Locus 105
お読み頂き、そして評価して下さり、ありがとうございます。
いつの間にやら、ユニークアクセス数が160万を突破していました!
本当に、ありがとうございます!
そして、あの謎が今、明らかに!
お待たせしました。
では、どうぞ。
~side セルピナ~
うぅ……。
まずいのですッ! まずいのですッ!! まずいのですッ!?
なんだって、私達がこんな苦労をぉぉぉ……。
いえ、原因はしっかり! はっきり! くっきり! 分かりきっているのです!
全ては、あのサイドドリルテール、巨乳サディスト……双鞭使いのヴァネッサが悪いのです!
◇◆◇◆◇
ことの始まりは、昨晩ログインした時にあった1通のメール。
内容は、フレンドであるミカさんからのレベル上げを兼ねた狩りへのお誘いで、場所はディパートの北にある丘陵地帯だったのです。
前に1度、痛い目にあっていた人を見てからは、なんとなく敬遠するようになり、ソレ以来行くことはなかったのです。
しかし、種族レベルは段々と上がり辛くなり、そうも言っていられなくなってきたかなぁっと、考えていた矢先のお誘い。
本音を言えば、即断即決で返事を返したかったのですが、以前見たあの光景を思い出し、念のために詳しく内容を聞いてから返事をしようと思ったのです。
そうやって相談してみれば、なんと! そのレベル上げに行くフィールドにインスタンスダンジョンが現れたらしいという情報があるというのです。
インスタンスダンジョンの出現の報せは、街や村等で噂として情報は出回りますが、大抵はその情報が出回り始めたあたりで、他のプレイヤーに攻略されているのが常、という現状なのです。
プレイヤーに発見されたが最後、レベルにものを言わせた強引な攻略で、ものの数分でインスタンスダンジョンが消滅する例もあるらしいのです……。
こんな状態に陥った原因は、ボスの部位破壊ボーナスで状態異常耐性系スキルを確実に習得できるという情報が出回ったせいなのです。
まぁ、比較的スキルを覚えやすいノービスの状態でも、耐性系スキルの習得はかなりの回数の反復が必要であるのですから、それをたった1回で済むアイテムを入手できるなら、皆躍起になろうというものなのです。
かく言う私もその例に漏れず、機会があれば是非1度インスタンスダンジョンに潜ってみたいと思っていたので、ミカさんに相談した後、快く……というか、こちらからお願いする勢いで、誘いを受けた次第なのです。
因みに、北の丘陵地帯は攻略最前線、1歩手前というだけあって、例えインスタンスダンジョンが現れても、レベル的にも、地形的にも、容易に他のプレイヤーが足を踏み入れることができないので、現時点ではある意味、安心してレベル上げができる場所でもあるのです。
次の日、どうにも期待と興奮を抑え切れず、早くに目が覚め、待ち合わせより20分も前に、約束の場所へ行くと、既にミカさんに加え、男性プレイヤー2人がいたのでした。
私は時間を間違えたのか不安になりつつも、慌ててミカさん達と合流して理由を聞けば、インスタンスダンジョンに潜ることが楽しみ過ぎて、早く来てしまったらしいのです。
私を含め、皆、遠足前の小学生みたいだと思ってしまったものの、私だけじゃなくて、よかったと安心したのは、ここだけの秘密なのです。
そして、ミカさんに事情を聞いた後、お互いの自己紹介を済ませましたのです。
ミカさんのリアル弟で、両手剣を使う、前衛系クラスで、水人族のアフロディーノさん。
ミカさんとアフロディーノさんのリアル幼馴染で、片刃曲剣が棒の先に付いた槍のような武器……偃月刀を使う、前衛系クラスで、人族のダグラスさん。
因みに、フレンドであるミカさんのフルネームは、ミカエリスと言い、種族は鳥人族のレア種族の天翼人族。
クラスは後衛系で、主武装は杖、副武装は短剣を使っているのです。
自己紹介の後、他に誰が来るのだろうと聞いてみれば、誘っていた1人はリアルの事情で来れず、もう1人は先約があると断られたようで、今いる私達4人で全員なのだそうなのです。
私は、最前線1歩手前の丘陵地帯で、平均レベル23.5の4人1組では少し危ないと感じ、パーティメンバーの募集を提案しましたのです。
すると、ミカさん達も同じことを考えていたようで、この案に賛同してくれたのです。
相談した結果、一先ず知らない人よりはと、今いるメンバーが持つ、調教獣か獣魔、或いは召喚獣をメンバーに加えることになったのです。
私達4人の中で調教獣か獣魔、或いは召喚獣を持っていたのは、私とミカさんだけだったので、とりあえず紹介がてら、装飾化と宿紋化を解き、顔合わせをしましたのです。
