Locus 113
いつもお読み頂き、そして評価して下さり、ありがとうございます。
おかげ様で、2000万PVと250万ユニークアクセスを突破しておりました。
本当にありがとうございます!
猫の日ですね(「ΦωΦ)「 ニ゛ャ~
ブラックアニス!?
イングランドの邪妖精かッ!
……だからか?
だから、セルピナが最初に選ばれたのか?
セルピナは俺達の中では1番小柄だ。
つまり、妖精目線からでも子供に見えたのだろう。
1番見た目で子供なのはシエルであるはずだが、実体がない幽霊のようなものだと見ればわかるし、ネロも小動物の姿をとっているが、最も食指が動いたセルピナがいたから、最初にはならなかったのだと思う。
ブラックアニスは木の上に潜んで、その側を通った子供を襲うから、その条件に合致したというのもあるのかもしれない。
「ひょわッ!?」
そう考えていると、ふいに後ろからセルピナの変な声が聞こえてくる。
ちらりと後ろを見てみると、ブラックアニスの手がセルピナの矢筒を掴んで引っ張っているのが映る。
こいつ……ッ!
俺への牽制と一緒に捕獲まで……そんなにセルピナが喰いたいのか?
俺はややしつこいブラックアニスの行動に辟易しながら、すぐに視線を前に戻すと、ブラックアニスの二チャリとした顔が見えてしまう。
そしてまた、俺への牽制なのか捕獲への布石なのか、俺を挟んでセルピナへと腕を伸ばしてきた。
その行動が目に映ると、攻撃判定されたのかその天眼の能力で行動の予測範囲が赤く視覚化される。
俺は、その予測線に割り込むように、アーツを使っていく。
「スマッシュ! ツッ!? ディザーム!」
「ギャッ! ツッ!? ガァアアア!?」
ガキンッ! ブシッ! ゴキゴキゴキッメキャッ!
新たに突き出されたブラックアニスの指先を潰すようにエキスパートソードの腹で殴る。
すると金属同士をぶつけた音が鳴り響き、それと同時に火花が散る。
エキスパートソードは狙い通りブラックアニスの指先に当たったが、双方共に衝突した勢いで弾かれ、意図せず体を大きく仰け反らせてしまう。
俺は無理やり攻撃の反動で仰け反る形で振り上げられた右腕を勢いづけるように利用し、そのままに半身になり、ついでに斬れてしまえとばかりに刃筋を立て、エキスパートソードで伸びている腕にアーツを叩き込んだ。
俺の攻撃は、外すことなくブラックアニスの右腕に命中し、肉を裂き、骨を砕くような音と手応えと共に、半ばまで断ち切れる。
ブラックアニスは、右腕全体をブルブルと震わせ、アーツの効果で掴んでいたセルピナの矢筒も目論見通り放してしまう。
ブラックアニスのHPバーをちらりと見てみれば、1割と少しダメージが入っていた。
更に、腕が震えているような絵柄の上に雷のような2重線がついたアイコンが付与され、アイコンの右下に20という数字があり、その数字が時間経過と共に刻々と減少していっている。
そして、見たことがないアイコンが一つと出血のアイコンも付与されていた。
見たことのないアイコンは、一般的に骨といわれて、すぐに思い浮かべるような脛の骨が半ばから折れているような絵柄をしており、恐らく骨折を意味してるバッドステータスであると思われる。
畳み掛けるならここッ!
そう即座に決断し、追加のアーツを使う。
「ストライクバースト!」
ボガァァァン! ビチュビキビキッビチビチビチッ……ブチンッ!!
「ギィッヤァァァアアアアア!?」
エキスパートソードの剣身が瞬時に青白く染まるのを確認し、すぐに右手首だけで捻り、剣身に新たな接触を与えて起爆させる。
半ばまで断ち切れたブラックアニスの骨と筋線維は、不快な音を立てながら軋み爆破され、その数瞬後妙に小気味良い音を響かせ完全に断ち切れる。
ブラックアニスは悲痛な金切り声を上げ、半狂乱になりながらも必死に弾かれた左手を戻し、傷口を抑えて止血している。
その顔には、激痛のためか脂汗が滲み出ており、焦りと痛みで歪んで酷い形相になっている。
HPバーを見てみれば、出血のアイコンから別のアイコンに変わり、傷口から血が流れているような絵柄になっていた。
そのまま少し見ていると、出血の状態異常の時よりスリップダメージの量が多く、またその間隔も短くなっていた。
今の状況から考えると、出血の上位互換……差し詰め、流血のバッドステータスアイコン……なのかもしれない。
う~ん……自分でやったこととはいえ、罪悪感が芽生えてしまいそうな光景だな。
妙にこのゲームのモンスター……特に人型は表情豊かで人間臭いところがあるから、人によっては人型モンスターとの戦闘を避ける、なんてこともあるかもしれないな。
まぁ、今まで散々頭を潰したり、首を狩ったり、心臓を突き刺してきているのだから、今更な気もする。
それに、相手はこちらが殺らなければ、俺自身や仲間が殺られる敵性モンスターだし、対人戦の練習だと思えば、その内慣れるだろ。
これが、友好的で庇護欲そそるような、復活しない相手であればまた違ったかもしれないけどな。
そんなことを考えながら、斬り落とされたブラックアニスの腕を見てみれば、まるで陸に打ち上げられた魚のように『ビタンビタン!』と跳ね回り、その不自然に伸びた状態から次第に元の長さへと戻り、そして光の粒子に変わって消えていった。
更に後ろには、ダグラス達と出会った丘陵地帯での焼き増しのような光景が見えた。
ギリギリ辛うじて、ダグラスとアフロディーノで前線を作り、後衛であるミカエリスやセルピナを庇うように立ち回っている。
シエルとネロはダグラス達を半包囲するように展開しているレッドキャップ達の後方から挟み撃ちになるような立ち位置だが、ダグラス達や俺に当たることを危惧してか、思うように戦えてないようだった。
んー……これはちょっと不味いか?
俺は油断なく視線をブラックアニスに戻しながら、この状況を打破するべく念話で助けを出す。
『シエル、部屋中央上空でチャージして敵の注意を引いてくれ。その後はダグラス達に当たらないようにライトアローの一斉射を』
『ッ! うん! わかったー!』
『ネロは、シャドースワンプとシャドーバイトで牽制と拘束を頼む。その後はヴェアリアントゼライスに変化して、レッドキャップ達の武器を溶かしてやれ』
『けんせいとこうそくと……とかす? うん、やってみるー!』
『皆、シエルとネロに引き付けと牽制と拘束を頼んだ。その隙に、大勢の立て直しを。ネコナミンAを飲んでもいいかもしれないけど、そこは自己判断で頼む』
『ッ! 助かる!』
『ありがとうございます!』
『流石だな、我が盟友は!』
『重ね重ねありがとうございますなのです!』
そして、俺は再びこのブラックアニスを倒すために行動していく。
今は動きに精細さがなく、どんな突拍子もない行動に移すかわからないし、ここはなるべく反撃は受けない方がいいだろうから、近づかずにやるとしよう。
そのために魔法を習得したんだしな。
「ダブルマジック――ボルトスフィア!」
ボボォォォン!!
「ツッ! ガァァァアアアアアッ!?」
俺は前方に掲かかげた左手の平から、常時強い青白い稲光を中心から発する直径5cm程の小球を、ブラックアニス目掛けて2つ発射する。
するとブラックアニスは、魔法を放つと同時に、驚いたように目を見開き、その動きが一瞬硬直する。
そして、その硬直により魔法が命中。
次いで2つの雷爆発が起き、ブラックアニスからは更に悲鳴が上がる。
しかし、雷爆発のせいで粉塵が巻き上がり、一時的にブラックアニスの姿を見失う。
しまったな……爆発しない魔法の方がよかったか?
