Locus 99
大変長らくお待たせし、申し訳ありませんでした。
文字数が3万字を超えたため、一旦切りました。
続きは近い内に投稿したいと思います。
そして、明けましておめでとうございます。(激遅)
今年もよろしくお願いします。
では、どうぞ。
他者を威嚇するように上げられる雄叫びにより、バリアブルゴーレム・マッドネスの周りの空間が震え、その声量の大きさを如実に表している。
……ふむ。
もしかして、大型のモンスターなんかがする、ハウリングみたいな効果があるのかもしれないな。
例えば、強制的に行動を阻害する……とか?
何処から声? が出ているかイマイチよく分からないけど、範囲は……大体ゴーレムを中心に半径5m前後ってところか?
あの空間に巻き込まれることで何があるか不明だし、一応気を付けて置こう。
そうやって考えていると、バリアブルゴーレム・マッドネスが威嚇するように上げていた両腕を下ろし、ゴリラ特有の歩き方……ナックルウォーキングでこちらに近付いて来る。
巨体なせいか速度はあまり出ていないように見えるが、1歩1歩の距離が3m前後はあるので、楽観視する事はできない。
ちらりと他のメンバーのHPバーを確認してみれば、シエルとネロは2割弱、アリル達は大体2~3割程度のダメージを受けているのが見えた。
俺やシエル、ネロは放っておいても回復するが、アリル達ではそうもいかないだろうし、とりあえずここは牽制と囮をして、時間と距離を稼ぐことにしよう。
このまま手を拱いていて、体勢の整っていないメンバーを蹂躙されでもしたら、堪ったものじゃないからな。
そう考え、俺は即座に行動に移る。
「牽制と囮をする! その間に体勢の立て直しを!」
「助かります! リオンさんも気を付けて!」
「分かってる! それと、シエルは全員に、ネロはリーゼリアとナギ以外に補助魔法を頼む!」
『わかったー!』
「ホオォォォー!」
俺はそう言いつつ抜剣した後駆け出し、アーツと魔法を使いながら、こちらに接近して来るバリアブルゴーレム・マッドネスに向かって行く。
「ウィークネスアイ」
すると、俺の視界内にあるバリアブルゴーレム・マッドネスの弱点が赤く発光し、その場所を視覚化させる。
赤くなった場所は、背中と両肩に生えている結晶と、各関節に嵌っている……現在では赤く光っている透明感のある球体、そして丁度人間で言う心臓の部分だった。
しかし心臓の部分は、ノココにあった隠された採取ポイントと同じように、ぼんやりとした弱い発光具合から、恐らくバリアブルゴーレム・マッドネスの装甲に阻まれ、弱点部位が見え辛くなっているのだと思われる。
というか、露出してない弱点部分とか、どうやって攻撃するんだろうか?
「フォーチュンブースター・ノート!」
瞬間、俺の体全体が青白い光に包まれ、そのすぐ後に消え去り、俺の視界の端にLUK↑のアイコンが付く。
「リベレイトフォース・ソード!」
ヒィィィン!
エキスパートソードの剣身から鋭い音が発生し、次いで宛も水に濡れたような透明な輝きを剣身に宿す。
「ミラージュボディ」
一瞬焦点が狂ったように俺の視界がボヤけて戻ると、俺の視界の端に人の形をした絵が2重になっているアイコンが付く。
よし、これで俺の分身が投影されたはずだ。
俺自身にはやはり投影体は見えないが、弱点が魔法全般になっていた事から、恐らくMID或いは、M・DEFは低いはずだと考え、効いてくれれば恩の字と、一応使って置く。
そうやって戦闘の準備をしながら近寄り、魔法の射程内にバリアブルゴーレム・マッドネスが入ったのを確認後、バリアブルゴーレム・マッドネスの進行を止めるため、頭……正確には目の部分を狙い、魔法を放つ。
何故なら、それが例え人工物であろうとも、視覚を有するのであれば、視界を遮ることで、状況把握のために足が止まる可能性が高いと踏んでのことだ。
「ダブルマジック」
「エネルギーボルト!」
「ツッ?! ゴオォォォーーー!!」
前方に掲げた左手の平から、2条の青白い雷が迸り、狙い違わずバリアブルゴーレム・マッドネスの目に命中する。
命中したことにより、バリアブルゴーレム・マッドネスの頭が後方に仰け反り、狙い通りその足と止めさせることに成功する。
着雷した2条のエネルギーボルトは、何の物質で出来ているか分からないバリアブルゴーレム・マッドネスの外部装甲を通電するように飛散し、小さな青白い雷光になってすぐに消え去る。
バリアブルゴーレム・マッドネスの頭上を見ると、バリアブルゴーレム・マッドネスを攻撃したことで、バリアブルゴーレム・マッドネスのHPバーが視覚化される。
バリアブルゴーレム・マッドネスのHPバーは驚いたことに、昨日地下水路の最奥で倒したゼラチナス・ダーティウィッパーより1本多い、3本ものHPバーがあった。
1本目のHPバーは、先程の攻撃により少し減少していたが、まだ1割も削れていない。
俺はそのことを確認しつつ、更にバリアブルゴーレム・マッドネスとの距離を縮め、次の魔法の射程に入ったところで、敵愾心を稼ぐため、追撃を掛ける。
「ショットガンボルト!」
「ゴオォウォォォーーー!」
再度前方に掲げた左手の平から、十数発の青白い雷散弾が発射され、バリアブルゴーレム・マッドネスの巨体全体に次々と着弾・飛散していく。
バリアブルゴーレム・マッドネスは、まるで見えない敵対者を払い退けるように長大な腕を振り迎撃するが、俺にその攻撃が当たることは無い。
HPバーを見てみれば、今の攻撃でやっと1割を越えたところだった。
うぅ~ん……コレはどう判断すればいいんだろうか?
