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Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第2章  Fランククエストと隠されし店
18/123

Locus 16



 ログインしました。

 時刻は午後1時を少し過ぎといったところ。


 ログインするとインフォメーションが流れた。


『メールボックスに未読メッセージが1件あります』


 俺はメニューを開くと、ポストのアイコンが点滅しているのを見つけた。

 ポストのアイコンの右下には1の数字が出ている。

 点滅しているポストのアイコンをタップして、ポストの中を見るとアリルからのメールが届いていた。

 メールを開き読んでみる。

 要約するとこんな内容だった。


 今日は1日中ログインしているので、俺がログインし次第(しだい)、連絡して欲しいとのこと。

 又、テイムしたモンスターのことは、出会った経緯(けいい)とどうやってテイムしたかを掲示板に書き込んで置くと良いという内容だった。

 書き込みをする掲示板は、攻略掲示板でいいそうだ。


 俺は、左耳に付けていた霊体化のカフスイヤリングを外し、装飾化を解いた。


「おはよう、シエル。って言っても、もう昼過ぎだけどな」


「・・・・・・」


 シエルは元気良く? ピカピカと光り、おはようっと挨拶を返してきたのが、伝わってくる。

 シエルはふよふよと俺の周りを回りながら、浮遊している。


 俺はアリルに連絡を入れる前に、メニューを開き、『SLO』の攻略掲示板に、テイムモンスターのことを書き込んだ。

 書き込みが終わり、俺はアリルにフレンドチャットで呼び出しを行う。

 数コール後、アリルとの回線が(つな)がった。


「おはよう、アリル。今大丈夫か?」


『おはよう、お兄ちゃん♪ ……って、今もうお昼過ぎだよっ! もしかして、今まで寝てたの?』


「ああ。昨日……てか今日? は気づいたら徹夜しててな。今朝寝て、起きたらこの時間だった。それよりも、今大丈夫か?」


『うん。大丈夫だよ』


「そうか、メールのことで連絡したんだけど……」


『そうそう! そのことだよ! テイムしたんだよね? 実際に見てみたいんだけど、お兄ちゃん掲示板にそのこと書き込んだ?』


「ああ。さっき書き込んどいた」


『なら街で会えるね。もしも、街で誰かにシエルちゃん、だっけ?のこと聞かれても、掲示板に書き込んだからそっちを見てって、言えば良いしね』


「ほうほう。そういう意図もあって、掲示板に書き込めって言ったのかぁ」


『まぁね~。それで待ち合わせ場所だけど……そういえば、お兄ちゃんって今何処に居るの?』


「ん? 今は今朝ログアウトした所だから、森にあるセーフティエリアだけど……」


『じゃあ、ディパートの街の西区にある、トワイライトっていうお店で、2時に待ち合わせしよ』


「分かった。ディパートの街の西区にある、トワイライトっていう店で、2時だな」


『うん♪ じゃ楽しみにしてるよ。またね、お兄ちゃん』


「ああ、またな」


 そう言い合い、フレンドチャットの回線を閉じた。

 因みに、俺がアリルの言っていた待ち合わせ場所と時間を復唱したのは、俺がアリルが言ったことを復唱することで、情報の確認と、アリルが言ったことを正しく聞いていたという証明になるからだ。

