表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第3章  魔法の性質と魔素溜まりの迷宮
56/123

Locus 50  

 ログインしました。

 現在の時刻は、午前8時30分ジャスト!


 ログインするとすぐ、聞き覚えのあるインフォメーションが流れた。


 『メールボックスに未読メッセージが1件あります』


 アリルからの返信かな? と思いながらメニューを開き、ポストの中のメールを見てみると、意外なことにフィリアからのメールだった。


 フィリアからか……なんだろうな?

 とりあえず考えていても分からなかったので、メールを開けて内容を読んでいった。


 内容を要約すると、こういうものだった。


 昨日は一緒に遊べて楽しかったことと、獣魔(クア)と出会わせてくれたことに対するお礼に始まり、ランドルさんの店が開店するまで獣魔はネロとクアしか居ないから、開店するまでの間は人目を避けておいた方が面倒事に巻き込まれなくて済む、という忠告をルイリからもらって泣く泣く宿紋化しているというものだった。


 そして、フィリアと同様に獣魔を持つ俺を心配して、こうして忠告メールを送って知らせてくれたのだそうだ。


 面倒事を回避するための対策は既に実行していたが、心配してメールを送ってくれたことは、素直に嬉しかったので、お礼のメールを送っておいた。


 フィリアにお礼のメールを返信してから、シエルの装飾化を解き、ネロに出てきてもらうように言い、宿紋化を解いた。


「おはよう。シエル、ネロ、今日もよろしくな」


『おはよう。よろしくね~♪』


「キュウ! キュキュウ!」


 そうやってシエルとネロに挨拶をし、さっそく移動することを伝えようとして、ふと腰に差している短剣のことを思い出した。


 そういえば、ノービスソード程ではないけど、この短剣って結構長い間使っているよな。

 耐久値とかは、どうなっているんだろう。

 

 そう思い、腰からダガーを引き抜き、鑑定してみた。


武器アイテム:短剣  名称:プレアダガー  ランク:1  強化上限回数:7回


ATK5  要求STR:-  耐久値:18/150  バインド属性  


与DP倍率:斬1.0 打0.1 突0.3 魔1.0


説明:チュートリアルクエストの報酬で入手した、軽銀製のダガー。導きの精霊『ナビ』の祈りが込められており、通常のアルミナムダガーより耐久値が高くなっている。


 へー、『ナビ』さんって精霊だったのかぁ……って、耐久値が残り少ないじゃないか!

 このまま耐久値全損(おわかれ)っていうのも何となく嫌だし、インゴットを作ってもらうついでに、耐久値の回復もお願いするとしよう。

 よし、善は急げだ!


 そうして、俺達は黄銅のインゴット作成とプレアダガーの耐久値を回復させるため、ディパートの街へ向け、西の森のセーフティエリアを出発していった。




 ◇◆◇◆◇




 進路上のモンスターのみを駆逐(くちく)して、無事にディパートの街へと到着し、その足で鍛冶屋へと歩いて行った。


 今の時間帯は、狩りに出ているプレイヤーが多いのか、将又(はたまた)リアルの仕事があるせいか、(まば)らにプレイヤーが大通りを歩いているだけなのだが、先程から何故か妙に視線を感じる。

 視線を感じた方に目を向けてみるが、こちらを見ている者はいない。

 もちろんNPCも居るが、こちらを注視するような人はいない。


 気のせいかな? と思いつつ歩いて行くと、目的地である鍛冶屋に着いたので、店内に入っていった。


「おはようございます!」


「おう! おはようさん、今日はどうしたんだ?」


 そうやって明るい調子で挨拶を返してくれたのは、スキンヘッドに鉢巻(はちまき)を巻いた、筋骨隆々としたおっちゃんだった。


「インゴットの作成と、この短剣の耐久値の回復をお願いします」


 そう言って俺は素早くメニューを開き、黄銅鉱を実体化させ、腰に差してあったプレアダガーを(さや)ごと抜き、カウンターの上に置いた。


「ふむ、どれ……」


 おっちゃんは、黄銅鉱とプレアダガーを手に取り、()めつ(すが)めつして見ている。

 そして少しすると、それらをカウンターの上に置いた。


「すまないが、こっちの黄銅鉱の方は俺の技量が足りなくて、インゴットにすることができない。悪いが、他を当たってくれ。それとこっちのダガーは問題なく修復できるが、どうする?」


