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Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第3章  魔法の性質と魔素溜まりの迷宮
71/123

Locus 63  

 まだ直らない体調不良が恨めしい、今日この頃です。

 俺はアクティブパペットの方へ向かいながら、ルイリに聞いたことを鑑みアーツを使って見る。


「ウィークネスアイ」


 すると思った通り、アクティブパペットの弱点にして恐らくルイリの言っていた(もろ)い所が、赤く発光して視覚化される。

 赤く発光した所はそれぞれ、アクティブパペットAが右肩、アクティブパペットBが腰部後ろ、アクティブパパペットCが首だった。


 たしか、ルイリの話では1~2回の攻撃で倒せたって言っていたけど……ルイリ達に比べるとレベルも低いし、使っている武器のATKも低そうだから、念のためアーツも混ぜて攻撃していくことにしよう。


 そう思いながら、俺は一番手前にいるアクティブパペットCに突っ込んでいき、攻撃を仕掛ける。


 俺が近付いていくと、目のないはずのアクティブパペットの顔がこちらを向き、迎撃するようにカタカタと音を立てながら、右腕を振り上げてそして振り下ろす。


「……!」


 そのアクティブパペットCの迎撃行動が視界に入ると、見切りのスキルによってアクティブパペットCの攻撃の到達予測線が、赤いラインとして視覚化される。

 俺はその攻撃の到達予測線の半歩手前で足を止め、上半身を逸らすように回避しながら、(あたか)もカウンターを放つように、予測線の少し上をなぞりながらノービスソードを振り抜き、アクティブパペットCの首を斬り上げる。


「……?!」


 すると、ノービスソードで斬り裂かれた場所を中心に、アクティブパペットCの首の木の一部がボロボロと崩れ落ち、中からガラス光沢のある黄色い結晶体の一部が露出する。

 HPバーを見てみると、先程の斬り上げだけで2割近くのHPを減らしていることから、ココが弱点で間違いないのだろう。


 それに、よく考えてみれば他のゲーム等では、○○パペットというのはゴーレムの一種として出てくることがあるので、その(コア)となる場所があっても何ら不思議ではない。


 そう考えつつ、アクティブパペットCに核の一部と思しき場所を狙い、アーツを放つ。


「デュアルピアース!」


「……!!」


 瞬時に放たれる突き出しの2連撃により、アクティブパペットCの核?は物の見事に砕けると、急速にHPバーを減少させていき、0になると呆気(あっけ)無く光の粒子となって消えていった。


 ふむ、やっぱり核っぽい所を破壊すると、あっさりと倒せたな。

 ……ん? 待てよ。

 そういえば暗殺のアーツに部位:急所((コア)や心臓)に当てると効果を発揮する、ストライクハートがあったっけ。

 なら、そのアーツを使ってみれば、あの結晶体が核であるという証明になるのではないだろうか?

 よし、それじゃ次のアクティブパペットを相手にする時に、試してみるとしよう。

 もしも核ではなかったとしても、即座に追撃を入れれば問題無く倒せるだろうから、たぶん大丈夫だろう。


 そう思いつつ、ふとシエルの方を見てみると、ディガーインセクト4体を相手取り、互角以上の空中戦を繰り広げていた。


 シエルは緩急を付けた飛行で、ディガーインセクトの突進を次々にかわしていき、どうしても避けられないものはライトシールドで防いだり、レイビームでディガーインセクトの勢いを()ぎつつHPも削り、やや強引に突進速度を落として直撃をもらわないように、戦っている。


 また、2体以上のディガーインセクトが同時に襲い掛かってくれば、10本のライトアローで牽制し、隙を見てはうまくディガーインセクトの羽に攻撃を当て、地面に転がしていく。


 そして時折、その落としたディガーインセクトがネロの方に転がっていけば、護衛対象であるルイリ達を守るためか、蔓状の根を用いてディガーインセクトをシエルの戦闘の邪魔にならない程度の所に、殴り飛ばして更なるダメージを与えていっている。


