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Struggle Locus On-line  作者: 武陵桃源
第4章  夢現フィールドと再起の遺構
106/123

Locus 95

 体調不良で寝込んでいたため、遅れました。

 すみません。 (((´・ω・`)))ガクブル

 では、どうぞ。

 階段をしばらく下りていくと小さな踊り場があり、そこから折り返すように更に下りの階段があった。

 小さな踊り場まで来ると、階下から(かす)かに金属を引きずるような音がし、すぐに手を軽く上げ、パーティチャットで注意を(うなが)す。

 

『ストップ! 何かがこの下から聞こえる』


『え?! ……あ、ほんとうだ』


 そう注意喚起をした後、ボソリと(つぶや)くようにしてアーツを使い、念のため階下から聞こえる音を拾い上げる。


「(サウンドアセンブル)」


 すると、不要な音は排除され、今知りたい音のみが俺の耳に入ってくるようになる。


ガリガリガリガリッ!

ズズズ……カンッ! ズズズ……カンッ!

カラカラカラカラカラカラ……!


 これは……ガルシアさんが聞いたっていう音に近いな。

 恐らくは、手に持っている武器か道具でも引きずっているのだろう。


 その音の方に意識を向けつつ気配感知を使ってみれば、ある程度まばらではあるが、階下の通路口周辺に複数の気配があることが分かった。

 ほとんどの気配は平均的な人より少し小さい程度で、残りはボーリング球位の大きさのものが、他の気配に比べ比較的早く動いているようだった。

 更に階下の通路口に目をやれば、時折通路口の上部や端等に、骸骨の足のようなものや、細長い影のようなものが見える。


『…………確かに。何かを引きずるような音がしますね』


『この音って~、ガルシアさんが聞いたっていう音に~、似てませんか~?』


『そう言われれば、そうかも?』


『たぶん、その認識で合ってると思うぞ』


『ですね。ただ、さっきスキルを使って調べてみたんだけど、通路口付近に複数の気配があるみたいなんだよね。事実この下にある通路口からちらほらと、骸骨の足みたいなものや細長い影のようなものが見えてるから、今までみたいに、通路口付近で範囲魔法を使っての奇襲や先制攻撃はできなさそうだね』


『う~んそれだと、最悪通路口から出た瞬間に(はち)合わせることになるってことにならない?』


『なるでしょうね』


『タイミングが悪ければ、なりそうだね』


『そうすると~、最初に入る人は~、リオンさんかナギちゃんがいいですかね~?』


『まぁ、そうなる……かな。気配が分かれば、鉢合わせになることもないだろうし…………いやでも、シエルなら露払い位はできるか?』


『シエルちゃん、ですか?』


『ああ、シエルなら空中を音も無く飛べて浮かぶこともできるから、通路口の天井付近から視界を確保しながら、範囲魔法で通路口付近のモンスターを一掃(いっそう)()しくは牽制(けんせい)位はできそうかなって思ってさ』


『なるほど~! それで通路口付近にいるモンスター達を消し飛ばすか~、(ひる)んでる内に~、私達は通路口から進入するんですね~』


『それなら確かに、比較(ひかく)的安全に進入できますね』


『問題はシエルちゃんが(さか)さまのまま浮けるかってっことだね』


『まぁ、その辺りはたぶん大丈夫だと思うけど……一応聞いてみるか』


 そうパーティチャットで答えつつ、俺達の頭上で浮遊しているシエルに、念話で聞いてみる。


『シエル、逆さまのまま浮いたりってできるか?』


『さかさま~? んと……こう?』


 すると、シエルは俺の言葉に答えるように、その場でクルンっと縦転(じゅうてん)し、逆さまの状態になる。

 逆さまになっても重力の影響は受けないようで、黄金色に輝く長髪も白いワンピースも1mmも(ひるがえ)ることは無く、中身が見えることも無かった。

 

 よかった。もしもワンピースが()くれたりなんかしたら、アリル達から白い目で見られてたところだったな。

 特に何も考えずにできるか聞いたけど、結構危うかったんじゃないだろうか。

 まぁ結果的に、捲くれなかったんだし、今回は良しとしよう。

 次があれば、気を付ければいいことだしな。


『うん、大丈夫みたいだな』


『ですね。それでは、シエルちゃんには通路口突入前の露払いをお願いして、シエルちゃんの範囲魔法が消え次第、各自で突入しましょう。階下がどのような構造になっているか分かりませんので、リオンさんやナギは、突入してもすぐに奥に行くようなことは(ひか)えて下さいね。最悪の場合、取り囲まれて、孤立(こりつ)する可能性がありますので』


