Locus 25
さて、結構お金も溜まったことだし、念願の魔法をスキル屋に買いに行こうと思う。
俺はさっそくマップ検索欄で検索し、スキル屋の場所を探した。
すると、マップデータ上に黄色い光点が灯り、スキル屋の場所が分かるようになる。
現在の時刻は午後10時少し前だが、たぶんまだ開いているよね?
というか、お店やギルドってこんな時間までやっているのかな?
でも夜型の人だって居るわけだし……だ、大丈夫だよね?
結論を言えば、大丈夫だった。
俺はスキル屋に入ると、受付カウンターにいる人に、魔法を置いてるかどうかを聞いた。
魔法は置いてあったが、高すぎて買うことができなかった。
四属性(火・水・風・地)魔法は、1種1個につき、10万R。
光・影属性に至っては、その1.5倍の15万Rもしていた。
た、足りない……全然足りてない。
魔法はいったん諦めて、他に何かないか見てみた。
他にあるのは、各武器の基本スキルと生産系スキルとがあった。
各武器スキルの値段は、500~2000R程でそれほど高くはない。
生産系スキルの方は、高いもので1万R、安いものだと3000Rのようだ。
あれ? ゲームによっては違いがあるが、無属性魔法は置いてないのだろうか?
一応受付カウンターにいる人に聞いてみたが、置いてないそうだ。
ふむ、置いていないということは、無属性魔法が存在しないということではなさそうだ。
明日からしばらくFランククエストをこなしながら、情報収集していこうかな。
そう考えながら、スキルを見ていくと、興味が沸いたものがあったので、購入した。
それがこれだ。
□ 合成:MPを消費して2つ以上の物を合わせて1つの物にする技能。
但し、合成に失敗すると合成で使用した素材は失なわれる。 MAXSLv10 値段:5000R
それじゃ、次は料理をしようと思う。
回復やら、なにやらで結構食品アイテムを消費したので、補充しておきたい。
それに、今持っているアイテムで不味くないポーションも作れたら作りたい。
食品アイテムじゃ戦闘中には、使いづらいからな。
そう考えつつ、俺は共同生産ギルドに向け歩いていった。
共同生産ギルドに到着すると、受付窓口で200Rを払い、2階の個室へと入って行く。
さて、さっそく料理作りを始めよう!
そう思い材料を実体化しようとして、あることに気づいた。
それは、今までに見たことのない、正確には見たことのあるものが、変わってしまったアイテムがあったからだ。
そしてその変わってしまったアイテムがこちら。
食材アイテム 傷んだ基本虫の足:常温に24時間以上も晒されてしまったベーシックインセクトの足。表面が水っぽくなり、やや生臭い。加熱処理することで、まだ食べることが可能。
完全腐敗まで後、11時間。
素材アイテム 萎びた薬草:採取してから何の処理もされず、しまわれていたキュアハーブ。全体的に水気が失われ、しんなりしている。
あれ? 常温に晒したってあるけど、インベントリにしまってあったはず・・・・・・あっ! そういえば、虚空庫の説明に時間の影響を受けないってあったような。
インベントリに相当する魔法の肩掛け鞄には、時間の影響を受けないという表記はなかった。
ということはもしかして、実体化していないだけで、肩掛け鞄は常に装備している扱いなのかな?
それなら、この常温に24時間以上も晒されてっていうところも、納得ができる。
つまり、現実でいうところの普通の肩掛け鞄に、防腐処理をしていない刺身の切り身や、摘み取った草をそのまま入れて、放置していたということになる。
そりゃ、傷んだり萎びたりもするというものだ。
このことを踏まえ、俺は普段鑑定していなかったアイテムも鑑定してみた。
その鑑定結果がこれだ。
消耗アイテム 初級者ポーション:キュアハーブを磨り潰したものを、蒸留水と混ぜ合わせた薬水を更に、蒸留水で2倍に薄めたもの。
薄めた分、薬効も落ちており、ポーションに比べ防腐効果も短くなっている。
効果:HP30回復 使用期限:後6日15時間
やはりあったか、使用期限・・・・・・現実の薬にも使用期限があるし、妙にリアリティーがあるこのゲームならあると思ったよ。
今日初級者ポーションを買ってから、8時間と少し経っていることから、恐らく初級者ポーションの使用期限は7日なのだろう。
しっかし、こんなところまでリアリティー溢れなくてもいいのにな。
一応このことはアリルに知らせておこう、もっとも既に知っていることかもしれないけどな。
さて、アリルに連絡するのは後にして、さっさと料理をしてしまおう。
個室の利用時間には、限りがあるしな。
個室に備え付けてある樽に水が入っていたので、それを料理キットにある鍋に入れ、沸騰させて傷んだベーシックインセクトの足を茹でる。
すると、若草色をしていたベーシックインセクトの甲殻が、みるみる朱色に変化していった。
それを見て俺は、なんか現実の蟹や海老みたいだと思った。
ベーシックインセクトの甲殻全体が、綺麗な朱に染まってから3分程度更に茹でてから、火から下ろした。
