Locus 23
草原のセーフティエリアに戻った頃には、日が完全に落ち、夜の帳に包まれていた。
シエルのHPバーを見ると、減っていたHPは完全に回復していたが、MPは半分位になっていた。
まだこれからすぐに移動することも考え、簡易焼きりんごを作りシエルに与えた。
「・・・・・・~♪」
シエルは嬉しそうにピカピカ光り、簡易焼きりんごを食べている。
俺はシエルが簡易焼きりんごを食べている間に、虚空庫から串焼きを取り出し、素早く食べ回復した。
そして、先程のフォーチュンラビットのドロップアイテムの鑑定をした。
鑑定結果はこちら。
素材アイテム 幸運兎の一角:フォーチュンラビットの角。やや小ぶりだが綺麗な円錐形をしており、巷では運気上昇のご利益があると人気の一品。
素材アイテム 幸運兎の毛皮:フォーチュンラビットの毛皮。白を基調として所々にある金色の毛の房が美しい毛皮。巷では縁起物として人気が高く、高値で取引される。
食材アイテム 幸運兎の柔肉:フォーチュンラビットの肉。どんな料理にも合うという、この辺りで取り扱われる高級食材の一。食べることにより運気が上昇すると言われており、高値で取引される。
それから、強化素材は鍛錬石が2個入手できたので、さっそくノービスソードを強化した。
強化した結果はこちら。
武器アイテム:剣 名称:ノービスソード+5 ランク:1 強化上限回数:5回
ATK15 DEF5 AGI5 M・ATK5 M・DEF5 DEX5 LUK5
要求STR:5 耐久値:∞ バインド属性
与DP倍率:斬1.0 打0.5 突0.3 魔1.0
クリエイトボーナス:HP+50
そして、フォーチュンラビットを仕留めた時に、習得したものを確認した。
習得したものはアーツだった。
その内容はこちら。
□ スパイラルシェイバー:本来は馬上槍の技であるが、通常ではありえない突進速度と、回転を加えた異常な突き出しによって、剣の技として昇華してしまった特殊技。
剣身に纏う螺旋状のエネルギーを突き出しと同時に放出することができる。
このアーツの威力は、STR・INT・LUK の値に依存する。
剣系のSLv上昇と共に、放出されるエネルギーの幅と射程が増加する。
消費MP:50 リキャストタイム:10分
……消費MP50……。
重い、重すぎる!
今言えることは、そうほいほい使うことができないアーツってことだけだ。
実際に使ってみないことには、何とも言えないな。
願わくば、消費MPに見合う働きを見せて欲しいところだ。
それと、フォーチュンラビットと戦っていた時、ソードダンス中に苦し紛れでノービスソードを振ったら、ライトアローを砕くことが出来たことの確認もしなくちゃな。
ちょうどシエルも同じ魔法を使えることだし、シエルに手伝ってもらおうと思う。
そうこう考えている内に、シエルは簡易焼きりんごを食べ終わったようだ。
シエルに移動して、アーツの試し撃ちと手伝ってもらいたいことがあると伝えて、セーフティエリアを出て行った。
セーフティエリアを出て、まず的が居なければいけないと思い、気配察知を使いモンスターを探した。
しばらく辺りをうろうろしつつ探していると、気配察知に引っかかる反応があった。
数は4体。少し多いが、シエルも居るし大丈夫だろう。
視認すると、ナイトドッグのグループだった。
ある程度近づくと、ナイトドッグ達がこちらに気づき、襲い掛かって来た。
「シエル、俺はアーツの試し撃ちをするから、討ち漏らしがあったら迎撃を頼むな」
「・・・・・・!」
シエルから『まかせて!』っと心強い返事が伝わって来る。
ナイトドッグ達は時間差攻撃を仕掛けてくるためか、ややばらついた縦列になって突っ込んできた。
俺は剣を突き出した時に、ナイトドッグに当たる様にタイミングを合わせ、アーツを使った。
「スパイラル……」
アーツを使う意思を込めながらスパイラルと唱えると、剣身に青白い螺旋状のエネルギーを纏い、馬上槍の形状を生成する。
「シェイバー!」
突き出しと同時に、剣身に纏っていた青白い螺旋状のエネルギーが渦を巻きつつエネルギー状の部分を膨張させ、ナイトドッグ達の方へと放出させていく。
放出された青白い螺旋状のエネルギーは、およそ直径1m強、射程5m強といった所だ。
最初に剣の間合いに到達したナイトドッグはもちろん、その後続に居たナイトドッグをもノービスソードを起点に発射された青白いエネルギーが急速旋回しつつ飲み込んでいった。
