Locus 20
草原に到着。
まだ、街周辺には他のプレイヤーが多くいたので、少し奥まで行きプレイヤーが少なくなってから、シエルの装飾化を解いた。
「ごめんな、シエル。街で自由にさせてやれなくて」
「・・・・・・」
シエルから、『だいじょうぶだよ』っと暖かい言葉が伝わってくる。
「ありがとな。よし、それじゃ気を取り直して、採取とシエルのLv上げをがんばろうか」
「・・・・・・!」
シエルから『おーーー!』という返事が伝わってくる。
◇◇◇
―――――困った。
俺が攻撃してしまうと、モノコーンラビットもワイルドドッグも1発で倒せてしまう。
例外は、ベーシックインセクトのみで、甲殻の上から切りつけたり、刺したりすると僅かにHPバーが残る。
なのでシエルには、最後の止めをお願いしているわけだが、こういうのはあまりよろしくない。
できれば、のびのび自由に戦ってもらいたいものだ。
だからといって今のまま、自由に戦ってしまうと、死ぬ危険性が高くなってしまう。
うーん、どうしたいいかなぁ。
そう悩んでいると、気配察知に引っかかるものがあった。
しばらくして、ゼライスが3体とベーシックインセクトが近づいて来ているのが見えた。
そういえば、ゼライスとベーシックインセクトの識別をしていないことに気がつき、識別を行った。
ゼライスA・C:Lv3・属性-・耐性:斬・弱点:打・魔法
ゼライスB:Lv4・属性-・耐性:斬・弱点:打・魔法
ベーシックインセクト:Lv3・属性-・耐性:斬・突・弱点:打・魔法
弱点魔法だとっ!
それなら、遠距離から魔法を打ち込めば、シエルの独壇場じゃないか!
日中で日光を浴びていれば、そうそうMPが枯渇することもないだろうし、これはゼライスとベーシックインセクトを狙っていけば、よさそうだな。
おっ。ちょうど隠された採取ポイントを見つけたし、採取しながらシエルの戦いっぷりを見ていようかな。
「シエル、俺はそこで採取をしているから、モンスターの迎撃を頼む。弱点が魔法になっているから、シエルが遠距離から攻撃すれば、簡単に倒せると思うぞ」
「・・・・・・?」
『ほんとう?』というようなやや自信に欠ける返事が伝わって来る。
「もし危なくなったら、手助けするから大丈夫だよ。頑張れ!」
「・・・・・・!」
俺の激励に奮起したのか、『よーし、やるぞー!』っと殺る気を出し、モンスター達の方へシエルがふよふよ飛んで行く。
俺は素早く装備スキルを入れ替え、調教をセットし直し、ハイディングを使いながら採取をする。
まぁ、大丈夫だとは思うけど、どうなるかな?
シエルはモンスター達の方へ行きながら、少しずつ上昇して行っているようだ。
陽光に紛れつつ、上空から奇襲? するのかな。
上空5m程でシエルが止まり、シエルの両隣に少しずつ光が収束していき、矢の形を作っていく。
光魔法で最初に使える「ライトアロー」だ。
ライトアローの形成が終わり、2本の光の矢がモンスター目掛けて発射される。
足止めの意味もあるのか、ライトアローは別々のモンスターに当たった。
ライトアローが当たったのはゼライスAとCだ。
ゼライス達のHPバーを見ると、半分以上減っているようだ。
モンスター達の歩みが止まり、周囲を見回しているが、シエルの姿を見つけられないようで、まごついている様に見える。
モンスター達の歩みが止まっている間に、シエルは再びライトアローを準備し、そして放つ。
今度はゼライスCとベーシックインセクトを狙ったようだ。
ライトアローはゼライスCに当たり、ゼライスCを光の粒子へと変える。
ベーシックインセクトは、ライトアローの射線を避ける様に、横に飛び退いたがライトアローが軌道を変えベーシックインセクトに命中する。
「ギギッ!」
どうやら、ライトアローには追尾性能がある様だな。
ベーシックインセクトのHPバーを見ると3割程減っていた。
ゼライスCがライトアロー2発で倒せたことを考えると、ベーシックインセクトの方が少し魔法が効きづらいのかもしれない。
2度の攻撃により、敵は上空に居ると分かり、ゼライス達は体の一部を鞭の様に伸ばし、上空に向けて振っている。
ベーシックインセクトは、小刻みに飛び跳ね狙いが定まらない様にしている。
ゼライス達が体の一部を鞭の様に伸ばし振っているが、シエルには届いていない。
ゼライス達がそうしているうちに、シエルはまたライトアローを撃ち、1体また1体とゼライスを倒していく。
最後に残ったのはベーシックインセクト。
ベーシックインセクトは助走をつけて走っていき、シエルとの距離がある程度縮まると、体を深く沈め6本ある足のバネを使い、シエル目掛けて跳んだ。
跳躍の瞬間、ベーシックインセクトの背にある小さな羽を羽ばたかせ、シエルに突っ込んでいった。
この時俺は、現実で起死回生の一手として、こうゆう行動をとる暖かくてじめじめした所が好きな、1匹見たら30匹は居ると言われている、黒くテラテラとした油の光沢を持つ虫のことを思い出し、少し背筋が寒くなった気がした。
「・・・・・・!?」
シエルから驚きが伝わってくる。
「・・・・・・!」
シエルは既に次のライトアローの形成が終わっており、空中で身動きが取りにくいのを逆手に取り、ライトアローで迎撃するみたいだ。
ベーシックインセクトとシエルとの距離が残り1m程になった時、シエルはライトアローを射出した。
1本はベーシックインセクトの口内を貫き、もう1本はベーシックインセクトの腹を刺し貫いた。
「ギガッ!」
ベーシックインセクトは、ライトアローが刺さった衝撃によりシエルにぶつかることなく地上に落下していった。
そして地上に落ちた衝撃が止めとなったのか、ベーシックインセクトは光の粒子へと変わっていった。
俺は気配察知で、周囲に他のモンスターがいないことを確認し、ハイディングを解いて、シエルの方へと向かって行く。
「お疲れ様、シエル。よくやった!えらいぞ」
「・・・・・・~♪」
シエルから『わ~い♪』と上機嫌ではしゃぐ様が伝わってくる。
「よし!今の調子でどんどんいこう。今度は俺も参戦するからな」
「・・・・・・!」
シエルも『まけないよ!』っとやる気であることが伝わってくる。
「それと、今回はいなかったけど、上空からもモンスターが攻撃してくる場合があるから、気をつけるように」
「・・・・・・!」
シエルから『わかった!』という返事が伝わってくる。
「それじゃ行こうか」
その後シエルと共に、草原で1時間程、東の森で30分程モンスターを狩りつつ、隠された採取ポイントで毒草を採取していった。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
いつの間にか、ジャンル別月間ランキングSF部門1位になってました。
一時であれど、とても嬉しいです!
本当にありがとうございます。