弱点属性が魔法全般になっているから、効いているのか、それとも俺のINTの値が低いからこの程度しかダメージが与えられていないのか、悩みどころだな。
まぁいい。
俺の役目は牽制と囮だから、魔法のことは本職に任せ、今は役目を全うすることだけ考えるとしよう。
因みにユンファは、俺と同様の変換魔法を使っていたことから、恐らく魔法槍士のようなクラスだと推測されるため、本職の括りにしない。
そう考えを纏めると、仰け反り状態から復活したバリアブルゴーレム・マッドネスが、俺を最優先で殲滅すべき敵勢力と認識したのか、その長大な両腕を振り上げ、俺を打ち据えようと攻撃を仕掛けて来る。
迫り来るバリアブルゴーレム・マッドネスの両腕が視界に入ると、天眼のスキルによってバリアブルゴーレム・マッドネスの攻撃到達予測範囲が視覚化される。
俺は即座に、攻撃予測の範囲に入らないように一歩後方に下がりながら、避け様に弱点部位である関節部分の、赤い光を発している透明感のある球体を斬り付け、更に返す剣で弱点部位以外のバリアブルゴーレム・マッドネスの外部装甲に斬り払う。
しかしHPバーを確認してみれば、弱点部位を攻撃したにも関わらず、通常の外部装甲を攻撃して与えたダメージと然程変わりが無く、数ドット程度の微々たるダメージしか与えてないように見えた。
更に、酔いどれオーガと対峙した時と同じように、攻撃が到達する範囲から逃れているのにも関わらず、バリアブルゴーレム・マッドネスの両腕から発せられる暴力的な風圧により、HPがジワジワと削られる。
なっ?! 弱点部位でもダメージ量が、通常の外部装甲と同じだと?!
それにこの巨体だと、ただ動いただけで起こる風圧でさえも、十分な攻撃になってかなり厄介だ。
場合によっては、風圧で体が流されるなんてことも有り得る。
となると、やっぱり近過ぎるのか……。
できれば、もう少し距離を取ったりしたいところだが、あまり離れるとアリル達の方へ行く可能性も出て来るから、やはり近接戦闘のままの方が良いはず。
それなら、剣身を伸ばして風圧が届かない距離から攻撃するまでだ!
できれば、ネロの補助魔法が掛かってからの方が良かったが、仕方無い。
それより問題なのは、まだ1度も使ったことが無く、どの程度の強度と伸長が望めるか分からないことだが……まぁ、ぶっつけ本番でやるしかないな。
もしも強度や伸長具合が足らなかった場合は、潔く諦めて、中・遠距離攻撃中心で引き付けをすれば良い訳だしな。
そう思い、すぐ様エキスパートソードの剣身を伸ばすための魔法を使う。
「マジックブレード!」
すると、エキスパートソードの剣身の刃先と切っ先から染み出すように青白い光が漏れ出し、ある一定の長さにまでに達すると、エキスパートソードの剣身の延長のように形作り、物質化する。
刃先の方は、エキスパートソードの刃先部分から1cm弱伸び、切っ先の方は、エキスパートソードの剣身からおよそ40cm程伸びた。
因みに、何の補助も掛けていない素のエキスパートソードの剣身は、目測で90cm以上1m弱位になる。
うん、これなら……ギリギリ何とかなるかな?