 人の話を正しく聞いていたことを証明するには、その人が言ったことを復唱するのが良いとされている。

 そうすることにより、話手である相手は、聞き手が自分の話をきちんと正しく聞いてくれていることが分かり、嬉しく思うからだ。

 少なくとも、嫌ではないはずだぞ。


 その後、俺は身支度を整えて、シエルに出発することを伝え、森のセーフティエリアから出て街へ戻って行った。


 ディパートの街へと到着し、俺達はそのまま西区へと向かう。

 待ち合わせの時間までまだ、30分位あったので森で入手した多すぎるフォレストウルフの素材を売り払い、使い切ってしまった初心者ポーションを買い足して置く。


初心者ポーションx10:1000R


現在の所持金:980R⇒13740R⇒12740R


 買い物が終わり、少し早いが待ち合わせ場所に向かおうとすると、後ろから声を掛けられた。


「すみません、ちょっといいですか?」


 振り返ってみると、そこには男性2人と女性2人のグループ(パーティ?)が居た。


「はい。なんでしょうか?」


「その……あなたの周囲で浮かんでいるのって、もしかしてテイムモンスターですか?」


 どうやら、声を掛けてきたのはこの女性らしい。


「ええ、そうですが?」


「あの、単刀直入に聞きますけど、どうやってテイムしたんですか?私もテイムモンスター欲しくて、どうやってテイムしたのか教えてもらえませんか?」


「いいですよ。但し、恐らくとしか言えませんが……」


「それで構わないので、お願いします」


「分かりました。ではどうやってテイムしたかと言えば、それは恐らく餌付(えづ)けです」


「餌付け……ですか?」


「はい、あの時の状況を考えるに、それが一番可能性がありそうなんです。なので、たぶんテイムしたいモンスターの好物を与え、気に入ってもらえればテイムが可能になると思います。もちろん、この他のテイム方法もあるかも知れませんが、俺は知らないので教えることはできません」


「えっ。な、なるほど……それと、さっき言ったあの時の状況というのを聞かせてもらえませんか?」


 俺はチラリと時計を確認すると、待ち合わせの時間が(せま)っていた。


「すみませんが、人と会う約束があるので、これで失礼したいと思います。攻略掲示板の方に、あの時の状況を含めテイム方法だと思われるものを書き込んでありますので、そちらを確認してみて下さい」


「そうですか……。分かりました。引き止めちゃってごめんなさいね。あと質問に答えてくれてありがとうございました」


「いえいえ、ではこれで」


 俺はそう言いその場を離れ、待ち合わせ場所へと向かって行った。

 しかし、何故どもる?


