
「ええ、まさかこんなクエストで、ステータス値が上昇するとは思いませんでした。薄々気付いてはいましたが、ここまでとは思いませんでしたね」
「だな。てか、こりゃ確定だろ?」
何だろう……?
貶されている訳じゃないけど、何かひどいことを言われてる気がする。
まぁ、いいか。
ここは、深く突っ込まず、スルーする方向にして置くとしよう。
「それで、どうだった? 実際に採取した感想は?」
「ああ、多少手間ではあるが、中々有意義な時間だったな。鉱石だけでなくステータスも少し上がったし、宝石の原石も入手できたしな。良い取引だったよ。ありがとな」
「いやいや、俺にも得することがあったんだし。お互い様だよ。こっちこそ、ありがとう。それで、なんだけど……ヴァルスにまた頼みたいことがあるんだけど、良いかな?」
「ん、何だ?」
「えっと、……このダガーの強化とできれば進化、それと胸当ての作成をお願いしたいんだ。胸当てはまだ、初期装備のままだしな」
そう言って俺は、腰に差してあるプレアダガーを手渡した。
「ダガーの強化と作成はいいが、素材はあるのか?」
「それは大丈夫」
「そうか、それならその素材とダガーを預かろう。ダガーの強化と進化ならすぐにできるから、少し待っててくれ、胸当ての方はできしだい連絡を入れる」
「うん、分かった」
俺はそう答えると、ヴァルスに追加で、ダガーの強化素材と、胸当てに使えそうな素材を渡した。
「それでは、私はそろそろ落ちますね。リオンさん、有意義な情報ありがとうございました。何かあればまた言って下さい。装備の作成でも、レベル上げの狩りでも時間が空いていれば、ご一緒させて頂きますので。あ、それと皮素材や糸素材等があれば、買い取りも請け負いますので、是非お持ちより下さい」
「はい、その時はまた、よろしくお願いします」
「それでは、また。失礼します」
そう言い、クレアさんはその場でログアウトしていった。
それから少し経つと、ヴァルスが戻って来て、進化鍛錬できた元ダガーを渡して来た。
武器アイテム:短剣 名称:クリティカルバゼラード ランク:2 強化上限回数:10回
ATK10 確率で防御無視 要求STR:7 耐久値:180/180 バインド属性
与DP倍率:斬1.1 打0.2 突0.4 魔1.0
クリエイトボーナス:打・突・魔の与DP倍率に+0.1
説明:青銅を用いて作られた、柄の部分がIの字型になっている、ダガーより一回り大きな両刃の短剣。
攻撃を当てることで、対象の防御力を無視してダメージを与えることがある。
武器作成時にクリエイトボーナスが発生し、打・突・魔の属性が強化された。
また、導きの精霊『ナビ』の祈りが込められており、通常のブロンズバゼラードより耐久値が高くなっている。
俺が進化鍛錬した短剣を受け取ると、ヴァルスが素材さえあればもう1段階進化鍛錬できると言って来たので、短剣と素材を渡してもう1度進化鍛錬してもらった。
武器アイテム:短剣 名称:スルーダーク ランク:3 強化上限回数:15回
ATK20 確率で防御無視 要求STR:17 耐久値:250/250 バインド属性
与DP倍率:斬1.2 打0.3 突0.5 魔1.0
クリエイトボーナス:打・突・魔の与DP倍率に+0.1
能力継承:【突・打の与DP倍率に+0.1】
説明:鉄を用いて作られた、生活用品としても有用な短剣。
攻撃を当てることで、対象の防御力を無視してダメージを与えることがある。
武器作成時にクリエイトボーナスと能力継承が発生し、打・突・魔の属性が強化された。
また、導きの精霊『ナビ』の祈りが込められており、通常のアイアンダークより耐久値が高くなっている。
「おおっ! 能力が継承されてる。ありがとうな、ヴァルスに進化鍛錬頼んでよかったよ」
「ははっ。喜んでもらえて、何よりだ。そういえば、クレアがいないようだけど、どうしたんだ?」
「クレアさんなら、さっきログアウトしていったよ」
「そうか……って、もうこんな時間か! それじゃ、俺もそろそろ落ちるわ。リオン、またな。胸当ては出来たら、連絡を入れるからよ。あぁ、それと、今度コッチに来ることがあったら、食事付きを頼むと時間制限はあるが、良いことがあるぞ」
「そうなのか? 分かった。今度頼んでみるよ。それじゃ、防具の方楽しみにしてるよ。またな」
そうして、ヴァルスがログアウトする前に、互いにフレンド登録をし合い、ヴァルスはログアウトしていった。
さて、俺もそろそろログアウトした方がいいけど……その前にノービスソードの進化鍛錬を終わらせてから、ログアウトすることにしよう。
問題は何処で進化鍛錬するか、だけど。
う~ん……あ。
そういえば、クレアさんは水も火も使わないから宿屋の部屋で裁縫をしていたんだよな。
なら、ノービスソードの進化鍛錬にはどうだっただろうか?