『ういうい、了解だよ!』


『分かった』


『それじゃ、お兄ちゃん。シエルちゃんに作戦の通達をお願いね。それとここから下りるとなると、少し時間が掛かるから、この階段の中腹より少し下で待機して置こうよ』


『ですね~』


 そうして俺はシエルに先程話し合ったことを伝える。

 シエルが移動し始めたの同時に、俺達はなるべく音を立て無いようにして、階段の中腹より若干下まで下りて行き、シエルからの合図を待つ。


『じゅんびできたよー!』


『分かった。……それじゃ、始めてくれ』


 そう念話で答えつつ、俺はアリル達の方を向きながら、人指し指と親指の先を合わせ、残った3本の指をピンと伸ばしたハンドサインを出し、準備ができたことを告げる。

 そして、皆が(うなず)いたのを確認後、シエルに開戦の合図を出す。


『いっくよー? ―――リリース! ライトバースト!』


 シエルから魔法を発動する詠唱が聞こえてくると、次の瞬間通路口の先で連続した強い閃光と爆音が鳴り響く。

 俺達はシエルの魔法による光に目をやられないようにしつつ、階段を下りていき、通路口の先から光が収まってからその先へと進入して行った。


 通路口の先に入ると、そこには長大な通路……むしろ回廊(かいろう)と言っても差し支えの無い程のものが広がっていた。

 回廊の幅はおよそ5~6mで、壁の高さは3m程だが、天井はアーチ状になっており、一番高いところでは5m程はありそうだ。

 

 回廊の両壁には、上の階層で見たような縦に長い五角形の(くぼ)みが幾つもあり、その中に石棺が1つずつ収められている。

 窪みの両側には、窪みを区切るように最初の部屋でも見た、赤・橙・黄・白で彩られたステンドグラスのようなものが巻き付いている柱が、壁から1/3迫り出すような形で並んでいる。

 回廊の先を見てみれば、回廊自体が(ゆる)やかなカーブを描いており、回廊の先がどうなっているかは分からない。


 しかし、距離にして20m前後間隔の両壁の辺りには、曲がり角のような場所があり、その曲がり角の両壁は棚のようになっている。

 その棚を注視してみると、梟の目によってズームアップされ、無数の髑髏(どくろ)が積み重なり、収められているのが分かる。

 

 そして、シエルのライトバーストから(なん)(のが)れ、またその爆音に引かれこちらに向かって回廊を移動してくるモンスター達に視線を走らせる。

 彼我の距離は、最短で7~8mだろうか?

 どうやら今の所、ここに居るモンスターはアンデッドだけのようだ。


 向かって来るのは、持っている武器は違えど、そのほとんどがスケルトンで間違いはない。

 だが、上の階層で見たような人族(ヒューマン)の骸骨だけではなく、尻尾の骨や、翼の骨、それに頭蓋骨から生える角等があることから、様々な種族のアンデッドが居るみたいだ。


 それとそれらのスケルトンの他、各所の曲がり角付近から、青白い炎……一般的に鬼火と呼ばれるようなものを(まと)った髑髏(どくろ)が、空中を飛んで来る。


 気配感知を使うと、先程の爆音に引かれてか、曲がり角の先や、回廊の先から続々と多数の気配がこちらに移動して来ているのが分かった。

 救いと言えば、俺達が居る場所に集まってくる気配の進行速度が遅いことか?

 それでも、ここでの戦闘が長引けば、数の暴力に押される可能性は否めない。


 まずいな……。

 突入時の安全を確保するための案だったけど、もしかして裏目にでたか?

 このままだと階段を背に防衛戦、最悪の場合には撤退(てったい)戦になるかもしれないけど、まぁ相手のレベルと数次第では、どうなるかはまだ分からないかな。

 

 俺はそう考えつつ、とりあえず今、視界に入るだけのアンデッド達に素早く識別を使っていく。


スケルトンソードマンA・G:Lv20・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スケルトンソードマンB・F:Lv21・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スケルトンランサーA:Lv20・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スケルトンウォーリアーC:Lv21・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スケルトンクラッシャーD:Lv20・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スケルトンフェンサーA:Lv20・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スケルトンフェンサーD・H:Lv21・属性:影・耐性:影・斬・弱点:火・光・打


スカルゴーストB・F:Lv20・属性:影・耐性:影・物理・弱点:火・光


スカルゴーストH・J・L:Lv21・属性:影・耐性:影・物理・弱点:火・光



 なるほど、スケルトン系の識別結果は今まで見たものと変わらないみたいだな。

 もっとも、絶対に変わらないという保障は何処にも無いので、見たことの無いやつが出てきたら、その都度識別を掛ける必要はありそうではあるけどな。


 それとスカルゴーストは、シエルと同じで実体が無いタイプのモンスターなのかもな。

 ゴースト……つまりは幽霊(ゆうれい)ってことだろうから、可能性としては在り得そうだ。

 それと弱点の場所だが……かなり見難いけど、鬼火を纏っている骸骨の鼻の穴の少し上の奥にある一点が光ってるみたいだ。

 止まっているならまだしも、空中を縦横無尽に飛んでいては、狙って攻撃を加えるのは難しいだろうな。

 

