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Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第2章  Fランククエストと隠されし店
46/123

Locus 41 

「ランドルさん、契約し終えましたよ」


「おお、そりゃ良かったのぅ……って、もう孵ったのか! 幾らなんでも早すぎじゃないかのぅ?」


「ええ、それは俺も思いましたが、魔力を全て与えたら生まれちゃったんですよ」


「魔力を全てじゃとッ!? 無茶するのぅ。ということは今、かなりつらいじゃろ」


「はい。でもまぁ、こうしてネロにすぐに会えましたし、いいかなって今は思ってますよ」


 そうやって俺がランドルさんと話しをしていると、ようやくフィリアも獣魔の卵を選び終えたようで、こちらに近づいて来ているのが見えた。

 梟の目でフィリアが抱えている卵を注視してみると、レモンイエローを基調に、三とlが組み合わさったような若草色をした色柄が卵の頂点から四方に付き、卵の下方からは薄青色をした爪跡(つまあと)のような模様が四方に伸びるように付いていた。


「ランドルさん、決まりましたよ! ……って、リオンさん? その抱えている子ってもしかして、リオンさんの獣魔ですか!?」


「ああ、そうだよ。ネロ、こっちは俺の友人のフィリアだ」


「キュ? キュウ!」


 ネロは、フィリアの方に顔を向けて1度頷くと、右前足を上げ元気良く鳴いた。


「わぁ~かわいい! 私はフィリアって言うの。こちらこそよろしくね、ネロちゃん」


「キュキュウ!」


 ネロは、フィリアに返事をするかのように、元気良く鳴いた。


「ところでランドルさん、獣魔の卵ってそんなに早く、孵るものなんですか?」


「いや、普通はこんなことないんじゃがな。個別契約時に魔力を与えると魔力を与えた分、早く卵が孵るから試してみるといいと言ったら、リオンは全魔力を与えたんじゃと。その結果がコレのようじゃ」


「なるほど。リオンさん、本当ですか?」


「ああ。本当だ」


「でしたら、私も全魔力を与えてみます。私もすぐ獣魔と会いたいですし」


「いやでも、MPが0になるから衰弱状態が発生して、かなりつらいことになるぞ?」


「大丈夫です。既にそのつらさは経験済みですし、デスペナルティより時間は短いでしょうから、何とかなりますよ!」


「そ、そうか。まぁ、フィリアがそれで良いなら、止めはしないけど」


「はい! それでは、ランドルさん。個別契約の方をお願いします」


 そう言ってフィリアがランドルさんを(ともな)い、個別契約をする方陣へと向かって行った。

 それから少しすると、フィリアが選んだ獣魔の卵が孵り、獣魔がフィリアの胸元辺りに入っていったところで、ファンファーレが鳴り、インフォメーションが流れた。


『パパ~ン♪ L・クエスト《老店主の頼み事》をクリアしました』


『クエスト報酬:獣魔の卵×1を入手しました』


『ピロン! パパーン♪ 〔称号:解放せし者〕を取得しました』


 俺はさっそく取得した称号を確認しようとしてメニューを開くと、脳内に今まで聞いたことのない音が鳴り、インフォメーションが流れた。


『ピロリロリロリロリ♪ あるプレイヤーが条件を満たしたことで、新たなシステムが解放されました。(くわ)しくは、一斉送信された《解放されたシステムについて》というメールをご確認下さい』


 俺はすぐさま件のメールを探し、見つけ、その内容を確認した。

 そして、その内容はこういうものだった。


 ①:ディパートの街で獣魔屋が、3日後の8月×日午前10時から開店する。


 ②:PC(プレイヤー)()る製作物に、製作者の名前が載るようになる。


 ③:PCに因る製作物の説明文を製作者が、システム内にある複数の説明文から1つを選択し、付け替えることが可能となる。


 ①は、その内容の通りだと思うが、獣魔屋の名前や場所が記載されていないところを見るに、おそらく自分で探せということなのだろう。


 ②は、自己の製作物と他者の製作物とを明確に区別し、自己の製作物にブランドを付け、製作者の意欲を高めることに(つな)がるのだと思われる。

 それに、自分で作った物だと分かるのは、素直に嬉しいことだしな。


 ③は、今まで自作したアイテムの説明に、どうやって作り出したかという作り方が記載されたものが幾つかあった。

 アレでは、ある程度似たスキルを持っていれば、ソレを最初に作り出した製作者より容易に、同じアイテムを作り出すことができる可能性がある。

 それでは、苦心してソレを作り出した製作者にとっては、溜まったものではない。

 人によっては、そのままモチベーションが低下し、最悪の場合にはこのゲームをやめてしまうかもしれないのだから、このシステムの解放は生産プレイヤーにとっては、歓迎(かんげい)すべきことだと思う。