それでも、攻撃到達範囲とそこから発せられる風圧の範囲の見極めを間違えると、ダメージを貰うことになるから油断はできない。
何事にもある程度の緊張感は必要だから、慢心せず、着実に攻撃していくとしよう。
それと、攻撃する場所は一応弱点部位にして置くかな。
ダメージ量は他の外部装甲と変わらないけど、弱点部位である所以があるはずだから、それがどういったものなのかの確認も必要だし、ダメージ量が同じならより有利になる可能性がある場所の方が、精神的にも良いしな。
そう考えながらも、俺は再び、バリアブルゴーレム・マッドネスが振るう両腕から発せられる風圧に巻き込まれないギリギリの距離を見極め、弱点部位である各関節にある透明感のある球体を狙って、攻撃を仕掛けていく。
「ダブルスラッシュ!」
「クロススラッシュ!」
「ゴオォォォーーー!」
剣身が伸びたことにより、バリアブルゴーレム・マッドネスが振るう長大な腕から発生する暴風から無事逃れ、バリアブルゴーレム・マッドネスの腕が振り抜かれた瞬間接敵し、素早く2回×の字に斬り付ける。
弱点属性が魔法全般であるためか、純物理での攻撃時よりも魔法で物質化した剣身で攻撃した今の方が、よりダメージを与えられているように感じられた。
現に、バリアブルゴーレム・マッドネスのHPバーを見てみれば、その減り様は純物理での攻撃時のおよそ3倍弱といったところだった。
よし!これなら何とかなりそうだな。
そう確かな手応えを感じながら、バリアブルゴーレム・マッドネスの攻撃を掻い潜りつつ、攻撃を仕掛けていく。
ある時は避け様に斬り付け、ある時は振り抜かれる腕の範囲外へ後退しつつ斬撃を飛ばし、またある時は、範囲魔法による牽制を行い、時間を稼いでいった。
◇◇◇
「……んくっ、……んくっ、……んくっ、ッハァー! んん~~♪ 美味しいー! HPをポーションで回復させる時はあんなに苦痛だったのに、こんなに美味しいアイテムを作るなんて、ホンット! お兄ちゃんには感謝しかないよね♪」
「ですです~♪ むしろ~、こんなに美味しいと~、意味も無く飲みたくなっちゃいますよね~」
「……確かに。それに、固定値とはいえMPを回復させるアイテムもありますし、リオンさんの発想ってどうなっているんでしょうね? まだ、MP回復系の薬草も見つかってないはずなのに……ホント恐ろしい限りです」
「それにしても、リオンさんってさー。地下水路の時もそうだったけど、全く躊躇無くボスに突っ込んで行ったよねぇ。ちょっと大型のモンスターならいざ知らず、さすがにあのサイズ相手に突っ込むとか、ある意味尊敬できる…………って、んなっ?!」
戦闘開幕時に負ったダメージを、リオンからもらったジュースで回復しながら話していると、その途中で不自然に、ナギが驚きの声を上げる。
「ん? どうしたのナギちゃん?」
「いや、リオンさんが攻撃したから、あのゴーレムのHPが見えるようになったんだけど……そのHPバーが3本もあって、ね……」
「え? 3本?! それって、フルアライアンス(3パーティ18人)級ですよ! 見間違いじゃありませんか?」
「んーん、確かに3本あるよ」
「それだと~、おかしく無いですか~? 確かこのクエストの上限人数って~、10人のはずでしたよね~?」
「だね。っということは、その人数で倒すことのできる、何かしらの仕掛けがあるってことだと思うよ? ナギちゃん、識別結果は?」
「んと、モンスターの名前は、バリアブルゴーレム・マッドネス。レベルは25で、属性と耐性は無し。弱点は魔法全般になってるね」
「マッドネスということは、狂っているということでしょうか? まぁ、あの戦闘開幕時に起きた言動を見聞きしていれば、納得ですが……」
「ゴーレムって~、要はロボットみたいなものですよね~? なら~、狂っていると~、何処かしらかに~、不具合が出るんじゃないでしょうか~? ロボットって~、精密機械の塊ですし~」
「狂ってる……ロボット……精密機械……不具合…………」
アリルは今までの会話で出て来た単語を口ずさみながら、ふとバリアブルゴーレム・マッドネスの方を見る。
そして何かを閃いたかのように、声を上げる。
「……あっ! そうか。ソレだよ、ユンファちゃん! 狂っていれば、何処かに必ず負担が掛かってるはず。それなら、その場所を特定して攻撃すれば、その負担で自滅する可能性も有るよ!」
「確かに、自身の攻撃で自滅するのでしたら、フルアライアンス級のHPがあっても対処は可能でしょう。ですが、その場所が分からなければ、意味はありませんよ?」
「んー……それなら、リオンさんに聞いてみれば良いんじゃないかな? ほら、リオンさんってモンスターの弱点部位を見つけることができるみたいだったし、案外その負担が掛かっている場所が弱点部位なのかもしれないしさ」