「えっと、他というと何処に行けば、インゴットにしてもらえますか?」


「う~む、そうだなぁ……そんなに急いでインゴットにする必要がないなら、この街を出て北に行き、丘を()え、更に草原を抜けると、ディグダリスという鉱山の街がある。その街の鍛冶師なら問題なく、インゴットにできるだろう。もし、早くインゴットにしたいのなら、異邦人(いほうじん)の鍛冶師に頼むといいだろう。異邦人は、不思議と腕が上がるのが早い者が多いから、黄銅鉱を扱える者がいるかもしれん」


「なるほど、分かりました。インゴットの方はこちらで異邦人の鍛冶師を探してみます」


「力になれなくて、すまんな」


「いえ、どうすれば良いのかの指針は頂けましたから、大丈夫ですよ。それじゃ、そっちのダガーの修復をお願いします」


「あいよ。修復はどこまでやるんだ?」


「全回復で、お願いします」


「それだと、お代は1500Rになる。修復素材とかあれば、値引きもできるが、どうする?」


「持っていないので、1500Rでお願いします」


「分かった。それじゃ、少し待っててくれ」


 そうおっちゃんは言うと店の奥へと入って行き、それから程無くして、店の奥から金属を叩くような『キィーン! キィーン!』という音が響いてくる。


 う~んインゴットはできなかったかぁ、残念。

 異邦人(プレイヤー)の鍛冶師に頼もうにも、当ては無いしなぁ……かと言ってその辺で露店を開いている、誰とも知れないプレイヤーに頼むのも心情的に遠慮(えんりょ)したい。


 ……よし!

