Locus 106
お読み頂き、そして評価して下さり、ありがとうございます。
いつの間にやら、1300万PV及び、ユニークアクセス数が170万を突破していました!
本当に、ありがとうございます!
文章が気に入らず、何回か書き直していたら、こんなに遅く……ッ!
すみませぬ! ((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
大変長らくお待たせ致しました。
では、どうぞ。
俺がシエル達が向かって行った方向へ移動して行くと、そこでは問答無用の蹂躙劇が繰り広げられていた。
シエルとネロは空を飛び、比較的安全な上空から断続的且つ、一方的に攻撃し、ダグラス達の呪いに引かれたのか、将又単純に戦闘音に引かれやって来た複数のモンスターの敵愾心を的確に煽り、その注意を引き続けている。
更に、シエルとネロが飛んでいる下の丘の地表には、ネロが生み出したシャドースワンプによる影色の沼が点在し、ヒルディアーやヒルズホッパー達の機動力を削ぐ一因にもなっており、満足な回避を許さない、鬼畜戦術。
まぁ、せっかく空が飛べるのに、態々接近戦をして反撃の余地を与える必要は無いから、理にかなってはいるのだけど…………いや、有利に戦うことは重要なんだし、これ以上言うのは野暮というものか。
むしろここは、立派に成長したことを喜ぶところ、だよな。
良い傾向に育っていると思っておこう。うん。
それによく見てみれば、ちらほらと盲目の状態異常を食らっている個体もいることから、移動速度と命中力の低下を狙って、フラッシュライトやブラインドシャドーを使っているみたいだな。
もしかしたら、攻性魔法のリキャストタイムを稼ぐために、ってのもあるのかもしれない。
稀に、スティッキーゼライスが上空に伸ばした体の鞭の先端から、白濁した粘液弾のようなものを発射しているが、まるでどこぞの人型兵器や戦闘機の如く、アクロバットな動きを見せ、難無くコレを躱している。
この現状を見る限り、俺が手伝わなくても倒せる気がするが、いくら自動回復スキルがあるとはいえ、MPにも限界はある。
それに通常時とは違い、今はインスタンスダンジョンのせいで、フィールドのモンスターが凶暴化していて、あまり1つの場所に留まっていては、危険な可能性もある。
現に、気配偵知を使ってみれば、少し遠くからこちらへ向かって来る気配も幾つか感じられるので、俺も参戦した方が良いだろうな。
ただ、ネロの魔法によって、丘の地表の所々が沼化しているから、やるなら遠距離攻撃にした方が、ネロのシャドースワンプに嵌まる危険性はなくなるはずだが…………トライホーンディアーらしき姿がないのが引っ掛かる。
まさかもう、シエル達が倒しちゃったのだろうか?
だとしたら、助かるんだけど……まぁ、聞いてみればいいか。
そう考え、念話を使い、シエルとネロへと話掛ける。
『シエル、ネロ。引き付け役お疲れ様。それで……トライホーンディアーらしきモンスターが見当たらないんだけど、もう倒したのか?』
『えッ?! あれ? いない?』
『うそッ?! さっきまで、いたのに……。どこにいったのかな?』
すると、シエルもネロもはっとした表情を浮かべ、しきりにキョロキョロと顔を動かし、上空から辺りを見回す。
『その様子からだと、倒した訳じゃなさそうだな。凶暴化してる以上、逃げたとは考え難いから、さっき偵知した中にいると思った方が……ん?』
そうやって、思考を巡らしつつ、現状の把握に努めていると、だんだんと腹に響く重低音が近付いて来るのが聞こえる。
その音は周囲の丘に反響し、音の場所の特定はすぐにはできそうもない。
だが、こんな音を発生させるものは、この辺りにいるモンスターでは、ヒルディアーしかいないはずなので、この音の正体はヒルディアーの蹄によるものだと推測できる。
ただ、この音の響き具合から察するに、1体や2体ではなさそうだ。
俺はまず、その音の発信源を特定するため、アーツを使おうとするが、すぐにその音の正体を知ることとなった。
それは、2方向より来る2組のヒルディアー達だった。
『なっ?!』
『しまっ!』
俺から見て、2時の方向から来る3体と10時の方向から来る2体の計5体。
まるで示し合わせたかのように、タイミング良く、シエルとネロが足止めしているモンスター群がいる、周囲を丘に囲まれた窪地の上空を滞空している時の襲撃。
ヒルディアー達は、丘の上から勢い良く飛び上がり、空中で滞空するシエルとネロ目掛けて、器用に突進して行く。
流石に予想外過ぎたのか、今まで無傷だったシエルとネロは、初めてダメージを受けることになった。
シエルは非実体なので、ダメージを受けても飛行には支障はないが、実体のあるネロは、ヒルディアー達の突拍子もない突撃により、だんだんと高度が下がってしまっている。
このままでは、下で足止めしていたモンスター群に捕まってしまう。
そうすると、そのまま初の死に戻りになってしまう可能性が高い。
飛行や浮遊能力のない者は普通、空中に飛び上がっている最中や着地の瞬間は、隙ができるものだ。
だから、その隙に攻撃を加え、なんとかネロの体勢を立て直す時間を稼ぐとしよう。
そう思い、俺はすぐ様行動に移ろうとした瞬間、ふいにシエルとネロから、かなり焦った感じのする思念が届く。
『っ?! うしろ!』
『あぶない! よけて!』
『え?』
俺はその警告に釣られるように、即座に後ろを振り向く。
すると俺のすぐ背後までに、大きな3本の角を持つ、ヒルディアーとは比べものにならない程大きな、鹿型モンスターが迫っていた。
やばッ!