発射されたエネルギーが消えると、後に残ったものはナイトドッグだったものの光の粒子だけだった。
ん~……威力の方はちょっとよく分からないけど、種族スキルの竜の息吹よりは使い勝手のいい、中距離攻撃の手段を手に入れたってことでいいかな? (リキャストタイム的な意味で)
まぁMP消費的にも、そうほいほい使うことはできないけれど、選択肢が増えることは良いことだしな。
「シエル、討ち漏らしなかったみたいだ。警戒ありがとな。」
「・・・・・・~♪」
シエルから『どういたしまして~♪」という返事が伝わってくる。
さて、新しいアーツの試し撃ちは終わったし、次はシエルに手伝ってもらって、魔法が剣で切れるかの試してみよう。
俺は気配察知を使い、周囲にモンスターがいないことを確認すると、シエルに手伝いを頼む。
「シエル、ちょっと確認したいことがあるから、手伝ってくれないか?」
「・・・・・・?」
シエルから『なにをするの?』っと伝わってくる。
「夕方に光魔法を使う兎と戦っただろ。あの時ソードダンス中に剣を振ったら、ライトアローを斬れたんだよ。だから、その確認をと思ってね」
「・・・・・・~?」
シエルから『そんなことしてだいじょうぶ~?」っと心配してくれているのが伝わる。
「ああ、たぶん大丈夫だよ。それに予めシエルに、マインドブースター・ライトを掛けてもらっておけば、もしもダメージを負っても少しはダメージを緩和してくれるだろうしね」
「・・・・・・」
シエルから『わかった』っという返事が伝わってくる。
「あ、それとライトアローを撃つ時、一斉にじゃなくて、1本1本の時間差にしてくれると助かる」
「・・・・・・~」
シエルから『やってみる~』という返事が伝わってくる。
俺はまずシエルに、マインドブースター・ライトを掛けてもらい、その後ソードダンスを使った。
俺の体全体と武器は銀白色の燐光に包まれ準備が完了する。
「よし、それじゃシエル始めてくれ」
「・・・・・・!」
シエルの周りには既に、光の矢が生成されており、シエルが『ライトアロー!』っと唱えたことが伝わってくる。
シエルは先程俺が注文した通り、ライトアローを時間差で着弾(着矢?)するように撃ち出してくれた。
俺の目には見切りのスキルによって、ライトアローの到達予測線が見えているので、比較的簡単に斬り壊していける。
3本全て斬り壊し終えた頃、まだソードダンスの効果時間が残っていたので、引き続きシエルにライトアローを撃ち出してもらい、斬り壊す練習をしていった。
斬り壊すのにある程度慣れた所で、ライトアローを一斉に発射するように練習方法を変え、ソードダンスの持続時間が切れるまでライトアローを斬り壊す練習をした。
ソードダンスの効果が切れる頃にふいに、脳内で『ピロン♪』という音がした。
俺はシエルに手伝ってもらったことに礼を言って、気配察知で周囲にモンスターがいないことを確認してから、先程習得したものの確認をした。
習得したのはアーツだった。
その内容はこちら。
□ マジックミューティレイト:剣にオーラを纏い、魔法に当てることで魔法を斬り壊す技。
魔法を斬り壊すたび、剣の耐久値が減少していく。
持続時間は、INT・MID・LUK の値に依存する。
消費MP:10 リキャストタイム:60秒
どうやら剣の耐久値を代償に、魔法を斬り壊す技のようだ。
今は耐久値∞のノービスソードを使っているから、実際にどのくらい耐久値が減少するのかは分からない。
しかし、わざわざ説明に剣の耐久値が減少すると書かれているのだから、このアーツを習得する前の段階よりは、おそらく剣の耐久値の減少するのが格段に軽減されるのだと思う。
街に戻ったら安い剣を買って実際に試してみようと思う。
さて、今の時刻は午後6時半を少し回ったところだ。
一度晩御飯を食べにログアウトしなきゃならない。
本当は毒草納品が終わってからにしたかったが、仕方無い。
そう思いながら俺は、シエルに移動することを伝え、急いでまた草原のセーフティエリアに戻り、シエルを装飾化し装備してログアウトした。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます。
特殊技の補足?説明なのですが、設定上あまり明言はできません。
特殊技に昇華する条件があり、それをクリアしなければ特殊技を習得することはありません。