Locus 97
むぅ……間に合わなかったじぇ。(´・ω・`)
俺達が地下墓地から地上に戻った頃には、空が夕闇に染まりつつある、日没寸前だった。
俺達は日没前に地上に出られたことに安堵していると、頼み事を実行するために準備していたのか、黒い慰霊碑の裏から出て来たガルシアさんに、声を掛けられる。
「おっ! や~っと来たか。お前さん等ずいぶんと遅いから心配してたんだぞ?」
その声に反応するように黒い慰霊碑の方を見ると、地下墓地に入る前に見た格好とは違うガルシアさんが居た。
ガルシアさんは、片方しかレンズが付いていない眼鏡と体中にポーションホルダーを付け、背中には薄っすら光を放つ白いメイスを下げている。
体中に付けられているポーションホルダーの中には、幾つものポーション瓶があり、その中には無色透明だが若干白く微発光している液体が入っていた。
「あー、それはすみませんでした。何分地下空間内が広くて戻って来るのに手間取りまして」
「そんなに広かったのか?」
「ええ、まぁ。ですが、地下空間内に居たアンデッドは疎か、モンスターも全て討伐・討滅したので、もう妙な音が聞こえて来ることは無いと思いますよ」
「……そうか。そいつはよかった。これで、安心して暮らしていけるな。お前さん等、ほんとうにありがとな」
「いえいえ」
「依頼でしたし、当然ですよ?」
「それでも、だ」
「そういえば~、ガルシアさんのその格好って~、いったい何なんですか~? 初めて会った時は~、そんな格好~、してませんでしたよね~」
「あぁ、コレか。コレは、万が一のための用心だよ。神父様が使わしてくれたお前さん等だから、早々にやられることは無いと思ったが、それでも絶対にやられないなんて保障も無かったからな」
「なるほど、確かに……」
「それじゃ、神父様に依頼を達成した旨を手紙に書くから、少し待っててくれ」
「あ、はい。分かりました」
『いってらっしゃーい』
「キュキュ~ウ」
そう言うと、ガルシアさんは黒い慰霊碑から離れ、墓場の片隅に建っているガルシアさんの家に戻って行く。
その間、俺は約束通りナギに重心移動のトレーニング方法を実践しながら教えたり、最後の戦闘で入手したボスクラスアンデッドから入手できた素材の分配等を行い、ガルシアさんが戻って来るのを待つ。
始めは、バランスが上手く取れず、2~3回の移動で倒れたり、よろけたりしていたが、しばらく実践し続けると、コツを掴んだようで、倒れずよろけずスムーズに前後に移動できるようになっていった。
ボスクラスアンデッドから出たドロップアイテムの分配は、相談の結果、アーマードスケルトンソルジャーから出た白い槌はリーゼリアが、アーマードスケルトンガードナーから出た白い大盾はナギが、白い槍はユンファが、スケルトンマジシャン・リモースから出た杖はアリルが、それぞれも貰うことになり、俺はその他の取り巻きアンデッドが持っていた武器を貰うことになった。
因みに、ボスクラスアンデッドから出た武器・防具アイテムの詳細は以下のようになっている。
武器アイテム:大槌 名称:ホワイティアビッグハンマー ランク:3 強化上限回数:21回
ATK54 DEX-18 要求STR減少13 要求STR38 耐久値108/380
与DP倍率:斬0 打1.3 突0.1 魔0.1
説明:骨のような質感を持つ、ホワイティアストーンから作られた大槌。純度が高い程、所有者に掛かる重量が軽くなるという、不思議な特性を持つ。
武器アイテム:槍 名称:ホワイティアスピア ランク:3 強化上限回数:21回
ATK43 要求STR減少10 要求STR28 耐久値91/330
与DP倍率:斬0.3 打0.3 突1.3 魔0.1
説明:骨のような質感を持つ、ホワイティアストーンから作られた槍。純度が高い程、所有者に掛かる重量が軽くなるという、不思議な特性を持つ。
防具アイテム:大盾 名称:ホワイティアビッグシールド ランク:3 強化上限回数:23回
ATK12 DEF58 M・DEF16 DEX-22 要求STR減少21 要求STR62 耐久値134/420
説明:骨のような質感を持つ、ホワイティアストーンから作られた大盾。純度が高い程、所有者に掛かる重量が軽くなるという、不思議な特性を持つ。
武器アイテム:杖 名称:リモースセプター ランク:3 強化上限回数:25回
ATK13 M・ATK41 攻撃時影属性による追加ダメージ 要求STR21 耐久値95/310
与DP倍率:斬0 打0.3 突0.1 魔1.4
説明:悔恨の念が染み付いた赤黒い杖。攻撃時に影属性による追撃を加える特性を持つ。
そうやっていると、ガルシアさんが折り畳まれた羊皮紙を持って戻って来た。
「待たせたな。それじゃコレが手紙な。」
そう言われ俺は、ガルシアさんから手紙を受け取った。
手紙は二つ折りを更に二つ折りにしたものに、縦横に細い紐を巻き付け、その結び目になる所に封蝋を押されたものだった。
「今回は本当に助かったよ。ありがとな。それじゃ、元気でな!」
「はい、そちらもお達者で」
「失礼します」
「ガルシアさんもねー!」
「バイバーイ!」
「さよならです~」
『ばいばーい!』
「キュキュウー!」
その後、俺達はクエストの達成を報告するために、教会へと向かって行った。
◇◇◇
教会に到着する頃には、日は完全に落ち、群青色の空を月と数多の星々が照らすようになったいた。
教会の中に入ると、昼間に入った時とは趣の違う光景が目に映る。