迫り来るその巨体と大きな角が視界に入ると、天眼のスキルによって、その突進の攻撃到達予測範囲が視覚化され、視界が真っ赤に染まる。
俺は咄嗟に、今できる最大の思考加速を行い、一気に音の無い世界へと突き進み、無理矢理体を捻って半身になり、全力でバックジャンプを試みる。
ギャリンッ!
「くぁッ!?」
『『リオン!?』』
俺が全力でバックジャンプをしている最中、猛烈な突進がスローモーションのように通過していく。
その時、浅黒い大きな3本角の1つが、俺の胸当てに当たり、胸当ての装甲を削りながら俺自身を押しやり、後方へと撥ね飛ばす。
「ぐぅぅぅ!」
俺は衝撃を逃がすように体を丸め、まるでボールのように、2転3転としながら転がった後、すばやく起き上がって抜剣し、気配偵知を使いながら周囲を警戒しつつ、念話でシエルとネロに無事を伝える。
『だ、大丈夫だ。問題無い。こちらは俺がなんとかするから、シエルとネロは引き続きそちらの対処を頼む。もちろん、倒せられるなら、倒しちゃっていいからな』
『そうなの? わかったー!』
『そっちもきをつけてねー!』
『ああ、お互いにな』
そう念話を切り上げ、俺は気配偵知を使いながら件のモンスターを探す。
すると、先程俺に突っ込んで来たモンスターは、撥ね飛ばした運動エネルギーをそのまま保持するように、小さな丘を回り込むように大きく旋回し、俺へと追撃を仕掛けるために、こちらへと駆け寄って来る。
その際、俺を襲った者の全体像を確認することができた。
ソレは、シエルから聞いた特徴と合致する、大きな鹿型モンスターのように見える。
体高2m強(角は含まない)、全長3m弱の牡鹿。
角は長大で、幅30cm強、左右の角の端から端までの長さは3m以上はありそうだ。
体毛はヒルディアーとは違い、体にある白い斑点模様は無いが、咽頭部から腹にかけての毛が白く、また咽頭部の毛が長い。
頭部には、水牛のように大きく湾曲した2本角と、その間に1本角があり、正面から見ると、まるでコウカサスオオカブトの頭部を上から見た感じに似ている。
3本ある特徴的な形の角は、水牛の角とは違い、肉に覆われた頭部からではなく、頭部の上に完全に乗っかる形で角が生えており、角の先は後ろへは流れず、天に向かうように伸びている。
現実にいる生物で言えば、ケープバッファローの雄の角に近いだろうか。
俺のHPバーをちらりと見てみれば、直撃ではなかったにも関わらず、2割弱ものダメージを受けており、胸当てに至っては、細長い涙滴状の深い溝ができ、名前の通り、中の複数構造が剥き出しになり、溝の内部では複数の素材からなる、縞模様ができ上がっていた。
かすっただけで、これかよ……。
分かってはいたが、直撃を食らったら、死に戻り確定だな。
安全策を取るなら、遠距離でじわじわとやっていきたいけど、障害物の無い丘陵地帯じゃ、素直に当たってくれるかどうか……。
そう思っている間にも、3本の角を持った大きな鹿型モンスターとの距離が縮んでいくので、射程圏内に入ったところで、牽制と様子見のための魔法を放ちながら、すばやく識別とウィークネスアイを掛ける。
「ダンパードアームズ・ガトリングナイブズ!」
カシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャンッ!!
