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Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第2章  Fランククエストと隠されし店
32/123

Locus 28   

 そろそろ引き上げ、セーフティエリアに移動しようとした時、ふいにクレアさんがこんなことを言った。


「皆さん、何か聞こえませんか?」


 俺はクレアさんの方を見ると、クレアさんは目を(つぶ)りながら、猫耳ならぬ豹耳(ひょうみみ)をピコピコと動かしていた。

 今度はフィリアの方を見るが、フィリアは耳を()ます様にしているが、結果は(かんば)しくないようで、しきりに首をかしげている。


 一応俺も、自分の耳の後ろに手を置き、耳を澄ませてみる。

 すると、さっきまでは聞こえなかった様々な音が聞こえるようになった。


 木々の枝葉が森を吹き抜ける風により、互いに(こす)れ合いサワサワと音を発し、時折小鳥と思しき鳴き声が『ピピピッ、チチチッ』っと聞こえてくる。


 俺はそれらの音を意図的に意識の外へ出し、クレアさんが言っていた音を探してみる。

 耳から聞こえてくる全ての音から、自然に発する音とそうでない音とを分け、選別していく。


 その結果、なにやら腹に響く様な『ドドドドドド!』という音と、誰かが何かを叫んでいる様な音が聞こえた。


 そして、それ等の音が聞こえた後、脳内で『ピロン♪』という音がした。

 俺は素早くメニューを開くと、新しいアーツを習得していた。

 新しく習得したアーツは、暗殺スキルのアーツでこういうものだった。


□ サウンドアセンブル:自身を中心に、一定範囲以内の音を任意で取捨選択し、集音することができる。

SLv上昇と共に、より精度が増し集音可能範囲が広がる。

持続時間は、DEX・MID・LUK の値に依存する。

消費MP:10  リキャストタイム:60秒


 俺はさっそく有効化し、このアーツを使ってみた。


「サウンドアセンブル」


 先程耳を澄ませていた時に聞こえていた雑音はなく、俺が聞きたい音のみがより鮮明に聞こえ、音が声に、声が言葉として認識することができた。


「・・・・・・て・・・・・・・・・・・・」

「・・・す・・・けて・・・・・・・・・・・・!」

「ひぃぃぃやぁあああ!ちょ、ホント誰か助けてぇぇぇえええええ!!!」


 (しん)切羽詰(せっぱつ)まった、もう後が残されていない、ただただ悲痛な叫び声が俺の耳に入って来る。

 さらに、その悲痛な叫びのすぐ後に、『ドドドドドド!』っという腹の底に響く様な地鳴(じな)りと、怒りに染まっている様な、『プゴォォォオオオオオ!!』という鳴き声が聞こえて来た。


「クレアさん、どうやら誰かが、モンスターに追われて逃げているみたいですよ」


 俺がアーツを使い、聞こえてきた情報をクレアさんに伝えると、クレアさんは目を見張り少し驚いた様な顔をした。


「たしかですか?」


「はい、集音の様な効果のアーツを使ったので、まず間違いないかと」


「ふむ、フィリアさんはどうしたいですか?」


「えっと~……助けを求めているなら、助けて上げたいです」


 フィリアはやや戸惑(とまど)いつつ自分の意見を言った。


「リオンさんは、どう思いますか?」


残酷(ざんこく)かもしれませんが、放っておけばいいと思います。知り合いならまだしも、赤の他人ならトレインしつつ、MPK(モンスター・プレイヤー・キラー)されるリスクもありますし」


「クレアさんの意見はどうですか?」


 そうフィリアがクレアさんに聞いた。


「そう……ですね。私もリオンさんの意見に賛成ですが、フィリアさんの意見も尊重(そんちょう)したいですので、こういうのはどうでしょうか?折衷案(せっちゅうあん)として、私達3人の中の誰かの知り合いなら助けに入る。そうでないなら助けないというのはどうでしょう」


 俺はフィリアの方へと視線を向けると、フィリアも俺に視線を向け互いに頷くと、クレアさんの折衷案に賛成し、その案で行動することにした。


「問題は、どうやってその追われている人を特定するかですが……」


 クレアさんは腕を組みつつ、困った様に言った。


「それなら少し危険ですが、俺が視認してから識別すれば、その追われている人の特定ができるはずですよ。このゲーム、たしか同一の名前は付けられない様になってましたよね?」


「ええ、そうですね。お願いできますか? リオンさん」


「分かりました。……っと、もう気配察知の圏内(けんない)に入って来てますね」


「そうなんですか?」


「ああ、まだ距離はあるけど、10時の方向だな」


 そう俺はフィリアに答え、(くだん)の人を探すように視線を向け、目を()らす。


 少しすると、フードを深く被りながら全速力で逃走(とうそう)している人とその少し後ろから猛追(もうつい)してきている、赤っぽい色の大きな(いのしい)が見えた。


 俺はそれ等を視認すると、すぐに識別を使ってみた。


エルルゥリア・悪鬼人族(デモノイド)・Lv5・属性:地・影・耐性-・弱点:光


レッドボア・Lv8・属性-・耐性:突・弱点-


 俺が識別の結果を2人に話すと、クレアさんがなんだかとても疲れた様な、それでいて()まなそうなそうな顔をした。


「本当に申し訳ありません。あのような折衷案を出しておきながら……ソレ、私の知り合いといいますか、リアルフレです」


「えッ!? それなら助けに行かないとですね。」


「そうですね。そういう案でしたし、早く助けに行きましょう、クレアさん」


「お二人共、ありがとうございます」


 そう言うと、クレアさんは両手を前で重ねながらお辞儀(じぎ)をした。


「・・・・・・!」


 シエルも俺達に賛同する様に、というか『わたしもたすけるー!』と賛同し、クレアさんの前でピカピカと光る。


「シエルも助ける気、満々の様ですよ」


 そう言って、シエルが言いたいことを代弁し、クレアさんに伝える。


「シエルさんもありがとうございます」


 クレアさんはそう言い、再度お辞儀をした。


「それでは、私はエルルに連絡を取りますので、エルルと合流する場所に移動しましょう」


 そうして俺達はクレアさんに、付いて行き移動を開始した。



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