 4体のディガーインセクト達のHPバーを見てみると、今しがたネロの方に転がっていったディガーインセクトAは残り1割強で、他の3体のディガーインセクトB・D・Fは3~4割程度にまで減少している。

 対して、シエルは日光が当たらない洞穴の中であっても、昨夜に覚えさせた再生のスキルのおかげで、だいたい8~9割位のHPを維持している。


 あの様子ならそう遠くない内に、倒し切ることもできるだろう。

 そう思った矢先、ネロに殴り飛ばされたディガーインセクトAが光の粒子へと変わり、消えていった。


 うん、順調そうだな。

 よし、それじゃ俺もシエルやネロに負けないように、他のアクティブパペットも早急に倒しに行くとしようかね。

 もう既に、引き付け役ではなく殲滅する方に意識がいってしまっているが、倒せる内に倒してしまった方が良いだろうと思い、現時点で俺に一番近いアクティブパペットAに向かって、やや前傾姿勢になりつつ跳び、その距離を一気に詰める。


 そして、まだ移動体勢のままでいるアクティブパペットAの右肩を斬り付け、弱点である結晶体を露出させ、反撃する暇を与えずすぐ様アーツによる追撃を加える。


「ストライクハート!」


「……?!!」


 アクティブパペットAは『ビクッ!』っと一瞬震え、声無き悲鳴を上げHPバーを砕け散らせながら即座に、光の粒子へと変わっていく。

 これは恐らく、ストライクハートが正しく作用し、低確率で発生する即死の効果によるものだろう。

 それに、このことからあのアクティブパペットの弱点の所にある黄色い結晶体は、(コア)であることを証明できたことになるな。


 さて、それじゃ残りもパパッと片付けて、他の加勢に行きたいものだな。

 最後に残ったアクティブパペットBの弱点部位は、腰部の後ろ側だからちょっと狙いづらいのが難点だなぁ。

 でもまぁ、カインさん達も回復できたみたいだし、もしも俺だけで倒せそうにないなら、他のパーティメンバーに止めを刺してもらえばいいから、無理の無い範囲でガンバるとしよう。


 そう思い、俺は最後に残ったアクティブパペットBの方へと、走り出していった。



 ◇◇◇



「……うぐっ……うぐっ……うぐっ、ブハァー!! あ~まっじぃー!」


 カインさんはポーションを一気に飲み干すと、眉間(みけん)(しわ)を寄せ、苦り切った顔でポーションの味に対する率直な感想を()らす。


「それにしても……少し戦線離脱して、拷問汁(ポーション)飲んでる合間に、あれだけ俺達が苦戦した木の人形を2体も倒すとか、どうなってんだ?! まったくどこまで非常識なんだ、あいつはよぅ」


 そうやって、誰と無くおもしろそうにしながらも呆れを含めた声を出していると、ソレに答えるように非難するような声が上がる。


「カインさん、助勢(じょせい)に来てくれた人に非常識とかは、無いでしょう。ちょっと言いすぎなんじゃないですか?」

 

「ん? ……ああ、リュクスか。もういいのか?」


「え、あ、はい。ルイリさんが麻痺を治してくれたので、もう大丈夫です。ってそうではなくて!」


「あーそういきり立つなって。別に(けな)してるとかではなくてだな、俺が言った非常識っていうのは良い意味での非常識で、むしろ()めているんだぞ?」


「え、そうですか?」


「ああ。しっかし、ホントにどうなってんだありゃぁ? まるで、何処に何があるか分かってるような動きだったが……」


「そりゃそうでしょうとも、リオン(いわ)く対象の弱点を見つけるアーツがあるそうなので、ソレであんな動きになるだと思いますよ」


「なるほどなぁ」


「ほへ~。すごいんですね、そのリオンさんって人」


「う~ん、まぁある意味すごいちゃすごいんだけどね。それはともかく、みんな回復できたようだし、リオン達の応援に行きましょうか。早く行かないと本当に、出番がなくなっちゃいますからね」