私が持つのは、ナイトドッグから進化した、ミッドナイトウルフという種族で、リコルという名前の調教獣を1体。
ミカさんは、ライトニングシープという種族で、ミュリスという名前の獣魔を1体持っていたのです。
しかし、ミカさんの獣魔はレベルが16と低く、今から行く北の丘陵地帯の適正レベルに達しておらず、また寄生プレイになるのを嫌がり、メンバー入りを拒否され、急遽メンバーを1人募集することになったのでした。
その後、種族レベル22以上、ジョブかクラスが戦闘系で、メンバーに調教獣がいても構わず、北の丘陵地帯でのレベル上げを兼ねた狩りをする人を募集して、来てくれたのが、ヴァネッサだったのです。
ヴァネッサはミカさんとは違うベクトルの美人だったのです。
ミカさんが面倒見の良いお姉さん系であるのに対し、ヴァネッサは蠱惑的なお姉さん系と言えば分かるでしょうか。
ヴァネッサの外見は、やや赤みを含んだ薄い紫の淡紅藤色をした髪を左側頭部で括り、縦にロールさせた、所謂サイドドリルテールで、目は黄を帯びた鮮やかな赤の朱色をしていたのです。
目元がややつり目であるため、少しキツイ印象を受けるのです。
服装は、上半身が、臙脂色をした革のスチームパンクのコルセットに、裾が腰のやや下辺りまでで、袖が肘上までの黒いジャケットを羽織り、艶消しがされた、肘辺りまで覆う鈍色のガントレットを付けていたのです。
下半身には、黒いホットパンツに、黒いニーソックス、膝の若干上まで覆う、ガントレットと同じ艶消しのされた鈍色のグリーブを履き、その腰には、2本の鞭。
後ろ側の腰には、円形に束ねられた赤茶色をした革製の鞭。
右側の腰には、見ようによっては棍棒に見えるソレは、よく見ると僅かに撓っているようなので、恐らくは鉄鞭…硬鞭の一種であると思われるのです。
革製の鞭…軟鞭で中距離攻撃を、鉄鞭で近距離攻撃や防御に使うなら、見た目に似合わず、中々合理的な考えを持ってるのかもしれないのです。
軽い自己紹介の後、少し話してみると結構気さくで、キツイ印象はすぐに払拭されましたのです。
因みに、蠱惑的なお姉さん系である理由は、臙脂色をした革のスチームパンクのコルセットから覗く、大きな谷間が原因なのです。
ただでさえ、コルセットによって腰が細く見え、ボンッ! キュッ! ボンッ! と言われるようなワガママボディを見せ付けるような服装をしていれば、誰だってそんな印象を受けるはずなのです。
現に、ディーノさんとダグラスさんを除く、近くに居る周囲の男共の大半は、不躾な視線を隠しもせず向け、他はチラチラ、チラチラと盗み見るように、何度もやらしい視線を向けているのです。
あんな挙動で、バレてないとでも思ってるのでしょうか?
その後、ヴァネッサとはベクトルの違う美人であるミカさんにも視線が行くようになり、果ては私に対しても、失礼な視線が来るようになったため、私達は逃げるように北の丘陵地帯へと移動を開始していったのです。
◇◇◇
北の丘陵地帯での戦闘は以外にちゃんとした連携が取れ、特に問題らしい問題も起きず、恙無く過ぎていったのでした。
モンスターが少し遠い所にいれば、私の矢やミカさんの魔法で釣り、近付いて来たところをダグラスさんやヴァネッサが迎撃。
ひるんだり足が止まったところで、ディーノさんとリコルが素早く前に出て、食い止め、その後ろや脇から、ダグラスさんやヴァネッサが追撃を仕掛け、倒しきれなかった場合は、私とミカさんが再度攻撃を仕掛けて、討伐。
モンスターが襲って来た場合は、私とミカさんで迎撃し、ひるんだり足が止まったら、ディーノさんとリコルが突撃し、足止め。
その間にダグラスさんやヴァネッサが移動し、ディーノさんとリコルを援護しつつも攻撃を加え、ミカさんの準備が整ったら、魔法で止めを刺す。
ダメージを負った場合でも、適宜ミカさんが魔法で回復し、それでも足りないようなら、各自でアイテムを使って回復する。
モンスターの数が多い場合は、ヴァネッサが率先して敵対モンスターの一部を引き付けては、足止めをして時間を稼ぎ、その間に私達で残ったモンスターを倒すという手法で、倒していったのです。
レベル差はあれど、人数と連携で上手く倒し、数をこなしたおかげで、およそ1時間と少しという短い時間で、種族レベルが2つ上がり、私とリコル、ダグラスさんがレベル25に、ミカさんとディーノさん、ヴァネッサがレベル26になったのでした。
この北の丘陵地帯での適正レベルは25。
