表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第3章  魔法の性質と魔素溜まりの迷宮
60/123

Locus 53  

 う~ん、ログアウトしても失敗扱いになるのかぁ。

 失敗条件が少々厳しすぎる気がするけど、失敗を恐れていては何も得られない。

 それに、やらずに後悔するより、やって後悔した方がよっぽど精神衛生上に良いから、ここはやるしかないよな。

 

 俺はそう思いつつ意を決し、Yesを押しながらグレイスさんに返事をする。


「はい! よろしくお願いします。」


「うむ。それじゃ……コレがその集めてきて欲しいアイテムの一覧で、コッチがこの周辺に張ってある隔離と隠蔽の結界を期間限定で抜けることができる、許可証だ。確認してみてくれ」


 グレイスさんは羊皮紙を取り出すと、そこに何かを書き連ね、青い小さなカード状の結晶と一緒に、俺に手渡してきた。


 俺はグレイスさんに言われた通り、渡された羊皮紙の内容を読み込み、青い小さなカード状の結晶を鑑定して、確認していった。


 収集依頼アイテム一覧

・ゼライスの核片 x30

・青羽毒蝶の毒鱗粉 x10

・エネルゲンマッシュルーム x10

・ペリドット x10 


 ゼライスの核片は、草原のゼライスを倒せば入手できるな。

 ただ、他のアイテムに比べると必要数が多いから、最後に集めるのが良さそうだな。


 青羽毒蝶は、ポイズンモルフォのことだよな。

 ポイズンモルフォは、ここ……東の森に出現するから、最初に集める方が後々気分的に楽そうだな。


 それから、エネルゲンマッシュルームは……ノココから採取できるんだったよな。はぁ。

 また、あの後味の悪い思いをするのかと思うと、少しげんなりするけど、ここは無属性魔法の習得のためとグッと我慢して、がんばるとしよう。


 そしてぺリドットは、Fランククエストの畑の石拾いで入手できるが、既に必要数以上は持っているしソレを納品するとしようかな。


イベント・証明アイテム  期間限定・特定結界無効化許可証:グレイス謹製の許可証。この許可証を所持する者に、グレイスの張った隔離・隠蔽結界を期間限定で無効化することが可能。

使用期間は今日の日没まで。日没後このアイテムは自動消滅する。


「確認できました。それじゃさっそく集めに行って来ます。シエル、ネロ、行くよ」


 そう言って、俺が席を立ちながら、シエルとネロに移動することを伝えると、グレイスさんから待ったが掛かった。


「待ちなさい」


「えっと、何でしょうか?」


「この試験はリオンの意思の強さを確認するものだから、リオン一人で達成しなければ意味がないんだよ。一人でコレだけのことを成し遂げたという実体験が、無属性魔法のみを生涯使い続ける上で、確かな意味を成すのだからね。それに突き詰めて言えば、他者が何を言おうと最後に決断するのは自身の意思一つなのだから、初めから他者を頼って行動するようでは、失敗した時の逃げ道を最初から用意して置くようなものだよ」


 たしかに、一理ある。

 それに、クエストを受注する時に見た成功条件に、一人でってあったし、ここは素直に従っておくべきだな。

 もし下手に逆らって、クエストが強制的に失敗扱いになったりしたら、目も当てられないしな。


「ふぅ。分かりました。シエルとネロは置いて行きます。シエル、ネロ、悪いけどここで待っていてくれないか?俺はどうしてもこの無属性魔法を習得したいんだ」


『いっしょにいけないのは、ざんねんだけど、わかったよ。がんばってきてね!』


「キュウ! キュウ!」


 ネロもシエルの言葉に賛同するように頷きながら鳴き声を上げる。


「ありがとな。それじゃ、今度こそ行って来ます」


「ああ。がんばっておいで」


 そうして俺は、グレイスさんのログハウスを出て行き、シエルとネロを連れずにクエストを開始していった。

 



 ◇◆◇◆◇




 ―――そして現在

 

 あの後、順調にゼライスを狙って狩り進めていった結果、ようやく指定数以上のゼライスの核片を収集することができた。

 時刻を見てみると、午前11時を少し回ったところだ。

 このままいけば、正午位にはこのクエストを達成することができるかもしれないな。

 後は揃ったアイテムをグレイスさんに納品するだけだけど、万が一何かあるといけないので、気を抜かずに移動していこう。


 そうして、気配察知を使いながらグレイスさんの家を目指し歩いて行くと、気配察知に引っ掛かるものがあった。

 数は1体。

 場所は、先程まで俺がゼライスを狩っていた辺りだ。


 1体ってことは、またフォーチュンラビットか?