 そうやってメールの内容を確認していると、契約し終えたフィリアがこちらへと近づいて来た。


「リオンさん、今のインフォメーションって……」


「ああ。たぶん、俺達がクリアしたL・クエストが原因だろうな」


「そうですよね。これからどうしましょうか?」


「う~ん、こういう時こそ、素直に聞けば良いんじゃないか? 俺とフィリアが最初にパーティを組んだ時に、分からないことがあれば聞くって言っていたんだし」


「……ああ! ルイリちゃんですね。分かりました、相談してみますね。リオンさんはどうするんですか?」


「俺はアリルに連絡を入れとくよ。分からないことがあれば、聞いてくれって言われてるしな。まぁ、それは一旦(いったん)置いておくとして。フィリア、契約終わったんだよな?」


「えっ、あ、はい」


「獣魔はどうしたんだ? もしかして、まだ宿紋化したままなのか?」


「あ! そうですそうです! そのことでリオンさんに、聞きたいことがあったんですよ!」


「ん? なんだ?」


「その……宿紋化? でしたっけ、その解除方法が分からないんですよ! リオンさんと同じように魔力を100%与えたら、すぐに生まれたんですけど、急に飛び上がって来たと思ったら私の胸元辺りに、こう……すーっと入って行っちゃったんですよ! どうすればいいんでしょうか?」


「ああ、なるほど、そのことか。それなら獣魔に出て来てくれって呼び掛ければいいんじゃないか? 俺はそれで出て来てくれたし」


「え、そうなんですか? 分かりました。それじゃ、呼び掛けてみますね」


 そうフィリアは言うと、自分の胸元を見るようにして、宿紋化した獣魔に声を掛ける。


「クアちゃん、出て来て下さい」


 すると、フィリアの胸元の辺りに波紋が立ち、その波紋の中心部からフィリアの獣魔が出て来た。


「ク~!」  『は~い!』


 ん? 今何か聞こえたような……気のせいか?


 フィリアの獣魔の外見は、目測で全長20cm強(耳・羽・しっぽを含まない)で、レモンイエローの体毛と若草色をした三とlを組み合わせた模様が額にあり、背部全体と手足の外側に若草色のトラ縞のような模様が付いており、瞳の色は澄んだ水色をしていた。

 腹の体毛は白く柔らかそうで、背中から2対4枚の薄青い妖精のような羽が生えている。


「わっ! 本当に出て来てくれました。リオンさん、教えてくれてありがとうございます。」


「どういたしまして。それで、その子に何て名前を付けたんだ?」


「あ、はい。では、紹介しますね。この子はクアちゃんと言います。クアちゃん、こちらは私のお友達のリオンさん、あっちがリオンさんのテイムモンスターのシエルちゃん、そしてこっちがリオンさんの獣魔のネロちゃんです。仲良くして下さいね」


「クゥウ? クゥクゥクゥクー!」  『おともだち? リオン、シエル、ネロ、よろしくねー!』


「あ、ああ……こちらこそ、よろしくな、クア」


「・・・・・・ー!」


 シエルから『よろしくー!』と言っているのが伝わってくる。


「キュー!」


 ネロもクアに返答するように、元気良く鳴いている。


 気のせいじゃなかった!

 えッ? なんで、クアの言っていることが分かるんだ?