採光を兼ねたステンドグラスは、陽光よりも幾分か弱い月光に照らされることで、ステンドグラスに描かれた7柱の女神の姿がはっきりと見えるようになっている。
教会内の天井を支える各柱には、光を灯す魔道具があり、月光と同じような柔らかな光で教会内を照らしている。
教会の奥を見てみると説教台に神父が居ることを確認できたので、そのまま奥へと進み、昼間に来た時のように、全員を代表して神父に話し掛ける。
「こんばんは。ただいま戻りました」
「はい、こんばんは。おかえりなさい。その様子ですと、依頼は達成できたようですね」
「はい、何とか。妙な音の原因になっているものの排除は済みましたので、コレ以降は妙な物音がすることはないでしょう」
「それはよかった。これで、ガルシアも平穏に暮らしていけるでしょう」
「それと……コレを。ガルシアさんから、神父様にです」
そう言いながら俺は、素早く先程ガルシアに渡された手紙を実体化し、神父に手渡す。
「ありがとうございます。それでは、すぐに読みますので、少々お待ち下さい」
そう言うと、神父は手渡したガルシアの手紙の封蝋と縦横に巻き付いている紐を外し、手紙を開いて中を見ていく。
そのまま少し待つと、神父は手紙から顔を上げ、こちらへと声を掛けてくる。
「確認しました。それでは、報酬をお渡ししますね。……どうぞ、お納め下さい」
神父は予め報酬を用意していたのか、説教台の下から布袋を取り出し、俺に手渡して来る。
俺がその布袋を受け取ると、ファンファーレが鳴り、インフォメーションが流れた。
『パパ~ン♪ クエスト《墓守の悩み事》をクリアしました。クエスト報酬:汎用魔法習得結晶・地×5 汎用魔法習得結晶・光×5を入手しました』
一応、渡された布袋の中を見てみると、拳大の立方体の角が取れた暗い琥珀色をした結晶と、ラウンドブリリアントカットの形をした白い結晶が各5つずつ入っていた。
【製作者:グレイス】
消耗アイテム 汎用魔法習得結晶・地:古代文明の術式をスキル習得結晶に転写した、特定技能習得結晶の一つ。使用することで、使用者は地属性汎用魔法を習得することができる。
【製作者:グレイス】
消耗アイテム 汎用魔法習得結晶・光:古代文明の術式をスキル習得結晶に転写した、特定技能習得結晶の一つ。使用することで、使用者は光属性汎用魔法を習得することができる。
「確認できました。ありがとうございました」
「いえいえ、また何かあれば遠慮せず、お立ち寄り下さい」
「はい、その時はよろしくお願いします。それでは、失礼します」
俺は神父に礼を言うと、後ろに控えていたアリル達を伴い、教会を出て行った。
◇◇◇
教会を出てすぐ、俺達は通行人の邪魔にならない所へ集まり、今回の報酬を皆に渡していった。
「さて、報酬も受け取ったことだし、この後どうしよっか?」
「そうですね……。クエストの期限は明日いっぱいまでありますし、とりあえずこのまま今日中に次のクエストに臨むか、明日まで待ってクエストに挑むか決めましょうか」
「う~ん。ボクはどっちでも良いかな? 特にコレといった用事も無いし」
「私も~、どちらでも構いませんよ~」
「ふむ、リオンさんはどうですか?」
「そうだなぁ……受けるクエストにもよるけど、残り時間は多い方が取れる選択も多くなるだろうから、何か不都合や予定がなければ、今日行った方が良いかな?」
「なるほど。理に適ってますね。アリルはどうですか?」
「私は断・然! 今日が良いと思うよ」
「それはどうしてでしょうか?」
「確かに、こんなに断言するってことは何か理由がありそうだよね。アリルちゃん、何かあるの?」
「気になりますね~」
「うん、モチロンあるよ! 皆忘れてるかもしれないけど、昨日入手した称号の効果を考えてみれば、すぐにその理由が分かるはずだよ」
「昨日入手した……称号……?」
「……あっ! そういうことか!」
「これは盲点でしたね」
「よく気が付きましたね~、アリルちゃん~」
「えへへ~」
因みに、昨日取得した称号というのは、地下水路で入手した〔容赦無き掃討者達〕のことだ。
この称号の効果は、止めを刺したモンスター1体に付き、ランダムでATKかM・ATKが1上昇するというものだ。
今日は地下墓地でたくさんのアンデッドを倒したことにより、全員ある程度ATKとM・ATKが強化されている状態にあるのだろう。
但し、この効果は日付が変わるとリセットされ、上昇した能力値が0に戻るため、アリルは強化されている内にクエストを受ければ、その分戦闘を有利に進めることができるということを言っているのだと思う。
「コレは決定かな?」
「ですね。戦闘がある可能性を考えれば、強化が効いている内にクエストを進めた方が得策でしょうしね」
「前回も今回も~、戦闘はありましたから~、次も戦うことになっても不思議ではありませんしね~」
「だな。それじゃ、今日中に次のクエストを受けるってことで良いかな?」
「うん!」
「「はい」」
「はいです~」
「なら後は、合流場所と時間指定かな?時間的にもそろそろご飯時だろうし、1度ログアウトした方が良いしな」
「ですね」
その後、俺達は軽く話し合い、待ち合わせ場所を街役場の前に、集合時間を今日の午後9時に決め、その場で解散して行った。
よし! それじゃ俺も行動するとしよう。
さっきドロップアイテムを確認する時に、鍛錬石がいくつかと種族レベルが上がっていたから、アドヴァンスドソードの強化とステータスポイントの割り振りをしてから一旦落ちることにしよう。
それと汎用魔法の習得もかな?