道中のモンスターは動かない猫の石像以外倒して来たから、大丈夫だと思ったんだが。
どこか気が緩んでいたのかもしれない。
そう反省していると、ふいに粉塵から真上に何かが飛び出し、大木の枝まで到達するとしっかりとその枝を掴んだ。
その何かは、ところどころから白い煙を上げている浅黒い腕だった。
ッ!? 逃げる気か!
俺はブラックアニスが大木へ逃げるために腕を伸ばしたと考え、即座に浅黒い腕へと攻撃を仕掛け、ダメ押しで魔法を置いておく。
「リープスラッシュ! ショットガンボルト!」
「ギャッ!? ツッ!! グギャァァァアアアアア!!」
狙い違わず、浅黒い腕へと魔力の斬撃が吸い込まれ赤いエフェクトが飛び散る。
しかし、痛みに対する悲鳴は聞こえど、その痛みに耐え、最初の時のように手を放すことはなく、そのまま伸ばした枝へ向かって腕が急速に縮み始めた。
そして、痛みに耐えた場合を見越して置いておいた俺の雷散弾の最中を突っ切る形となり、更なるダメージを与えるに至る。
流血によるスリップダメージでだいぶ減っていたのか、残りのHPは2割程だった。
ブラックアニスはこちらを見下ろしながら、憎々し気にされどどこかしてやったりとした顔でニヤリと嗤い、ボロボロの体とあちこち白い煙を上げている腕で大木の枝へと上昇していく。
そんな時ソレは起こった。
『いくよー? ソーラーチャージ!』
すると、部屋の中央上空10m程で太陽とは違う新たな光源が発生する。
新たな光源で照らされ、俺の影は濃く大きくなり、反対にブラックアニスの全体像は明るく照らし出されていた。
振り返り少し上を見てみれば、あの時と同様に金色をした光の球のようなものを急速に吸収し、その体全体から黄金色の眩い光を放っているシエルがいるのが見えるだろう。
そしてその証拠に、シエルのソーラーチャージにより、大木の枝へと上昇していくブラックアニスの視線が俺から外れ、シエルの方へ気が逸れるかのように、大木の枝への上昇スピードが落ちたのを確認する。
ここで決めるッ!
俺はこの隙を逃さぬよう瞬時に判断し、今の上昇スピードとかち合うように調整し、アーツと魔法を使っていく。
「トリプルマジック――スタンボルト!」
ピシャシャシャーンッ!
「ギャギッ!?」
ブラックアニスの頭上から細い3条の青白い雷が降り注ぎ、ブラックアニスを感電させ、大木の枝への上昇を止める。
感電で手を放して落ちてくると思ったが、驚いたことに枝へ伸ばし掴んでいた手は放すことなく握られ続け、ビクンッビクンッっと痙攣したまま中途半端な位置に宙吊りされる形で止まったままになっていた。
「ライオットバーサーク!」
瞬間、俺の体全体を緋色のオーラが包み込む。
そして、狙いを外さないように左手を掲げ、魔法を使う意思で一瞬ターゲットサークルを出し、しっかりとブラックアニスを見据えてソレを使う。
「ガァァァァァアアアーーーーー!!」
「ツッ?!!」
―ジュ!―――ズガァァァァァアン!!
俺の口からスキルを使う意志に反応して、直径6m程もある緋色の極太光線が放出され、ブラックアニスを焼いてから、部屋の壁に激突し爆発を起こす。
そして次の瞬間、辛うじて大木の枝に残っていたブラックアニスの腕が、光の粒子となり消えていった。
竜の息吹によって巻き上がった粉塵が晴れるとそこには、ブラックアニスの姿はどこにもなく、代わりに先程の光線により擂鉢状に抉れた壁が高熱にさらされ結晶化し、シエルが放つ黄金色の光に照らされ、キラキラとした光を反射しているだけだった。
ふぅ……終わったか。
逃げ回られて、乱戦にならないかひやひやしたけど、どうにか俺だけで倒せたな。
んー……前回は急いでたから採取しなかったけど、あの結晶化した壁の結晶……どうにか取れないかな?
俺の攻撃で状態が変わっているんだから、修復されて元の壁に戻ってなければ削り取ることはできそうだけどな。
まぁ、ダグラス達の戦闘が終わってもそのままだったら、その時にできるか試してみるとしよう。
そう思い後ろを振り返ると、戦闘は大詰めを迎えていた。
ネロが魔法で、ダグラス達を半包囲していたレッドキャップ達の足元を、濃淡のある影色の歪な三日月状の沼でその移動を阻害。
更に、その沼から出ようしてか、不自然に大股になっているところを6つの顔の無い鰐のような顎が食らい付き、ダメージと共により強固な拘束を施していた。
そしてその動けないでいるレッドキャップに対して、槍を射り、頭を潰し、首を斬り、時には殴り、手早く処理していっていた。
よく見れば、レッドキャップが持っている武器の尽くが溶け、持ち手以外のところから、白い煙をシュウシュウと出している。
また、時間経過とレッドキャップのもがきによって顔のない鰐のような顎が砕け散れば、上空から照らし出していたシエルからのライトアローで串刺しにされ、何もさせずに光の粒子へと変えていっていた。
手伝いはいらなそうだけど……こっちは終わったし、一応報告はしておくか。
『こっちは終わったぞ。手伝いはいりそうか?』
『いや、大丈夫だ』
『ええ、後少し待っていてください』
『刈り取るだけの簡単な仕事だからな』
『あ、でもでも、もしも危なくなりそうならその時はお願いしたいのです!』
『だいじょぶー!』
『とかすのたのしー!』
『わかった。じゃ、警戒しとくよ』
そうして程なくして、ダグラス達とシエルがレッドキャップ達全てを倒し、突発的に始まった戦闘は以外にあっけなく終了したのだった。
「はぁー! 焦ったー! リオン教えてくれて助かった。ありがとう。そして、お疲れ様」
「お疲れさまでした。ええ、ええ。突然なことで本当にびっくりしましたよ。誰も欠けなくて本当によかったです」
「お疲れ様。本当にその通りだと思います……丁度僕はスキル交換し始めたばかりで、すぐに動けませんでしたし」
「お疲れ様でしたのです。皆無事で本当によかったのです!」
「ああ、お疲れ様。偶然なところが大きいけど、気づけてよかったよ」
『おつかれさまー! いきなりすぎて、あせったー!』
『おつかれさまー! すっごくびっくりしたけど、どうにかなってよかったね!』
「だが、わからないな。どうして急にモンスターが出てきたんだ? リオンもミカさんも調べてくれてましたよね?」
「ええ、単にレベル不足か、見た場所がまずかったのか……わかりませんね」
「それについてなんだが……1つ心当たりがある」
「そうなのかい!?」
「そうなんですか!」
「リオン、マジか?」
「どういうことでしょうか?」
「ああ、といっても推測だけどな。まず、このゲームの種族スキルとかって伝承や伝説に沿って作られてるらしいってのは知ってるか?」
「ああ、そうらしいな」
「全部が全部そうではないようですが、伝承や伝説に登場するものは、そうらしいですね」
「そうなんですね」
「知りませんでした……」
「でだ、俺が戦っていたモンスターの名前はブラックアニスというんだけど……木の上に隠れ、側を通る子供を捕まえて食べるっていう伝承があるんだ」
「……あぁ、なるほど」
「そういうことですか」
「子供? セルピナはいう程……いや、どうだろう?」
「こ、子供!? そ、そんなに小さくはない! ……と思うのです、よ?」
「まぁ、妖精基準だし詳しくはわからないけどな」
「だけど、その解釈で合ってそうではあるな」
「ええ。それか、あの大木の根本付近……そのブラックアニスでしたか? の真下付近を通るというトリガー式の罠……といっていいのかわかりませんが、それが発動する条件が揃ってこうなった可能性がありますね」
