Locus 26
―――――あれから3日後
俺はFランククエストを中心に、マジックミューティレイトの検証、無属性魔法と清酒の探索を行った。
Fランククエストは、ギルドで受けられる20種と、街中で受けられる10種の合計30種があった。
その内、単一のステータスが上昇するクエストが7種あり、そのクエスト名と条件がこれ等だ。
薪割りの手伝い:条件:薪割り100個を終えるごとに、STR1上昇。
畑の石拾い:条件:石(小石・石・小岩)を100個拾うごとに、VIT1上昇。
手紙の配達:条件:1時間以内に全ての手紙を配り終えると、AGI1上昇。
但し、手紙の総枚数はクエストを受けるたびに異なる。
品物の配達:条件:1時間以内に全ての品物を配り終えると、AGI1上昇。
但し、品物の総数はクエストを受けるたびに異なる。
複写の手伝い:条件:1時間以内に10頁以上の複写を成功させると、MID1上昇。
皿洗いの手伝い:条件:1時間以内に、皿を1枚も割らずに100枚の皿を洗い切ると、DEX1上昇。
街のゴミ拾い:条件:1時間以内に、ゴミの中に稀に紛れているRを合計100R以上拾うと、LUK1上昇。
手紙の配達と品物の配達で上昇したAGIは互いにリンクしているようで、上昇上限に達するとそれ以上AGIの値は上昇しなかった。
複写の手伝いは、手書きで既存の本の内容を書き写すというものだった。まるで現実の写経の作業のようで結構くるものがあったが、これもクエストだと思いなんとか達成することができた。
皿洗いの手伝いは、泡立ち草という植物の搾り汁を布巾に染み込ませ、水洗いをすることで現実の洗剤の様な働きをする液体を用いて、皿洗いをするというものだった。
この泡立ち草の搾り汁が水と混じることで泡立ち、皿の汚れを落とすのだがそれと同時に妙なぬめり気が生じて滑りやすくなるという代物だった。
気を抜くとすぐに落としそうになるので、集中力を要する大変な作業だったが今ではいい思い出だ。
クエストによるステータス上昇上限は5までで、HP・MP・INTの上昇するクエストはなかったが、その他のステータス上昇クエストで全てステータス上昇上限までいくと、コンプリートボーナスが発生し称号を取得することができた。
その称号がこちら。
〔称号:知恵を絞りし者〕:数あるクエストの中で、自身の能力を高めるために、試行錯誤した者の証。
効果:INT+5
次にマジックミューティレイトの検証だが、分かったことと言えばかなり酷いということだった。
まず、ソードダンスやバーサーク等の効果で武器まで燐光やオーラの様なもので包まれている時に、魔法を斬り付けると、剣の耐久値が100未満だと剣で魔法を斬り壊すのと同時に、剣の耐久値が全損し剣身が砕けてしまった。
又、剣の耐久値が100以上のものでも、魔法1発を斬り壊すたびに、剣の耐久値の9割が消耗するという酷いものだった。
そして、マジックミューティレイトを使い魔法を斬り壊してみると、剣の耐久値が100未満のものだと、斬り壊すたび最大耐久値の1割が減少していき、剣の耐久値が100以上のものだと、斬り壊すたび耐久値の減少は10ずつだった。
もしも、あの時マジックミューティレイトを習得するまえに、耐久値∞のノービスソードで実戦練習をしていなかったらと思うと、考えただけですごいお金が掛かると分かる。
あの時の俺ナイス判断だ!
最後に2つの探索だが、無属性魔法の方は情報収集2日目にして分かった。
複写の手伝いの時に、複写師のビーンさんが知っていたのだ。
ビーンさんが言うには、東の森の奥地で隠居している友人が、無属性魔法を使えるのだそうだ。
もしもそこを訪ねるのならと、紹介状を書いてくれた。ビーンさんには感謝だな。
もうひとつの方の清酒だが、こちらは街にはなかった。
しかし、西の森の酔いどれオーガからドロップすることが分かった。
酔いどれオーガはどうやらクエストモンスターらしく、ギルドでクエストを受注しないと出現しないようだ。
それと、アリルからのメールの返信が届き、アイテムボックス以外にアイテムを入れると、時間の影響を受けることは、β時代からもある仕様だそうだ。
因みに、アイテムボックスは、1マス10個のアイテムを入れることができ、マスの数はアイテムボックスを具現化する時に消費するMP量によって異なるらしい。
そして、アイテムボックスに入っているアイテムは、スキルによる盗みやデスペナルティによるアイテムドロップをも防ぐようだ。
但し、アイテムボックスを具現化した時に消費できるMPの最大量は現在の自分の最大MPの半分までで、アイテムボックスを具現化するのに消費したMPは、アイテムボックスの具現化を解くまで回復しないらしい。
又、アイテムボックスの具現化を解くと、アイテムボックスに入っていたアイテムが全て、その場でばら撒かれるそうだ。
フレンドチャットで話をしてみたが、どうやら虚空庫についてはアリルも知らないらしい。
β時代からあったのか、それとも正式版からなのかも分からないそうだ。
そして、この3日間で他に変わったことが3つ。
1つ目は、今までギルドに行くためによく通っていた道だったのに、突然認識できるようになった店があったことだ。
店の入り口にはオープンの札が掛かっているのに、中に入ることができない不思議な店だ。
これは恐らく、何か条件を満たすことで入店できるようになるのだと思う。