まぁ何にしても、落ち着いた場所で作業したいから、また荒ぶる仔豚亭で泊まり、夢現フィールドの方で作業することにしよう。
通常フィールドの方の宿屋内でやると、最悪宿屋の女将さんに注意を受ける可能性があるし、作業中に注意を受けて、手元が狂うと取り返しがつかない事になるからな。
そうして俺はシエルとネロを連れて、人気の無い路地裏から屋根へ上がり、アーツを使いながら、時間短縮のために最短ルートで荒ぶる仔豚亭へと向かっていった。
◇◇◇
俺は荒ぶる仔豚亭に到着するとすぐに、女将さんに1泊分の料金を払い、部屋に備え付けられていたソフトドリンク……夢現の雫を飲み干して、夢現フィールドへ移動する。
もちろん、ソフトドリンクを飲む前に、シエルの装飾化とネロの宿紋化も忘れない。
所持金:54075R⇒53775R
窓の外から差す朝の日差しを確認した後、早速作業に取り掛かる。
まずは、汎用魔法の習得からだ。
俺は素早く、汎用魔法習得結晶・地と汎用魔法習得結晶・光を実体化し、それぞれの結晶をタップする。
すると、ウィンドウが現れ『汎用魔法習得結晶・地を使用しますか? Yes/NO 』『汎用魔法習得結晶・光を使用しますか? Yes/NO 』と出たので、迷わず両方Yesを押した。
Yesボタンを押すと、汎用魔法習得結晶・地と汎用魔法習得結晶・光は暗い琥珀色の光と白い光に変わり、俺の胸の辺りに入っていく。
すると、脳内に『ピロン!』という音が鳴り、インフォメーションが流れた。
『これまでの行動により、スキル〔汎用魔法(地)〕、スキル〔汎用魔法(光)〕を習得しました。既に同種のスキルが存在するため、スキル〔汎用魔法(地)〕とスキル〔汎用魔法(光)〕はスキル〔汎用魔法〕に統合されます』
よし! 特に問題無く習得することができたな。
光の汎用魔法は恐らく明かり……光源を出す魔法だと予想できるが、地の汎用魔法の方は全く思いも付かないんだよな。
さてさて、いったいどんな効果なんだろうな? 楽しみだ!
そう思いながら俺は、すぐ様メニューを開き、新たに習得した汎用魔法を有効化し、説明を読み込んでいく。
〔地属性汎用魔法:アースミール〕:大地のエネルギーを集め、魔力でパンに変換する、汎用魔法。
生成されるパンの種類は土地により変化し、美味さは使用者のINT・DEX・LUK の値に依存する。
但し、使用者が大地に接していない場合、美味さが著しく低下する。
消費MP:5 リキャストタイム:3秒
〔光属性汎用魔法:ライトアップ〕:指定した物や空間に光球を貼り付け、辺りを照らす、汎用魔法。
この魔法の持続時間はINT・MID・DEXの値に依存する。
また、この魔法の光量は使用者の任意で変更し、消すことも可能。
但し、魔法の発動場所を指定しない場合、魔法は発動せず、魔力だけが消費される。
消費MP:3 リキャストタイム:3秒
あー……なるほど。食事か!
今のところこのゲーム内で、趣味……と言っていいか分からないが、ソレ以外で食事を取る必要が無いから、その可能性をすっかり見落としていたな。
さすがリアリティ溢れる世界と公言しているだけのことはあるな。
確かに、地属性汎用魔法は生活していく上で、必ず必要になるものを得られる魔法であり、普段の生活に欠かせないようなものや、遠出なんかの時に重宝する魔法だな。
なんせ、この世界……というかこの街、国の主食はパンだからな!
遠出なんかの時に、実際に粉からパンを作ろうとすれば、長時間その場で足止めを食らうことになるし、旅先でも食べられるように保存を効かせれば、自然と質や味が劣るものになるから、その場で出来立てのパンがすぐに食べられるとなれば、間違い無く重宝するだろうな。
できればすぐにでも使ってみたいが、ここは宿屋の2階で、大地に接していないため、美味さが著しく低下してしまう。
せっかくなら、美味しいパンを食べたいので、地属性汎用魔法を使うのは今度の機会に回すことにする。
光属性汎用魔法は案の定、照明を生み出す魔法みたいだな。
説明を見る限りだと、発動場所を指定さえすればきちんと発動するみたいだから、実際に今試してみることにしよう。
そう考え、俺は素早く空いていたスキル枠に汎用魔法のスキルを入れ、適当に部屋の隅に発動場所を指定しつつ、魔法を使ってみる。
「ライトアップ」
すると、俺が指定した場所に直径30cm程の光の球体が出現する。
光量は、一般的な白熱電球……60W位(?)の明るさで、光の球体に触れようとすると、手は光の球体を素通りし、触ることはできないみたいだった。
なるほど、実体が無いタイプの魔法なのか。
コレなら、戦闘中に誤って突っ込むことになったり、敵対者に光源を破壊される心配も無くて、安心だな。
後は光量の変更だけど……うん、クリエイトウォーターの時と同じように、俺の思考に合わせて変更ができるみたいだ。
光量を最低まで抑えると、ぼんやりと光る球体になり、今度は反対に最高までにすると、直視するのが難しくなる程、強い光を放つようになる。
そうやってライトアップについての考察をしていると、ふいに光の球体が消え去る。
ふむ、どうやら今のステータスではこの位の時間が限界みたいだな。
ただ少し気になるのは、光量の強弱によって、持続時間に変化があるかどうかだけど……まぁ、それも試してみればいいか。
その後、トリプルマジックとライトアップを使い、光量が最高のものと普通のものと最低なものを放置して、持続時間に変化があるかどうか調べてみる。
結果は、変化無し。
3つ同時に出現させた光の球体は、光量の強弱があるにも関わらず、3つ同時に消え去った。
どうやら光量の強弱で魔力を余計に使っているのではないようだ。
それにしても、ギルドで習得できた火と水の汎用魔法といい、今回の教会で習得できた地と光の汎用魔法といい、戦闘できる程の強さは無いが、実用性に関しては十分に有ると言える。
そうすると、残りの街役場で管理しているという、風と影の汎用魔法のことがすごく気になるな。
今までがそうだったから、たぶん風や影属性も実用性が高い汎用魔法なんだろうけど……悪用される可能性のある汎用魔法っていったいどんななのだろう?
ただでさえ、風と影を使った実用性のある、戦闘ができる程ではない魔法という縛りがあるのに、悪用される可能性まで出て来れば、全く検討もつかない。
本当に、どんな魔法なのか今からすごく楽しみだ!