レベル差も追い付いたことから、これからは少しレベルも上がり辛くなるし、そろそろ今回の本命である、インスタンスダンジョンを探しながら移動しては? っと提案しようと思い始めた頃。
またモンスターが近付いて来る気配を感じ取り、皆にそのことを告げて、戦闘態勢に入っていったのです。
今度のモンスターは、7体と今までより多く。
すぐに、ヴァネッサが引き付けを請け負うことを告げ、迎撃で足が止まったら、行動していったのです。
これまでのように、私とミカさんの遠距離攻撃で、モンスターの足を止めたところに、ディーノさんとダグラスさん、リコルで攻撃し、その横から長い鞭で攻撃して注意を引き付けながら、素早く後退し、モンスターを2体釣って、私達から引き離していくのです。
「それでは、この2体はもらいますよ!」
「ありがとう! だけど、無理はしないでね!」
「なるべく早く合流できるようにはするが、危なくなったら、戻って来いよ!」
「はい! その時は、お願いしますね!」
そう言って、ヴァネッサは隣の丘を超え、釣って行ったモンスターが私達の方へ来ないように誘導して、丘の向こうへと消えて行ったのでした。
その後、何とか残りHPが少ないモンスターから順に倒していき、残りのモンスターが3体になったところで、ソレは起こったのです。
少し時間は掛かっているものの、比較的順調にダメージを与えていると、ふいに相手取っていたモンスターの体全体が赤紫色のオーラのようなものを纏って消えると、各HPバーの上に、赤い釣り上がった目と大きく口を開き、両手を上げて威嚇するような、凶暴化のアイコンが付いていたのです。
私はまさかと思い、識別を使って対峙しているモンスターを見ると、案の定モンスターのレベルが上がっていたのでした。
私はすぐに、インスタンスダンジョンが4段階目に入ったことを悟り、このことをパーティチャットを使って、全員に知らせたのです。
幸いにして、今対峙しているモンスター等は、全て1レベルしかレベルが上がっていなかったので、対応さえ間違わなければ、時間は掛かったとしても、倒し切ることはできるはずなのです。
だけど、インスタンスダンジョンが4段階目に入る前に、別行動を取ったヴァネッサは現在1人切りなのです。
その上、凶暴化しているモンスターは、通常時よりも個々の感知範囲が広がり、好戦的になるため、たった1人で行動するのは、余程レベルに差が無ければ、自殺に等しい行為なのです。
なので、早く合流しなければどんどん厳しい状況になっていき、生存できる可能性は絶望的になっていく一方なのです。
ですが、今変に焦って対応を間違えれば、助けに行くのもできなくなるのです。
だからココは、不安と焦りを押し殺し、今は目の前のモンスターを倒すことにだけ集中するべきなのです。
ヴァネッサの安否は心配ですけど、焦ってはダメなのです!
そう私は心に決め、いつも以上の正確さとスピードで攻撃やフォローをし、何とか誰も欠けず、戦闘を終わらせることができたのでした。
そして、そのまま私達は先程、ヴァネッサが離れて行ったと思しき方向へと移動して行き、ヴァネッサを探しに行ったのです。
リコルはその鼻でヴァネッサの後を追跡し、私はリコルの後に続きながら、気配感知と鷲の瞳の望遠能力を駆使しつつ、モンスターに鉢合わさないよう移動して行くと、その道中、ふと先程のパーティチャットで全員に知らせたはずの情報に、ヴァネッサから応答が無いことに気が付いたのです。
パーティの簡易ステータスを見れば、HPはまだ十分に残っているので、死んではいないはずなのです。
そうすると、未だ死んでおらず、尚且つまだパーティを組んだままで、応答できない可能性は2つ。
1つは、ヴァネッサが今私達がいるエリア以外のエリアに入ってしまったこと。
パーティチャットは同じエリア内でしか使うことができないので、別のエリアに入ってしまうと、使えない仕様なのです。
もう1つは、パーティチャットに応答できない程、戦闘や生産活動に集中してることなのです。
物事に集中している時は、周囲の音が聞こえなかったり、周りが見えていなかったりすることはままあることなのです。
ですが今回に限って言えば、それはつまり、心の中で返答することができない程、追い詰められている状態である可能性が高いことを意味するのです。
私達がこの丘陵地帯に来ているのは、レベル上げを兼ねての狩りのためだからなのです。
どちらにしても、ヴァネッサが危機的状況にいることは明らかなので、何にしても早く合流するに越したことは無いのです。
ヴァネッサ、無茶しちゃダメなのですよ!