「ヴォォォオオオオオ!!」
トライホーンディアー:Lv30・属性:-・耐性:打・盲目・弱点:突
俺のやや前方から、5角形の頂点から時計回りに、僅かな時間差で続々と射出される20本のナイフは、狙い違わず、トライホーンディアーの長大な角に命中する。
しかし、トライホーンディアーはものともせずそのまま突き進み、当たる端から発射されたナイフは弾かれ、光の粒子へと変わっていく。
もちろん、HPバーは減った様子は無い。
「げッ! 牽制にもならないって、無茶苦茶過ぎるだろぉ!?」
そうやって俺が驚いていると、偶然か計算か、トライホーンディアーは、動きを止めている一瞬の隙を突き、一気に距離を縮め、3本の角で串刺しにしようと、勢い良く跳び込んで来る。
「うおっ! 危なッ!」
俺はその突撃に気付いた瞬間、体全体を投げ出すように横に跳び、何とか寸でのところでコレを回避する。
トライホーンディアーはまたもや、勢いもそのままに駆け抜けては、大きく旋回し、三度の突進へと移っていく。
くそっ! なんて出鱈目な突進力してんだ。
ウィークネスアイの効果で、弱点部位は、頭部、首部、心臓、そしてフォレストボア同様の膝関節であることが分かったが、何かしらの手で隙を突くなりして動きを止めて、一気にケリを付けなければ、こちらの状況は悪くなる一方だ。
よしんば動きを止めることができたとしても、レッドボアの牙より凶悪に見える長大な3本角を振り回して攻撃してくるだろうし、ヒルディアーにもできたのだから、蹄によるスタンピングも警戒しなければならない。
それに、背後に回ろうものなら、同じ有蹄類の駱駝や馬のように、当たり所が悪ければ即死とまで言われてる、後ろ蹴りも予想される。
……仕方ない。
本来は短期戦が望ましいのだが、今のところ打つ手が見つからないから、ココは長期戦覚悟で、色々試してみることにする。
何かしら特定の攻撃を加えることで、突破口が見つかるかもしれないしな。
差し当たって、次は純エネルギー型の魔法にしてみよう。
そうして、再度魔法の射程圏内に入ったところで、トライホーンディアー目掛けて魔法を放つ。
「ダブルマジック――ボルトスフィア!」
ボボォォォン!!
「ヴォォォアアアアアッ?!」
前方に掲げた左手の平から、常時強い青白い稲光を中心から発する直径5cm程の小球が、2つ発射され、程無くしてトライホーンディアーに命中、次いで2つの雷爆発が起き、トライホーンディアーからは悲鳴のような声が上がる。
雷爆発による土煙が晴れると、体の至る所から、白い蒸気のようなものが昇っているトライホーンディアーの姿が現れるが、ダメージによるものか、若干突進速度も落ちたようにも見える。
HPバーを確認してみると、3割弱のダメージを与えられたようだった。
ふむ、物質系でなければ有効……とみるべきか?
そう考えつつ、勢いがやや弱まったトライホーンディアーの突進を悠々と避け、そのまま駆け抜けて行く後ろ姿を見……。
角でカバー仕切れない体の側面や後ろ、背中なら、普通にダメージが通るはずと思い、即座に追撃を掛ける。
「ダンパードアームズ・ガトリングナイブズ!」
―――ドスドスドスドスドス!
「ヴォアッ?! ヴォォォオオオオオ!!」
再度、5角形の頂点から時計回りに、僅かな時間差で続々と射出される20本のナイフ。
やはり、思った通り角で防ぐことのできない場所では、普通に攻撃が通るようだ。
だが、5本のナイフがトライホーンディアーの尻に刺さると、鋭い痛みで危機感が募ったのか、失速気味だった走行速度が最初以上の速度になり、他のナイフが当たる前に遠ざかって行く。
その最中、刺さった5本のナイフは、そのまま溶けるように光の粒子へと変わって消えていき、ナイフが刺さっていた場所からは赤い光が明滅し、まるで流血を想起させる。
そして、ある程度離れたところで再び旋回し、鬼気迫る勢いで、こちらに突っ込んで来る。
ふむ、ここまでの行動からして、魔法とかの中・遠距離攻撃は無いものと考えてよさそうかな。
HPの方はさっきの攻撃で1割減ってるか減ってないか位だが、HPバーの上には出血のバッドステータスアイコンが付与されており、徐々にHPを削っていっている。
しかし、ボルトスフィアで全身を焼いた時よりも、なんで尻を攻撃されて、あのように激昂しているのかが、よく分からない。
尻にプライドでもあったんだろうか?
あの怒りようを見るに、かなり痛かったことは分かるんだけどなぁ。
って、普通に考えれば、尻にナイフが5本も刺されば、そりゃ痛くて当然だな。
いや別に尻じゃなくとも、ナイフが5本も体のどこかに刺されば、即死以外では痛いのが当たり前か……。
そんな益体の無いことを考えつつ、俺はトライホーンディアーが魔法の射程距離に入るや否や、純エネルギー系の魔法を放っていく。
「トリプルマジック」
「エネルギーボルト!」
「ツッ!」
しかし、3条の青白い雷が、もう少しでトライホーンディアーに当たるというところで、大ジャンプし、コレを回避する。
魔法に寄る攻撃を警戒しての行動だったのか、ただ単に青白い光=危ないものという認識ができたのかは、分からないが、これは千載一遇のチャンスである。
飛行や浮遊が行えない生物は、通常空中では移動することができず、恰好の的に成り下がるからだ。
狙うのは着地する直前、地に前足を着けようとして、不安定な前傾姿勢になる時。
集中しろ! こんなチャンスが2度も有ると思うな!