それじゃ次は、ステータスポイントの割り振りを行っていこう。
流石に格下でも、アレだけの数のアンデッドを倒したことによって、俺・シエル・ネロの種族レベルが1つ上昇し、スキルレベルの上昇に伴い、新たな魔法を習得していた。
現在の俺のステータスはこんな感じだ。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv25
job:冒険者 rank:E
class:マジックソードマンLv18
HP:686 MP:422
STR:168
VIT:80
AGI:166
INT:76⇒79
MID:81
DEX:237
LUK:61
STP:3⇒0
所持金:54075R 虚空庫 192/677
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕
専科スキル:〔魔法剣・無Lv18〕
装備スキル:〔STR増加Lv63〕、〔AGI増加Lv63〕、〔剣術Lv15〕、〔暗殺術Lv26〕、〔無属性魔法Lv29〕、〔天眼Lv6〕、〔調教Lv43〕、〔賦活Lv9〕、〔詠唱破棄Master〕、〔気配感知Lv25〕、〔識別Lv51〕
控えスキル:〔鑑定Lv51〕、〔料理Lv21〕、〔虚空庫 rank3〕、〔錬成Lv13〕、〔毒耐性Lv2〕、〔麻痺耐性Lv3〕、〔汎用魔法〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕、〔剥ぎ取り上手〕、〔医食同源〕、〔砕撃の頭壊者〕、〔慈悲深き討滅者達〕
称号スキル:〔念話Lv8〕、〔怪力乱心Lv4〕、〔韋駄天Lv4〕、〔薬膳Lv0〕
固有スキル:〔狂化Lv25〕、〔軽業Lv15〕、〔頑健Lv22〕
ステータスポイントは、魔法の威力を上げるため、INTに全振りした。
INTにプラス3で、76⇒79へ
□ マジックコート:属性の無い魔力を瞬時に纏い、魔力によって受けるダメージを軽減させる、防御系魔法。
この魔法によって軽減されるダメージ量は、INT・MID・LUK の値に依存し、持続時間は、INT・DEX・LUK の値に依存する。
消費MP:20 リキャストタイム:60秒
次はシエルのステータスだ。
name:シエル
sex:女
race:サニー・スピリットLv14
HP:260 MP:332
STR:0
VIT:47≫90
AGI:51≫94
INT:51⇒52≫95
MID:48⇒51≫94
DEX:51≫94
LUK:41≫84
STP:4⇒0
≫調教の効果を加算した値
種族スキル:〔陽光活性(昼)〕、〔物理半減〕
スキル:〔光魔法Lv49〕、〔光耐性Lv9〕、〔影耐性Lv9〕、〔浮遊飛空Lv26〕、〔装飾化Lv8〕、〔念動Lv8〕、〔賦活Lv0〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv3〕
固有スキル:〔STR返上〕
ステータスポイントは、回復魔法の威力を高めるため、MIDに3ポイント割り振り、残りの1ポイントをINTに割り振った。
INTにプラス1で、51⇒52へ
MIDにプラス3で、48⇒51へ
それと、やはりテイムモンスターにスキルスロットの制限があるか分からなかったが、再生と再精がMasterになっていたので、念のため賦活へと統合進化させた。
〔PS〕パッシブスキル:〔再生Master〕+〔PS〕パッシブスキル:〔再精Master〕=統合進化⇒〔PS〕パッシブスキル:〔賦活Lv0〕
最後はネロのステータスだ。
name:ネロ
sex:女
race:シャドービーストLv24
HP:340 MP:440
STR:47
VIT:47
AGI:55
INT:62⇒65
MID:47
DEX:62
LUK:48
STP:3⇒0
種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕
スキル:〔影魔法Lv38〕、〔影抵抗Lv3〕、〔影耐性Lv8〕、〔潜影移行Lv26〕、〔宿紋化Lv2〕、〔潜匿Lv0〕、〔賦活Lv5〕、〔索敵Lv28〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv3〕
固有スキル:〔専化影装〕
ステータスポイントは、素の状態での魔法の威力を上げるために、INTに全振りした。
INTにプラス3で、62⇒65へ
それと、新しいスキルに派生進化できるものがあったので、説明を読み込み進化させた。
〔PS〕パッシブスキル:〔潜伏Master〕 =進化⇒ 〔PS〕パッシブスキル:〔潜匿Lv0〕
〔PS〕パッシブスキル:〔潜匿Lv0〕
対象の視界や認識(知覚等)から外れ、一定時間経過すると対象から自身の存在を暗ませる、潜匿状態になることができる。
潜匿状態の精度は、SLvとDEX・LUKの値に依存し、SLv上昇と共に対象に発見されるまでの間、全攻撃の威力が増大する。 MAXSLv50
それじゃ最後に、ボスクラスアンデッド達から入手した鍛錬石は全部で9個だったので、それ等を使ってアドヴァンスドソードを強化上限まで一気に強化鍛錬していこう。
【製作者:リオン】
武器アイテム:剣 名称:アドヴァンスドソード+15 ランク:2 強化上限回数:0回
ATK45 DEF30 AGI30 M・ATK30 M・DEF30 DEX30 LUK30
要求STR:30 耐久値:∞ バインド属性
与DP倍率:斬1.0 打0.5 突0.3 魔1.0
クリエイトボーナス:MP+50
能力継承:【HP+5%】
これでよしっと。
しかし、こんなに早く強化上限達することができるなんて、思ってもみなかったな。
実際、キークエストの第1クエストと第2クエストで鍛錬石を13個も入手できたおかげだから、キークエスト様々ということだな。
ノービスソードからアドヴァンスドソードに鍛錬進化させるまで4日掛かったから、強化上限回数が1.5倍だったので、どんなに早くても7日は掛かると思っていたのに、その半分の日数で強化上限までいけたんだから早いはずだよ。
そういえば、前回ノービスソードを強化上限まで強化鍛錬して少ししたら、インフォメーションが流れたんだっけ。
強化鍛錬はノービスソード時同様、全て鍛錬石を使って強化していった。
だけどそれだけじゃ、進化鍛錬できないと掲示板にもあったから、何か別の条件が必要なはず。
前回は偶然その条件を満たしていたから良かったが、さて……今回はどうだろうか?