そう思いつつ、ミカさん達にも手伝ってもらいながら、リコルの後を慎重且つ迅速に付いて行ったのです。
大きな丘を2つと、小さな丘を3つ超えた所で、不規則に今までに何度も聞いた、パンッ! パンッ! という乾いた音が聞こえて来たのです。
私はその場で立ち止まり、音の聞こえた方を向くと、その方角には、特徴的な形をした建造物が建っているのが見えた……いえ、見えてしまったのです。
その建造物は、以前見たあの光景へと繋がるキースポットの1つに酷似した造形をしており、丘と丘の間から見えるのは、その建造物の先端だけなのでした。
…………まさか。
私は嫌な胸騒ぎに引かれるように、気が付けば、その建造物の方へと走り出していたのです。
「あっ! ちょっと、セルピナ?!」
「皆さんとリコルは、そこで待ってて下さいなのです! 様子を見て来ますので!」
そう私は言い残し、ハイディングとハイドストークを使い、音のした方へと素早く移動して行く。
『そんなはずはない! そんなはずはない!』と心の中で繰り返しながら、丘の上まで駆け上がり…………そして、丘の下での出来事をその目で見てしまったのです。
そこでは、私の知っている、気さくに話をしていた仲間思いのヴァネッサはおらず、加虐的な表情を浮かべ、狂喜的な嗤い声を上げながら、何故か避けることしかしない、不思議モンスターのカースドキャットを滅多打ちにしていたのでした。
カースドキャットとは、この北の丘陵地帯に存在する特徴的な形状の4つの遺跡周辺にしか出現しないモンスターで、一部のプレイヤーの間では有名なモンスターなのです。
それは何故かというと、その愛らしい姿や仕草からという理由もあるのですが、何より、このモンスターは昼夜を問わず出現し、北の丘陵地帯に出るレアモンスター……つまり最もレベルが高いモンスターと同格でありながらも、何故か攻撃の対象にされても避けることしかしないからなのです。
普通敵対すれば、反撃したり、不利な状況になれば逃げたりするものなのですが、このカースドキャットは、攻撃されても避けるばかりで、例えダメージを受けても、反撃も逃走もしない、不思議なモンスターなのです。
最初はそんな反応をするなんて、何かおかしいと、調べたプレイヤーがいたみたいなのですが、その行動についての理由は何も分からなかったようなのです。
それならと、猫好きのプレイヤーが戦力増強も兼ねて、このカースドキャットをテイムしたところ、名前がストレイキャットに変わり、レベルもカースドキャットでいた時よりも7つ下がったらしいのです。
そして、調べて何も分からず、テイムしてもダメなら、倒してみようということになり、カースドキャットの討伐に踏み込んだのでした。
結果を言えば、新たに分かったことが3つ。
1つ目は、カースドキャットを攻撃した時に使っていたスキルのレベルが軒並み上がったこと。
これは、カースドキャットとそのプレイヤーとのレベル差によって、生じた経験によったものだろうという見解がなされているのです。
2つ目は、カースドキャットには、回復系スキルや魔法、回復アイテムが効かないこと。
これは恐らく、カースドキャット1体を使って、容易にレベル上げをさせないための措置だろうというものなのです。
3つ目は、カースドキャットを1体倒すごとに、7分間の呪いを受けること。
まぁ、名前にカースドなんて付いているのだから、呪いがあってもさして不思議ではないのです。
しかし、この呪いが結構曲者で、その効果は、周囲のモンスターのヘイトを自動で稼ぎ、必ず狙われるというものなのです。
その上、この呪いの効果は重複するようで、カースドキャットを倒した数×7分間、呪いが発動し続け、街に入ったり、ログアウトしている間は、呪いの効果時間が減少することは無いという、鬼畜仕様。
なにより嫌らしいのが、その呪いの効果はパーティを組んでいるメンバーにも感染するということなのです。
呪いの感染の条件は、呪いを受けたプレイヤーが一定の距離にいることと、呪いを受けたプレイヤーが、呪いの効果が切れる前に死ぬという、この2つ。
前者の場合、呪いの効果が切れるまで、近付かなければいいのですが、後者の場合は、残った呪いの効果時間分、呪われる直前まで一緒にパーティを組んでいたメンバーに感染してしまう厄介極まりないものなのです。
例外は、呪われる前に組んだパーティが、呪われた時から24時間以上前に組まれたパーティであれば、呪いの感染はしないそうなのです。
一説には、呪われたプレイヤーの因果にまで影響するとか何とからしいのですが、私にはよく分からないことなのでした。
ただはっきりしていることは、スキルのレベルが上げ易いという安易な理由で、パーティを組んでいながらも、他人の迷惑を考えずに、カースドキャットを攻撃し、剰え倒してしまった場合、最悪の形でとばっちりを受けることになる、ということなのです。
やるなら自己責任で、1人切り且つ、他人に迷惑を掛けないように下準備をしてから、やって欲しいのです!