「はぁ、そうだな。よし、それじゃ俺はあっちで転がってるキノコの相手をしてくるか」


「1人で大丈夫ですか?」


「あ~、そうだな。それじゃ念のためにルイリ、サポートを頼む」


「りょーかいでーす」


「ええっと、なら僕はどうしようかな?」


「リュクスは、リオンを手伝って上げてよ。なんだかさっきから、うまく攻撃を当てられてないみたいだしね」


「分かりました」


「よし! それじゃ、ネロ。私達はもう大丈夫だから、シエルの方の応援に行って上げて。それから護衛役ありがとね。本当に助かったよ」


「シュァァァー……」


 ネロはルイリに返答するかのように声を上げると、ルイリ達を守るように展開していた蔓状の数多の根を元に戻す。

 そして、つい先程も見たように、ネロの影がネロを包むように発生・膨張ぼうちょうし、直径1m程の影の繭を形成する。

 更に次の瞬間、その影の繭の外殻が砕け散り、中から黒を基調とした所々青い斑点のある青い瞳の(ミミズク)が、姿を現す。


「ホオォォォー!」


 ネロはルイリ達に行くことを伝えるように一声鳴くと、翼を羽ばたかせてシエルの方へと向かって飛んでいった。


「へぇ~、あんなのにも変化できるんだ。それじゃリュクス、リオンの方をよろしくね」


 そうルイリは言うと、いつでも矢が放てるように弓を構え、カインさんの後を追っていった。


「よ、よし。それじゃ僕も、皆に負けないようにしなきゃね」


 そうやって、気合を入れ直すように言い、短槍を構えながらリュクスもリオンの方へ加勢するため、移動を開始していった。



 ◇◇◇



 一方その頃、俺は最後に残ったアクティブパペットBに対して、攻めあぐねていた。

 何とか弱点である(コア)を露出させることはできたのだが、その後はひたすら俺に後ろを取られないように、(さなが)らバスケのディフェンダーの(ごと)く俺に張り付き、一向に抜けさせる気配を感じさせない。


 いや、どちらかというと俺が外側で、アクティブパペットBが内側なのかもしれないが、どちらにしろ今はアクティブパペットBの核にどうやって1撃を加えるかが問題だ。

 現代の傘のようなJの形をした棒や、鎌等があればアクティブパペットBに突くふりをして、刃の部分等が胴体の横を通過してしまえば、柄を捻って引き寄せればダメージを与えられるのにな。

 まぁ、無いものねだりをしていても仕方ないか。


 現実的に考えるならば、魔法による攻撃が一番良いのは分かる。

 しかし、今は装備スキルに無属性魔法と詠唱破棄を入れていないため、魔法を使うことができなくなっている。

 もしも、装備スキルを入れ替えるならば、最低でも10秒は欲しいところだが、そんなことをすればアクティブパペットBにその隙をつかれかねない。

 まぁ(モンスター)()るために(ヒットポイント)を犠牲にするという手も無くは無いが、戦場では何が起こるか分からないから、そういうリスキーなことはなるべく控えたいんだよなぁ。


 はぁ、本当にどうしようかなぁ。


 そうやって、アクティブパペットBからの攻撃を避けつつ、どうにかしてその背後に攻撃しようと動いていると、茶色のうさ耳を付けた人から声が掛かる。


「加勢します!」


「えっと、あんたは……」


「あ、僕はリュクスと言います。リオンさん、何をすればいいですか?」


「丁度良い。それじゃぁ、俺がこのモンスターの動きを止めるから、その隙にこのモンスターの後ろ側の腰のところに露出している黄色い結晶体を破壊してくれ! アーツを使えば、たぶん1発で壊せるはずだ」


