Locus 43
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時刻は、午後9時少し前といったところ。
俺はさっそくシエルとネロを出そうとしたが、あまり他のプレイヤーに獣魔であるネロを目撃されるのはまずいと思い出し、(既に手遅れかもしれないが)人気のない路地裏に入って行き、周囲に他のプレイヤーが居ないことを確認すると、シエルの装飾化とネロの宿紋化を解き、ネロに頼みごとをする。
「ネロ、悪いけど3日後の……そうだな正午まで、街にいる時と草原を移動する時は、宿紋化するか潜影移動を使って俺の影の中に居てくれないか?」
「キュウ?」
ネロは『どうして?』と言わんばかりに、かわいく小首を傾げ、こちらを見上げてくる。
「早くても3日後の正午まで、獣魔はネロとクアしかいないから、他のプレイヤーに見つかるとちょっとめんどうくさいことになるんだ。だから、頼めないか?」
「キュ、キュ~~~……」
ネロは、両腕(前足?)を組み、何か考えるように瞑目してる。
「今では、そんなことなくなっているけど、シエルをテイムし立てだった頃も他のプレイヤーに道でしょっちゅう呼び止められて、何時・何処で・どうやってテイムしたのかとか、その連れているモンスターは何なのかとか、根堀り葉堀り聞かれた時期があってかなりうんざりしたんだよ。最終的には、シエルに街中に居る時は装飾化してもらって、街中で他のプレイヤーがある程度テイムモンスターを引き連れていても、呼び止められたりしなくなるまで、我慢してもらっていたんだ」
「キュキュウ?」
ネロはシエルの方を向き、『そうなの?』と聞き返すように、鳴き声を上げる。
「・・・・・・」
シエルは『そうだよ、たいへんだったんだよ』とネロに返事をしているのが伝わってくる。
「キュ~……キュウ!」
ネロは、シエルからの返事を聞いた後、少し逡巡するかのような挙動をしてから一度頷き、俺の影の中へと入っていった。
「これは、分かってくれたのかな? ありがとうな、ネロ」
「キュウ!」
それから俺達は街から出て、西の森を目指して進んで行った。
西の森へと向かう道中、進路上に居たモンスターを倒し、西の森に到着した頃には、ネロのLvが3上昇していた。
ネロは移動中も俺の頼みごとを聞いてくれていたため、俺の影からは出ずに時折魔法で攻撃していた。
そのためか、暗殺のアーツのハイディングとハイドアタックを合わせたようなスキルを、習得していた。
〔PS〕パッシブスキル:〔潜伏Lv0〕
対象の視界や認識(知覚等)から外れ、一定時間経過すると対象から自身の存在を暗ませる、潜伏状態になることができる。
潜伏状態の精度は、SLvとDEX・LUKの値に依存し、SLv上昇と共に対象に発見されるまでの間、全攻撃の威力が増加する。 MAXSLv30
そして俺は、周囲にモンスターがいないことを確認すると、素早くメニューを開きネロのステータスポイントの割り振りを行った。
現在のネロのステータスはこんな感じだ。
name:ネロ
sex:?
race:シャドービーストLv3
HP:130 MP:230
STR:23⇒24
VIT:23⇒24
AGI:23⇒24
INT:23⇒25
MID:23⇒24
DEX:23⇒25
LUK:23⇒24
STP:9⇒0
種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕
スキル:〔影魔法Lv4〕、〔影抵抗Lv1〕、〔影耐性Lv5〕、〔潜影移動Lv3〕、〔宿紋化Lv0〕、〔潜伏Lv0〕
固有スキル:〔専化影装〕
ステータスポイントは全体的に割り振り、残った2ポイントは魔法の威力と潜伏の精度を上げるため、INTとDEXにそれぞれ1ポイントずつ割り振った。
STRにプラス1で、23⇒24へ
VITにプラス1で、23⇒24へ
AGIにプラス1で、23⇒24へ
INTにプラス2で、23⇒25へ
MIDにプラス1で、23⇒24へ
DEXにプラス2で、23⇒25へ
LUKにプラス1で、23⇒24へ
それと、影魔法のLvが上がり、新しい魔法を習得していた。
□ シャドーシールド:影を収束し、魔力で盾の形に固めたものを、使用者を中心に半径20m以内の任意の場所に出現させる魔法。
盾は上方の一辺が50cm、下方の一辺が55cmの凧型盾で、影魔法のSLvが3の倍数になるたび、盾の一辺が8cm増加する。
最大増加幅は、80cmまで。
盾の強度は、INT・MID・LUK の値に依存する。
消費MP:5 リキャストタイム:8秒
さて、それじゃ西の森へ入って行くことにしよう。
俺はネロに影から出て来ても良いと伝えるが、潜伏しながらの攻撃が気に入ったのか、直感でまだ西の森の中を自身を晒して行動するのは危険だと判断したのか、俺の影から出てこようとしない。
俺が西の森の中へと歩いて行くと、ネロも潜影移動で付いて来るので、とりあえずこのまま行くことにした。
そうして気配察知を使いながらしばらく歩くと、気配察知に引っかかる気配があった。
気配のする方へ向かって少し行くと、光が見えた。
光源は3つあり、数秒光ると消えまた、数秒光ると消えるといった行動を繰り返しながら、空中を舞っている。
俺は更に近づいて行くと、飛んでいるものを視認することができた。
空中を舞っているのはどうやら虫のようだ。
甲殻の色は、やや明るい黄土色で金属光沢がある。
そして何より発光・明滅する腹部。
宛ら巨大化したカナブンに、蛍の腹部が組み合わさったような姿をしている。
そして俺はその虫を視界に入れつつ、識別を使った。
ブライトネスビートルA・B・C:Lv8・属性:光・耐性:斬・光・弱点:影・火・打
光耐性か……。
ということは、シエルの攻撃はあまり効かないな。
代わり? に弱点属性が影になっているけど、ネロの攻撃では致命打にはなるかどうか怪しい。
そうすると今回の戦闘で取るべき行動は、シエルが牽制して、俺が叩き落し、ネロが止めかな。
それと、光魔法を使われるかもしれないからシエルに、マインドブースター・ライトを全員に掛けてもらおう。
そうして、これからの戦いの方針を決め、シエルに指示を出す。
「シエル、あの虫のモンスター……ブライトネスビートルの属性が光になっているから、魔法を使われる可能性がある。だから、念のため全員にマインドブースター・ライトを掛けてくれ」
「・・・・・・!」
シエルから『わかった!』という返事が伝わってくる。
そうやって全員にマインドブースター・ライトが掛かるまで待っている間に、ブライトネスビートルの方の様子を窺っていると、何となく妙な違和感があることに気が付いた。
……なんだ?
いったい何が気になるんだ?
そう自問しつつ、ブライトネスビートルの周囲を隈無く注視していく。
ブライトネスビートルは相変わらず3体おり、不規則に空中を舞いながら腹部の光を数秒ごとに明滅させている。
ブライトネスビートルの上は、周りの木々の枝葉に覆われ、所々にある木々の枝葉の隙間から、月や星の明かりが僅かに漏れ出ていた。
ブライトネスビートルの下には、濃緑色の大きな茂みがあり、ブライトネスビートルが発する光に照らされ、何とも言えない不気味さが滲み出ている。
おかしい……頭の中では一瞬の出来事なのに、文章にすると途端に長く変貌する。。。なぜ?