「つまり……モンスターハウスになる条件を満たしてしまった? ということですか?」
「その可能性はあるな。伝承に沿った条件を満たす罠か……。本当にこのゲームはおもしろいな! わくわくが止まらないぜ!」
「そ、そんな~……あんまりなのです」
「言ってる場合ですか、ダグ。ピナちゃんがかわいそうですよ」
「ああ。少し不謹慎ではないかな?」
「え、ああ。悪い。セルピナすまん!」
そうやって話しているとふいにどこからともなく、ある程度の大きさの石同士がぶつかり合いながら崩れ落ちるような音が響き渡る。
「つッ!? な、なんだ!?」
「今度はなんですか!」
「くッ!? また敵かい!?」
「次から次へと、いったいなんなのです!?」
「っ!……いや、たぶん大丈夫だ」
気配偵知を使いならが辺りを見渡すと、入って来た入口から見て大木の左側の壁が一部崩れ、中から1つの石材型の宝箱が転がり出てきていた。
その石材型の宝箱を注視してみれば、天眼の効果により中には緑色を発する何かがあることがわかる。
「さっきディーノがいってただろ? たぶんモンスターハウスの報酬じゃないかな? 前の時もそうだったし」
「そ、そうか。報酬か」
「心臓に悪いダンジョンですね」
「まぁ、苦労が報われるだけ良いではないですか」
「もぅ、びっくりし過ぎて疲れてきたのです」
「まぁ、そういうこともあるよ。で、この後はどうする? 宝箱を開けて、分配してから休憩か?」
「そうだな……そうするか」
そうして俺は、LUK上昇の魔法を自分にかけてから、宝箱を開け中身を出していった。
武器アイテム:鉈剣 名称:サージカルチョッパー ランク:4 強化上限回数:33回
要求STR:100 ATK74 出血(小) 回復力減少(小) 耐久値:794/794
与DP倍率:斬0.8 打0.8 突0.8 魔0
説明:刃に対して45度の角度で並ぶ鋸状の刃を持つ、鋼製の鉈鋸型両手長剣。ギザギザの刃による斬り傷は、治り難く血を効率よく流させ、対象を弱らせるのに適している。その反面、切断能力を犠牲にしているため、切れ味は今一つ。
「両手長剣かぁ……こりゃディーノ行きか?」
「ですかね。ディーノは魔法も使いませんし、丁度よさそうですが……」
「う~ん……相手を嬲る趣味はないのですが……」
「でもでも、魔属性以外は0.8倍なのですから、強化次第では化けると思うのですよ?」
「確かにな。それに効率的に弱らせるイコール嬲り殺すじゃなくて、戦闘を早く終わらせるってことだと思うけど?」
「なるほど。使い手次第……盟友はそういいたいのだね?」
「そうなのです! 闇の力でもそれ自体はただの力。使い手の次第で善にも悪にも成り得るだけなのです!」
「そうだぞ、ディーノ。武器に貴賤はないぞ」
「ええ。あくまであるのは自分の拘りや戦闘スタイルだけですよ」
「……わかりました。では、他に欲しい人がいなければ僕が頂きたく!」
「ああ、いいぜ!」
「もちろん、どうぞ」
「よかったのです」
「ああ」
「じゃ、分配も終わったし、今度こそ休憩するか!」
「ええ!」
「ああ」
「はいなのです!」
「わかった」
そうして俺達は先程のようにだいたい互いに5~6m程離れ、しかし大木周辺には近づかないで、休憩していった。
まずは、まだ鑑定していないものから。
素材アイテム 黒ずんだ木箱:黒カビが生えた木箱。湿気を含み、木箱内部にぬめり気がある黒く変色した木箱。ものを中に入れることができるが、病気のリスクが高いため乾燥するか燃やして処分するのが一般的。適切な処理を施せば、何かの薬にはなるという……。
素材アイテム 黒ずんだ樽:黒カビが生えた木製の樽。湿気を含み、樽内部にぬめり気がある黒く変色した樽。ものを中に入れることができるが、病気のリスクが高いため乾燥するか燃やして処分するのが一般的。適切な処理を施せば、何かの薬にはなるという……。
素材アイテム 腐った水が入った木箱:雨水を長期保存してしまった木箱。細菌が繁殖している可能性があるため飲用、接触は厳禁。煮沸、蒸留しても飲用はお勧めしないが、掃除や園芸等の雑用水としては使える。
素材アイテム 腐った水が入った樽:雨水を長期保存してしまった木製の樽。細菌が繁殖している可能性があるため飲用、接触は厳禁。煮沸、蒸留しても飲用はお勧めしないが、掃除や園芸等の雑用水としては使える。
素材アイテム 朽ちかけた木箱:長い年月が経ち、ボロボロに朽ちかけた木箱。少し力を入れれば、容易に壊すことができる程強度は弱いが、そのまま細かくしたり、燃やして灰にしてから、畑等の土地に混ぜることで、肥料にすることができる。
素材アイテム 朽ちかけた樽:長い年月が経ち、ボロボロに朽ちかけた木製の樽。少し力を入れれば、容易に壊すことができる程強度は弱いが、そのまま細かくしたり、燃やして灰にしてから、畑等の土地に混ぜることで、肥料にすることができる。
素材・武器アイテム 赤帽子軽剣士の鉄錆短剣:レッドキャップフェンサーのアイアンラストダガー。長い年月放置され、錆びが浮き、斬れ味が悪くなっている。武器として使うことも可能だが、威力・耐久共にあまり期待することはできない。主に鋳潰して、別の何かの材料に使われることが多い。
ATK 35 最大耐久値 40
素材・武器アイテム 赤帽子斧士の鉄錆斧:レッドキャップアキサーのアイアンラストアックス。長い年月放置され、錆びが浮き、斬れ味が悪くなっている。武器として使うことも可能だが、威力・耐久共にあまり期待することはできない。主に鋳潰して、別の何かの材料に使われることが多い。
ATK 45 DEX -8 最大耐久値 44
素材アイテム グレーホワイトマーブライト:白に近い灰色の大理石。長い年月放置され、土埃や汚れに塗れ、見た目がくすんでしまった元白い大理石。表面を削ればまた綺麗な色合いの石材に戻るため、様々な加工品の材料となる。
換金アイテム 探検家小鬼の財布:ゴブリンパスファインダーのお財布。何がどのくらい入ってるかは開けた時のお楽しみ。入ってる物は開けた者のLUK の値に依存する。
素材アイテム 探検家小鬼の小角:ゴブリンパスファインダーの小さな角。加工することで装飾品や薬の材料になる……らしい。
素材アイテム 黒妖薬婆の黒鋭爪:ブラックアニスの黒い爪。黒い鉄でできており、鉄錆び臭いが鋭くよく刺さる。矢や格闘武器、装飾品の材料になる。
素材アイテム 黒妖薬婆の超伸縮腱:ブラックアニスの腕の腱。魔力を流すことで最大20mまで伸ばすことができる腱。その特性上弓の弦やロープの材料に使われる。
素材アイテム 黒妖薬婆の超伸縮骨:ブラックアニスの腕の骨。魔力を流すことで最大20mまで伸ばすことができる骨。その特性上ポール系武器や特殊な魔道具の素材として珍重されている。
素材・消耗アイテム 黒妖薬婆の止血薬:ブラックアニス謹製の止血薬。傷口に塗ることで早急に出血を止め、炎症を抑え、痛みを和らげる優れもの。しかし、未だに未完成品であるため、何かしらの手を加える余地が残っている。未完成品であるにも拘わらず、効能が高いため貴族の間では古来より常備薬の一つとして大事にされている。また、市場に滅多にでないことから末端価格はgで時価ともいわれている。
【部位破壊ボーナス】