「あぁ~! そういえば~、地下水路最奥に居た~、モンスターの弱点部位も~、リオンさんが見つけ出したんでしたね~」
「なら、まずはお兄ちゃんにあのゴーレムの弱点部位の場所を聞いて、その部位を狙う。弱点部位が複数あった場合は……お兄ちゃんの意見を聞いてみるのも良いかもね。発想やら手法やらが、言っちゃ悪いけど、普通じゃ無くて驚かされるから、今度も何か良いアイデアが出る可能性有りだし。まぁ出なかったら、あのゴーレムの反応を見ながら、攻撃するってことでどうかな?」
「……うん、いいと思うよ」
「ですね~」
「それでは、あのゴーレムの弱点部位についてはリオンさんに聞いてみるとして……。アリル、ネロちゃんの補助魔法が掛かってから、スピード上昇の補助魔法をもらえますか? さすがにあの攻撃をそのままで捌くのは難しそうですので」
「了解だよ! あ、ナギちゃんはどうする?」
「そうだなぁー……。見た感じスピードについては対処できそうだけど、精度にちょっと自信が持てなさそうだから、ユンファちゃんにお願いするよ」
「分かりました~」
そう話合いながら、今後の方針を固めるため、リオンへと連絡を入れていった。
◇◇◇
バリアブルゴーレム・マッドネスから付かず離れず、チマチマチクチクと攻撃を繰り返して、1本目のHPバーをおよそ3割程減らした辺りで、ふいにリーゼリアからパーティチャットで声が掛かった。
『リオンさん、少し聞きたいことがあるのですが、大丈夫ですか?』
俺はバリアブルゴーレム・マッドネスへの攻撃の手を少し緩め、回避に重きを置いた動きに変えながら、返事をする。
『ああ、大丈夫だ。それで、聞きたいことって?』
『はい。確かリオンさんは、モンスターの弱点部位が分かるんでしたよね?』
『ああ。そういうアーツがあるからな』
『でしたらその場所を教えて下さい。もしかしたら、その場所があのゴーレムを効率良く倒す鍵である可能性がありますので』
まぁ、弱点部位というのは、何かしらの理由が無ければ、普通は他の場所よりダメージ量が増えたりする場所のことだから、効率良く倒す鍵であるのは明白なはず。
それなのに、態々ソレを言うってことは、何か理由があるんだろうな。
『なるほど。何か分かったみたいだな。少し気になるところではあるけど……まぁ、後でも良いか』
そう判断し、俺はパーティチャットでバリアブルゴーレム・マッドネスの弱点部位の場所を説明する。
『背中と両肩に生えている結晶に』
『各関節に嵌っている赤い球体』
『それに、外部装甲に隠れている核、ですか……』
『複数の弱点部位があることは予想済みでしたけど~、なんだか何処でも有り得そうに思えますね~。困りました~』
『だね。これはちょっと予想外かも……』
『う~ん、話があまり見えないな。できればそろそろ、何が分かったか教えてもらえないか? リーゼリアから聞いた話だと、効率良く倒す鍵とか言っていたけど?』
『あ~うん、実はね。HPバーの数が3本あるモンスターを倒すのに必要な戦力は、通常フルアライアンス……18人3パーティが必要だって言われているの。でも、このクエストの上限人数は10人だったから、フルアライアンスの約半分の戦力でも倒せる仕掛けがあるんじゃないかって、思ったんだよ』
『そして、その仕掛けが何処にあるか? っという相談をした結果、バリアブルゴーレム・マッドネスという名前から、何処かしら狂っていると推察し、その狂っている何かのせいで何処かに負担が掛かっているのではないか? という結論に達したんです』
『なるほど。それで弱点部位か』
『はい。負担が掛かっていれば、その部位は通常より壊れ易いはずですし、その負担を軽減或いは、帳消しにしていた所が壊れれば、狂った何かによって自滅する可能性が出て来ますので』
『でも、実際問題として、場所が複数あると少し困るよね。何処がその負担部位なのか分からないと、自然と狙いは分散しちゃうから、1部位を壊すのに時間が掛かって、長期戦になっちゃうしさ』
『ですね~。私達後衛なら~、範囲攻撃魔法とかの手もありますけど~、その分1部位に対するダメージ量は減ってしまいますし~。下手をすれば~、リオンさん達前衛を巻き込み兼ねませんしね~』
『そこで、お兄ちゃん! 何か良い知恵無い?』
『いや、そんなこと急に言われても……』
『なんでも良いの! 実際に戦ってみて、何処かおかしい所があるとか、何かしらの違和感を感じる場所があるとかない?』
アリルにそう言われ、俺はバリアブルゴーレム・マッドネスに緩めていた攻撃を止め、回避に専念しつつ、バリアブルゴーレム・マッドネスを観察しながら考える。
今までの経験から、モンスターの名は体を表しているものばかりだった。