 今の俺なら例えソロでも、フォーチュンラビット位なら余裕を持って勝てると思うけど、どうしようかな?


 俺は少し考え、とりあえず気配察知を使ってもう一度そのモンスターの位置を確認してみた。

 すると、そのモンスターの気配が、こちらに真っ直ぐ近づいて来ているのが分かった。

 

 なんだ?

 

 俺はなんとも言えない怖気を感じ、後方を振り向き目を凝らすようにして、こちらに向かって来ていると思しきモンスターを探した。


 再度気配察知を使い、大まかな方向を特定して、モンスターを探していると、ふと奇妙なものが目に映った。

 それは、まるで地面から立ち上る蒸気のように見える。

 そして、その蒸気が出ている所の後方には、たった今放水したばかりの地面だというように、やや黒ずんだ地面が、先程俺がゼライスを狩っていた辺りからずっとむき出しのまま続いている。


 そのまま少し待っていると、件のモンスターだと思われるものを視認することができた。


 モンスターの外見を一言で言い表すなら、ゼライスだ。

 但し、大きさは通常のゼライス8体分程もあり、ジェルの色は夜天のような深い藍色している。

 ゼライスの核の色は毒々しいショッキングピンクをしており、(しき)りに何かを探している(まなこ)のようにキョロキョロと動かしている。

 更に言えば、これまでのゼライスではありえない程早くジェルを広げては縮めを繰り返し、俺の方へと向かって移動して来ている。


 そんなモンスターの姿を見て、俺は嫌な予感をさせつつ、そのゼライスのようなモンスターを注視しながら、識別を使って見た。


ヴェアリアントゼライス:Lv23・属性:酸・耐性:斬・水・弱点:火


 は?

 ええぇぇぇえええええ!?

 ちょ、な、何でこんな序盤のフィールドに、初見殺しのようなLvのモンスターが居るんだ!

 いくら他のプレイヤーを避けて狩りをしていたからといって、ここが序盤のフィールドであることには違いないはずなのに。

 

 ……まさか。

 いや、ありえないことはない。

 現にあのモンスターは、先程俺がゼライスを狩っていた辺りから出現し、俺の方に向かって移動して来ている。

 このことから推察(すいさつ)するに、考えられることは一つ。

 俺が何かしらの条件を満たして、あのモンスターを出現させてしまったということだ。

 

 その条件は恐らく、先程まで俺がやっていたことだと思われる。

 そこから考えると、一定時間以内に、100体以上のゼライスを、一人で倒すことかな?

 いや、それだけじゃ条件がまだ軽い気がするな。


 そういえば、あのヴェアリアントゼライスは何かを探している様子だったな。

 

 まぁ現状を見るに、俺を探しているんだとは思うんだけどな。

 出現し立ての時、俺とかなり離れた所に居たはずのヴェアリアントゼライスは、どうやって俺がいる方向が分かったんだ?


 特定の相手を探す時、その指針となるものといえば……足跡、目撃者の証言、それと臭いかな?

 

 うーん、分からん。

 まぁいいや、分からないことをこれ以上考えていても仕方ないし、これからのことを考えるとしようか。

 選択肢としては、逃げるか戦うの2択。

 

 あのモンスターはどうやってか分からないけれど、俺を狙って移動しているみたいだから、逃げるを選択しても、振り切る方法が分からないと安心してフィールドを移動することができなくなるから、逃げる選択はなしかな。

 そうすると、戦うしかないわけだが、Lv差2倍以上の敵にダメージって与えられるだろうか?


 相性もあるだろうけど、普通はまぁ無理だな。

 だけど、今の俺には手がないわけでもない。

 できれば、後が怖いから使いたくないけど、そうもいってられないかな。

 

 まぁとりあえず、一当てしてから決めることにしよう。

 ダメージが十分通るようだったら、そのまま戦えば良いんだしな。

 そうだなぁ……今使える最大の一撃で半分以上削れたら、そのまま戦闘続行。

 半分未満なら、使うという感じでやってみることしよう。


 そう考え、素早くノービスソードを抜剣して、俺はヴェアリアントゼライスが射程距離に入るまでその場で待ち続ける。

 そして、その時はすぐに訪れた。


 ヴェアリアントゼライスが、俺の攻撃射程に入るのと同時に、あちらも俺を目視できたようで今までのスピードが人の駆け足程度から、全速力で走る位へと変わる。

 少し引き付けてから放ちたかったから、ある意味好都合なのだが、やはり何とも言えない恐怖を若干感じる。

 

 そのようにしていると、ヴェアリアントゼライスとの距離が更に縮まり残り5mを切ったところで、意を決してアーツを使う。


「バーサーク!」


 バーサークが発動し、赤いオーラが俺の体全体と武器を包み込む。

 

「スパイラル……」


 アーツを使う意思に反応して、剣身に赤い螺旋状のエネルギーを纏い、馬上槍(ランス)の形状を生成する。

 

「シェイバー!」


 突き出しと同時に、ノービスソードの剣身を起点に赤いエネルギーが急速旋回しつつ発射され、エネルギー状の部分を膨張させ、狙い通りヴェアリアントゼライスへと放出されていく。


 ズガガガガガガ―――ツッ!!?―――ドゥン!!