ヴァネッサの簡易ステータスを見ると、呪いのアイコンが付いており、既に何体かのカースドキャットを倒しているようでした。
不用意に近付きでもしたら、呪いが感染する可能性を考え、丘の頂上から少しずつヴァネッサの方へ降りながら、パーティチャットで話し掛けていくのです。
丘の中腹部まで降りた所で、やっとパーティチャットが通じたようなので、手早く現状と解決案を伝えたのです。
だけど、ヴァネッサは『今、いいところだから』とか『もうちょっとだから、後で聞く』とまともに取り合おうともせず、こちらが近付きたくないことを良いことに、あろうことか遺跡周辺にいた全てのカースドキャットを倒してしまったのでした。
暗澹たる気持ちになりながらも、今は一応パーティの仲間であることを考え、再度パーティチャットで話をすると、何を思ったのか、『そこまで言うなら、責任を取る』と言い出し、何かのアーツを使い、革製の鞭を何回か地面に当て、大きな音を周囲に響かせたのです。
すると、未だ遠くにいて、こちらに気付いていなかったモンスターが、次々とこちらに……正確には、ヴァネッサがいる方向へと集まり出したのです。
私がパーティチャットで何をしたかを問えば、『周囲にいるモンスターを集めるアーツを使った』と言い、更に『私が戦っている間に、丘陵地帯から出るなり、セーフティエリアへ逃げ込むなりしろ』と言ったのでした。
私は、『あなたが死ぬと、私達に呪いが移ることになる』と再度伝えましたが、ヴァネッサは『そんなに柔じゃないから、さっさと行け』と言い、戦い始めてしまったのでした。
私は、一瞬助けに入るかどうかを考え、それでは共倒れになって、ヴァネッサの好意? を無駄にすると判断し、ミカさん達の方へ戻って行ったのです。
しかし、アレだけの啖呵を切ったヴァネッサは、あろうことか丘の中腹から頂上まで戻る十数秒で死に戻り、大量のモンスターと呪いを残し、責任は果たしたと言わんばかりに、パーティから脱退していったのでした。
私はやや呆然としつつも、ヴァネッサが光の粒子になって消えた所を見ると、ハイディングの効果で姿が見えないはずなのに、何体かのモンスターの視線は明らかにこちらを射抜き、徐々にこちらへと移動を開始し始めていたのです。
HPバーを見てみれば、既に呪いが感染しており、呪いの残り時間が41分と表示されていたのでした。
私は、このままではヴァネッサの二の舞になると思い、即座に踵を返し、ミカさん達の方へと駆け出していったのです。
ミカさん達と合流するまでの道中に、ヴァネッサがヘマをやらかして、死に戻ったことを伝え、とりあえず今は逃げることを優先することを伝える。
案の定どういうことか説明を求められたのですが、今は時間が無いと告げ、後で必ず説明すると約束し、一応の納得をしてもらったのでした。
その後は、場所が分からないセーフティエリアを闇雲に探すよりはと、生息地帯が違い、モンスターのレベルが低い草原地帯に行った方が安全であると考え、来た道を急いで戻って行ったのです。
途中何度かモンスターに襲われながらも、ひたすら移動を中心としたことにより、かなり草原地帯の近くまで逃げることができたのです。
ですが、さすがに走りながらの戦闘には慣れておらず、スタミナがほとんど切れた状態では追い付かれてしまい、私達を取り囲むように、モンスターの輪が出来上がってしまったのでした。
呪いの効果時間を見てみれば、表示はまだ34分と表示されており、あれからまだ7分しか経ってないと見るべきか、それともおよそ1時間半掛けて進んだ道を7分で走破したと見るべきか、悩みどころなのです。
周囲を見てみれば、100近くいるモンスターの包囲網があり、まるで獲物をいたぶるかのように、徐々に距離を詰めて来る様は、不気味の一言なのです。
できれば、この包囲網を突破したいところではあるのですが、モンスターの層は分厚く、よしんば突破できたとしても、犠牲を出さずにはいられそうもないのです。
だとしても、ココで諦めてしまえば、何だかヴァネッサに負けた気がするので、簡単には死ぬ気は無いのです。
ミカさん達もやはり、諦める気は無いようで、ミカさんを中心に円陣を組み、迎撃の態勢を取ったのでした。
迎撃作戦はこうなのです。
ミカさんを中心に、円陣を組み、リコル、ディーノさん、ダグラスさんで戦線を支え、私はリコルの後方でフォロー。
ミカさんは、隙を見ては魔法でモンスターの包囲網の最も外側にいるモンスターを攻撃し、適宜アースセラピーに寄る範囲回復を施し、戦線を支える。
そして、戦力は少しでも多い方がいいため、まだレベルが低い獣魔のミュリスを開放し、遊撃としてモンスター達を撹乱させる。
後は、呪いの効果時間が切れるまで粘り、なんとか逃げる隙を見計らい、草原地帯まで脱出する。
成功の可能性は低くとも、これならば、少なくともすぐにやられる心配は無いのです。
これからは、私達が全滅するまでの持久戦になるのです!