……うん、水も火も使わないな。
懸念があるとすれば、鍛錬中に出る音だけど、こんな道端で強化鍛錬や進化鍛錬をしていても、住人から何も言われないところを見るに、大丈夫な気がするな。
それにここは、所謂夢に当たる所だし、もしも注意されたら、それ以後は別の場所でやるようにすればいいだろうしな。
そう思い、俺は荒ぶる仔豚亭に向かって行った。
荒ぶる仔豚亭に戻り、自分が泊まっていた部屋に入ると、さっそく精製キットと強化素材である鍛錬石を実体化し、精製キットにあるレシピを確認してから、その使用手順に従い、進化鍛錬を行っていく。
レシピ:アドヴァンスドソード
材料:黄銅のインゴットx3、ノービスソード+10x1、鍛錬石x1
作り方:材料を全て錬金炉に入れ、蓋ふたを閉め、MP40を錬金炉に注ぐ。
錬金炉から出した地金をやっとこで取り出し、金床の上に置き、
ハンマーで7回叩く。
錬成炉の蓋を開け、ブラスインゴットを3つとノービスソード+10と鍛錬石を1つ入れ、蓋を閉めると、ウィンドウが現れ『MP40を注ぎ、ノービスソードを進化錬成しますか? Yes/No 』と出たので、迷わずYesを押した。
すると、錬金炉の中にあった錬成陣が光始め、その後ピカリと閃光を発した後、電子レンジのような『チン!』という音がする。
俺は錬金炉の蓋を開け、中を見ると明るい黄金色をした先程入れたブラスインゴットの3倍以上大きくなったインゴットの形をした金属塊があった。
そしてソレやっとこで取り出して金床まで運び、インゴットをやっとこで抑えつつ、ハンマーで叩こうとして、ふとチュートリアルフィールドで、ナビさんに言われたことを思い出す。
ナビさんは確か……クリエイトボーナスとは、武装具作成時に特定条件を満たすことで、発生するって言っていたよな。
でも俺は、最初に指示されたハンマーで既定回数を一気に、均等な速さで叩くってことしか知らない。
うーん、どうしようか?
もっと早くに気が付いていれば良かったんだけど……既にメインウェポンのノービスソード+10を錬成素材にしちゃったしなぁ。
まぁここまでやっちゃったんだし、後戻りはできそうにないよな。
それに、鍛錬石は他の強化素材に比べ、入手が難しいから叩き方もそう変わらないだろうと思うから、ダメ元でチュートリアルフィールドで教えてもらった通りに、叩いてみるとしよう。
俺はそう思い直すと、やっとこで錬成した明るい黄金色をした巨大なインゴットを抑え直しつつ、ハンマーで一気にそして均等な速度になるように叩いた。
カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン!
すると、初日に見たように叩き終わったインゴットが淡く輝きながら、徐々に形を変えていった。
そして、光が消えた頃そこには、ノービスソードよりやや大きくなった黄土色をした剣身に、明るい黄金色をした刃を持った1振りの剣があった。
俺はその剣を手に取って見てみると、あの時のようにウィンドウが現れた。
【製作者:リオン】
武器アイテム:剣 名称:アドヴァンスドソード ランク:2 強化上限回数:15回
ATK30 DEF15 AGI15 M・ATK15 M・DEF15 DEX15 LUK15
要求STR:15 耐久値:∞ バインド属性
与DP倍率:斬1.0 打0.5 突0.3 魔1.0
クリエイトボーナス:MP+50
能力継承:【HP+5%】
説明:ウェポンマテリアル・剣を混入したことで潜在能力が発揮されたブラスソード。
黄銅を用いて作られているため、腐食耐性を持ち、容易に溶けることがない。
武器作成時にクリエイトボーナスと能力継承が発生し、所有者の生命力と魔力を高める働きがある。
おお~……ただの思いつきだったけど、クリエイトボーナスついたな。
しかも、能力継承までしたよ。
よかったぁ。
そういえば、まだ鍛錬石が2つ残っているから、ついでに強化もして置くとしよう。
【製作者:リオン】
武器アイテム:剣 名称:アドヴァンスドソード+2 ランク:2 強化上限回数:13回
ATK32 DEF17 AGI17 M・ATK17 M・DEF17 DEX17 LUK17
要求STR:17 耐久値:∞ バインド属性
与DP倍率:斬1.0 打0.5 突0.3 魔1.0
クリエイトボーナス:MP+50
能力継承:【HP+5%】
それじゃ、やることもやったことだし、そろそろログアウトすることにしよう。
明日の午後2時からはアリルとの待ち合わせがあるから、それまでは暇になるな。
……何をしようか?
あ、そうだ! 何だかんだでリュクスに教えてもらった合成や消費した回復アイテムの補充もしてないし、ソレをやればいいかな。
それに、解放クエストで入手したあの食材を、試してみるのもいいかもしれない。
解放クエストであったアイテムの説明と似てるところがあったから、俺の考え通りなら何かがあるはずだ。
よし、そうと決まれば、さっさと寝て明日に備えるとしよう。
そうして、俺はそのまま借りた部屋のベッドに座りながらログアウトしていった。