その例に漏れないのだとしたら、バリアブルゴーレム・マッドネスが何かしら狂っているのは確実。
戦闘開幕時の言動からして、恐らく思考制御が狂っている可能性が高い。
他のゲームなんかだと、ゴーレムというものは与えられた命令に忠実なものが多いが、このゴーレムは注意勧告と共に攻撃を仕掛けて来た。
通常、こういう重要施設なんかを守るゴーレムが、侵入者の不意を撃つためとはいえ、態と言葉とは違う行動を取るとは、まず考え辛い。
故に、思考が狂っているという考えで、間違いは無いはず……。
なら、思考が狂っているならば、ゴーレムの脳であり心臓である核が狂っていることになる。
だが、核はバリアブルゴーレム・マッドネスの外部装甲に隠され、露出していない。
アリルの言うように、本来フルアライアンスで倒すべき敵を、その半分の戦力で倒すことができることを前提としているなら、隠された……と言うか、見えない弱点部位等という意地の悪い場所では無いはずだ。
ならば、次に考えうる可能性は、狂った思考によって動かす場所が、その負担場所になると予想される。
狂った思考で動かされる場所……それは体である可能性が1番高い。
そして、見つけた弱点部位の中で、動かせる場所で且つ、体に属する場所は、赤い光を発している関節となる。
『たぶんだけど、関節じゃないかな? 関節は、動きの支点となり、力を伝え、力が伝わる角度と方向をコントロールする役割があるから、何かしら狂ったところがあれば、その負担が蓄積し易くなるしな』
『関節~う?』
『そ! 例に上げると……そうだな。ジャンプした後の着地をする時に、自身の体重の3倍の重さが掛かるって聞いたことないか?』
『あー、なんか聞いたことあるかも』
『確かに~、そういうの聞き覚えがありますね~』
『それで、普通自重の3倍なんて重さが掛かったりなんかしたら、何処かしら具合が悪くなりそうじゃないか?』
『ん~……言われてみれば、そうかも?』
『自重の3倍の重さですしね。よっぽど小さい子でないと、100Kgは余裕で掛かりますから、有り得るでしょうね』
『でだ。着地時に掛かるそういう衝撃の方向を分散させたり、着地する時に倒れたりしないよう体を支えるのが、関節の働きという訳だ』
『ほむほむ。流石はお兄ちゃんだ。期待を裏切らない、理論的? な解答で、とっても安心できます』
『ですね~!』
そうやってパーティチャットで相談していると、ふいに俺の体全体が仄暗い光に包まれ、そして消える。
視界の端を確認してみれば、案の定INT↑のアイコンが付いていた。
どうやらネロの補助魔法が掛けられたようだ。
『っ?! リオンさん! 上!』
そのナギの声に反応するように上を見上げる。
すると、俺が一瞬ネロの補助魔法に気を取られている内に、殲滅対象に有効な攻撃が出来ず痺れを切らせたのか、今まで俺を打ち据えようと振り回していた長大な両腕を振り上げ、頭の上でその両手を組む。
そしてその動作が視界に入ると、天眼の効果により視界のおよそ半分から下が赤く染まる。
っ?! まずっ!
俺は今までに無いタイプの染まり方に一瞬戸惑ったが、すぐに過去の戦闘経験から範囲攻撃が来ると予想する。
そして、つい数時間前の出来事の感覚を呼び覚ますように、思考を加速させ、その回避法を模索する。
バリアブルゴーレム・マッドネスが頭上で組んだ両手を後ろに反らす。
後方―――後退―――足りない
天眼によって視覚化された範囲は長く、優に10m以上もある。
バリアブルゴーレム・マッドネスが頭上で組んだ両手を前に倒し始める。
左右―――移動―――足りない
赤く染まった範囲は広く、この一瞬で脱出するには困難な面積がある。
バリアブルゴーレム・マッドネスが組んだ両手を顔の前まで倒す。
前方―――退避―――リスク高し
赤く染まった範囲はおろか、前方にはバリアブルゴーレム・マッドネスが佇み、唯一進行できる場所であろう股の間のすぐ上から、この範囲の元凶とも言えるバリアブルゴーレム・マッドネスの組んだ両手が落ちて来る。
バリアブルゴーレム・マッドネスが組んだ両手を胸の前まで落とす。
上方―――回避―――条件付き―――可能
赤く染まった範囲の最も外側は一際赤く発光しており、攻撃の範囲が届く場所を明確にしている。
バリアブルゴーレム・マッドネスが組んだ両手を腰の前まで落とす。
上方―――高さ―――3m強―――跳躍後―――魔法必須
俺は目測で赤く染まった範囲の高さを測り、跳躍した後の事を考え、どの位置にいくつ設置するか決める。
バリアブルゴーレム・マッドネスが組んだ両腕を膝の前まで落とす。
上方―――屈伸―――位置確認―――跳躍!
バリアブルゴーレム・マッドネスが組んだ両手が床に接触する前に、俺は上空に全力で跳躍し、赤く染まった範囲から逃れる。
……ズダァァァーン!