 そうやって近付いて来ているアンデッドを見据(みす)えながら考えていると、音の反響を嫌ってか、パーティチャットで声が掛かる。


『よし! 識別完了! 今のところレベルは20~21だね。スケルトン系の属性・耐性・弱点は上と一緒で、空中を飛んでる骸骨みたいなのが、影属性で耐性が影属性と物理全般、弱点は光と火属性みたいだよ。因みに名前はスカルゴースト……見たまんまだね。それと皆、気を付けて! さっきの爆音に引き付けられたのか、この奥から続々と気配が近付いてきてるよ!』


『おぉっ! それは、好都合だね! 散策しながらモンスターを探す手間が(はぶ)けるし、なにより移動中に取り囲まれる心配をしなくて済むのが良いね!』


『それに~、さっきの爆音で気付かれたのなら~、遅かれ早かれ戦闘音で気付かれた可能性もありますし~、今回は背後にあまり気を払う必要も無いというのも良いですよね~』


『まぁ、確かに。普通ならゴースト系のアンデッドからの壁抜け奇襲を警戒するところですけど、地上まで出て来ていなかったことを考えると、この施設(しせつ)から出られないようですし、頭上を通り抜けられなければ恐らく大丈夫でしょう。それとリオンさん、シエルちゃんに空中に居るアンデッドから優先するように指示をお願いします』


『分かった』


 俺はそうパーティチャットで言われ、念話でシエルに指示を出す。


『シエル。シエルは、空中を飛んでるスカルゴーストを優先して攻撃を頼む。ライトバーストだと衝撃が味方にも影響を与える可能性が高いから、それ以外で攻撃してくれ』


『はーい!』


『ネロは、スケルトン達の方を頼む。弱点に打属性があるから、魔法ならシャドウブロウで攻撃すると良いと思うぞ。それと、天井が場所によって低かったり高かったりするし、飛べる空間も限られてくるから、今回は影の中から攻撃する方がいいかもしれないな。耐性に影属性があるし、潜伏状態になればダメージも上がるしな。それと、リーゼリアとナギ以外に、メンタルブースター・シャドウも頼む』


『わかったー!』


 そうやって指示を出していると、スケルトン達を置き去りにして先行して来た、スカルゴーストに向け、魔法が放たれる。


『いっくよー! ―――リリース! ライトアロー!』


「「オオォォォ!」」

「「アアァァァー!」」


 シエルの周囲から数十もの光の矢が発射され、俺達の方へ飛んで先行していた4体のスカルゴーストに殺到していく。

 回避しようと動くとその動きに合わせ、ライトアローも追尾性を発揮したり、いく手を阻むようにして発射された光の矢に次々を貫かれ、悲痛な断末魔を上げて、光の粒子へと変わっていく。

 

「ナイス! シエルちゃん! 追撃するよ! ―――リリース! エアカッター!」


「オオォォォ!」

「アアァァァー!」


 アリルが突き出した杖の先から、数十の風の刃が発射される。

 発射された風の刃は、まるで空中で網をつくるかの(ごと)く飛び交い、シエルの魔法の難を逃れたスカルゴースト等を切り裂く。

 

 2体のスカルゴーストは、ダメージを負うことで若干失速し、動きそのものにも精細を欠いているように見えた。

 しかし、逃さないよう広範囲をカバーするように発射されたせいか、1発のダメージ量が減り、まだHPバーは半分近くも残っていた。


「くぅ! 倒しきれなかった!」


「牽制する! シエル下がれ! ―――ショットガンボルト!」


 俺がそう言って、シエルが俺より後ろに下がったのを見た後、3~4m前方の上空に向け、魔法を発射する。

 放たれた青白い雷散弾は、偶然片方のスカルゴーストに当たりそのHPを大きく削り、その動きを止まらせ、もう片方のスカルゴーストは回避するため、空中をくねくねと蛇行し、その場に強制的に留まらされる。


「ここです~! ―――フラッドウォータ~!」


「アアァァァー!」


 その隙を突くように、ユンファが持つパルチザンの穂先から人の頭程の水球が発生し、その水球から激しい水の流れが放出される。

 放出された水の奔流は、空中で蛇行していたスカルゴーストを飲み込み、光の粒子へと変える。


『いっけー! ―――レイビーム!』

 

「オオォォォ!」


 シエルが突き出した両手の平に1つの光球が現れると、その光球から1条の光線が空中で動きが止まったスカルゴーストに向けて照射され、狙い違わずその身?を撃ち抜き、光の粒子へと変えていった。


「ギリギリセーフ!」


「ですね~」


『ふぅ~、あぶないあぶない』

 

 そうシエルは言いつつ、額の汗を腕で(ぬぐ)う仕草をする。

 いつも思うが、こういう仕草やセリフって何処で覚えてくるんだろうか?


