Locus 18
俺は職業斡旋所を出て、来た道を引き返して行く。
街役場の入り口に着くと、先程教えてもらった通りに歩いていくと、修練場というプレートが付いた扉を見つけた。
俺は扉を開け、中に入るとちょうど近くを通り掛かった職員に、どうやってクラスチェンジの候補先を確認すればいいのかを聞いた。
話によると、個々人がクラスチェンジ候補先を確認できる水晶版が安置されている小部屋があるのだそうだ。
さっそく俺はその小部屋に入り、クラスチェンジ可能リストを確認した。
そしてこれ等が今の俺がクラスチェンジできるクラスだ。
〔ソードマン〕、〔ソウルダー〕、〔ウォーリアー〕、〔フェンサー〕、〔ヒットマン〕、〔テイマー〕、〔コック〕
因みに、ソードマンはその名の通り、能力的に特化していない標準的で万能型のステータスの剣士が就くクラスだ。
ソウルダーは、盾を持ち敵を引き付ける壁役が就く傾向にあるクラス。
ウォーリアーは、斧や両手剣等で敵に大ダメージを与えるアタッカーが就き易いクラス。
フェンサーは、素早さを生かし、ヒット&アウェイで攻撃を加える遊撃役がよく就く傾向にあるクラスだ。
うん。やっぱりないな。
まぁ、あったとしても困惑しかしないと思うけどな。
なぜなら俺がなりたいクラスは、魔法を覚えられるクラスだからだ。
よって必然的に、今まで魔法を1度も使っていない俺がなれるはずないのだ。
さて確認も終わったことだし、冒険者ギルドに行き登録してこよう。
そう決め、俺は街役場を出て行った。
俺は再びメニューを開き、マップ検索機能で冒険者ギルドの場所を探した。
するとマップデータ上に黄色い光点が灯り、冒険者ギルドの場所が分かるようになる。
俺は移動を開始しようと思ったが、先程までのことを思い出し、また声を掛けられるのが嫌だったため、街中ではあったが、ハイディングを使いながら、移動していった。
結果は上々。冒険者ギルドに着くまでに誰からにも、呼び止められることなく移動することができた。
俺はさっそくギルドの中に入っていった。
ギルドの中は、結構広々としていた。
入り口から入って右手には、受付窓口が5つ並んでおり、NPCやプレイヤーの相手をしている。
入り口から入って左手には、軽食屋と酒場が組み合わさった様なところで、数人程が食事をしている。
入り口から入って正面およそ5~6m程の所に、掲示板があり依頼と思しき紙束(羊皮紙束?)のようなものがいくつも貼り付けてあった。
俺はこんなところで突っ立っていたら迷惑になると気づき、受付窓口へと進んでいった。
どの窓口もそこそこ混んでいたが、比較的空いている所の列に並び、順番が来るのを待った。
しばらくして、俺の番が来たのでさっそく登録をしようと思う。
「こんにちは」
「こんにちは、本日はどのようなご用件で、当ギルドにいらしたのですか?」
「冒険者ギルドへの登録をお願いしたいのですが……あ、これ紹介状です」
俺はそう言い、先程街役場で渡された紹介状を受付の人に渡した。
「確認させて頂きますね」
受付の人は紹介状を受け取り中を改めていく。
「はい。確認しました。登録料は500Rとなりますが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
俺はそう言い、素早く500Rを実体化し、受付の人に渡した。
「はい。では、このプレートの水晶版の部分に指を乗せて下さい」
俺は言われた通り水晶版に、右手の人差し指を乗せた。
すると、水晶版の底辺から光の波? が現れ、水晶版の上辺まで伝わっていき消えた。
「はい。ありがとうございました。これで、ギルド登録およびギルドカード作成が終わりました。そしてこれがギルドカードになります。紛失すると、再発行はできますが有料となりますので注意して下さい」
紛失? 普通こういうものって貴重品とかって扱いになって、なくならないようになっているんじゃぁ……まさか。
俺はギルドカードを受け取り、鑑定をしてみた。
証明アイテム 冒険者ギルド所属証明カード:冒険者ギルドに所属していることを証明するカード。本人およびギルド職員にのみ、ギルドカードの詳細情報を閲覧することができる。
……ない。
バインド属性という表記がない!
えッ? ということは、死に戻りしたりする時に、ドロップする(落とす)可能性があるってこと!?