その直後、バリアブルゴーレム・マッドネスは両手を組んだ拳を床に勢い良く叩き付け、腹の底に響く様な大きな音とビリビリと耳朶打つ振動を伴った、衝撃波が広範囲に広がる。
バリアブルゴーレム・マッドネスが打ち付けた床を見てみれば、そこは浅く陥没し、その攻撃の強烈さを言外に物語っていた。
俺はそんな光景を見下ろしつつ、落下が始まる前の短い間に、予め決めていた位置に対して、魔法を発動する。
「トリプルマジック――プロテクトシールド!」
すると、俺が本来重力に引かれ、落下が始まる足元のすぐ下に、1枚の青白い円形盾が出現。
次いでバリアブルゴーレム・マッドネスと今居る空中との間を2分する位置に、2枚の魔法の盾が現れる。
俺はなるべく着地の瞬間、衝撃を出さないよう膝のクッションを使い、足元に設置したプロテクトシールドに乗る。
そして、自身の範囲攻撃の技後硬直ですぐには動けないバリアブルゴーレム・マッドネスに反撃を仕掛けるため、空中に設置した他のプロテクトシールドの上へと素早く、確実に飛び移って行く。
3枚目のプロテクトシールドに乗った後、一瞬バーサークを使うか迷うが、この絶好の機会を逃す手は無いと考え、アーツを使う。
「バーサーク!」
すると、俺の体全体と手に持つ武器……エキスパートソードを赤いオーラが包み込み、更にエキスパートソードから伸びている物質化した青白い刃の色と交じり合い、紫色に染まる。
この体全体と持ってる武器を覆うオーラや燐光は、魔法を壊す働きがあったため、使用に少なからず躊躇を感じたが、結果は問題無かったみたいだ。
まぁ、以前もオーラを纏っている時も魔法と色が混じっていたし、もしかしたら、オーラや燐光を発動するエネルギーと、魔法を使うためのエネルギーは、元は同じ波長の魔力が元だったから、反発して自壊することがなかったのかもしれないな。
そうすると、違う波長の魔力同士で作られるユニゾンマジックが謎だが、それは今考えることでもないか。
そんなことを思いつつ、俺は比較的近くにあるバリアブルゴーレム・マッドネスの右肩に生えている結晶目掛けて跳躍し、フィギアスケートの選手のように落下しながら回転し、遠心力と重力を伴った渾身の一撃を放つ。
「パワースマッシュ!」
ゴッ! ィィィィィィィイイイイイイイイイン!!
パキキキキキィッ!!
「ゴアァァァアアアアア!?」
鉄板で岩を強打したような音が響き渡り、少なからず衝撃の反動で痺れる手から剣を落とさないように、無理やり押さえ込む。
それと同時に、バリアブルゴーレム・マッドネスの右肩に生えている巨大な結晶に、強打された場所からヒビが放射状に入る。
生物では無いはずのバリアブルゴーレム・マッドネスからは、驚きの入り混じった悲鳴のようなものが上げられ、巨大な体をビクリと震わせる。
そして、まるで人が小虫を追い払うかの如く、その長大な巨腕を振り払って来る。
「おっと! ―――リープスラッシュ!」
俺は振り払われるその巨腕に瞬時に跳び移り、振られる反動を利用して大きく跳び退りながら、空中で追撃を掛ける。
そして着地すると同時に、思考の加速は終了し、俺の耳に音が戻って来る。
『リオンさん! 大丈夫ですか?!』
『お兄ちゃん! 無事?!』
俺は再度振るわれる2本の巨腕から逃れつつも、パーティチャットで返事をする。
『ああ、なんとかな。それよりも、つい今し方、あのゴーレムの弱点部位の1つの右肩に生えている結晶にヒビを入れたから、追撃を掛けるなら、なるべくソコを狙ってみてくれ。上手くいけば部位破壊も可能かもしれないからな』
『そうなんだ? うん、了解だよ!』
『ご無事でなによりでした~』
『分かりました。それではリオンさん、私とナギに変換魔法をお願いします。弱点を攻めるのは、兵法の基本ですからね』
『ボク達は、リオンさんから見て、そのゴーレムを挟んだ、斜向かいに居るよ!』
『分かった』
そう俺は答えた後、ナギの言っていた方に気配感知を併用しつつ、リーゼリアとナギを視覚的にも確認し、パーティチャットで合図を出しながら、魔法を放つ。
『いくぞ?』
「ダブルマジック――マジックウェポン!」
すると、リーゼリアの持つ2本のカットラスとナギの持つ手甲に盾、拳の先に刃が付いた奇妙な武器が、青白い光を発する。
『ありがとうございます!』
『リオンさん、ありがとう!』
2人は俺に礼を言うと、そのままバリアブルゴーレム・マッドネスの方へ駆け出し、無防備になっている背中や肩上に生えている結晶目掛けて攻撃を仕掛ける。
「ふっ! ―――スラッシュアッパー!」
「はぁ! ―――ライジングエッジ!」
「ゴガッ?!」