 待ち合わせ場所のトワイライトという店は大通りに面していて、さほど探さずに見つけることができた。

 まぁ分からなければ、メニューにあるマップデータ検索欄に店の名前を入れればいいんだけどな。


 このメニューにあるマップデータ検索欄は、正式名称を入力しなければ、検索できないようになっている。

 理由は、時代的に自分一人で名前すら分からない場所を特定することは困難であるということらしい。


 因みに、シエルの種族のソル・ウィスプは、β時代でも見られた微レアモンスターらしい。

 なんでも、夜明けから日の出までの短い時間帯にしか出現しないゆえ、出会えることすら幸運なのだそうだ。

 つまり、俺がシエルをテイムできたのは、すごい幸運だということだ。

 最も、何か条件がなければだが……。


 店に入ると、そこは落ち着いた雰囲気(ふんいき)のある喫茶店(きっさてん)だった。


「いらっしゃいませ~。お一人様ですか?」


「いえ、待ち合わせで」


 俺がそう答えると、店内から聞き覚えのある声が響いてきた。


「お兄ちゃぁぁぁぁぁん! こっちこっち~!」


 声の方を見ると、アリルが腕をブンブン振って、存在の主張をしていた。


 俺は急いでアリルの所へ行き、アリルを(たしな)める。


「コラ! アリル、そんな大声を出したら恥ずかしいだろうが」


「え~でも、すぐに場所分かったでしょ?」


「あぁ、まぁそうなんだが、それとこれとは話が別だ!もう少し(つつし)みを持ちなさい」


「は~い」


 アリルは分かってるんだか、分かってないんだか、返事だけは良いものだった。


「はぁ~ったく。それで、さっきから俺の周りをふよふよと浮かんでいるのが、テイムモンスターのソル・ウィスプで、名前はシエルって言うんだ」


 そう俺が紹介すると、シエルはアリルの前に行き、まるで挨拶するかのようにピカピカと光った。

 まぁ実際ちゃんと挨拶したんだが、それは俺にしか伝わってこない。


「わわっ! 挨拶してくれたのかな?」


 アリルの視線がこちらへと向いたので、(うなず)いてやる。


「おお~。こちらこそよろしくだよ。シエルちゃん!」


 そう言ってアリルはシエルに自己紹介をした。

 アリルの自己紹介が済むと、おもむろにこんな質問をしてきた。


「そういえば、お兄ちゃん。シエルちゃんって言っちゃってるけど、男の子なの? 女の子なの?」


「あ~……そういえば、前にシエルのステータスを見た時、? になってたな、どっちなんだろ?」


「・・・・・・!」


 そう疑問を疑問で答えていると、シエルは少し(むく)れた様に、ピカリピカリと光り、『おんなのこだもん!』と強い口調で主張しているのが伝わってきた。


「あーすまなかったな、シエル。お()びに、ここのお店の甘味(かんみ)好きなの頼んでいいから」


「・・・・・・~♪」


 シエルは、嬉しそうにピカピカ光り、この店のメニューが置いてある所に文字通り飛んでいき、『早くメニューを開けて!』と催促(さいそく)してくる。


「んん? お兄ちゃんなんだって?」


 俺はこの店のメニューを開きながらアリルの質問に答えた。


「おんなのこだもん! だってさ、まぁ確かに女の子らしく? 出会った時もそうだったけど、甘い物が好きみたいだしな」


「そうなんだ~。じゃ、私も何か頼もっかな」


 アリルはそう言いつつ、店のメニューを手に取り、オーダーを選んでいく。

 しばらくして、選び終えたようで、皆でケーキセットを頼んだ。

 因みに、シエルはアップルケーキを注文した。

 出会った時も簡易焼きりんごだったし、りんごが好きなのかもしれない。


 店の人に注文を出し、ケーキセットが来るまでは、シエルとどういう状況で出会い、どうやってテイムしたかをアリルに話して聞かせた。


 ケーキセットを食べ、店を出る頃。


「あっそういえば、お兄ちゃん知ってる? 洗礼系の称号についての話」


「いや、知らない。どんな話なんだ?」


「あのね、私達以外にも洗礼系の称号を取得したプレイヤーがいてね。その人は生産活動前にお祈りしたらしいの。そうしたら〔創造神の洗礼〕って称号を入手できたんだって。それで、その後初めての生産活動前にお祈りして称号を取得できたんだから、他に何か初めて挑戦する時に祈れば、また称号を取得できるんじゃないかって思って、戦いに行く前にお祈りしたんだって」


「へぇ~。そういえば、俺生産活動前に祈りに行ってなかったな。ちょっともったいなかったかも?」


「いやぁーそれはどうかなぁ?」


「ん? どういうことだ?」


「うん。祈って新しい称号は入手できたみたいなんだけど、前に取得した〔創造神の洗礼〕はなくなっちゃったんだって。その人、生産系の人だったらしくて、生産に有利な洗礼系の称号がなくなって涙目らしいよ。欲張ったのがいけなかったのかなぁ?」


「あー。たぶんそれ、洗礼だったからじゃないかな?」


「えッ!? どうゆうこと?」


「洗礼って現実では、新しい宗教に入信する時に行うものなんだよ。だから新しい洗礼を受けるということは、別の宗教(神様)に入信するということになるんだ。今回の場合は、最初は創造神で次に、戦女神に宗旨(しゅうし)変えしたことになったんじゃないかな」


「なるほど~。でもならなんで、洗礼が消えちゃったのかな? 宗旨変えしても洗礼を行ったことは無くならないでしょ?」


「確か洗礼には、以前のことを洗い流すという意味もあったはずだ。つまり以前の称号を洗い流し、新しい称号を上書きしたんだと思う」


「ほうほう。さっすがお兄ちゃんだね! よっ物知り屋さん!」


「ただの雑学だよ」


「あ、ちょっとごめん。」


 そう言ってアリルは俺から少し離れてなにかしゃべっているようだった。

 おそらく、フレンドコールか何かなのだろう。

 しばらくすると、アリルが戻ってきた。


「ごめんね、お兄ちゃん。友達から呼ばれちゃった」


「そっか、そんな気にしなくてもいいから、行ってこいよ」


「うん! ありがとね、お兄ちゃん。それじゃまたね。シエルちゃんもまたね」


「ああ。またな」


「・・・・・・」


 シエルも挨拶するようにピカピカ光りアリルに別れを告げていた。


 そう言ってアリルと別れた。




ケーキセットx2:1000R


現在の所持金:12740R⇒11740R





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