そうやって考えていると、何度か聞いた覚えのある音とインフォメーションが流れた。
『ピロリン♪ 武器アイテム:アドヴァンスドソードの進化鍛錬の条件を満たしました。レシピ帳に新たなレシピが追加されました。武器アイテムの進化鍛錬は別途、レシピの手順に従い行って下さい』
はぁ~。
何とか今回も条件を満たすことができたみたいだな。
でも、前回も今回もその条件がどんなものだったのかが分からないから、かなり心臓に悪い仕様だよな、コレ。
まぁ、もしも進化鍛錬に行き詰まったら、変異の欠片を使えば良いのだが、もしそれでも、進化鍛錬先が出現しなかったら、その時は潔く諦めて、新しい主武装を探せば良いだけなんだけどな。
そう思いつつ、俺はインフォメーションにあった精製キットの中にあるレシピ帳を確認していく。
すると、インフォメーションにあった通り、新しいレシピが追加されていた。
レシピ:エキスパートソード
材料:純鉄のインゴット×3、アドヴァンスドソード+15×1、鍛錬石×1
作り方:材料を全て錬金炉に入れ、蓋を閉め、MP50を錬金炉に注ぐ。
錬金炉から出した地金をやっとこで取り出し、金床の上に置き、
ハンマーで9回叩く。
ふむ、純鉄かぁ。
名称から察するに、純金の鉄バージョンってところだろうか?
確かインゴット化しても、数パーセントは鉄以外の不純物が混じっていて、その不純物を取り払うために、何度も熱しては叩きを繰り返し、還元作用等を用いて少しずつ不純物を減らすって、どこかで見た覚えがあるから、ヴァルスに頼んでやってみてもらうしかないかな?
幸い、先の地下墓地での戦闘で、錆びた鉄製武器が多数入手できたので、ソレ等を鋳潰してインゴット化すれば、材料に困ることは無いだろう。
ただ問題なのは、人の手で鍛えて、不純物を完全に取り払うことができるかどうかなのだが……。
ん? 不純物を完全に取り払う?
ということはつまり、純粋な鉄という単体だけを取り出すってことになるから…………あ。
そうか! 抽出錬成をすれば、純粋な鉄だけを取り出すことができるじゃないか!
なら、話は早い。
ヴァルスに錆びた鉄製武器を鋳潰してもらった後、鉄のインゴットを作ってもらえば、準備は整うことになる。
心配なのは、錬成のレベルがまだ最大レベルの半分にも満たないので、失敗する可能性があることだ。
だけど、まだやってもいない内から悩んでも仕方無いし、実際にやってみて、失敗してから考えれば良いよな。
確か錬成は生産扱いだったはずだから、生産成功率を高めるために、DEXが上がるスキルに入れ替え、あらゆることに影響を及ぼすLUKを魔法を使って強化して事に臨むとしよう。
方針も立ったことだし、まずはヴァルスに連絡を取ろう。
午後から用事があるとか言ってたけど……今はインしてるだろうか?
そう考えつつフレンドリストを見ていくと、ヴァルスが現在ログインしていることが分かる。
「おっ、いた!」
俺は思わずそう呟きながらも、素早くヴァルスの名前の下にある電話のアイコンを押し、まずはフレンドコールを掛ける。
すると、ヴァルスも夢現フィールドに居るようで、問題無くコール音が鳴る。
そして3度目のコール音の後、ヴァルスが回線を開く。
『おー、リオンか。昼ぶりだな。どうしたんだ?』
「ああ、インゴットの作成と買取を頼みたいんだけど、ヴァルスって武器を鋳潰すことはできるか?」
『武器に使われている素材しだいだな。何でできている武器なんだ?』
「素材は鉄製なんだけど、錆びてるんだ。できそうか?」
『ああ、それなら大丈夫だな。今も南区にある露天通りにいるから、持って来てくれれば請け負うぞ』
「分かった。それじゃ、今から行くよ」
『おう! 待ってるな』
そう言ってヴァルスとのフレンドチャットの回線が切れる。
その後、部屋に実体化した精製キットを片付け、シエルの装飾化とネロの宿紋化を解き、荒ぶる仔豚亭を出て行く。
そして、人気の無い路地裏に入り、三角跳びの要領で家屋の屋根へと上がり、最短ルートを通るようにして、露天通りへと向かって行った。
◇◇◇
同じ南区にあるため2~3分で、目的のヴァルスの露天に到着することができた。
俺がヴァルスの露天へ近付いて行くと、ヴァルスも気が付いたように顔を上げ、声を掛けてくる。
「よう、リオン。えらく早かったな。フレンドコールで話したのついさっきだぞ?」
「まぁ、丁度同じ南区に居たからな。それはそうと、……コレ等が買取素材兼、鋳潰し希望の武器になるんだけど、料金ってどの位になりそうかな?」
俺はそうヴァルスに言いつつ、トレードウィンドウを出し、鋳潰し希望の武器を並べていく。
「うわっ! こいつはまた大量だな。全く、いったい何処でこんなの手に入れて来るんだ?」
「あー……とあるクエストで、とだけ答えておくよ」
「そうか。それで、インゴットはいくつ要るんだ?」
「んー。取り急ぎ必要なのは3つだけど、できれば予備にもいくつか欲しいから、合計で9個かな?」
「分かった。それじゃインゴット9個分の料金を差し引いた分の見積もりを出すから。少し待っててくれ」
そう言われ、ヴァルスが試算を終えるまで、露天の前で少し待つ。
「出たぞ。買取金額から鋳潰しと9個のインゴット化の手数料を引いて、528088Rになるな。」
「え?! 何か高過ぎじゃないか? そんなんで大丈夫なのか?」
「ああ、問題無い。何しろ素材が鉄だからな。鋳潰してインゴット化した後、鉄製の武器や防具を作ればすぐに、巻き返せる金額だから、心配はいらないぞ」
「そう、なのか? なら、安心かな」
「それじゃ、取引成立だな」
そうしてヴァルスは、トレードウィンドウに買取金額を入力し、錆びた大量の鉄製の武器と交換した。
「まいどあり~。それじゃ、インゴットを作るから、ちょっと待っててくれよな」
そうヴァルスは言うと、以前も見たようにメニューから、次々と鍛冶道具と錆びた鉄製の武器を実体化させていき、武器の鋳潰しとインゴットの作成を行っていく。
しばらく待っていると、鈍い黒色をした金属光沢のあるインゴットが出来上がった。
「ほれ、できたぞ。お待ちどうさん。流石に一気に9個も作ったから疲れたが、出来は良いはずだ。確認してみてくれ」
そう言われ手渡されたインゴットを受け取り、さっそく鑑定してみる。
【製作者:ヴァルス】
素材アイテム アイアンインゴット:鉄製の武器を鋳潰した後、精錬し鋳型に流し込んで固化した金属塊。強磁性ないし常磁性を示し、延性・展性に富むことから、様々な用途に使われる。また鈍い黒さを有することから、別名:黒金とも呼ばれている。
「うん、大丈夫みたいだ。ありがとな、ヴァルス」
「良いってことよ。それじゃ、また何かあれば、何時でも言ってくれ。それまでにまた腕を磨いておくからさ」
「ああ、その時はまたよろしくな」
そう言い合い、俺はヴァルスの露天を後にして行った。
所持金:54075R⇒582163R
今更だが、少し早まったかもしれない。
まだ、キークエストも1つ残っているのに、こんな大金持ったまま死に戻りしたら、もったいなさ過ぎる!
