表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第2章  Fランククエストと隠されし店
36/123

Locus 32  

 ズガガガガガガ―――ピギィィィイイイイイ!!―――ドゥン!!


 スパイラルシェイバーによって放出された赤いエネルギーと土煙(つちけむり)が消えた後そこには、(すさ)まじい破壊の痕跡(こんせき)が残っていた。

 高威力で放出された極太の赤いエネルギーにより地面が(えぐ)れ、Uの字型の(みぞ)が5m以上にも渡りできている。


「「「…………」」」


 さらに、放出された赤いエネルギーの進路上にあった木々はそのエネルギーにより穿(うが)ち、削られ、今も(なお)自重に耐え切れず『ミシミシミシッ! バキッバキバキバキ! ……ズズン!!』と音を立てながら、次々と倒壊していっている。


 一方レッドボアは、耐性が突属性であったためか、HPバーは3割強しか減っておらず、エルルゥリアが与えたダメージ量と合わせても、5割に届いているかいないかといったところだ。

 魔法で強化してもらい、現状で最大の一撃であったにもかかわらず、思ったよりレッドボアにダメージを与えられなくて(へこ)むべきか、それともレッドボアのタフネスっぷりに感心した方がいいのか、悩みどころである。


 だけど、ダメージ量は思ったよりなかったものの、当初の目的であるエルルゥリアが与えたダメージ量を上回る、ということはできた。

 レッドボアの方を注視して見ると、HPバーの横に気絶のバッドステータスアイコンが出ているのが見えた。

 俺は、現在スパイラルシェイバーの技後硬直で動けないので、他の皆に声を掛ける。


「皆! レッドボアが気絶している内に、攻撃を!」


「「「ッ! はい!」」」


 フィリアやクレアさんは呆然と、エルルゥリアは金魚みたいに口をパクパクとさせていたが、俺が声を掛けると正気に戻った様で、すぐに反応があった。


「・・・・・・!」


 シエルから『わかった!』という返事が伝わって来る。


「ウォン!」


 そうして、皆から遠距離での(一部除く)一斉攻撃が行われた。


「ファイアーボール!」


 フィリアから拳大の火球が発射され、着弾し、レッドボアの体表が炎上し火の粉を振り撒く。


「シャドーエッジ!」


 エルルゥリアがそう唱えると、レッドボアの影が膨張(ぼうちょう)・拡大し、3方向から影を固めた様な仄暗い剣身が出現し、レッドボアへと殺到していく。


「アクアストライク!」


 クレアさんから大人の頭程もある水球が発射され、レッドボアに当たると水しぶきを上げつつ砕け散る。


「・・・・・・!」


 シエルから『ライトアロー!』と唱えるのが伝わって来ると、3本の光の矢がレッドボアの顔周辺に次々と着弾(着矢?)していく。


 シエルのライトアローが消えた後、ちょうどレッドボアが気絶から回復し立ち上がろうとした瞬間、何時の間にかルカがレッドボアの側に()り、レッドボアの耳元で『ウォオオオオオーーーン!』と威嚇するように()えた。

 するとレッドボアは起き抜けで驚いた様で、『ビクッ!』と体を震わせ硬直してしまう。


「エイミングサイト」

「キャストエッジ!」


 その隙を狙ったかの様に、クレアさんがレッドボアの顔面目掛けて、4本のナイフを投げ付けた。


「プガップギィ!」


 ―――キン! カン!


 しかし、最初に当たった2本の投げナイフによる痛みで正気にもどったのか、残りの2本の投げナイフはレッドボアの牙で弾かれてしまった。


 ルカはレッドボアが俺達の方へ突っ込んでこない様に、ヒット&アウェイを繰り返してレッドボアの注意を引き付けている。


 レッドボアのHPバーを確認してみると、残り3割弱といったところだった。

 レッドボアと俺達の間には、スパイラルシェイバーで倒壊していった木々のバリケードが形成されており、容易にこちらに来ることができなくなっている。


 しかし、いくら即席のバリケードがあれど、もしもレッドボアがこちらに突っ込んできたら、パーティは分断され最悪各個撃破されかねない。

 俺はそう危惧しつつ、クレアさんの作戦通りレッドボアの注意を引くため駆け寄り、攻撃していった。


「ダブルスラッシュ!」


「プギギィ!」

 