素材アイテム 黒妖薬婆の超伸縮腕(右):ブラックアニスの肘から下の右腕。魔法や魔術はもちろん、呪術との親和性が高く、魔力を通すことで腕を伸ばすことが可能。更に、魔力を操作することで右手に何かを握らせることもできる。古来より優れた武具の材料として、呪術師垂涎の素材でもある。また、ほとんど市場に流れることがないため、とても希少性が高く、非常に高い値段で取り引きされる。
ゴブリンパスファインダーからは、水錬鉱と影錬鉱が、それぞれ1つずつ出て、ブラックアニスからは鍛錬鉱が2個出た。
次はステータス回りだな。
そうしてステータスの方を確認すると、俺の種族レベルが1つ上がり、スキルレベルの上昇により新たなアーツが1つと魔術を1つ習得していた。
シエルは、種族レベルが1つ上がり、スキルレベル上昇により新たな魔術を1つ覚えていた。
ネロの方も種族レベルが1つ上がったが、スキルレベルが上限に達したスキルが2つあり、進化可能になっていた。
まずは俺のステータスから。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv38
job:冒険者 rank:E
class:マジックソードマンMaster
HP:1005 MP:552
STR:263
VIT:201
AGI:261
INT:139⇒142
MID:131
DEX:410
LUK:122
STP:3⇒0
所持金:26924R 虚空庫 302/1522 {貯金:370万R}
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕
専科スキル:〔魔法剣・無Master〕
装備スキル:〔速攻Lv6〕、〔剣術Lv39〕、〔暗殺術・裏Lv12〕、〔歪魔術Lv6〕、〔天眼Lv69〕、〔賦活Master〕、〔詠唱破棄Master〕、〔気配偵知Lv41〕、〔識別Lv97〕、〔汎用魔法〕、〔煮炊きLv3〕
控えスキル:〔鑑定Lv97〕、〔虚空庫 rank4〕、〔錬換Lv1〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv5〕、〔調教Master〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕、〔剥ぎ取り上手〕、〔医食同源〕、〔砕撃の頭壊者〕、〔慈悲深き討滅者達〕、〔再起させし者〕、〔斬撃の首刈者〕、〔穿撃の心貫者〕、〔暗技の練達者〕、〔弱肉強食〕、〔叛きし者〕、〔虎殺し〕、〔匙を投げ捨てし者〕、〔我が道を行く者〕、〔大胆なる隠者〕、〔調教の賜〕、〔オーバーキラー〕、〔死神〕
称号スキル:〔念話Lv42〕、〔怪力乱心Lv18〕、〔韋駄天Lv18〕、〔薬膳Lv13〕、〔死神の心得Lv10〕
固有スキル:〔狂暴化Lv11〕、〔軽業Lv50〕、〔頑健Lv67〕、〔強靭Lv54〕、〔拒絶Lv21〕、〔自爆Lv3〕、〔酩酊耐性Lv1〕
ステータスポイントは、魔法の威力を少しでも上げるためINTに全振りした。
INTにプラス3で、139⇒142へ
新たな魔術は、歪魔術のレベルが5になった時に習得した魔術のようだった。
□ レンジエクステンド:術式を歪め、一定時間射程距離を延ばす、補助系延長魔術。延長距離はINT・MID・DEX の値に依存し、効果時間はINT・DEX・LUK の値に依存する。
消費MP:30 リキャストタイム:60秒
これで、今よりもっと遠くから魔法や魔術を撃ち込めるな。
今まで最高で20mくらいだったから、戦闘の幅が広がりそうだ。
そして、もう1つの方が少し問題で、軽業のレベルが50に到達したことで新たなアーツを習得したが、それに伴い新たな情報も開示された。
□ エアジャンプ:筋力、敏捷力、操作力、集中力、を駆使して虚空を蹴りつける、運動能力の極致の一つ。空中にいる時に、どの方向にでも更に跳躍することが可能。回数を重ね、慣れることで消費CP量とリキャストタイムが減少する。但し、どんなに慣れても消費CP量とリキャストタイムが0になることはない。
消費CP:20% リキャストタイム:20秒
ん? CP?
MPじゃない?
そんな疑問を持ちながら、アーツの説明を読み込むと、ふいに今まで聞いたことのない音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『ピロロン♪ 条件を満たしたため、新たな情報の開示を行います。情報の開示は別途送信されたメールをご確認ください』
考えるのは後でもできる。
ここは確認の方が先だな。
そうしてメールボックスを見ると、未読のメッセージが1件ありますとあり、そのメールを開いて中を確認した。
【CP:集中力の総量。特定の対象や作業に意識を向け、周囲の雑音や不要な情報を遮断して、その状態を持続的に維持する能力。これが半量を下回ると作業スピードが下がり、ミスを誘発し、発想力、想像力を低下させ、新たな能力習得までが長くなる。0になると無気力状態となり、宿屋で休息を取るか、最大CPの3割が回復するまで、MIDとDEXが1/100に減少する。】
メールを読み終わると、HP、MPバーの下にCPという新しいバーが浮かび上がってきた。
CPバーにはHPやMPのような数字ではなくパーセンテージでの表記のみが表示されていた。
何気なく指でなぞるようにしてCPバーを触ると、『CP消費に拘る事象やアーツ使用時のみの表示に変更しますか? Yes/No 』という確認ウィンドウが出てきた。
俺は少し驚きながらもHP、MPバーを誤認するかもしれないと思い、Yesを押した。
すると、CPバーは『スー……』っと次第に透明になって消えていき、いつも見ているHP、MPバーだけの表示に変わった。
念のためもう1度CPバーのあったところをタップすると、今度は『CPバーを常時表示に変更しますか? Yes/No 』という確認ウィンドウが出てきた。
こうやって戻すのかと思いつつ、Noを選択し確認ウィンドウを閉じた。
なるほどな、運動能力だからMP消費じゃなくて、集中力……CP消費なのか。
言いえて妙とは、このことだな。
確かに、運動能力だけで実現するアーツなら、MPを消費するのはおかしいもんな。
それに、宿屋ってただの舞台装置……雰囲気作りのための施設じゃなかったんだな。
夢現フィールドにいけるソフトドリンクがある、仔が名前についた宿屋だけじゃなく、他の宿屋もあるらしかったから不思議に思ってたけど、ちゃんと役割があったということか。
最初は、単純にポーションの節約のためとか、MPを回復するだけのためにあるんだと思ってたし、こうして新しい発見があると、つくづくよく作りこまれてると思えてしまうよな。
宿屋以外での回復は、恐らく情報の開示と共に、今まで製作した食品、薬品、消耗アイテムとか、購入できるアイテムや飲食ができるものの効果として付与されているのだと思う。
また、集中力を持続させる飲食物に心当たりもあるから、今度材料を調達して作ってみるのもいいかもしれない。
さて、それじゃシエルのステータスを見ていくとしよう。
そうして、シエルのステータスポイントを割り振ろうと思い、シエルのステータス画面を開く。
すると、ウィンドウが現れ、『テイムモンスター:シエルは、進化条件を満たしています。テイムモンスター:シエルを進化させますか? 今すぐ進化させる ◎/後で進化させる ○/進化させず保留する △ 』と出た。
え? 今?