 何か、動物が言っていることが分かるスキルなんて、伝心くらいしか…………まさか。

 俺はそこまで考えると、1つ思い当たることがあったので意を決し、フィリアに聞いてみることにした。


「なぁ、フィリア。もしかして、クアの種族ってドラゴンなのか?」


「えッ!? そうなんですか?」


「いや、俺に聞かれても分からないけど、俺の種族スキルに竜言語ってのがあるんだ。その竜言語ってスキルは、真竜と亜竜との意思疎通と竜言語の読み書きができるようになるんだけど、さっきからクアが何を言っているか明確に分かるからさ、たぶんそうなんじゃないかなって思ったんだよ」


「そうなんですかぁ。そういえば、たしかに~ドラゴンって名前の種族だったような……? ちょっと確認してみますね」

 

 そう言うと、フィリアはメニューを開き、何かを操作して黙った。

 少しすると、フィリアはメニューから顔を上げ、こちらを向く。


「クアちゃんの種族名は、フェアリードラゴンになってます」


「フェアリードラゴン、か。名前からして真竜ではなさそうだから、亜竜なのかな」


「ですかねぇ」


 そうやってフィリアと話をしてると、今まで重かった体がふっと軽くなり楽になった。

 俺はメニューを開いてステータスを確認すると、最大MPの1割が回復しており、半減していたステータスも元の数値に戻っていた。

 ついでに時計を確認してみると、もうすぐ午後6時30分になるところだった。

 

「そういえば、フィリア。時間の方は大丈夫なのか?」


「えッ? ……あ! もうこんな時間なんですか。せっかくクアちゃんと、色々な所を見て回ろうと思っていたのに……残念です」


「クゥ~」  『ざんねん』


 そう言って、フィリアとクアは互いに肩を落として項垂れて、全身で落胆を表現していた。


「ま、まぁ、クアは逃げたりなんかしないんだからさ、これからいっぱい一緒に楽しめばいいじゃないか」


「うぅ~確かに。そうですね、そうします。それではランドルさんにご挨拶をして、お(いとま)しましょうか」


「だな」


 そうして俺達はランドルさんの所へ行き、そろそろ帰ることを伝えると、今度は客として来てくれよと言い、薬のお(すそ)分けを2本ずつくれた。

 何でも、あれば役に立つし、ランドルさんの分は十分にあるから受け取って欲しいと言われたので、素直に頂くことにした。


 因みに、もらった薬はこういうものだった。


【製作者:ランドル】

消耗アイテム  レストアポーション:復元薬水。部分欠損(パーシャルロスト)身体破損(ボディクラッシュ)系状態異常を回復させる薬水(ポーション)


効果:部分欠損・身体破損系状態異常の回復。

使用期限:後11ヶ月 29日 23時間



 部分欠損は、身体の一部を完全に切断されたり、(えぐ)り取られたりした時に起こる状態異常のことで、身体破損系は、高所から落下したり重い物に押し潰されたりした時に、運悪く中途半端に助かってしまうと、掛かってしまう状態異常のことだ。


 現状では死に戻りするしか回復させる方法がなかったので、この薬の存在は大変助かり嬉しいものだ。

 もっとも、彼我の実力(ステータス)(いちじる)しく離れていたり、ステータスがよっぽど貧弱でない限り、発生する状態異常ではないので、保険くらいに考えて置けば良いだろう。


 その後俺達は、ランドルさんの店を出て行き、フィリアを中央広場まで送っていった。


「リオンさん、今日は楽しかったです。ありがとうございました」


「いや、こちらこそ楽しかったよ。又機会があれば、クエストでも狩りでも誘ってくれ」


「はい! ……あ、そういえばL・クエストのLって結局どういう意味だったんでしょうか?」


「ああ、アレか。それはたぶん、解放って意味のリベレーションの頭文字だと思うぞ。L・クエストをクリアした後、新たなシステムが『解放』されたってインフォメーションが流れたし、称号も『解放』せし者だったしな」


「なるほど! 言われてみればたしかに、そうですね。これですっきりしました。それでは、リオンさん。お疲れ様でした。私にできることがあれば、その時は遠慮(えんりょ)無く呼んで下さいね。微力ながらお手伝いしますから」


「ああ、フィリアもお疲れ様。その時は頼むな」


「はい! それでは、またです」


「ああ、またな」


 そうして、フィリアはクアを宿紋化させ、ログアウトして行った。



 ~おまけ~


name:クア

sex:?

race:フェアリードラゴンLv0

HP:150  MP:180

STR:10

VIT:16

AGI:24

INT:28

MID:28

DEX:20

LUK:20


種族スキル:〔竜の息吹(氷)〕、〔魔法半減〕


スキル:〔風魔法Lv0〕、〔水魔法Lv0〕、〔風耐性Lv5〕、〔飛行Lv0〕、〔宿紋化Lv0〕


固有スキル:〔風繭(かざまゆ)


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