「分かりました、やってみます」


「よく狙ってやってくれよ? 間違って串刺しとかは洒落(しゃれ)にならないからな?!」


「あ、はい。も、もちろんですよ」


 そうして、俺はアクティブパペットBの後ろ側に攻撃を仕掛けることを止め、今まで全て避けていたアクティブパペットBの攻撃を剣の腹で押さえ込み、鍔迫(つばぜ)り合いのような膠着(こうちゃく)状態に持っていき、リュクスに合図を送る。


「リュクス、今だ!」


「はい! いきます―――チャージスラスト!」


「……?!!」


 リュクスは助走を付け、俺が押さえ込んでいるアクティブパペットBの後ろ側の腰のところの核に勢い良く短槍を突き入れる。


 狙い違わず突き入れられた短槍により、『パキン!』という小気味良い音がすると、アクティブパペットBの核が砕け散り、HPバーが急速に減少していき光の粒子になって消えていった。


「ふぅ~。なんとか外さずに済みました。リオンさん、お疲れ様です」


「ああ、お疲れ様。リュクス、助かったよ。ありがとな」


「いえいえ、僕はちょっとお手伝いしただけですよ。それより、向こうもそろそろ終わりみたいですよ」


 そうリュクスに言われ、シエルやカインさん達の方を見てみると、たしかにそろそろモンスター達を倒し切るところだった。

 

 シエルとネロは互いにフォローし合うように飛び()い、ディガーインセクトを翻弄(ほんろう)し、隙を突くようにネロがシャドーエッジを飛ばして地面に()い付けたり、転がし、シエルが止めを刺すようにレイビームで薙ぎ払い、一網打尽(いちもうだじん)にして次々と光の粒子へと変えていった。


 カインさん達の方は、ルイリが牽制するようにライティングノココが動こうとするたび、傘や手足に矢を()って動きを妨害し、その隙にカインさんが斧で攻撃するということを繰り返していた。


「カインさん、そろそろ決めて下さい! ―――フラッシュアロー!」


 ライティングノココが何か力を溜めるような素振りを見せると、即座にルイリが矢を放ち、その矢がライティングノココの傘に瞬く間に刺さると、次の瞬間矢の中程の所から弾け飛び、『パァン!』という大きな音を立て、破裂した。


「ニョッ?!!」


 ライティングノココはその破裂音に驚くような声を上げ、その動きを止めてしまう。


「これで、くたばれ! ―――アックスフォージ!」


 カインさんは、そう言いながら両手で斧を持ち、振りかぶった斧をライティングノココの真っ向から勢い良く振り下ろした。


「ニ゛ョコーー!!」


 ライティングノココは傘の天辺(てっぺん)から股間(こかん)?近くまで斬り裂かれると、断末魔のような叫び声を上げ、一気にHPバーが減少していき光の粒子へと変わり、消えていった。


「よし、こんなもんかな」


「ですね」


 こうして俺達はなんとか誰一人欠けることなく、モンスター達を倒し切ることができた。

 

「どうやら、終わったみたいですね」


「ああ、そうだな。それじゃ、カインさん達の方に一旦(いったん)集まろうか」


「そうですね」


 そうして俺とリュクスが今後のことを話すため、カインさん達の方へ歩きだそうとすると、何かが()いずるような、『ズズズズズズズズッ……』という音が俺達のいる広間に響き渡った。


「っ?!」


「な、何?!」


 いったい何事かと思い、俺は辺りを油断無く見回してみると、先程までカインさん達が背にしていた土壁にあった光る根が動いており、徐々に土壁から光る根が無くなっていっていた。

 そして、光る根が完全に土壁から消えると、土壁が崩れていき、その奥の空間に幅30cm強、高さ50cm程の(いびつ)な形の土塊(つちかい)が3つ、等間隔に安置されているのが見えたのだった。

 


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