 俺はレッドボアの側に着くと同時に切り込み、レッドボアの注意を引く。


 幸い、今まで稼いだヘイト(敵愾心(てきがいしん))により、レッドボアのダーゲットは予想通り俺へと、釘付けになる。

 俺は()えてレッドボアの正面に立ち、ノービスソードで攻撃をいなし、弾き、受け、隙を見つけては、ちまちまと攻撃していった。

 そしてレッドボアの注意が完全に俺に向けば……。


「ッ! 今です!―――セットバックスナイプ!」


「ファイアーボール!」


「シャドーエッジ!」


「・・・・・・!」


 中衛として投げナイフで攻撃していたクレアさんが合図を出し、後方へ飛び退くと同時にナイフを飛ばして牽制を行い、後衛組みが一斉に魔法での遠距離攻撃を行う。

 その後、レッドボアの注意が後衛組みへと向けられたら、俺が再度レッドボアへ攻撃してダメージを与え、注意を引き付けるということを繰り返している。


 そして、レッドボアのHPバーが残り1割を切った時、ソレは起こった。


「プゴォォォオオオオオ!!」


 レッドボアは怒りに満ちた様な雄叫びを上げると、赤く脈動するオーラを纏い、前足を上げて器用に後ろ足だけで立ち上がった。


 俺は見切りのスキルにより目の前が真っ赤に染まった。

 こんなことは今までに一度も無かったが、これはやばいと思い『下がって!』と皆に注意を促しながら、俺もすぐ様後方へと下がった。


 ズダァァァーン!


 レッドボアが上げた前足を振り下ろすと、腹の底に響く様な大きな音と共に、前足を打ち付けた所から放射状に衝撃波が走り、俺達を襲った。


「ぐッ!」


「ギャゥン!」


 後衛組みとクレアさんは、レッドボアの範囲攻撃の射程外に退避できた様でダメージはなかったが、俺とルカは退(しりぞ)く距離が足りなかったためダメージを受けてしまった。

 ルカは今の一撃でHPが半分程になり、俺はバーサークの影響で最大HPの6割強ものダメージを負ってしまっていた。


 いくら回復力に特化した魔法をフィリアが使えようとも、この量を一気に回復するのは厳しいだろうと判断し、即座にシエルに指示を出す。


「シエル! マインドブースター・ライトをフィリアとクレアさん、それとシエル自身に掛けて、回復魔法の底上げを頼む!」


「・・・・・・!」


 シエルから『わかった!』という返事が伝わってくる。


 それから程無くして、フィリアとクレアさんの体全体がポゥっと光りそして消えた。


「シエルちゃん、ありがとう!」


「シエルさん、ありがとうございます!それでは、フィリアさんはリオンさんの回復を。私とシエルさんは、ルカさんの回復を行いましょう」


「分かりました。ではいきます!―――ヒール!」


「こちらもいきます!―――キュアウォーター!」


「・・・・・・!」


 シエルから『キュアライト!』と唱えているのが伝わってくる。


 フィリア達のおかげで、ルカのHPバーは全回復し、俺のHPバーはおよそ9割まで回復した。


「ありがとう、フィリア! 助かった」


「ウォン!」


「さっきのは衝撃波だよね? それならッ!―――ガードブースター・アース!」


 俺の足元からややくすんだ黄色い光の(つぶて)が俺の周囲に浮かび上がり、それ等が俺の体に吸着すると、体全体が若干暗い黄色の光に包まれ、そして消える。

 視界の端を見ると、VIT↑のアイコンが新たに付いているのが確認できた。


「まぁ、気休めかもしれないけど、ないよりはマシでしょ」


「エルル、ありがとな」


「うん♪ それじゃ念のため皆にも掛けておくね」


 そう言ってエルルゥリアは、次々とガードブースター・アースを掛けていった。


 さて、問題はレッドボアへの対処だが……クレアさんからの作戦変更はないし、とりあえずあの範囲攻撃に注意しつつ、攻撃をしてみますかね。

 俺はそう考えながら、レッドボアへと走り寄り攻撃を加えていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