その後、茹でたベーシックインセクトの足を水に潜らせ、粗熱を取り、料理キットの中にあった料理用の鋏で甲殻を切り裂いていく。
甲殻を取り除いたら、塩・胡椒と塩・香草で味を付け、焦がさないように丁寧に焙り焼きにしていく。
そして出来上がったものがこちら。
食品アイテム 焙り焼き(塩・胡椒味):ベーシックインセクトの足を茹で、塩・胡椒で味付けしたものを丁寧に焼き上げた、焙り焼き。
効果:HP12%回復
食品アイテム 焙り焼き(塩・香草味):ベーシックインセクトの足を茹で、塩・香草で味付けしたものを丁寧に焼き上げた、焙り焼き。
効果:HP9%・MP7%回復
食品アイテム 焙り焼き・劣(塩・胡椒味):傷んだベーシックインセクトの足を茹で、塩・胡椒で味付けしたものを丁寧に焼き上げた、焙り焼き。
効果:HP8%回復
食品アイテム 焙り焼き・劣(塩・香草味):傷んだベーシックインセクトの足を茹で、塩・香草で味付けしたものを丁寧に焼き上げた、焙り焼き。
効果:HP5%・MP3%回復
やはり、食材が傷んでいたせいか、回復効果が若干少なくなっていた。
食べ比べてみると、味の差がよく分かった。
傷んでいない方の焙り焼きは、身がしっかりしていて、塩の辛味が仄かな甘みを引き立て、食材自体のうまみを増強させている。
対して、傷んでいた方の焙り焼きは、身がパサついていて、塩の味のする何かとしか言い様がない。
胡椒や香草が辛うじて、食材の生臭さを相殺してくれているおかげで、何とか食べることができるという感じだ。
正直、不味い。
今後は、食材アイテムは虚空庫で保管することにしようと思う。
虚空庫に入り切らなくなったら売ればいいしね。
よし、次はポーションを作ってみようと思う。
といっても、調合のスキルがないので、うまくできないかもしれないけどな。
今回は、蒸留水がないので白湯を鍋ごと水に潜らせ、冷ましたものを代用する。
まず、キュアハーブを3枚程細かく刻み、それを擂鉢に入れて擂粉木でよく磨り潰す。
磨り潰し終えペースト状になったら、擂鉢に冷ました白湯を入れよくかき混ぜ、濾し器を重ね濾過する。
最後に濾過したものを、空いた初級者ポーションの瓶に入れて完成。
消耗アイテム 劣化ポーション:蒸留水の代わりに、白湯を用いて作られた薬水。
効果:HP20%回復 使用期限:後19日23時間
回復量は減少しているものの、どうやら成功したようだ。
次はこれを元に、アレンジを加えていこうと思う。
ペースト状になったキュアハーブに、白湯に蟻蜜を混ぜたものと、白湯に砂糖を溶かしたもの、そしてりんごを摩り下ろしてそれを絞ったものをそれぞれ混ぜ合わせ、濾し器を重ねて濾過していく。
そして濾過し終えたものを空いた初級者ポーションの瓶に入れて、完成。
消耗アイテム 劣化ポーション・改:蒸留水の代わりに、白湯に蟻蜜を混ぜたものを用いて作られた薬水。通常のポーションと違い、苦くはないが美味しいともいえない味。
効果:HP23%回復 使用期限:後9日23時間
消耗アイテム 劣化ポーション・改:蒸留水の代わりに、白湯に砂糖を溶かしたものを用いて作られた薬水。通常のポーションと違い、苦くはないが美味しいともいえない味。
効果:HP21%回復 使用期限:後6日23時間
消耗アイテム 劣化複合ポーション・改:蒸留水の代わりに、りんごを摩り下ろし絞った果汁を用いて作られた薬水。通常のポーションと違い、苦くはないが美味しいともいえない味。20%の確率で解毒することがある。
効果:HP22%回復 20%の確率で解毒 使用期限:後23時間
ふむ、蟻蜜や砂糖、りんごの果汁を加えたことで少し回復量が増えたが、使用期限が短くなってしまっている。
これは、甘味料が入ったことで、腐りやすくなってしまったということだろう。
もっとも、ジャムや砂糖漬け位甘ければその限りではないと思うけどな。
それと劣化複合ポーション・改ができたのは、現実でもりんごには解毒作用が少し含まれているから、それが反映された結果なのだと思う。
他に混ぜられる液体ってどんなものがあるかなぁ?
蒸留水・白湯・蟻蜜水・砂糖水・果汁の他は……油と酒かな。
でも油は獣脂以外では見たことないけど、というより油なんか気持ち悪くて飲めないか。
酒なら、独特の癖がないか他の味を邪魔しないもの……清酒か酒精の強い蒸留酒なんかがいいかな。
でも清酒や蒸留酒なんてあるかなぁ?
まぁ探すだけ探してみようかね。
そうこうしているうちに、終了5分前の合図であるベルが鳴った。
俺は、食品アイテムと食材アイテム、それと残ったキュアハーブを虚空庫に入れなおし、料理キットを片付け、忘れ物がないかを確認してギルドを出て行った。
時刻は、午前0時少し前といったところだったので、まだアリルはログインしていたが、こんな時間に連絡を取るのも何か気が引けたのでメールを送っておいた。
それじゃ今日のところは、これでログアウトすることにしよう。
明日からは、やることがたくさんあるので、気合をいれて取り組んでいこうと思う。