いや、進化はさせたい。
させたいけど、なんで今なの?
今は人目が……いやでも、ダグラス達の為人はこの短い付き合いからでもわかるし、むやみやたらと言い触らすようには思えない。
それにたぶんこれからボス戦が控えてるはずだから、戦力があるに越したことはないんだよなぁ。
う~ん……よし!
シエルに聞いてからにはなるだろうけど、断りとお願いをすれば大丈夫な気がするな。
俺はそう考え、まずは進化する本人のシエルへと念話を使う。
『シエル、ちょっといいか?』
『ん? なーにー?』
シエルに念話で呼びかけると、空中を滑るようにこちらに飛んで来る。
『シエルのステータスを確認したら、進化ができるみたいなんだ』
『そうなの!? それじゃ、やろう? やろう?』
シエルは進化できることに驚き、次いでせがむように両手を握り込んで両腕を体の前に掲げる。
『ああ、それはもちろん。だけど、今はダグラス達と一緒だろ? だから、断りとお願いをしてから進化しようか。いきなりシエルが進化しだしたらびっくりさせちゃうだろうからな』
『そっか! うん、わかったー!』
シエルは1度頷き、その後両手を上げて元気よく返事を返す。
『ありがとうな』
『うんうー! ぜんぜんだいじょうぶだよ! こっちこそいつもありがとね! いつもきにしてくれて!』
シエルは体全体と首を左右に振った後、『にぱぁ!』という擬音が似合う眩しい笑顔を見せる。
そして俺はそのまま少しシエルに待つように告げ、念話でダグラス達に声をかける。
『全員、ちょっといいか?』
『どうした? リオン?』
『何かありましたか?』
『はっ!? まさか、また敵かい!?』
『そうなのですか!? それだと今は矢が……いえ、宝箱のがありますけど、でも……う~ん』
『あ、いや。敵じゃない。因みに、罠とかでもないから、安心してくれ』
『そうか、それならよかった』
『あんなことがありましたから、少し敏感になってしまいましたよ』
『ですね。奇襲に近い形での罠はもうこりごりですよ』
『なのです……だとしたら、どういう要件でしょうか?』
『ああ、いやその……私事なんだけどな。シエルが進化できるみたいなんだ。だから、ちょっとシエルが光るかもしれないけど、気にしないでくれると助かる』
『いや、気にするだろ。むしろ見てみたいぞ』
『シエルちゃん、進化できるんですか……それは気にするなというのは酷というものですよ?』
『ああ。盟友リオンよ。流石にそんな一大の晴れ舞台を見ないという選択肢はないのではないかな?』
『シエルちゃんの進化、なのです!? それは見ない手はないのです! むしろ永久保存しておきたいのですよ!』
『あー……やっぱり? まぁ、俺もそういう機会があれば見てみたくはあるから、わかるけど……。そうだな、シエルが許可したらいいぞ? ダメだったら、悪いけど諦めてくれ』
『まぁ、仕方ないか』
『ですね。シエルちゃんの大事なことですからね』
『確かに、本人の許可は必要だろうね』
『うぅ……すっごく見たいのですが、当然なことなのです。だから、シエルちゃんがいいっていってくれたらで、いいのですよ?』
『わかった。ありがとうな。それじゃ聞いてみるよ』
そうして、俺はシエルにダグラス達がシエルの進化を見たいことを伝え、許可を求める。
すると、シエルは快諾し、進化の立ち合いを認めた。
『いいってさ。それじゃ、進化させるから集まってくれ。ただ、操作を誤ると危ないから少し……そうだなシエルを半包囲するようにして見てくれ。あ、俺も見たいから俺から見て反対側にいてくれると助かる』
『わかった』
『了解しました』
『ああ、いいとも!』
『はい、なのです!』
『はーい!』
そうして、ダグラス達は俺が言った位置へと移動していく。
そして、シエルにもダグラスや俺、ネロからも見えるように移動し、準備が整った。
前回の進化では確か、ステータスの確認とレベルアップでのステータスポイントの割り振りをしてからだったが、今考えると進化してからの割り振りの方が、選択の幅が増える気がするな。
まぁ、大局的なところは変わらないから、俺の気分の問題なだけなんだが。
そんなことを考えつつ、押し間違いがないようしっかりと説明を読み、出しっぱなしになっていたウィンドウの◎ボタンを押した。
◎ボタンを押すと以前と同じように、『進化条件を満たしているテイムモンスター:シエルを進化させます。本当によろしいですか? Yes/No 』というウィンドウが出た。
「それじゃシエル、いくぞ?」
俺は全員に聞こえるように肉声で最終確認の言葉を発する。
『うん! おねがいねー!』
シエルは大きく頷き、輝く笑顔で返事をする。
俺はその返事に頷き返し、進化するためにシエルの了承を得てからYesを押した。
すると、ふいにシエルが淡く輝き出し、徐々に形を変えながら大きくなっていく。
少しして淡い輝きが消えるとそこには、全身に黄金色の光を湛えた、先程のシエルより少し大きな姿の幼女がいた。
「「「「「おぉ~……!」」」」」
「キュ~……!」
俺達は感動するように、一様に声を揃えて感嘆の声を漏らす。
進化したシエルの身長は、先程見ていた全体像より10cm位大きい、70cm強程に成長していた。
他に変わったところといえば、袖なしの白いワンピースに半袖がついたくらいだろうか。
「シエル、進化おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「この良き日に立ち会えたことに感謝と祝福を! おめでとう!」
「お、お、お、おめでとうなのです! シエルちゃん、し、進化おめでとうー! なのです!」
「キュー! キュキュー!」
『え、えへへぇ。ありがとー!』
そう口々にお祝いをいうと、シエルは若干照れた笑いを浮かべ、お礼を告げる。
『どう? どう? 何かかわった?』
シエルは俺の方へ近寄り、俺の前で止まって、その場でくるりと1回転してから、自分の変化について聞いてくる。
「そうだな、少し大きくなったな。それと服装が少し変わったな。ほら、両肩から肘までの辺りに半袖があるだろ?」
『本当だー! ちょっとふくがかわったねー!』
「それと……言葉の伝わり方が変わった気がするな。これは俺にしかまだわからないとは、思うんだけど……なんていうのかな? 言葉使いが滑らかになった?」
『そうなのー? 自分じゃよくわからないよー?』
「ははっ、そっか。まだわからないか。じゃ、仕方ないな」
『うん! 仕方なーい、仕方なーい♪』
シエルは何が楽しいのか俺の言葉を真似するように口ずさみながら、左右に揺れ、溢れんばかりの笑みをこぼす。
「それじゃ、俺はまだやることがあるから、もうしばらくネロと警戒をよろしくな」
『うん! まっかせてー! ネロ、行こー!』
「キュウ!」
シエルは元気良く返事をすると、『ちょっと、大きくなったよ~!』と言いながら、ネロを伴ってすーっと空中を滑るように、部屋の入口付近へと移動していった。
俺はそんな二人の仲睦まじい行動を見守ると、本当に良い子に育ったなぁっと思いつつ、ダグラス達へと話しかける。
「で、感想とかあるか?」
「いや、言葉できるようなものじゃないな。でも、いいものが見られた。ありがとうな、リオン」
「こんな機会をくれてありがとうございます。進化ってあんな感じなんですね!」
「盟友よ! この素晴らしい機会に感謝を! そして、小さな女神に、祝福あれッ!」
「本当に感謝感激なのです! ……ずずっ、ぐすっ。よかった、ものすごくよかったのです! 感動がすごかったのです!」
「え? セルピナ、泣いてるのか? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫なのです! これは、その……そう! 興奮で汗が滴っただけなのです! だから、心配ご無用なのです!」
「お、おぅ。そうか、ならいいんだ」
「さて、じゃ俺達は戻るとするよ。まだ鑑定し終えてないし、ステータスチェックとかもある奴いるだろうしな」
「ですね」
「そうだな」
「はいなのです!」
そうして、ダグラス達はそれぞれ休憩していた場所に戻っていった。
さて、それじゃ今度こそシエルのステータスを確認するとしよう。
どのくらい変わったかな?