といってもまぁ一応、望み薄ではありますが、助けを呼ぶ手段もありますし、がんばって生き延びることにしようと思うのです。
そして、迎撃作戦に沿って、生き延びるための戦いを始めていったのでした。
初めの方は、作戦が上手く嵌まり、数体のモンスターをほぼ無傷で倒すことができたのです。
しかし、それも長くは続かなかったのです。
動いていればスタミナを消費し、疲れが出て、動きの精細さを欠いていくのです。
動きが鈍くなれば、隙ができ、ダメージも積み重なっていきますのです。
モンスターも学習するのか、次第にこちらがやられて嫌な動きをするようになり、拙いながらも連携を取り始め、更に受けるダメージ量が増加していくことになっていったのです。
地味でありながらも、苦境の続く戦闘は徐々に迎撃戦から防衛戦へと変わり、ミュリスちゃんが消え、私の矢が尽き、リコルが消え、戦いは苦しくなる一方なのです。
ディーノさんやダグラスさん、ミカさんもがんばって応戦してはいますが、回復アイテムも残り少なくなっていることから、あまり長くは持たないと感じ、パーティチャットで了承を得てから、最後の頼みとばかりに、モンスターの隙を付いて、救難信号を発射することに成功したのでした。
一縷の望みを託すように打ち上げられた信号弾からは、広範囲に広がるキラキラとした白いベールのような光が空一面に広がり、場違いな程に綺麗で幻想的な光景を生み出し、そして次第に空に溶けていくようにして、消えていったのです。
これで、救助が来てくれなかったら、もうお仕舞いなのです。
だから、どうか神様! 私達に救いの手をお与え下さいなのです!
◇◆◇◆◇
―――そして、現在
神は死んだのです……。
救難信号を上げてから、結構経っているのに、誰1人として助けに来てくれないのです。
そりゃ、赤の他人が困っていて、何の見返りも無く助けてくれることは稀でしょうけど、何もこんな時じゃなくたっていいじゃないですかぁ。
こんなことなら、ミカさんの誘いを断って、予定通り始祖様の追っ掛けのために、スキルのレベル上げをすればよかったのです。
現実(正確には仮想現実)は、いつも非情なのです!
そうやって世の無情を悲観しながら、ある程度慣れてしまった戦闘を惰性の如くこなしていると、パーティチャットで声が掛かる。
『セルピナ、反応は来たか?』
『ダメなのです。全然、全く、これぽっちも反応は無いのです』
『そうですかぁ。まぁ、仕方ありませんね。仮にプレイヤーが来たとしても、この惨状を見て、助けてくれる奇特な方はほぼいないでしょうしね』
『そうですね。時に、皆は後どの位持ちそうだろうか? 僕の方はHP回復アイテムが残り3で、MP回復アイテムが0なので、MPが心元無いのだが……』
『オレの方も似たようなものだな。HP回復アイテムは2だが、MP回復アイテムが1つある分だけ、やり方しだいでは、ディーノよりかはマシかもしれんが』
『私の方も似た感じなのです。HP回復アイテムが3で、MP回復アイテムが1つなのです』
『私は、MP回復アイテムが6つね。HP回復アイテムは移動中に使い切ってしまったから』
『ってことは……持って、数分といったところか?』
『だろうね。あの数相手に、よく持った方であると、胸を張れて言えるんじゃないかな』
そうやってパーティチャットで現状報告をし合っていると、ふいに私の脳内に、待ちに待ったインフォメーションが流れたです。
『ビビッ! 救援要請が受諾されました』
「き、来たのです! 要請が受諾されたそうなのです!」
私は嬉しさのあまり、つい戦闘中であることも忘れ、勢いよく後ろを振り向きながら、皆に報告するように声を上げてしまったのです。
一日千秋の気持ちでその報せを待っていただけに、仕方の無い行動だったのでしょう。
しかし、それがいけなかったのです。
「ッ! ピナちゃん! 前! 前!」
「え?」
「っく! カバームーブ!」
そんなミカさんの声に促されるように再び前を向こうとすると、距離にして十数mは離れていたディーノさんが一瞬何か焦ったような顔をした後、ディーノさんの声と共に、まるで風のように私とヒルディアーの間にディーノさんが現れ、ヒルディアーからの攻撃から私を庇ってくれたのです。
ヒュッガッ!
「ぐあッ?!」
「アフロさん?!」
私が前を向くのとほぼ同時に、私を庇ったディーノさんは、ヒルディアーの強烈な突き上げを食らい、綺麗な放物線を描きつつ、空に打ち上げられていたのでした。
ドサッ!