元から死ぬこと前提で行動したりしてないけど、更に心情的に死に難くなったな。
気をつけよう。
「それでは、当ギルドについての説明をさせて頂きます。」
内容を要約するとこういうものだった。
まず、ギルドカードには、俺のギルド内でのランクと今まで受けたクエストの履歴、そして討伐したモンスターの履歴が確認できるようになっているそうだ。
ギルドランクは下から、F・E・D・C・B・A・S・SS・SSS とあり、FからEに昇格する時以外は昇格試験があり、その試験に合格しなければランクを上げることができないようになっている。
FからEに昇格するには、実績(一定以上のクエストクリア)だけあれば昇格できるようだ。
次に受けることのできるクエストは自分と同格のクエストか上下1つ分の差があるクエストまでらしい。
例えば、今のランクがEランクなら、受注できるクエストはF・E・D のランクのクエストを受けることができるということだ。
連続でクエストを失敗すると降格もするようだ。
Dランク以下は3回連続失敗で降格。
Cランク以上Aランク以下は5回連続失敗で降格なのだそうだ。
Sランク以上に昇格すると、よほどのことがない限り降格することはないそうだ。
元々Sランク以上に昇格するには、ギルド本部に認められる人柄と実力がなければなれないのだそうだから、当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
それと、Cランク以上が3人いれば、クランを立ち上げることもできるのだそうだ。
クランとは、同じ目的を持った者同士で作る、団体組織のことだ。
他のゲームなんかだと、ギルドとかレギオンとか呼ばれているやつのことだ。
それから、冒険者ギルドで素材・食材アイテムの買取もしていて、他で売却するより少し高く買い取ってくれるそうだ。
最後に、Cランク以上になると色々と特典が付いたり、危険地域に指定された所に行けるようになったりするようだが、詳しくはCランク以上になってから説明してくれるらしい。
「よく分かりました。ありがとうございました」
「いえいえ、これも職務ですから。それで何か質問はありますか?」
「……あ、依頼は一度にいくつまで受注できますか?」
「Dランク以下は3つまで、Cランク以上Aランク以下は5つまで、Sランク以上は7つまでとなっています」
「なるほど、分かりました」
「他にはありませんか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
「では、これで説明を終わります。リオンさんにユーフォリア様の御加護がありますように」
因みに、受付の人が最後に戦女神ユーフォリアの加護がありますようにっと言ってくれているのは、戦闘系ジョブの人の安全祈願のようなものだそうだ。
俺は説明を聞き終えると、掲示板の方へと行き依頼を見に行った。
今の俺のギルドランクはFだから、FランクとEランクのクエストを受けることができる。
さて、どんなクエストがあるのかなっと。
Fランククエスト:薬草納品・薪割りの手伝い・街のゴミ拾い・畑の石拾い・手紙の配達 etc
Eランククエスト:モノコーンラビットの肉納品・毒草納品・ウォーカーアントの甲殻納品・フォレストウルフの毛皮納品・ゴブリン討伐 etc
とりあえず、今の手持ちで納品できてしまうものは手早く納品して、クエストクリアするとして、他にできそうなクエストを探し選んだ。
それがこちら。
Fランククエスト:薪割りの手伝い・畑の石拾い
Eランククエスト:毒草納品
Fランククエストの薪割りの手伝いは、1時間以内にいくつの薪割りができるかという仕事内容だ。
報酬は薪割り1つで20Rの出来高払い。
注意点は、薪を必ず4等分しなければ、報酬が払われないということだ。
もうひとつのFランククエストの畑の石拾いは、1時間以内にいくつの石が拾えるかという仕事内容だ。
報酬は、拾った石の種類によって変わるらしく、小石1個で1R、石1個で10R、小岩1個で50R支払われる出来高払い。
稀に、石以外のものも拾えるらしいが、それはもらってもいいそうだ。
最後にEランククエストの毒草納品は、毒草10本ひとまとまりで800Rという、破格の報酬が支払われるお仕事だ。
種類はなんでもいいが、1種につき10本を揃えて納品しなければならない。
例えば、中り草10本なら800R支払われるが、中り草8本と痺れ草2本だと報酬はなしとなる。
今のところ4種は分かっているので、シエルのLv上げをしながら探そうと思う。
時刻は午後3時を少し過ぎたところだ。
クエスト消化の順番は、畑の石拾い・毒草納品・薪割りの手伝いの順でいこうと思う。
なぜ、真ん中に毒草納品をはさんだかというと、シエルの種族スキルに陽光活性(昼)があるからと、また遅くまで掛かって、ボスウルフの時の様にならないようにするためだ。
あの時の教訓を生かして、もう少し慎重にいこうと思うんだ。
ということで、畑の石拾いに行ってこよう。
因みに、クエストを受注すると、マップデータ上にCという文字が描かれた赤い旗が出現し、クエストの場所を表示してくれるという親切設定だ。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
たまに漢字表記のものもありますが、基本クラス名はカタカナ表記です。
ですが、あえて漢字を当てはめるならこうなります。
ノービス⇒初心者
ソードマン⇒剣士
ソウルダー⇒勇士
ウォーリアー⇒戦士
フェンサー⇒軽剣士
ヒットマン⇒殺し屋
テイマー⇒調教師
コック⇒料理人