 ここは、同じ生産職であるクレアさんに、聞いてみるとしよう。

 幸い、クレアさんには今防具作りを頼んであるので、その防具を取りに行く時に聞けばいいよな。

 今聞くと、なんだか言外に催促(さいそく)しているようで、嫌らしいしな。


 そうやって考えていると、プレアダガーの修復が終わったようで、おっちゃんが店の奥から出て来るところだった。


「ほら、できたぞ。確認してみてくれ」


 そう言っておっちゃんは、鞘に入ったプレアダガーをカウンターの上に置いた。


 俺は言われた通り、プレアダガーを手に取って鑑定してみると、耐久値が最大まで回復しているのが確認できた。


「ありがとうございます。それじゃ、1500Rでしたよね……では、これを」


 俺はおっちゃんに1500Rを払いたいという意思を込め、硬貨を実体化させてカウンターの上に乗せた。


「ふむ……たしかに。それじゃ、また来てくれよ!」


「機会があれば、またよろしくお願いします」


 そうして俺は、プレアダガーを装備し直し、鍛冶屋を出て行った。


 さて、次は無属性魔法を習得するため、ビーンさんに教えてもらった人の所を訪ねることにしよう。

 そう考えて、俺は街の外へ向かって歩き出していった。


 しばらく歩いていると、また視線を感じるようになった。

 視線を感じた方を向いて見るが、やはりこちらを向いている者はいない。

 もしかしたら、ネロが影から出てしまっているのかと思い、視線を下げて影を見てみるが、そんなことはなかった。


 気のせいだと思いたいが、こう何度も視線を感じるのはおかしいと思い、視線を感じる原因を突き止めるため、別の方法を用いて調べてみた。


「サウンドアセンブル」


 すると、先程まで聞こえていた街の喧騒(けんそう)が無くなり、俺が聞きたい音のみがより鮮明に聞こえ、音が声に、声が言葉として認識することができるようになった。


「・・・・・・う・・・・ょ・・・!」

「・・・・・・幼女だ!」

「金髪の幼女だ!」

「浮いてる?」

「かわいいー!」

「き、金髪幼女! ハァハァ!」

「何か少し透けてないか?」

「もしかしてアレって(うわさ)の獣魔なのかな?」

「え?! そうなの? いいなぁ~。」

「ねぇねぇ、あの光ってる子何かな?」

「なんで開店前に、獣魔持ってんの?」

(さげす)んだ目で見られて、(ののし)られたい!!」

「え? あっほんとだ! 光ってる!」

「さぁ? クエスト報酬だとかじゃないかなぁ?」

「髪サラサラだねぇ。お願いしたら抱かせてくれないかなぁ?」

「何ソレうらやまぁ~!!」


 何か変なのが聞こえた気がするが、どうやら話の内容から察するに、シエルの姿が原因のようだ。

 迂闊(うかつ)だった。


 よく考えてみれば、シエルは進化して姿が変わったんだった。

 こんな序盤(じょばん)のフィールドに人型のモンスターは、ゴブリンやオーガといったものしかいないため、可憐な幼女の姿となれば、そりゃ目立つよな。


 こんな状況じゃ、何時呼び止められるか分からない。

 かと言って、すぐ様逃げ出すように走り出せば、不審(ふしん)に思った者や、興味を刺激された者が大勢追い掛けて来るかもしれない。

 

 なので俺は、それとなく不自然にならないように歩いて脇道(わきみち)に入り、少し早足で歩いてから、一気に駆け出した。


 気配察知を使ってみると、後方から2・3人程追ってきているのが分かった。


 多少俺の方が早く走り出し、距離を稼ぐことができたが、今の所俺に味方してくれる人等はいないので、多人数で捜索(そうさく)されれば、何時かは見つかり捕まってしまうだろう。

 だから、他のプレイヤーが容易に来ることができなくて、逃げ場所としてあまり考え付かないような所を考えなくてはならない。


 そういえば最近特殊な制限が完全解除されたんだったな。

 それなら……。

 

 そこまで考えると、俺は走りながら素早くメニューを開き、マップ画面で袋小路(ふくろこうじ)になっている所を探し、そこへ向かって走って行く。


 目的地に到着するとすぐ、周囲に人が居ないことを確認し、すぐ様シエルとネロに指示を出す。


「シエルは、そのまま上昇して行って、上にある煙突(えんとつ)に隠れていてくれ」


『は~い!』


「それと、ネロは潜影移動を使って、この家の屋根まで上ってくれ。できるか?」


「キュウ!」


 ネロは俺の問いかけに肯定(こうてい)するように、鳴き屋根へと上って行く。


 俺は気配察知を使い、まだ距離はあるが追って来ていることを確認すると、三角跳びの要領で壁を()り、家屋(かおく)の屋根へと上って行く。


 そして、屋根の上でネロと合流すると、ハイディングを使いつつそのまま息を(ひそ)めて、追跡者が過ぎ去るのを待つ。


 しばらくして、家屋の下の道に人が近付いてくる音が聞こえてきたので、サウンドアセンブルを掛け直し、身を隠しながら聞き耳を立てた。


「あれ? いないよ~」

「おかしいな、たしかにこっちに来たと思ったんだけど」

「隠れられるような所もないし、見間違えたんじゃないか?」

「う~ん、現に居ないし、そうかもしれないな」

「それじゃ今度はあっちを探してみようよ! 早くしないと、本当に見失っちゃうよ」

「だな」

「うん! それじゃ、行ってみるか」


 そう言い合って、俺を追って来たと思しき3人組みが、この場から走り去って行った。

 気配察知を使い、ある程度離れたことを確認すると、シエルとネロを(ともな)って屋根伝いに移動してその場を後にした。


 先程の場所から十分に離れ、気配察知やサウンドアセンブル、そして発見のスキルを駆使し、追跡者が居ないことを確認して、ようやく人心地(ひとごこち)付くことができた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