この店を認識できるようになったのは、Fランククエストを10種以上クリアしていた時だったから、今では30種クリアしているので、また後で行ってみようと思う。
2つ目は、Fランククエストをたくさんクリアしたおかげで、ギルドランクがFからEに昇格したことだ。
因みに、各ランクの認識は以下の様になっている。
Fランク:見習い
Eランク:駆け出し←今ここ
Dランク:半人前
Cランク:一人前
Bランク:熟練者
Aランク:達人
Sランク:人外
SSランク:化物
SSSランク:生きる伝説
そして現在の俺のステータスはこんな感じだ。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv6
job:冒険者 rank:E
class:ノービスLv6
HP:206 MP:132
STR:59
VIT:28
AGI:59
INT:29
MID:26
DEX:57
LUK:38
所持金:42385R 虚空庫 32/49
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv0〕
装備スキル:〔STR増加Lv11〕、〔AGI増加Lv11〕、〔剣Lv17〕、〔料理Lv10〕、〔暗殺Lv18〕、〔調教Lv6〕、〔識別Lv13〕、〔気配察知Lv18〕、〔梟の目Lv18〕、〔見切りLv6〕
控えスキル:〔鑑定Lv18〕、〔発見Lv12〕、〔虚空庫 rank1〕、〔再生Lv2〕、〔合成Lv0〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕
称号スキル:〔伝心Lv5〕
固有スキル:〔狂化Lv3〕
3つ目は、料理のスキルLvが10に達したことで、アーツを習得していたことだ。
□ 状態促進:対象物の時間を促進させ、状態を変化させることができる。
促進させられる時間の最大値は、料理のSLvとINT・LUK の値に依存する。
消費MP:10 リキャストタイム:5分
□ 腐敗抑制:対象物の完全腐敗までの時間を引き延ばすことができる。
但し、腐敗抑制を使用した対象物の質と味は、落ちる。
引き延ばせる時間の最大値は、料理のSLvとINT・DEX・LUKの値に依存する。
消費MP:15 リキャストタイム:5分
□ 瞬間料理:自身の手で作成したことのある料理を、材料が在る限り瞬時に作成することができる。
但し、瞬間料理で作成した料理の質と味は、落ちる。
消費MP:10 リキャストタイム:3分
状態促進は、パンの生地の発酵時間や漬物等を漬ける時間を短縮するのに用いるアーツだ。
現実では、1時間から半年程も掛かるが、このアーツを使えばもっと早くに出来上がるということだ。
腐敗抑制は、つまるところ防腐処理を施すということだと思う。
その過程で、食材や食品の質や味が落ちるのだろう。
できればこのアーツを使わずに、美味しく新鮮なうちに食べたいものだ。
瞬間料理は、その名の通りの効果だと思う。
こちらも腐敗抑制と同じく、このアーツで作成した料理の質や味が落ちるので、すぐに回復したいとき以外は、使いたくないな。
食べるなら美味しいものの方がいいしね。
そして現在俺は、料理で消費して減ってきた調味料と果実、蒸留水等の買出しに来ている。
街の雑貨屋で塩・胡椒・香草・砂糖・空き瓶を購入した。
塩(100g)×5:1500R
胡椒(100g)×5:2500R
香草(1瓶)×5:2500R
砂糖(100g)×5:3000R
空き瓶(1個)×30:3000R
所持金:42385R⇒29885R
街の食材屋でりんごを購入した。
りんご(1個)×20:600R
所持金:29885R⇒29285R
街の酒場で蒸留水を購入した。
蒸留水(1樽)×1:3000R
因みに、1樽で2斗(36ℓ)の蒸留水が入っている。
所持金:29285R⇒26285R
うん、買うものはこのくらいかな。
俺が買ったものを確認していると、ふいに「ポーン」という音が聞こえてきた。
軽く周囲を見渡すと、視界の端にFCと書かれたアイコンが見えた。
俺が視線入力で、そのアイコンを選択するとウィンドウが現れ、『フィリアからフレンドコールが来ています。』と出た。
フィリアからか……何だろう?
俺はそう思いつつ、音声入力で回線を開いた。
「フレンドチャット オープン」
『あ、お久しぶりです。今大丈夫ですか?』
「ああ久しぶり、大丈夫だが……どうしたんだ?」
『狩りのお誘いですよ。東の森でLv上げも予ての狩りです、どうでしょうか?』
「狩りに行くのはいいけど、フィリアと俺との2人でか?」
『いえ、私の友達も一緒で、3人になります』
「ん、分かった。狩りには今から行くのか?」
『ええっと今から行くと、途中でお昼を挟まなきゃいけないので、そうですね……午後1時30分に街の東門前で待ち合わせしませんか?』
フィリアにそう言われ、時計を確認すると午前11時40分を少し回ったところだった。
「分かった。街の東門前で、午後1時30分に待ち合わせだな」
『はい!それではよろしくお願いしますね。ではまたです』
「ああ、またな」
そう言ってフィリアとのフレンドチャットの回線が切れた。
昼食には若干早いが、待ち合わせの時間もあることだし、俺はログアウトすることにした。