今まで以上に死なないように、気を付けることにしよう。
そうして俺は再び、荒ぶる仔豚亭へと戻って行った。
◇◇◇
荒ぶる仔豚亭に戻り、自分が泊まっていた部屋に入ると、さっそく先程ヴァルスに作ってもらったアイアンインゴットを3つ実体化させ、テーブルの上に置いた。
さて、後は抽出錬成してアイアンインゴットを純鉄のインゴットにすれば、アドヴァンスドソードを進化鍛錬するための準備が整うことになる。
一応抽出錬成が失敗した時用に、余分にインゴットを作ってもらったが、できれば失敗して素材が消滅するのは、極力避けたいところなので、少しでも成功率を上げるため、DEXが上がるスキルの料理スキルを入れて、あらゆる事に影響するLUKの値を魔法で上げる。
そして、テーブルの上にあるアイアンインゴットの1つを視線選択し、意を決して抽出錬成を行っていく。
「抽出錬成!」
すると、視線選択したアイアンインゴットが一瞬白い光に包まれて消えると、そこにはアイアンインゴットを少し小さくしたような白い金属光沢を持つインゴットが出来上がる。
見た目がガラっと変わったな。
まるでステンレスみたいな綺麗な銀色をしている。
これは成功で良いのだろうか?
まぁ、鑑定してみれば分かるか。
【製作者:リオン】
素材アイテム フェライトインゴット:純粋な鉄のみで構成された、銀色のインゴット。靭性を持ち柔らかく、武器や防具の材料には向かないが、耐熱性・耐腐食性に優れるため、主に日用品や道具等の材料として用いられる。また、他の元素と固溶することで、その強度や性質をより強固なものにする特性を持つ。
あー……うん、一応は成功しているみたいだ。
ただ、説明に武器や防具の材料には向かないってあるんだけど!?
……本当にコレ大丈夫かな?
でもレシピには、純鉄のインゴットを使うってあるし、ここまで来たんだから腹を括ってやるしか選択肢は無いけどな!
……よし! 覚悟完了。
いっちょ、やってみるか!
そうして、残りの2つのアイアンインゴットも抽出錬成して、フェライトインゴットに変えた後、精製キットと強化素材である鍛錬石を実体化し、精製キットにあるレシピを確認してから、その使用手順に従って進化鍛錬を行っていく。
レシピ:エキスパートソード
材料:純鉄のインゴット×3、アドヴァンスドソード+15×1、鍛錬石×1
作り方:材料を全て錬金炉に入れ、蓋を閉め、MP50を錬金炉に注ぐ。
錬金炉から出した地金をやっとこで取り出し、金床の上に置き、
ハンマーで9回叩く。
錬成炉の蓋を開け、フェライトインゴットを3つとアドヴァンスドソード+15と鍛錬石を1つ入れ、蓋を閉めると、ウィンドウが現れ『MP50を注ぎ、アドヴァンスドソードを進化錬成しますか? Yes/No 』と出たので、迷わずYesを押した。
すると、錬金炉の中にあった錬成陣が光始め、その後ピカリと閃光を発した後、電子レンジのような『チン!』という音がする。
俺は錬金炉の蓋を開け、中を見ると綺麗な銀色をした、先程入れたフェライトインゴットの3倍以上大きくなったインゴットの形をした金属塊があった。
そしてソレをやっとこで取り出して金床まで運び、インゴットをやっとこで抑えつつ、チュートリアルフィールドでナビさんに言われた通り、均等な速度になるようにハンマーで一気に叩いていった。
カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン!
すると、前回、前々回にも見たように、叩き終わったインゴットが淡く輝きながら、徐々に形を変えていく。
そして、光が消えた頃そこには、アドヴァンスドソードより若干大きくなった、白い金属光沢がある剣身に、綺麗な銀色をした刃を持った1振りの剣があった。
俺はその剣を手に取って見てみると、これまでにあった時のようにウィンドウが現れた。
【製作者:リオン】
武器アイテム:剣 名称:エキスパートソード ランク:3 強化上限回数:20回
ATK60 DEF45 AGI75 M・ATK45 M・DEF45 DEX45 LUK45
要求STR:45 耐久値:∞ バインド属性
与DP倍率:斬1.0 打0.5 突0.3 魔1.0
クリエイトボーナス:AGI+30
能力継承:【HP+5%】【MP+5%】
説明:ウェポンマテリアル・剣を混入したことで潜在能力が発揮されたフェライトソード。
純鉄を用いて作られているため、靭性・耐熱性・耐腐食性を持ち、強くしなやかでありながら、熱や酸で容易に溶けることがない。
武器作成時にクリエイトボーナスと能力継承が発生し、所有者の生命力と魔力と俊敏さを高める働きがある。
おお~! ランク3の未強化状態でなら、今まで見た中で最高のステータスじゃないか?!
チュートリアルでナビさんに、ウェポンマテリアルは、武器に混入し強化していくことで、成長・進化していくって聞いてたけど、こういうことだったんだろうか?