そう心中で言い聞かせ、既にほぼ自由に使うことができるようになった思考加速までも用いて、そのタイミングを計る。
トライホーンディアーが中空へと昇って行く。
まだまだだ。
トライホーンディアーが跳躍の頂点へと至る。
まだだ。まだ早い。
トライホーンディアーが前傾姿勢になりつつ、高い中空から降りて行く。
焦るな! もう少し。
トライホーンディアーが前傾姿勢になりつつ、中空から着地に備えて、大地に足を伸ばす。
っ! ……今!
「ミスィルスアイス・ライジングカラム!」
ピキャキャキャキャ―――ドガンッ!!
「ヴォビィィィ?!」
トライホーンディアーが着地する寸前、トライホーンディアーの死角である真下から、氷が急速成長。
氷は氷塊へ、氷塊は氷柱へと形を変え、まるで高速上昇する柱のように、勢い良く競り上がり、狙い通りにトライホーンディアーの頤を搗ち上げ、中空へと打ち上げる。
ドサッ!
数瞬後、宙を強制的に飛ばせられたトライホーンディアーが地に落下・激突し、動きを止める。
HPバーを見てみれば、気絶のバッドステータスが発生しており、アイコンの右下に表示された数字が刻々と減少しており、残された時間は、後6秒といったところだった。
っく! 短い!
だけど、今ヤルしかない。
そう瞬時に決断し、俺は仕留め損なわないよう、アーツや魔法を全て重ね掛けしながら、トライホーンディアーへと突撃して行く。
「ソードダンス!」
俺の体全体と武器に白銀色の燐光が纏われ、走る速度が倍化する。
「ライオットバーサーク!」
俺の体全体に緋色のオーラが包み込み、ソードダンスの燐光と混じり合い、紅色の燐光へと姿を変え、1歩1歩の幅が倍以上に広がる。
「フォーチュンブースター・ノート!」
瞬間、俺の体全体が青白い光に包まれ、そのすぐ後に消え去り、俺の視界の端にLUK↑のアイコンが付く。
1歩2歩、3歩4歩と近付き、トライホーンディアーとの距離が一気に縮んでいく。
しかし、元々の距離に加え、更に後方へと吹き飛ばせてしまったことが裏目に出る。
トライホーンディアーが着地する予定だった場所には到達したが、今現在、トライホーンディアーが倒れている場所まで、後2歩程届かないのである。
無情にも気絶のアイコンに表示されていた数字は0になり、トライホーンディアーは頭を左右に振りながら、ゆっくりと立ち上がり始める。
くそっ! 後少しなのに!
そう思いつつも、この状況を打破しうる手が無いか、思考加速までも使い考える。
そしてふと、つい最近この状況に合う魔法を習得したことを思い出す。
それなりにデメリットはあるが、1対1のこの状況では、デメリットらしいデメリットではない。
万が一にも逃げることになれば別だが、この1撃で仕留め切れれば問題は無い。
問題なのは、1発では時間が足りない可能性があるから、消費MPは重くなるが、ココで惜しんで失敗したら、元も子もないこと。
だからと言って使い過ぎもよくないので、少し余裕ができる程度に調整する必要がある。
そう考え、立ち上がり掛けているトライホーンディアーに狙いを定め、魔法を放つ。
「トリプルマジック――スタンボルト!」
ピシャシャシャーンッ!
「ヴォビビビィ?!」
トライホーンディアーの頭上から細い3条の青白い雷が降り注ぎ、トライホーンディアーを感電させ、再度その動きを止めさせることに成功する。
トライホーンディアーは体の各所をビクンッビクンッっと痙攣させ、棒立ち状態となる。
っ! ここ!
「っぅぉおおおおおおお!!」
俺は持っていたエキスパートソードの剣身の腹に左手を添え、右手を柄頭へと移動させ、右手の平で包むように持ち直すと、一気にトライホーンディアーとの距離を詰め、今までの突進で稼いだ運動エネルギーを乗せ、左足で強く踏み込む。
剣先をトライホーンディアーの目に刺し入れると同時に、エキスパートソードの剣身に添えていた左手を離し、力の向きを収束するように、左足から腰へ、腰から胸へ、胸から右肩へ、右肩から右腕へと螺旋状に練り上げ、一気呵成に右腕を突き出し、エキスパートソードを打ち出す。
もちろん、打ち出す瞬間に、右腕に回転を加えて威力を上げることも忘れない。
「ヴォビャァッ?!」
エキスパートソードの剣先は狙い通り、トライホーンディアーの眼球を抉り貫き、そのまま体内を貫通してトライホーンディアーの後頭部辺りからエキスパートソードの剣先が生え、数瞬遅れて、ドパっと、螺旋状の赤いエフェクトが迸る。
念には念を入れ、ここで更に、ダメ押しに掛かる。
「ストライクバースト!」
ボブゥゥゥン!!