種族は何になったんだろうな?
楽しみだ。
name:シエル
sex:女
race:サンシャイン・エレメンタル〔下級〕Lv0
HP:400 MP:492
STR:0
VIT:116
AGI:121
INT:136⇒140
MID:131
DEX:155
LUK:131
STP:4⇒0
種族スキル:〔陽光活性(昼)〕、〔玉響化Lv0〕、〔眷属召喚:最下級〕
スキル:〔陽光魔術Lv11〕、〔光耐性Master〕、〔影耐性Master〕、〔浮遊機動Lv16〕、〔装飾化Lv8〕、〔念動力Lv11〕、〔賦活Master〕、〔毒耐性Master〕、〔麻痺耐性Lv8〕、〔訓練の賜〕、〔遅延Lv26〕、〔詠唱破棄Master〕、〔鍵Lv0〕
固有スキル:〔STR返上〕、〔物理半減〕
シエルのステータスを確認すると、シエルの種族はサンシャイン・エレメンタル……陽光の精霊に進化していた。
更に、種族名と種族レベルの間に下級とついていることから、もしかしたら階級のようなものがあるのかもしれない。
色んな伝承、伝説では大抵下から、最下級、下級、中級、上級、高級とがあり、物語によっては高級が最上級であったりする。
また、高級や最上級の中でその種族の長的な立ち位置だったり、1番能力が高い精霊が精霊王だったりもする。
まぁ、精霊王の場合は一時的に契約者とかに力を貸す側で、しかも星の運行に直接拘わっている重要な立ち位置なので、一プレイヤーのテイムモンスターがその地位につくとは考え難いけどな。
そして、新たに種族スキルが2つ増え、固有スキルが1つ増えており、更に進化可能なスキルが3つあった。
新たな固有スキルの方は、今まではスピリット…幽霊系からの進化になったが、種族スキルとしてあったものの継承として受け継がれたのではないかと思う。
エキスパートソードも進化前の能力を継承していたから、あり得ない話ではないと思われる。
種族スキルの玉響化の方はよくわからないが、眷属召喚の方は字面だけでどんなスキルかだいたい想像はつくな。
まぁ、全部確かめていけばいい話なんだけどな。
ステータスポイントは、長所を伸ばすようにINTに全振りしておいた。
INTにプラス4で、136⇒140へ
陽光魔術のレベルが、10になった時に習得した魔術のようだ。
□ サニースタビライザー:陽光に溢れる暖かな光を照射し、精神の安定を図る、精神系状態異常回復促進魔術。暖かな光の照射により、精神状態異常の回復を早める効果がある。この魔術の威力はMID・DEX・LUK の値に依存する。また、生きた植物系アイテムに照射することで成長を促す働きを持ち、食材アイテムや武装具に照射することで若干の消毒も可能。但し、照射し過ぎると枯れたり、腐ったり、劣化したりするので、当て加減には注意が必要。
消費MP:25 リキャストタイム:60秒
回復促進魔術ということは、精神系状態異常の回復を早めるだけですぐに回復するような魔術ではないということかな?
まだゲームの序盤だし、精神系状態異常もあまり見かけた記憶もないから、すぐに回復するような高性能な魔術はまだ使えないと考えるべきだな。
それにしては結構なイベントが発生してる感じもするが、事実としてこのゲームが始まってから未だに1か月も経過してないっていうんだから、このゲームは相当奧が深いのだと思う。
特に、運営からのメンテナンスでのアップデートではなく、プレイヤー自身の行動で新たなシステムが解放されるあたり、作り込みへの情熱がすごいのだろう。
生きた植物系アイテムに対しての下りは、現実と同じように植物が日光で育つのを魔術でできるということだな。
紫外線にも若干の殺虫、殺菌効果もあるし、そういう使い方もできるということのような気がする。
種族スキル:〔玉響化Lv0〕
姿を光の玉に変えることができる。大気中の魔素の抵抗を極限までに減らし、移動と防御に秀でた、精霊にとっての防御形態にして、逃走形態。この姿でいる時、INTの値を1/10にする代わりに、AGI の値を3倍加し、VIT・MID の値を倍加させる。SLv上昇と共に、消費MPをSLv分減少させ、リキャストタイムを(SLv×1秒)短縮する。また、任意のタイミングで元の姿に戻ることも可能。 MAXSLv100
消費MP:150 リキャストタイム:10分
精霊にとっての防御形態にして、逃走形態かぁ……ってことは、最初にこのゲームを始める時に見た、ナビさんの姿ってコレで、真の姿じゃなかったってことかな?
精霊って基本的に星の運行の手伝いをするものだから、数が多いんだよな。
つまり、ナビさんの真の姿を見ることは不可能ではないにしてもほぼ無理って可能性が高い。
そう思うと少し残念だな。
機会があれば、また会ってみたいけどな。
種族スキル:〔眷属召喚:最下級〕
効果:魔法<サモン・ファミリア(最下級)>を使用可能。
□ サモン・ファミリア(最下級):1日に1度、最下級の陽光精霊を召喚、使役することができる、特殊召喚魔法。召喚される最下級の陽光精霊はランダムで、同じ個体が召喚されることは極稀。使役することのできる最大時間は、INT・MID・DEX・LUK の値に依存し、個体の強さはLUK の値に依存する。
消費MP:100 リキャストタイム:24時間
召喚される最下級の陽光精霊はランダム?
ってことは、毎回違う最下級精霊が来るってことか。
つまり、名前をつけて育てるというよりも、戦闘に一時的に参加させて、戦力の増強を図るということだろうか?