 スパイラルシェイバーによって放出された赤いエネルギーと土煙つちけむりが消えた後そこには、凄すさまじい破壊の爪後(つまあと)が残っていた。

 高威力で放出された極太の赤いエネルギーにより地面が(えぐ)れ、Uの字型の溝みぞが5m以上にも渡りできている

 さらに、スパイラルシェイバーが直撃したと思われる所では、地面が擂鉢(すりばち)状に陥没(かんぼつ)しており直径5m以上のクレーターが出来上がっていた。


 クレーターの周りには、ヴェアリアントゼライスの飛び散ったジェルと思しきものが散乱しており、ジュウジュウと音を立て、周囲の草や石を溶かしている。

 そして、クレーターの中心部には、スパイラルシェイバーに寄る攻撃で若干体積を減らしたヴェアリアントゼライスの姿があった。


 ヴェアリアントゼライスのHPバーを確認してみると、HPの減少は良くて2割といったところだった。

 

 アレで2割かぁ……これは、使う他無いな。

 ここでやられてクエスト失敗ということ等にはしたくないけど、使った後もそれなりに危険を伴うから、効果が切れる前に決着を着けて且つ、セーフティエリアに駆け込む必要があるから、大変だな。

 でも、使わずに後悔するようなことはしたくないから、腹を括って(いど)むことにしますかね。


 そうやって考えていると、ヴェアリアントゼライスは自分を攻撃した俺を発見するや否や、ショッキングピンクの核を爛々と輝かせた後、ジェルをギュッと縮め、まるで間欠泉(かんけつせん)のようにして、自らのジェルを俺の頭上へと噴出(ふんしゅつ)させた。


「んな!?」

 俺はヴェアリアントゼライスの突然の行動に驚きつつも、その頭上からの攻撃を視界に入れ、見切りのスキルにより視認化された攻撃到達予測線を避けるようにして、行動をする。


 しかし、無秩序(むちつじょ)に降り掛かってくる散弾のようなジェル全てを避けきることはできず、2・3回程被弾してしまう。

 被弾した箇所は白い煙を上げ、表皮に50度程の熱湯が掛かった時のような熱さが感じられた。


 自分のHPを確認してみると、バーサークの影響もあり8割以上のダメージを負っていた。


 いくらバーサークのせいで、VITやMIDが半減しているといってもこのダメージは非常識すぎるだろ!

 かすっただけでコレってことは、直撃したら一発で死に戻るな、確実に。


 そう思いつつこちらを攻撃してきたヴェアリアントゼライスを見ると、信じたくない情景が映し出されていた。

 それは、スパイラルシェイバーや先程の攻撃の時に飛び散ったジェルが、次々とヴェアリアントゼライスへと合流していき、再吸収・再結合していく様だった。


 まずい!

 もしさっきの攻撃をされたら、HPが少ない今の状態では1回でも当たれば終わる。

 かといって先程とは違い、ここら一帯の地面はヴェアリアントゼライスのジェルによって溶かされ、そこら中に泥濘(ぬかるみ)ができてしまっている。


 例え、万全の状態でも泥濘に足を取られないように動けば、速度を。

 泥濘を無視して動けば、精細を欠くことになり、結果大ダメージを負い、死ぬ可能性が高い。


 ならば、どうすればいいか?

 答えは簡単だ、圧倒的なステータスでのゴリ押し。

 これに限る。


 俺はそう結論を出し、まだ体勢を整えているヴェアリアントゼライスを視界に入れつつ警戒(けいかい)し、アーツを使う意思と絶対に生き抜いてやるという決意を込め、その言葉を放つ。


「リミットブレイク!」



 ここまでお読み頂き、そして評価して下さり、ありがとうございます。


 リアルの都合により、10月~11月上旬まで投稿頻度(とうこうひんど)が一定ではなくなりますが、予めご了承下さい。


 なるべく、いつも通りに投稿したいとは思いましたが、多忙すぎて投稿が不定期になりそうです。


 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