トライホーンディアーに刺し入れたエキスパートソードの剣身が瞬時に青白く染まり、体に纏っている紅色の燐光と混じり合って、紫水晶色の輝きを放つ。
そして、刺し入れていたエキスパートソードを右手首だけで再度捻り、剣身に新たな接触を与えて起爆させる。
トライホーンディアーの体内では盛大な魔力爆発が起こり、トライホーンディアーの目・鼻・口・耳と、エキスパートソードの剣先が突き出している場所から、肉が焦げる臭いと共に、真っ黒な煙が噴出する。
その直後、トライホーンディアーのHPバーが瞬時に0になり、光の粒子へと変わっていった。
「はぁ~。なんとか勝てたか……。っと、いかんいかん。まだ戦闘は終わってないんだし、気を緩めるのは、全部終わってからだな」
難敵を倒し、思わず安堵の息を漏らすが、まだシエル達が戦っていることを思い出し、再び気を引き締める。
すると、聞き覚えのある音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『ピロリン♪ 条件を満たしたことにより、新たな派生進化先が出現しました。スキルの進化は別途スキル画面から行って下さい』
新たな派生進化先か……。
【剣術】、【天眼】に続いて、3度目だな。
だけど、まだ戦っているシエル達を放って置くのも気が引けるし、確認は後回しだな。
そう思いつつ、念話を使ってシエルとネロに話掛ける。
『シエル、ネロ。こっちは終わったけど、そっちの方はどうだ?』
『う~ん、まだおわらないとおもう』
『うん。あのあと、またふえたから、てがたらないの』
『そっか。なら、俺もそっちに行くよ。一気に数を減らす方法も無くは無いから、ソレを使ってみようと思う』
『そうなの? それじゃ、よろしくね』
『さすがは、リオンだね!』
『あー……喜んでいるとこ悪いけど、用意は必要だから、その手伝いは頼むけどな』
『てつだいだね。わかったー!』
『りょうかいでーす!』
『それじゃ、今から行くな』
その後、俺はシエル達と合流し、シエルとネロの補佐の元、圧倒的重量でモンスター群を押し潰し、数を減らしてから、一気に殲滅していった。
◇◇◇
周囲のモンスターを一通り片付けて、時間を見てみると、ダグラス達の呪いが解けるまで、まだ少し時間があった。
俺からダグラス達と合流してもいいが、まだこのエリアにはインスタンスダンジョンがあるので、ダグラス達が避難しているシャドーロッジから出たとたん、モンスターとの鉢合わせも十分に有り得る。
なら、安全を第一に考えると、このまま外で待っていた方がよさそうではあるな。
それに、待っている間は、さっきのインフォメーションの確認をすれば、時間をただ無為に過ごすことないし、効率的だろう。
それと、シエルとネロには、周囲の警戒をお願いしておこう。
気配偵知もまだ使ってはいるが、敵の発見が早ければ早い程、対策に割く時間が増えるから、用心しておく事に越したことはないからな。
そうして、シエルとネロに周囲の警戒を頼んだ後、奇襲対策に気配偵知を使ったまま、メニューを開き、先程のインフォメーションの他、ついでにステータスの確認もしていった。
すると、俺の種族レベルが1つ上がり、進化可能なスキルが2つと、スキルレベルの上昇により新たなアーツと魔法を習得していた。
シエルとネロの種族レベルは上がっていなかったが、シエルは進化可能なスキルが1つと、新たな魔法を1つ習得しており、ネロも新たな魔法を1つ習得していた。
シエルとネロのレベルが上がらず、俺だけ上がった理由は、恐らく称号の【オーバーキラー】の効果によるものだろう。
前回の戦闘はいざ知らず、今回の戦闘では明らかに、過剰殺傷力のある攻撃で仕留めたモンスターが多かったから、そう不思議なことではない。
よし、まずはステータスの割り振りからだ。
そして、現在の俺のステータスはこのようになっている。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv31
job:冒険者 rank:E
class:マジックソードマンLv28
HP:855 MP:482
STR:227
VIT:169
AGI:226
INT:88
MID:114
DEX:370
LUK:67⇒70
STP:3⇒0
所持金:26924R 虚空庫 227/1090 {貯金:370万R}