最悪使い潰しも効く戦力だと思えば、使い勝手はよさそうだけど、進化してシエルみたいになる予定の子が消滅すると考えると、だいぶ心が痛むな。
それなら俺もシエルも、もしも全滅することになっても俺と契約してる状態なら死に戻りするだけだし、召喚した最下級精霊の召喚を解除する方を選びそうだ。
〔PS〕パッシブスキル:〔光耐性Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔光吸収Lv0〕
〔PS〕パッシブスキル:〔光吸収Lv0〕
光属性の攻撃を受けた時、光属性のダメージを無効化し、更に本来受けるダメージ量のSLv/2%分、HPに吸収し回復させる。但し、回復であるため、最大HPの上限が増えることはない。 MAXSLv100
〔PS〕パッシブスキル:〔影耐性Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔影無効〕
〔PS〕パッシブスキル:〔影無効〕
影属性の攻撃を受けた時、影属性のダメージを無効化する。
そうやってスキルの進化を2つ終わらせると、音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『ピロリン♪ 条件を満たしたことにより、テイムモンスター:シエルが新たなスキルを習得しました。習得したスキルは、別途ステータス画面からご確認下さい』
俺は進化させて読み込んでいたスキル画面を閉じ、シエルのステータス画面に戻る。
するとインフォメーションの通り新たなスキルがあった。
〔PS〕パッシブスキル:〔闇耐性Lv1〕
闇属性の攻撃によって受けるダメージをSLv%軽減する。 MAXSLv100
闇耐性か……影吸収とかではないんだな。
まぁ、たぶん種族相性的なものだろうし、仕方ないちゃ仕方ないか。
前にアリルからも種族相性で耐性系の進化先が決まるとかいってたし、陽光の精霊が影属性吸収したらドン引きものか……うん。
〔PS〕パッシブスキル:〔毒耐性Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔毒無効〕
〔PS〕パッシブスキル:〔毒無効〕
状態異常:毒を無効化する。
そうして、スキルの進化が終わるとまた音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『ピロリン♪ 条件を満たしたことにより、テイムモンスター:シエルが新たなスキルを習得しました。習得したスキルは、別途ステータス画面からご確認下さい』
俺はつい先程と同じ手順でシエルのステータス画面に戻ると、確かにソレはあった。
〔PS〕パッシブスキル:〔強毒耐性Lv1〕
状態異常:強毒が付与される確率をSLvが3の倍数毎に10%分減少させる。
また、状態異常:強毒に掛かった場合、(SLv×0.5秒)効果時間を短縮し、SLv%分時間経過で減少するダメージ量を減らす。 MAXSLv30
それじゃ、有効化しセットして……こんな感じかな?
name:シエル
sex:女
race:サンシャイン・エレメンタル〔下級〕Lv0
HP:400 MP:492
STR:0
VIT:116
AGI:121
INT:140
MID:131
DEX:155
LUK:131
種族スキル:〔陽光活性(昼)〕、〔玉響化Lv0〕、〔眷属召喚:最下級〕
スキル:〔陽光魔術Lv11〕、〔光吸収Lv0〕、〔影無効〕、〔闇耐性Lv1〕、〔浮遊機動Lv16〕、〔装飾化Lv8〕、〔念動力Lv11〕、〔賦活Master〕、〔毒無効〕、〔強毒耐性Lv1〕、〔麻痺耐性Lv8〕、〔訓練の賜〕、〔遅延Lv26〕、〔詠唱破棄Master〕、〔鍵Lv0〕
固有スキル:〔STR返上〕、〔物理半減〕
そうやってシエルのステータス更新を終わると、ふいにパーティチャットで声がかかる。
『ステータスチェックと鑑定が終わったのです! なので、あのギミックをやっててもいいですか?』
『こっちも終わったよ。僕も一緒にいいかな? セルピナ、みんなも』
『そうだな、いいんじゃないか?』
『ですね。お願いしましょうか』
『ああ、もしわからなかったら、後で全員で考えよう』
『はいなのです!』
『ありがとう!』
『だけどギミックができても先には進むなよ? それは全員の準備が整ってからだ』
『そうですよ? 特にディーノはそういうところあるんですからね?』
『わかってますよ、姉上。それに、ダグも。信用が足りないなぁ……』
『今までの行動の結果なのですよ? ディーノさん』
『確かにな』
『では行くのです!』
『あ、あぁ……。では行こうか』
そうして、セルピナとアフロディーノは俺達に断りを入れ、大木の樹洞にあるギミックパズルへと向かっていった。
さて、それじゃ今度はネロのステータスだな。
name:ネロ
sex:女
race:シャドービーストLv35
HP:450 MP:550
STR:60
VIT:61
AGI:71
INT:81⇒84
MID:61
DEX:81
LUK:60
STP:3⇒0
種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕
スキル:〔陰影魔術Lv11〕、〔影抵抗Lv6〕、〔影耐性Master〕、〔潜影潜行Lv28〕、〔宿紋化Lv4〕、〔潜匿Lv35〕、〔賦活Master〕、〔索敵Lv61〕、〔毒耐性Master〕、〔麻痺耐性Lv8〕、〔遅延Lv25〕、〔詠唱破棄Master〕、〔夜目Lv29〕
固有スキル:〔専化影装〕
ステータスポイントは、素の形態でも魔法や魔術の威力が上がるように、INTに極振りした。
INTにプラス3で、81⇒84へ
陰影魔術のレベルが、10になった時に習得した魔術みたいだ。
□ スピンシェイド:高速回転する陰影を飛ばし、対象の影に接触させることで、対象を強制的に回転させ、方向感覚を鈍らせる妨害系魔術。陰影を飛ばす速度は、INT・DEX・LUK の値に依存し、陰影が飛ばせる距離は、INT・MID・DEX の値に依存し、回転速度は、INT・MID・LUK の値に依存する。また、Slvが10の倍数になる毎に飛ばせる陰影の数が1つ増加する。
消費MP:25 リキャストタイム:60秒
強制的に回転させられるということは、平衡感覚の強さがものをいうことになるな。
子供の頃実際に似たことをやったことがあるが、自分で回転し続けている間はいいけど、止まった時がきついんだよな。
回る椅子に乗ったまま、級友とかに滅茶苦茶回された時も、回ってる間は楽しいんだけど、止まってからが酷かったのは今でもよく覚えている。
世界全てがぐるぐると回って、まともに立っていられなくなる程辛いんだ。
それをやられる相手にとっては、この魔術は本当に溜まったものではないよな。
それと、但し書きがないことから、恐らくは飛んでいる相手であっても影に触れさえすれば、効果を発揮するのだと思う。
そのことを考えれば、かなり凶悪な魔術であるといえる。
ネロ、お願いだから何があってもこの魔術を俺には使わないでくれ……!
〔PS〕パッシブスキル:〔影耐性Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔影吸収Lv0〕
〔PS〕パッシブスキル:〔影吸収Lv0〕
影属性の攻撃を受けた時、影属性のダメージを無効化し、更に本来受けるダメージ量のSLv/2%分、HPに吸収し回復させる。但し、回復であるため、最大HPの上限が増えることはない。 MAXSLv100
そうやってスキルを進化させると、ふいに脳内に『ピロン!』という音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『獣魔:ネロは同系統上位のスキルを習得したため、スキル〔影抵抗Lv6〕はスキル〔影吸収Lv0〕に統合、吸収されます』
おっとぉ?
これは予想外な展開。
だけど、よくよく考えればおかしくはないのかもしれない。
抵抗系スキルは、確率で特定属性攻撃のダメージの無効化だから、常に100%無効化される別のスキルがあれば、そちらにダメージを無効化されて、それ以上成長できなくなるからな。
因みに、統合、吸収された結果、影吸収のレベルが1上がっていた。
〔PS〕パッシブスキル:〔毒耐性Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔毒無効〕
〔PS〕パッシブスキル:〔毒無効〕
状態異常:毒を無効化する。
それで、これでくるんじゃないかな?