だけど、単一ステータスを強化するタイプ……所謂特化型なら、大体1.5倍以上2倍未満の数値になるはずだから、そう喜んでもいられないかもな。
まぁそれはさて置き、やることもやったことだし、そろそろログアウトすることにしよう。
時計を見てみれば、既に午後7時20分を過ぎている。
待ち合わせの時間が午後9時だから、晩御飯の支度と片付けをやって、風呂まで入ると間に合わない可能性が高いな。
というより、夜になれば社会人等の大人がログインして来る時間帯になる上、今日は獣魔が開店する日だから、間違い無く道が混むことになりそうだ。
…………仕方無い、風呂はキークエストが終わってから入ることにしよう。
そうして、俺は実体化させたアイテムを虚空庫にしまっていき、装備スキルを入れ直していく。
そして、シエルを装飾化、ネロを宿紋化した後、借りた部屋のベッドに座りながらログアウトしていった。
◇◇◇
ログインしました。
現在の時刻は、午後8時30分少し過ぎ。
案の定ログインした瞬間、昼間の時と変わらないか、それよりも多い位の喧騒が部屋の中まで聞こえてくる。
採光用の窓から大通りの方を見てみてれば、大通りに通じる小道の1つの先から、多くのプレイヤーが獣魔と共に練り歩き、その獣魔を見るためか他のプレイヤーも付いて回り、まるで縁日のお祭りの如き様相を呈していた。
むしろ、入り組んだ細い横道の方がスムーズに進める程、大通りは人で溢れ返っている。
うわぁー……すっごい混み様だなぁ。
念のため少し早くにログインしといて、正解だったな。
だけど、やっぱり大通りを通って行くのは難しそうだし、途中で呼び止められる可能性も考えれば、移動ルートは屋根上一択しかなさそうだ。
ある程度予想はしていたとはいえ、こんなことなら、まだ人通りが普通位だった晩御飯時に集合場所まで移動して、ログアウトするんだったな。
後悔先に立たずとは、本当によく言ったもんだよ。
まぁ、過ぎた事を言ってても仕方無いし、とりあえず行動するとしよう。
そう思いつつ、素早くシエルの装飾化とネロの宿紋化を解き、大通りからは行けそうにないから、また屋根上から移動して行くことを伝える。
その後、シエルとネロを連れ立って荒ぶる仔豚亭を出て行き、屋根へ上がり易そうな袋小路から家屋の上へと登り、既におなじみになりつつあるハイディングとハイドストークを使いながら、アリル達との合流場所……街役場の前へと移動して行った。
◇◇◇
街役場は南区のやや中央よりにあるため、元々南区に居たことが幸いし、あまり時間を掛けずに集合場所付近へ来ることができた。
そして、街役場の近くにある人気の無い小道へと屋根から下り、比較的人が少ない所を抜けて、集合場所へと到着する。
時計を確認してみれば、集合時間まで後10分以上もあるのにも関わらず、既に俺以外のメンバーは揃っていた。
「あ、お兄ちゃん。今回は早かったね」
「まぁ、ある程度混みそうだと予想して、早めにログインしたからな。っというか、集合時間って午後9時だったよな? 何でもう全員集まってるんだ?」
「ああ! それはですね。私達も夜は混みそうだと予想して、解散した後予め集合場所に来てから、ログアウトしたんですよ」
「ですので~。再度ログインすれば~、ログインした時点で~、集合場所に居るという寸法なんですよ~」
「あーやっぱり、そういうことか。その方法なら俺も思い付いたんだけど、ログインしてから気付いたから、後の祭り状態だったんだよな」
「それはともかく! もう全員揃ったんだし、ちょっと早いけど、中に入らない? これ以上待つ必要も特に無いんだしさ」
「だね!」
「だな」
「ですね~」
「確かに、そうですね。それでは、アライアンスを組んでから行きましょうか」
「分かった」
そうして、俺はリーゼリアにアライアンス申請を出し、アライアンスを組んだ後、街役場の中へと進んで行き、再度パーティリーダーにさせられ、代表として総合受付窓口に向かって行った。
「こんばんは。すみません、汎用魔法の習得をお願いしたいのですが、こちらで取り扱ってますか?」
「はい、こんばんは。ええ、ございますよ。ただそのことについては、それ専用の係りの者がおりますので、そちらの審査を受けて頂く必要がありますが、よろしいでしょうか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「それでは、係りの者を呼んで来ますので、少々お待ち下さい」
「分かりました」
そう総合受付窓口の人が言うと、窓口の奥に幾つもの机が並んでいる事務スペースへと進み、その内の1つの机に行き、事務作業をしていた人と何やら2~3言話すと、その人を連れて窓口へと戻って来る。
「お待たせしました。こちらがその係りの者になります。以降は彼女の指示に従って下さい」
受付の人が連れて来た人を見ると、ややキツイ印象がある女性だった。
特に掛けている赤いフレームのフォックス型の眼鏡が、その印象に拍車をかけている。
「さっそく審査に移りたいと思いますが……お1人ですか?」
「あ、いえ。連れがいます」
「それでは、お連れ様も呼んで頂けますか? その後、審査をする部屋まで案内しますので、付いて来て下さい」
「分かりました」
その後、アリル達に事の次第を話し、合流してから、汎用魔法についての係員を先頭に、奥にある部屋へと先導されていった。
案内された部屋は、高さ3m弱、幅5m弱、奥行き3m強程の横に長い部屋で、窓は無い。
部屋の中には、部屋を照らす照明の魔道具が天井に1つと、横に長いテーブルが1つ。
そしてそのテーブルを挟むように、ドア側に椅子が1脚とその反対側に10脚前後の椅子があるだけの殺風景な部屋だった。
「そちらの椅子にご着席下さい。ご着席後、幾つか質問をしていきますので、嘘偽り無くお答え下さい」
そう言われ俺達は案内された部屋へと入って行き、進められた椅子へ腰掛ける。
「それでは、質問を始めます。あなた方は何処で或いは誰に、汎用魔法のことを聞きましたか?」
「えっと、私達はそこに居るリオンさんに聞きました」
「確かですか?」
「「「「はい」」」」
「それでは、リオンさん。あなたは、何処で或いは誰に、汎用魔法のことを聞きましたか?」
「えっと、東の森に隠居しているグレイスさんに聞きました」
「ふむ、グレイス様にですか……。グレイス様とあなたとの関係は?」
グレイス様?! なんで様付け! そんなに偉かったのか? あの人?