リーゼリアとナギは、跳躍しながらアーツを用いてバリアブルゴーレム・マッドネスを斬り上げ、弱点部位である右肩と背中の結晶に、更に追撃を掛ける。
「スラグフェストエッジ!」
「ダブルインパクト!」
「シールドバッシュ!」
「リバウンドバッシュ!」
「スラッシュバイト!」
「ゴグガガガァッ?!!」
リーゼリアは、ヒビの入った右肩の結晶に双剣の乱打を浴びせ掛け、滞空するのが難しくなると、最後に大上段からの双剣の振り下ろしを打ち込む。
ナギは、武器に付いている盾で殴り、返す盾で更に殴り、滞空時間をスラッシュバイトの1撃目を振り上げにすることで強引に延ばし、2撃目の振り下ろしで素早く離脱を図る。
HPバーを見てみれば、弱点部位を攻めたことにより、バリアブルゴーレム・マッドネスの1本目のHPはほとんど無くなり、後数ドットを残すのみとなっていた。
バリアブルゴーレム・マッドネスは、背後に新たな敵が居ることに気付き、生物に有るまじき動き……腰から上半身を半周させ、リーゼリア達の方を向く。
「はいはい、よそ見禁止。おまえの相手は俺だよ! ―――トリプルマジック――エネルギーボルト!」
「ゴガググッ?!」
俺はリーゼリア達の方を向き、がら空きになっている弱点部位の背中の結晶に魔法を撃ち込む。
HPバーを確認して見れば、さすが弱点部位に弱点属性、更にバーサークによるINTの倍化に加え、共鳴させることでダメージを引き上げるアーツを使用してるだけあって、ダメージは甚大。
今の魔法で2本目のHPバーが3割以上削れていた。
弱点部位を攻撃されたことにより、バリアブルゴーレム・マッドネスは腰から上半身を更に半周させ、再度こちらに注意を向けさせることに成功する。
「ゴォオオオオオ!」
バリアブルゴーレム・マッドネスは、怒り狂うように雄叫びを上げると、俺に向けてその巨大な拳を打ち付けてくる。
俺はその連打を避けながら、時折魔法でダメージを与えていると、ふいに俺の体全体が白い光に包まれ、そして消える。
視界の端を確認して見ると、MID↑のアイコンが付いていた。
どうやら漸く、シエルの補助魔法が掛けられたようだった。
そして、シエルの補助魔法が掛かる時を同じくして、アリルからパーティチャットが掛かる。
『準備できたよ。リアちゃん達は射線を開けるように、お兄ちゃんは巻き込まれないようにして、離れて!』
俺はその言葉を聞き、気配感知でリーゼリア達がバリアブルゴーレム・マッドネスからある程度離れるのを確認後、バリアブルゴーレム・マッドネスの顔面目掛けて魔法を放つ。
「ショットガンボルト!」
バリアブルゴーレム・マッドネスの顔面に、十数の紫色の雷散弾が発射される。
バリアブルゴーレム・マッドネスは、また視界が潰されると考えたのか、両腕で顔面をガードし、その動きが一時的に止まる。
俺は動きが止まったバリアブルゴーレム・マッドネスを尻目に、すぐ様その場から退避する。
俺がバリアブルゴーレム・マッドネスから十分に離れると、それを見計らったように、アリル達から魔法が放たれる。
「いっくよー! ―――エーテルガスト!」
アリルが発動言語を唱えると、前方に掲げた杖の先から、鋭い風の突風が吹き荒び、バリアブルゴーレム・マッドネスが両腕を顔面の前に上げていたことで、両肩の結晶も背中の結晶同様後ろを向き、その全てに襲い掛かる。
「ゴガッ?!」
「「えっ?!」」
「「なっ?!」」
「は?」
そして、アリルの魔法がバリアブルゴーレム・マッドネスに触れた瞬間、ソレは起こった。
荒れ狂う一陣の風により、バリアブルゴーレム・マッドネスの巨体は、一瞬前につんのめり、転倒しそうになるが、その長大な巨腕を床に下ろすことで辛うじて、踏み止まる。
そんな中、バリアブルゴーレム・マッドネスの体表の色が変化する。
バリアブルゴーレム・マッドネスの各関節に嵌っている球体と目の色は赤のままに、薄緑色を基調に旋風のような白い模様に、バリアブルゴーレム・マッドネスの体表が変わっていく。
その変化を見ながらバリアブルゴーレム・マッドネスの様子を窺っているが、特にコレといった変化は見られなかった。
いったい何が変わったんだ?
そう思っていると、次の魔法が放たれる。
「いきますぅ~。―――アクアドロップ~!」
ユンファが魔法を使うと、小さな水球がバリアブルゴーレム・マッドネスの頭上数mに出現し、ものの2~3秒で巨大な水球へと成長する。
水球の大きさはおよそ半径3~4m程もあり、見るからに大質量であるのは間違い無い。
水球の成長が止まると、まるでその時と待っていたかのように、バリアブルゴーレム・マッドネスに向け、巨大な水球が落下する。
バッシャァァァン!!