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕
専科スキル:〔魔法剣・無Lv28〕
装備スキル:〔STR増加Lv92〕、〔AGI増加Lv92〕、〔剣術Lv32〕、〔暗殺術Master〕、〔無属性魔法Master〕、〔天眼Lv47〕、〔賦活Master〕、〔詠唱破棄Master〕、〔気配偵知Lv12〕、〔識別Lv74〕、〔汎用魔法〕
控えスキル:〔鑑定Lv72〕、〔煮炊きLv3〕、〔虚空庫 rank4〕、〔錬換Lv1〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv5〕、〔調教Master〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕、〔剥ぎ取り上手〕、〔医食同源〕、〔砕撃の頭壊者〕、〔慈悲深き討滅者達〕、〔再起させし者〕、〔斬撃の首刈者〕、〔穿撃の心貫者〕、〔暗技の練達者〕、〔弱肉強食〕、〔叛きし者〕、〔虎殺し〕、〔匙を投げ捨てし者〕、〔我が道を行く者〕、〔大胆なる隠者〕、〔調教の賜〕、〔オーバーキラー〕
称号スキル:〔念話Lv29〕、〔怪力乱心Lv18〕、〔韋駄天Lv18〕、〔薬膳Lv13〕
固有スキル:〔狂暴化Lv4〕、〔軽業Lv45〕、〔頑健Lv59〕、〔強靭Lv36〕、〔拒絶Lv21〕、〔自爆Lv3〕、〔酩酊耐性Lv1〕
ステータスポイントは、一番低い値のLUKに全振りした。
LUKにプラス3で、67⇒70へ
□ ステルスレイザー:走る剣身すらも見えない、高速斬撃を生み出す技。
対象が自身の持つ武器の射程内にいる時、どのような体勢からであろうとも、必中する一撃を放つことが可能。
但し、対象を知覚できず、また対象が遮蔽・遮断物に完全に覆われている場合や、所持している武器が動かせない状態である場合は、その限りではない。
消費MP:15 リキャストタイム:3分
□ エネルギージャベリン:魔力を純粋なエネルギーに変換し、槍の形に収束させたものを、対象に発射する攻性魔法。
出現する槍の大きさはINT・DEX・LUK の値に依存し、威力はINT・MID・LUKの値に依存する。
他の魔法より飛距離が長く、何かにぶつかると爆発する特性を持つため、扱いには注意が必要。
消費MP:35 リキャストタイム:60秒
次はシエルのステータスだ。
name:シエル
sex:女
race:サニー・スピリットLv20
HP:320 MP:392
STR:0
VIT:101
AGI:110
INT:113
MID:107
DEX:110
LUK:100
種族スキル:〔陽光活性(昼)〕、〔物理半減〕
スキル:〔陽光魔術Lv6〕、〔光耐性Lv9〕、〔影耐性Lv9〕、〔浮遊機動Lv6〕、〔装飾化Lv8〕、〔念動力Lv0〕、〔賦活Master〕、〔毒耐性Lv8〕、〔麻痺耐性Lv5〕、〔訓練の賜〕、〔遅延Lv17〕、〔詠唱破棄Lv8〕
固有スキル:〔STR返上〕
〔PS〕パッシブスキル:〔念動Master〕=進化⇒〔PS〕パッシブスキル:〔念動力Lv0〕
〔PS〕パッシブスキル:〔念動力Lv0〕
念動より更に、心に念じただけで物体に物理的影響を及ぼすことに、優れた能力。
SLv上昇と共に、物体を動かす速度と力が増大し、1度に動かせる物体の最大重量は、INT・MID・DEX・LUK の値に依存する。 MAXSLv50
□ ソーラーリフレックス:陽光を用いて、故意に自身の周囲の温度を急激に乱し、光を異常屈折させ、姿を隠す、隠蔽魔術。
この魔術の精度は、陽光の光量とINT・DEX・LUK の値に依存し、持続時間は、INT・MID・LUK の値に依存する。
また、この魔術は任意のタイミングで解除することが可能。
但し、この魔術は他者に掛けることはできない。
消費MP:23 リキャストタイム:60秒
次はネロのステータスだ。
name:ネロ
sex:女
race:シャドービーストLv30
HP:400 MP:500
STR:55
VIT:55
AGI:65
INT:73
MID:55
DEX:70
LUK:55
種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕
スキル:〔陰影魔術Lv5〕、〔影抵抗Lv5〕、〔影耐性Lv9〕、〔潜影潜行Lv17〕、〔宿紋化Lv4〕、〔潜匿Lv28〕、〔賦活Master〕、〔索敵Lv54〕、〔毒耐性Lv8〕、〔麻痺耐性Lv5〕、〔遅延Lv16〕、〔詠唱破棄Lv9〕、〔夜目Lv19〕
固有スキル:〔専化影装〕
□ ハイドリーショット:対象の死角から、陰影属性の魔力爆弾を発射する、攻性魔術。
威力はINT・MID・LUK の値に依存し、対象に視認されなかった場合、魔力弾が対象に着弾した瞬間に爆発する。
但し、対象にこの魔術が視認された場合、対象に魔力弾が着弾しても爆発しない。
消費MP:25 リキャストタイム:3分
因みに、ステルスレイザーが剣術のアーツで、エネルギージャベリンが無属性魔法最後の魔法。
ソーラーリフレックスが、シエルの陽光魔術で、ハイドリーショットが、ネロの陰影魔術となる。
さて、それじゃお待ちかねの、スキルの派生進化先を見てみるとしよう。
〔暗殺術Master〕▽
〔AS〕アクティブスキル:〔暗殺術・真Lv0〕
120+(SLv)分STRとAGIにプラス補正。
ウィークポイントに攻撃を当てた時、与ダメージ増加。
対象を状態異常にした時、状態異常の効果時間増加(微) MAXSLv100
NEW
〔AS〕アクティブスキル:〔暗殺術・裏Lv0〕
STRとAGIに90プラス補正。
30+(SLv)分INTとLUKにプラス補正。
ウィークポイントに攻撃を当てた時、与ダメージ増加。
対象を状態異常にした時、状態異常の効果時間増加(微)
対象に状態異常を付与する確率上昇(微) MAXSLv100
〔無属性魔法Master〕▽
〔AS〕アクティブスキル:〔無属性魔術Lv0〕
より巧みに属性の無い魔力式を操る魔術。
SLv上昇と共に、新たな魔術を習得する。 MAXSLv100
NEW
〔AS〕アクティブスキル:〔変換魔術Lv0〕
魔力を別のエネルギーに変換し、操る魔術。
SLv上昇と共に、新たな魔術を習得する。 MAXSLv100
NEW
〔AS〕アクティブスキル:〔虚魔術Lv0〕
虚ろなる幻を操る魔術。
SLv上昇と共に、新たな魔術を習得する。 MAXSLv100
NEW
〔AS〕アクティブスキル:〔歪魔術Lv0〕
様々な事象を歪ませ、操る魔術。
SLv上昇と共に、新たな魔術を習得する。 MAXSLv100
うわぁ~……。
これは、迷うなぁ。
暗殺術の方は、要するに、肉体武闘派か、知能狡猾派に分かれるということだろう。
肉体武闘派であれば、今まで通り筋力と敏捷力が上昇し、知能狡猾派であれば、今までの補正値はそのままに、新たに魔力と運気が上昇、更に対象に状態異常を発生させる確率が上がる。
両方のスキル説明に、SLv上昇と共に……という下りが無い辺り、やはり新たなアーツを習得するには、自分で行動するしかない仕様なのだろう。
だとすると、どちらを選んでも困らないように思えてくる。
そうするとなると、どちらを選んだ方が、より他の事を成す時に有利になるかが、決め手となる。
まず、肉体武闘派では、STR上昇による、物理攻撃力の上昇と、装備アイテムを装備する時の要求STRのクリア。それと、重い物を持ち上げ易くなる。
AGI上昇による、歩行・走行速度の上昇。平衡感覚の強化。物理・魔法回避力の向上。
うーっむ、この2つの能力値なら、アーツで代替が可能だな。
それに、STR上昇とAGI上昇のスキルは持ってるし、今まで習得したアーツが使えなくなったり、育てた補正が無くなる訳でもないから、こちらの派生進化先に拘る必要もない。
逆に、知能狡猾派の場合では、慢性的に不足気味な魔法の威力の底上げになり、錬換の成功率が上昇したり、宝箱から入手できるアイテムのレアリティが上がったりと、良いこと尽くめ。
更に言えば、LUKは色んなアーツや魔法に関わってくる要素だから、高くて悪いことは全く無い。
…………うん、これは決定だな。
暗殺術の派生進化先は、暗殺術・裏にしよう!
〔AS〕アクティブスキル〔暗殺術Master〕=進化⇒〔AS〕アクティブスキル〔暗殺術・裏〕
〔AS〕アクティブスキル〔暗殺術・裏〕
STRとAGIに90プラス補正。
30+(SLv)分INTとLUKにプラス補正。
ウィークポイントに攻撃を当てた時、与ダメージ増加。
対象を状態異常にした時、状態異常の効果時間増加(微)
対象に状態異常を付与する確率上昇(微) MAXSLv100
これでよし!