「関係、ですか。そうですね……魔法の手解きを受けた、教え子と教師? でしょうか」
「なるほど。その魔法というのは?」
「無属性魔法です」
「習得できたのですか?」
「はい、できました」
「それでは、ここで実際に使えるところを見せて頂けますか?」
「え? ここで、ですか?」
「はい。ここで、です。街中で攻性魔法や他者に害をなす魔法を使う事は禁止されていますが、ソレ以外でしたら特に問題はありませんので、心配は要りませんよ」
「そういうことでしたら、分かりました」
そう答えた後、俺はLUKの値を上昇させる、フォーチュンブースター・ノートを使って見せた。
「はい、ありがとうございました。これで質問は終了とさせて頂きます。お疲れ様でした。それでは、街役場で取り扱っている汎用魔法を習得するにあたり、こちらで指定した依頼をこなして頂く必要がありますが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「それと防犯上、横流しや売却、強奪等を防ぐためにも、報酬をお渡ししたこの場で、汎用魔法を習得して頂くことになりますが、大丈夫でしょうか?」
俺はパーティチャットで全員に異論がないか聞き、特に否やはないようなので、そのまま代表して質問に答える。
「はい、問題ありません」
「分かりました。それでは……ここ、街役場の地下にある書庫の整頓をお願いします。休憩は自由にとって頂いて構いませんが、期限は明日いっぱいまででお願いします」
そう審査員の人が言うと、唐突にインフォメーションが流れる。
『クエスト《地下書庫の整頓》を受諾しました』
『これより、クエストを開始します』
「分かりました。それで、その地下書庫というのは、何処にあるんでしょうか?」
「それについては、これから案内させて頂きますので、付いて来て下さい」
そうして俺達は審査員の先導の下、先程見えた街役場の事務スペースを抜け、街役場の職員達が働いて居る場所より更に奥にある、とある扉の前へと案内される。
案内された扉を開くと、地下への階段が顔を見せた。
「この階段を下りた先が地下書庫となっています。地下書庫の内の書架の側面や上等には分類番号が書かれたプレートがあり、資料本の背表紙の下には請求番号……所謂その本の住所が書かれた番号がありますので、それを見て、書庫内の整頓を行って下さい。地下書庫内の入り口付近にあるカウンターには、返却された本が積まれてますので、そちらも請求番号を見て、対応する書架へと戻して置いて下さい。尚、現在は貸し出されている資料本はありませんので、ご安心下さい。また請求番号の見方についてですが、地下書庫内に入ってすぐの所の壁にありますので、そちらを見て参考にして下さい。ここまでで、質問等はありますか?」
そう問われ、俺は振り返りながら皆の顔を見るが、一様に首を横に振り、質問が無いことを示す。
「ありません」
「それでは、書庫内の整理が終わりましたら、先程通って来た総合受付窓口の裏にあるスペースに居ますので、呼びに来て下さい。確認して問題が無ければ、依頼達成とさせて頂きますので、がんばって下さい。それでは、失礼します」
そう言って説明が終わると審査員の人は、元居た事務スペースへと戻って行った。
「う~ん、本の整理かぁ。何か大変そうだね」
「確かに……。でも、シエルちゃんやネロちゃんも含めれば7人? も居るんだし、手分けしてやればすぐに終わるんじゃないかな?」
「ん~……それはどうでしょうか~?」
「ですね。地下書庫の広さや、蔵書数にもよると思いますよ?」
「まぁ、実物を見ないことには、何とも言えないから、実際に下りて見るしかなさそうだな」
「だねぇ」
そう話し合った後、俺達は地下書庫へと続く階段を下りて行った。
しばらく階段を下りていくと階段が終わり、そこには半径7~8m程のドーム状空間があった。
ドーム状の床・壁・天井には、今までも見て来た地下水路や地下墓地と同じように、基盤の回路のような形をした幾つもの溝があり、その溝から白い光を発し、ドーム内を照らし出している。
ドーム内の外周に沿うようにして書架が壁際に置かれ、更にその上に通路が通り、1階部分の外周沿いの書架同様に壁際に埋まるようにして並んでいる。
2階部分に行くための階段は、地下書庫の入り口から見て、両手側にドーム状の空間に沿うようにして設置されている。
ドーム内には扇状の書架が縦横の通路に分断されるように並び、その中心には一際大きい黒い書架が立っていた。
地下書庫の入り口付近には、審査員の人が言っていたように、白っぽい色をした木製のカウンターがあり、その上に返却されたと思しき本が山と積まれている。
カウンターのある方とは逆の壁には、請求番号の見方や、この地下書庫内の見取り図、そしてどの書架にどの分類番号が割り振られているかの案内があった。
「うわぁ……思ってたよりも広いね」
「ですが、請求番号の見方や書庫内の見取り図、分類番号の案内もちゃんとありますし、この人数ならやってやれないことはないでしょう」
「それとこの地下書庫の床や壁、天井なんかにある溝って、地下水路や地下墓地にあったものと同じみたいだから、もう遺跡か、特殊施設のような場所の中に入って居るんじゃないか?」
「確かに~、今まで見て来たものと同じに見えますね~」
「それじゃ、キークエストの詳細を見てみようよ。もう地下水路や地下墓地と同じ施設に居るなら、詳細が開示されてるはずだしね!」
その後、クエスト詳細を見てみると、案の定最後のキークエストの第1条件が開示されていた。
『キークエスト【復活! 古の遺構】 2/3
・第1クエストクリア! ●●●
・第2クエストクリア! ●●●
・背に火傷を負いし、灰色の賢者の遺言を見ろ 0/1 ○○○○
』
因みに、地下墓地脱出競争の順位は以下の通り。
1位:シエル
2位:ネロ
3位:ナギ
4位:リーゼリア
5位:アリル
6位:ユンファ
7位:リオン