「グゴガガッ?!」
「「えっ?! また?!」」
「っ?!」
「あら~?」
「ふむ……」
そして、ユンファの魔法に接触した瞬間、新たな変化が起きた。
元々アリルの魔法で転倒しないため、四肢を床に付けるようにしていたのが功を奏し、大質量の水によって押し潰されることは無かったバリアブルゴーレム・マッドネスだが、今度は深い群青色を基調に、白い水飛沫や泡のような模様が付いた体表に変わっていった。
また変わった……。
見たところ、今回も特に体表が変わったこと以外では、変化は無いように見えるけど……。
一応、もう1回識別をしてみるかな。
バリアブルゴーレム・マッドネス:Lv25・属性:水・耐性:水・弱点:魔法
すると、前に識別した時とは一部の情報が変わっていた。
属性と耐性が水属性に変化している?
ということは、こいつは受ける有属性魔法によって、属性と耐性が変化するようだな。
なるほど、名が体を表すモンスターとしては最適な名前だ。
バリアブルとは、『変わり易い・定まらない』という意味なのだから。
つまり、このバリアブルゴーレム・マッドネスは外的要因……外部からの有属性魔法で、属性と耐性が変化するという特性を持っているということなのだろう。
それに、俺の無属性魔法をいくら食らっても、体表は変化しなかったし、まず間違い無いはずだ。
そう考えていると、更なる魔法が放たれる。
「ホオォォォ! ホオォォォ!」
バリアブルゴーレム・マッドネスの後方数m上空辺りから、ネロの鳴き声と共に、数十もの黒い剣身が飛来し、バリアブルゴーレム・マッドネスへ殺到していく。
ネロの方を見てみれば、天井からの光で出来た、両翼の影から黒い剣身を飛ばしているようだった。
ガキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャン!!
「ゴガッ?! ――グゴオオオオオ!」
『あー、なるほど』
『そういうことか!』
『でしょうね』
『分かりました~』
するとまた、バリアブルゴーレム・マッドネスの体表が変化する。
後方から撃ちだされる黒刃に気付くと、すぐ様上体を半周させて結晶部分を庇い、長大な両腕を交差させて、ネロからの攻撃を耐えようにしている中、バリアブルゴーレム・マッドネスの体表は、所々濃淡のある艶の無い黒へと変わっていく。
どうやら、アリル達もどうしてバリアブルゴーレム・マッドネスの体表が変化するのか、分かったみたいだな。
再度識別を行えば、先程の考えを裏付けるように、属性と耐性が影属性に変化していたのを確認できた。
これで、間違い無いようだな。
そう考えつつも、油断無くバリアブルゴーレム・マッドネスを観察する。
すると、HPバーを見た時、少し妙な事に気が付く。
……あれ?
確か弱点って魔法全般だったよな。
なのに、何かだんだんとダメージが減っているような……?
そう思っていると、ある時を境に、減っていたダメージが無くなり、逆に少しずつHPが回復していく。
なんだ?
なんで攻撃してるはずなのに、バリアブルゴーレム・マッドネスのHPが回復してるんだ?!
俺はそう内心で驚きながらも、このままではいけないと思い、念話でネロに攻撃を逸らすよう指示を出そうとする。
すると、バリアブルゴーレム・マッドネスの右肩に生えている結晶の周囲に、3つの光球が浮かんでいるのを目撃する。
っ! シエルか!
そう思った瞬間、3つの光球は連続した3つの爆音と閃光を上げる。
ドドドォォォォォン!
パキャァァァンッ!!
「グゴオオオオオォォォーーー?!」
バリアブルゴーレム・マッドネスは、今までの比ではない程の驚愕と悲鳴が入り混じったような雄叫びを上げ、その身を大きく仰け反らせる。
そんな中、またバリアブルゴーレム・マッドネスの体表は、所々明暗のある艶やかな白へと変色していく。
HPバーを見てみれば、先程のネロの攻撃で回復したHPを物ともせず大きく削り、2本目のHPバーは残り数ドットになっており、更にHPバーの隣には、AGI×0.75のアイコンが表示されていた。
恐らく、シエルの3連ライトバーストが止めとなり、右肩に生えていた結晶が砕け散ったせいなのだろう。
念のためウィークネスアイで確認すると、予想通りもう右肩から生えていた結晶の部分は発光せず、弱点部位ではなくなっていた。
それにしてもアリル達は、HPバー3本の敵はフルアライアンスで倒すのが普通だと言っていたけど、バリアブルゴーレム・マッドネスの残りHPは最早後1本と数ドットなのだから、そう心配する必要は無いんじゃ……?
そう考えていると、戦闘突入後からは聞こえてこなかった、バリアブルゴーレム・マッドネスの言葉が聞こえてくる。
「第1ブースター 大破ヲ確認! 敵勢力ノ 脅威度ヲ 上方修正! アンチマジックバリア展開 及ビ 対人殲滅戦カラ 対軍殲滅戦ヘ 移行シマス!」
は? ちょっと待て!
対軍殲滅戦?!
こっちって10人も居ないのに、対軍っておかしいだろっ!