「ぐほっ! ……ぼ、僕を……呼ぶ……時は………ディー…ノと………」
そして重力に引かれるまま、ディーノさんは地面に激突し、何事かを呟くと、体から力を失い、動かなくなってしまったのです。
「ちょっ?! ディーノさん?!」
私は庇ったディーノさんに駆け寄り、状態を調べてみると、ディーノさんのHPは残り1割を切り、更に先程のダメージによってか、気絶のバッドステータスアイコンが付いていたのです。
気絶のバッドステータスアイコンには、90の数字が表示され、刻々と数字が減少していたのでした。
これは恐らく、気絶から自然回復するまで90秒掛かるということなのでしょう。
普段であればすぐのことですが、今の逼迫した状況では、その時間は命取りに他ならないのです。
例え、HPを回復させたとしても、動けないのではただの的。
なので、できれば目を覚ましてからの方が、建設的だと思うのです。
確か気絶の状態異常は、外的刺激を与えれば、その分早く目を覚ますと掲示板にあったはずなのです。
ですが、ディーノさんの残りHPのことを考えると、下手をすれば、気絶を直すために与えた外的刺激でそのまま逝ってしまう可能性があるのです。
だけど、それでは意味がないので、ココはダメージが入らない程度に揺さ振りながら、声を掛けていった方が良さそうなのです。
こういう時は、フレンドリーファイアが有効なのが、恨めしいばかりなのです。
私はそう思いつつも、ディーノさんに呼び掛けながら、ディーノさんの胸倉を掴み、前後に左右にと揺さ振って気絶からの覚醒を促していくのです。
しかし、外的刺激が弱いのか、思うように気絶のバッドステータスアイコンに表示されている数字は減らず、中々ディーノさんは目覚めないのです。
ディーノさんを打ち上げたヒルディアーが、技後硬直から解き放たれ、再びこちらへ移動して来るの感じながら、私は焦れるように、段々と悲鳴交じりの声になるのを自覚しつつ、ディーノさんを揺り動かし続けたのでした。
そして、何時しかそのヒルディアーが私とディーノさんのすぐ側までやって来て、器用に前足を上げた状態になり、『あ、これは当たるな』と何処か他人事のように思った瞬間、ソレは起こったのです。
「…ック……ント」
「エッジ!」
ドッ!
「ピィ?」
私とディーノさんを踏みつけようとしたヒルディアーのすぐ後ろから、誰かの呟きとエッジという声が聞こえるのとほぼ同時に、突如ヒルディアーの首が頭と体の半ば辺りから消え去ったのです。
中空には逆光に照らされながら、まるで乱回転する黒いラグビーボールのように何かが飛んでいき、『ドサリッ』という何か重い物が落下した時のような音の後、出来の悪いボールのように地面を2度3度とジグザグに転がりその動きを止めて初めて、その正体が分かったのでした。
「は? え?! く、首ィ?!」
「「「「「「ッ?!」」」」」」
「これは……!」
「来たか!」
私がそんな素っ頓狂な声を上げていると、俄かに周囲のモンスターから、何か戸惑うような気配と共に、ミカさんとダグラスさんから歓喜が入り混じった声が上がったのです。
周囲を確認しようとした直後、首が落とされたヒルディアーは光の粒子へと変わり、私が居る場所のすぐ側から、この場にいる私・ミカさん・ディーノさん、ダグラスさんの誰でもない声が発せられたのでした。
「救援要請を受けて来た! これより助太刀を開始する!」
「救援が来た……のです?」
私は声のする方向を見ましたが、誰かがいるようには見えなかったため、少し疑問系の言葉になってしまったことは、仕方が無いことだと思うのです。
「でも……どこに?」
「声しか聞こえないが……」
ミカさんやダグラスさんからも、やはりその姿は見えていないようで、その救援要請を受けて来たと言った声の主を探すように、視線を巡らせているのです。
私もソレに習うように、周囲の動向を窺っていると、突然上空15~16m程で太陽とは違う新たな光源が発生したのです。
周囲のモンスター達もその光源が気になるのか、一斉に上へ注意が向いたのです。
眩い黄金色の光を放っているソレを注視しすると、ソレは小さな人の形をしているように見えたのでした。
…………ん?
黄金色の光を放つ……小さな人?
あれ? どっかで見たような……?
そう思っていると、再び姿の見えない人から声が発せられたのです。
「えっと……そこの偃月刀持ってる人、もう少し下がった方がいいですよ? そのままそこにいると、巻き込まれそうですし」
「は? 巻き込まれ……? っ!!」
ダグラスさんは一瞬、その姿無き声が誰のことを指しているか分からなかったようですが、偃月刀という言葉から、ソレが自分を指している事だと気付き、その言葉に従うように、ミカさんの方へすぐに退避していったのでした。
そして、ダグラスさんがミカさんの側まで移動した瞬間。
「「「「「ピィッ?!」」」」
「「「「「ゲグッ?!」」」」
「「「「「シャガッ?!」」」」」
「「「「「ッツ?!」」」」」
「なっ?!」
「ほえ?」
「はぁ?!」
何の前触れも無く、私達を取り囲んでいたモンスター達の足元が濃淡のある影色の歪なドーナツ状の沼へと変貌し、その移動を阻害したのです。
更に、その沼から這い出ようとしたモンスターごと、出現した6つの顔の無い鰐のような顎が食らい付き、ダメージと共により強固な拘束を施していったのです。
私を含め、ミカさんとダグラスさんも、この状況に付いていけてないのか、三者三様の驚きの声を上げ、やや呆然とした様子で、拘束されているモンスター達を見入ってしまったのです。
そうやって、何が何やら分からず、戦闘中……それも窮地にいたはずなのに、どうしてこうなったのかを考えていると、再びその姿無き声から声が発せられたのです。
「とりあえず、そこの猫人族の人」
「えぅ? え?! 私のことです?」
まさか私に話し掛けて来るとは思わず、つい慌てて、変な声が出てしまったのです。
姿が見えない分、驚き倍増で、心臓に悪いのです。
「そそ。そこで気絶してる人にこのポーションを飲ませてやって。運が良ければ、起きるかもしれないし」
姿無き声は、そんな私の心情に構うことなくそう述べ、何か液体がちゃぷちゃぷする音がした直後、突然中空からポーション瓶が現れ、緩やかな放物線を描きながら、飛んで来たのでした。
「おっととと。これを……です? っ?! わ、分かりましたのです」
私は落としそうに、2~3度お手玉のようにしてから、何とかポーション瓶を掴み、念のために鑑定してから、問題がなさそうなのを確認して、返事を返したのです。
因みに、鑑定結果はこんなのだったのです。
【製作者:リオン】
消耗アイテム ライフポーション:生命力が豊富に溶け込んだ、薬水。飲み干すことで生命力を回復させることができる。
効果:HP45%回復 使用期限:34日4時間59分
こんなポーション見た覚えはなかったのですが、内容自体は特におかしなところはないのです……って、製作者リオン?!