そう思っていると、思った通りまた音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『ピロリン♪ 条件を満たしたことにより、獣魔:ネロが新たなスキルを習得しました。習得したスキルは、別途ステータス画面からご確認下さい』
俺はまたさっきと同じ手順でネロのステータス画面に戻ると、先程シエルの方でもあったスキルを見つける。
〔PS〕パッシブスキル:〔強毒耐性Lv1〕
状態異常:強毒が付与される確率をSLvが3の倍数毎に10%分減少させる。
また、状態異常:強毒に掛かった場合、(SLv×0.5秒)効果時間を短縮し、SLv%分時間経過で減少するダメージ量を減らす。 MAXSLv30
まぁ、同じスキルだったし、相性云々もそんなに拘わらなそうなスキルだから、早々変化することもないよな。
ってか、俺の時も同じになりそうだ。
それじゃ、有効化して装備してっと。
name:ネロ
sex:女
race:シャドービーストLv35
HP:450 MP:550
STR:60
VIT:61
AGI:71
INT:84
MID:61
DEX:81
LUK:60
種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕
スキル:〔陰影魔術Lv11〕、〔影吸収Lv1〕、〔潜影潜行Lv28〕、〔宿紋化Lv4〕、〔潜匿Lv35〕、〔賦活Master〕、〔索敵Lv61〕、〔毒無効〕、〔強毒耐性Lv1〕、〔麻痺耐性Lv8〕、〔遅延Lv25〕、〔詠唱破棄Master〕、〔夜目Lv29〕
固有スキル:〔専化影装〕
そうして、俺がネロのステータス更新を終え、ドロップアイテムの移動をし終える頃、セルピナとアフロディーノの歓声が聞こえてきた。
どうやら2人で力を合わせて、無事ギミックをクリアできたようだ。
『どうやら、できたようだな』
『みたい、ですね』
『そうだな』
『んで、休憩はどうする? まだ、必要か?』
『いえ、私は今しがた終わりましたよ?』
『俺も大丈夫だな』
『そっか、なら合流して、先に進むとするか!』
『ええ!』
『ああ!』
そうして、俺、ダグラス、ミカエリスはステータス画面を消し、戦闘準備をしてからセルピナ達と合流した。
その戦闘準備には、セルピナに俺が矢型の槍を作ることも含まれている。
もちろん、シエルとネロの回収も忘れない。
尚、後で取ろうと思っていた壁の結晶は、時間が経過し過ぎたためか元の壁に戻って取ることができなかった。
もしも取るなら、変化してすぐじゃないとダメなのかもしれない。
ただ……高温で結晶化してるから、熱そうなんだよな。
因みに、ギミックタイルの絵柄は、三毛猫、トラ猫、ぶち猫の3匹が鍋の中に入って丸くなり、眠っているものだった。
所謂、猫鍋というやつだな。
「じゃ、たぶん次がボス部屋だと思うから、気を引き締めていくぞ!」
「ええ、準備は万全です!」
「ああ、任せたまえ!」
「初めてのボス戦……ッ!! がんばるのです!」
「それじゃ、ギミックを作動させてくれ。それでそこが開くはずだから」
俺がそうセルピナにいうと、セルピナは不思議そうな声を上げる。
「あれ? そういえば、ギミックが作動してないのです?」
「ああ、たぶんだけどそこの1番下の枠を閉めると作動するんだと思うぞ? ほら、正方形の枠組みの下に1マス分の余裕がある枠の上辺のところだ」
俺がギミックを作動させると思しき場所を教えると、セルピナは合点がいったかのような『ハッ!』とした表情になり、照れ笑いを浮かべて、ギミックタイルの枠を閉めた。
するとギミックタイルを含めた壁が『ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!』っと微振動しながら左右に割れ、次第に両側の木の幹の内側へと収納されていった。
そして、『ゴゴンッ!!』っと重厚な木を打ち付けたかのような音を響かせ、停止する。
そこには案の定、新たな入口が姿を現した。
新たな入口には、短い3m程の通路とその先へ続く階段があった。
階段の幅はおよそ3m程もあり、人が2人並んで歩いても十分な広さがある。
階段の周囲にはチューブ状の壁と天井があり、今まで見てきたように所々崩落し、そこから光が差し込んでいる。
階段の周囲の壁にも穴が開いており、天井と同様に所々から日の光が差し込み、中を歩くのに困らないくらいの光量が保たれていた。
むしろ、壁の穴から入り、成長したと思しき木の根が階段を補強するように伸びているため、木の根に足を取られないように気を付けて進む必要はありそうだ。
階段の先は長く、入口からはその先がどうなってるのかはわからない。
「よし! いくぞ!」
「「「「おー!」」」」
『『おー!』』
そうして、俺を先頭に隊列を組み、階段を上っていった。
時折階段に伸びている木の根に注意を払いながら、しばらく行くと通路の出口が見えてきた。
俺はすぐさま気配偵知を使うが、出口の先からは反応がない。
もしかしたら、この通路と出口の先ではエリアが別で、スキルが機能していないのかもしれないな。
そう思いつつ、少し疲れはするがそのまま気配偵知を使いながら階段を登り切り、通路の出口から出る。
するとそこは通常フィールドとは異なるしかし、大小様々な丘が連なる丘陵地帯だった。
その丘陵地帯は赤茶けた地面がむき出しになっており、所々に遺跡内で見たような石材が集まっている場所や木々が集まり、小さな林や森を形成しているところもあった。
そして、使いっぱなしにしていた気配偵知に引っかかる反応が1つ。
その反応の方を見れば、そこには巨人がいた。
巨人との彼我の距離は、目測でおよそ50m前後。
その巨人は、だいたい全長5~6m程で、茶褐色の髪と赤茶色の肌をし、首には様々な種族の頭骨を数珠のように繋ぎ合わせたネックレスをしていた。
体は筋肉質でずんぐりとし、手首には戦利品なのかラウンドシールドやカイトシールドを2~3枚括り付け、ブレスレットのようにしている。
腰には何かの毛皮を何枚か荒く縫い付けたような腰布を纏っていた。
傍らには、自分で削ったのかただ大木を引っこ抜き、枝と根を取り払って握りをつけただけのような棍棒があった。
「グオオオォォォォォッ!」
そうやって観察していると、ふいに何かに気づいたように顔を上げ、こちらに振り向き、雄叫びを上げる。
バレた!?
なんで?
……もしかして誰かが使った識別か?
そう考えている内に、その巨人は足元にあった岩を持ち上げ振りかぶった。
まっずい!
『投石が来る! 全員散れ!』
『分かったー!』
『はーい!』
俺はそう念話で一喝するとシエルとネロからは返事があったが、それ以外の後ろが動く気配がない。
俺は不安を覚えながらもちらりと後ろを見てみれば、ダグラス達は放心したようにボケっと巨人の方を見て棒立ちになっていた。
何かのスキルの影響か?
逃げるか、守るかだけど……ダグラス達を置いて逃げるのは論外だよな。
そう考えながら、ダグラス達を守るように数歩前に出る。
そして、巨人が投げる岩を見据えながら、覚悟を決めるように識別を使って見た。
ヒル・ジャイアント:Lv38・属性:地・耐性:地・弱点:風・魔法
【モンスター辞典】
『ヒル・ジャイアント』
巨人族の中では最も小柄だが、四肢は他の巨人よりも筋肉質でずんぐりしている。
平均的な個体の場合、体長は5~6m、体重は2tくらいになる。男女での体格差はそれほどなく、肌の色は明るい黄褐色から緑色、赤茶色まで様々。髪の毛は赤茶か黒か白が多く、目は黒い。寿命は200才と人間より長い。
丘や山のある場所であれば気候の寒暖は問わず、最大で十数体の群れで暮らすが、知性の高い個体に率いられた群れは通常の倍以上の個体が集まることがある。
主食は狩りで入手する肉で、他の人間型生物をも積極的に襲うが、知性は低く非常に野蛮。
ヒル・ジャイアントにとって毛皮は尊敬の証となるという風習があり、部族でも地位の高い者は何枚もの毛皮を所持していることから、毛皮には並々ならぬ執着があるらしい。