最後は、魔術の方……なんだけど。
魔法系統に俺が求めているものは、中・遠距離攻撃ができるか否かだから、ぶっちゃけ、無属性魔法のスキルで習得した魔法や、特殊汎用魔法で事が足りてしまっていたりする。
なので、こちらの方はフィーリングで、1番面白そうな進化先を選んでみようと思う。
〔AS〕アクティブスキル:〔無属性魔法Master〕=進化⇒〔AS〕アクティブスキル:〔歪魔術Lv0〕
〔AS〕アクティブスキル:〔歪魔術Lv0〕
様々な事象を歪ませ、捻じ曲げ、操る魔術。
SLv上昇と共に、新たな魔術を習得する。 MAXSLv100
□ テンポラリリペア:状態の推進を歪ませ、仮初めの正常を与える、擬似回復魔術。
この魔術を掛けられた対象は、全ての状態変化の効果が停止する。
効果の持続時間は、INT・MID・DEX・LUK の値に依存する。
但し、この魔術の効果が切れると、対象に掛けられた全ての状態変化の効果は、再度進行する。
消費MP:20 リキャストタイム:60秒
それじゃ、進化させたスキルと魔法を有効化して、装備すると、こんな感じかな。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv31
job:冒険者 rank:E
class:マジックソードマンLv28
HP:855 MP:482
STR:227
VIT:169
AGI:226
INT:118
MID:114
DEX:370
LUK:100
STP:3⇒0
所持金:26924R 虚空庫 227/1090 {貯金:370万R}
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕
専科スキル:〔魔法剣・無Lv28〕
装備スキル:〔STR増加Lv92〕、〔AGI増加Lv92〕、〔剣術Lv32〕、〔暗殺術・裏Lv0〕、〔歪魔術Lv0〕、〔天眼Lv47〕、〔賦活Master〕、〔詠唱破棄Master〕、〔気配偵知Lv12〕、〔識別Lv74〕、〔汎用魔法〕
控えスキル:〔鑑定Lv72〕、〔煮炊きLv3〕、〔虚空庫 rank4〕、〔錬換Lv1〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv5〕、〔調教Master〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕、〔剥ぎ取り上手〕、〔医食同源〕、〔砕撃の頭壊者〕、〔慈悲深き討滅者達〕、〔再起させし者〕、〔斬撃の首刈者〕、〔穿撃の心貫者〕、〔暗技の練達者〕、〔弱肉強食〕、〔叛きし者〕、〔虎殺し〕、〔匙を投げ捨てし者〕、〔我が道を行く者〕、〔大胆なる隠者〕、〔調教の賜〕、〔オーバーキラー〕
称号スキル:〔念話Lv29〕、〔怪力乱心Lv18〕、〔韋駄天Lv18〕、〔薬膳Lv13〕
固有スキル:〔狂暴化Lv4〕、〔軽業Lv45〕、〔頑健Lv59〕、〔強靭Lv36〕、〔拒絶Lv21〕、〔自爆Lv3〕、〔酩酊耐性Lv1〕
ああそれと、暗殺術のスキルを進化させたことで、インべナムのアーツにセットできる枠が1つになってしまったから、とりあえず最初の時のように、対象に掛かれば、数秒間動きを止められる麻痺毒をセットし直しておくとしよう。
うん、これでいいな。
そうしてステータスと装備スキルの確認が終わって少し経つと、ふいに『ポーン ポーン』という馴染みのある音が聞こえてくる。
俺は慣れた動作で、視界に端にあるFCというアイコンを視線選択すると、ウィンドウが現れ、『ダグラスからフレンドコールが来ています』と出た。
連絡が来たということは、呪いは無事解けたのかな?
そう思いつつ、俺は音声入力で回線を開く。
「フレンドチャット オープン」
『おっ! 繋がったか。リオン、そっちはどんな具合だ?』
「こっちは一応、周辺にいるモンスターを一通り片付けた終わったところだよ。それより、呪いはどうなったんだ?」
『それは大丈夫だ。無事、呪いは解除されたぞ』
「そうなのか。それは、よかったな」
『確かに、よかったはよかったんだけどな。ちょっと困ったことがあるんだ』
「困ったこと?」
『ああ。単刀直入に聞くけど、ここからは、どうやって出ればいいんだ? ロッジ内にある扉は全て確認したんだが、外には通じていないみたいなんだよ』
「あぁー、そのことか。俺も最初に使った時はかなり慌てたけど、冷静に少し考えれば、すぐに分かることだったぞ?」
『え? あー……。もしかして、入って来た場所からか?』
「正解だ。最初にシャドーロッジ内に入っていった場所。ダグラス達から見れば、天井付近にある月明かりみたいな照明が、出入り口になる」
『あそこかー……。あ、でもさ。あそこまでは、どうやって行くんだ? 流石にジャンプじゃ届きそうもないんだが』
「いや、それがそうでもないんだ。出入り口を意識して、ジャンプすれば、出入り口まで上昇することが可能だ。まぁ、態々ジャンプしなくても、出入り口を意識しながら、外に出たいと考えれば、自然と出入り口まで上昇していくけどな」
『そうだったのか』
「あ、それと! 事故が起こらないように、出る時は男からの方が、無難だと思うぞ」
『あー……なるほど。言われてみれば、確かにそうだな。そうするよ。それじゃ、出入り口付近で落ち合うでいいよな?』
「え? あ、うん。いいけど」
『じゃ、また後でな』
そうダグラスは言った後、フレンドチャットが途絶する。
…………ん? あれ?
俺が今、ダグラス達と落ち合う意味って、何かあったっけ?
んー……無い、気がするな。
ということは、ダグラス達が何か言いたいことがあるとかかな?
まぁいいか。
どちら道、シャドーロッジの出入り口に使った大岩は回収する予定だったし、そのついでだと思えば、そう苦でもないか。
その後、俺は念話でシエルとネロを呼び寄せ、ダグラス達との合流場所へと向かって行った。
Locus 95の【天眼】の表記の一部を変更しました。
Locus 103に要望? が多かったクィンティプルマジック以降のアーツを追加掲載しました。
Locus 103に新たな特殊魔法を追加掲載しました。
Locus 103に新たな称号を追加掲載しました。