え? ってことは、コレを作ったのって、始祖様?!
いやいやいやいや、RとLで同名は作れるから、始祖様じゃない可能性も……。
それに、仮に始祖様が作ったアイテムであっても、この人が始祖様だと決まった訳じゃないのです。
むしろ、始祖様に作ってもらった、第3者である可能性の方が高いのです。
どちらにせよ、決断の時なのです。
万が一、本当に始祖様がお作りになったアイテムであれば、ディーノさんに使うのはかなり、戸惑われるのですが、致し方ないのです。
何より、今は一刻も早くディーノさんに正気に戻ってもらって、動けるようになって欲しいですし、気絶から回復できるかもしれないという言葉も魅力的なので、私は騙されたと思って、姿無き声の提案に乗ったのでした。
私はまず、ディーノさんの胸倉を掴んだまま地面に下ろし、ポーション瓶の蓋を開け、ディーノさんの頭をやや反らせるようにしてから、頤を掴んで、口を抉じ開け、ポーション瓶の中身を空けていったのです。
「ぶるぅぅぅ?! わぁっはぁ?!」
「へ? きゃぁああああああ?!」
すると、あろうことかディーノさんは、私が流し込んだポーションを盛大に吐き出し、文字通り飛び起きたのです。
尚、ディーノさんが噴き出したポーションは私には掛かることがなかったことを、ここに明記しておくのです。
霧状じゃなくて、本当に良かったのです!
そう思いながら、起きたディーノさんに文句の1つでも言ってやろうと顔を上げると、そこには絶叫を上げながら、地面の上をのた打ち回っているディーノさんがいたのでした。
「がぁあああああ! ぐえぇぶぅぉう! うぼをぉぉぉおおおおお!」
「ちょっ! アフロさん? アフロさーん?! アフロディーノさぁあああああん?!!」
私は若干取り乱しながらも、アフロさんと呼べば、何かしらの反応をしてくれることを期待し、声を掛けますが、全くこちらの声は届いていないようで、一向にこちらを向く気配はありませんでした。
一体、何が起こっているのです?!
そう考えている時でした。
「「「「「ピィーッ?!」」」」
「「「「「ゲグッ?! ガァッ?!」」」」
「「「「「シャガッ?! ジェギッ?!」」」」」
「「「「「ッツ?!」」」」」
「はい?」
「なっ?!」
「「っ?!」」
再び、何の兆候もなく、上空にある新たな光源から、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色をした、数百もの光の矢が降り注ぎ、私達の周囲で拘束されていたモンスター達を刺し貫いていったのです。
弱点属性が突属性のモンスターはもちろん、その他のモンスターの頭や腹といった重要器官へと、まるで狙ったかのように刺さっていき、次々と光の粒子へと変わっていったのです。
しかし、雨霰と降り注いだ光の矢を持ってしても、所詮は点での攻撃。
他のモンスターの影になっていたり、核に当たらなければ、あまり効果のないゼライス種は、まだ幾らか生き残っていたのでした。
殺り零したのです?
そう思って、すぐに動けるよう身構えた瞬間、モンスターが残ることを織り込んでいたのか、更なる追撃が、モンスター達を襲っていったのです。
上空にある新たな光源から、7本の光線が残存するモンスターがいる歪な形の沼へ照射され、光線が沼へ接触した直後、各光線がバラバラの軌跡を描きながら高速回転し、歪な7本の焼け跡を残したのでした。
それにより、まだ残っていたモンスターの大半のHP瞬時に0になり、7本の光線の後を追うように光の粒子を巻き上げていったのです。
7本の光線の照射が終わった後、そこには未だ数体のモンスターが辛うじて残っているだけだったのです。
その残ったモンスター等も、未だ抜け出せていない歪な沼でジタバタもがいるところに、針状の剣が投擲され、光の粒子へと変わっていき、私達は何とか窮地を脱することができたのでした。
~side out~
因みに、セルピナからの事情説明は、影属性汎用魔法【シャドーロッジ】内でされています。