 そう思っていると、ふいにリーゼリアから声が発せられる。


「油断しないで下さい! スケルトン達が来ます! それと、この数を私とリオンさんだけでは抑えられないので、ナギも前衛をお願いします」


「ほいほーい、了解だよ」


 そうして、迫り来るスケルトン達を前に、リーゼリア、ナギ、俺が同一線上に並ぶように陣取り、スケルトン達を迎撃する準備をする。

 するとスケルトン達は誰か一人に殺到するのではなく、3方向にバラけ、俺には、スケルトンランサーA、スケルトンウォーリアーC、スケルトンソードマンB・Gが襲い掛かって来る。

 

 迫り来るスケルトン達の振りかぶる武器が視界に入ると、見切りのスキルによってスケルトン達の攻撃到達予測線が、赤いラインとして視覚化される。

 俺はそのラインから少しズレるようにして(かわ)し、順次迎撃していく。


 スケルトンランサーAが突き入れて来た槍を避けた瞬間、炎撃武攻を使い、突き入れて来た槍の()を握り、そのまま引き寄せる。

 急に引き寄せられたせいか、スケルトンランサーAはバランスを崩し、ツンのめるかのように前傾姿勢になり、頭が程良い高さに来る。

 その頭目掛け、(こぶし)を小指から落とす。


 瞬間、爆砕。


 『ボゴンッ!』という音を立てながら爆炎を上げ、スケルトンランサーAの頭蓋骨が砕け散り、瞬時にHPバーが消し飛び、光の粒子へと変わる。

 

 その隙を突くように、スケルトンソードマンBが斬り付けて来たところを半身で回避し、足を引っ掛けて転ばし、時間差で横薙ぎに斬り付けて来たスケルトンソードマンGの攻撃をバックジャンプで躱し、着地点を先程転ばせたスケルトンソードマンBの頭蓋の上に調整し、そのまま自重を掛けるようにして、踏み砕く。


 スケルトンソードマンBが足元で光の粒子になるのを横目に、見切りのスキルにより視覚化されている赤いラインを(くぐ)るようにして近付き、剣を振り切ったところでスケルトンソードマンGの(あご)を左拳で()ち上げ、爆砕する。


 スケルトンソードマンGが光の粒子に変わり、一時的な目暗ましとなる。

 すると、それを見計らうようにその光の粒子に赤いラインが縦に入るのが見えた。

 俺は即座にそのラインに当たらないように再び半身になり、次に来るであろう攻撃に備える。

 

 半身になり構えた次の瞬間、赤いラインをなぞるように斧が振られ、『ガキンッ!』という音と共に、回廊の床に打ち付けられ、小さな火花が飛び散る。

 俺は打ち付けられた斧の反対側を踏みつけ、動けなくし、丁度良く低い位置になったスケルトンウォーリアーCの頭蓋骨を蹴り飛ばし粉砕する。


 スケルトンウォーリアーCのHPバーが急速に減っていき、0になって光の粒子に変わっていくのを確認してから、周囲を見渡すと未だリーゼリアとナギが戦っているのが見えた。


 リーゼリアやナギの方を見てみれば、リーゼリアやナギが範囲攻撃でダメージを与えつつ足止めを行い、その間にアリルとユンファからの援護で1体ずつ確実にし止めていっているようだった。

 やはり斬属性が耐性としてある分、ダメージ量が少ないみたいだな。


 そういえば、ゼラチナス・ダーティウィッパーを倒した後、武器による物理ダメージを魔法ダメージに変える魔法を習得したっけ。

 2人の動きを見ると、武器の構造上、あまりうまくダメージを与えられていないのはリーゼリアの方みたいだから、実験も兼ねての支援をしてみようかな?

 威力は俺の能力値依存だから少し不安だが、耐性属性の攻撃に比べれば多少マシなはずだ。

 だけど、一応使うかどうかを断ってから、使うことにしよう。


『リーゼリア、苦戦してるみたいだな。俺の魔法で、武器による物理ダメージを魔法ダメージに変える魔法があるんだけど……要るか?』


『え、そんなのがあるんですか? 掛けてもらえるなら欲しいですけど……こうやって断りを入れるってことは何かあるんですか?』


『ああ、察しが良いな。魔法の威力が俺のステータス値依存だから、最悪今のダメージ量より下がる可能性がある』


『……なるほど。それでも、何かしら手があるなら試して置くべきです。まだそんなに、危機的状況にある訳でもありませんし、お願いします』


『分かった』


 俺はパーティチャットでそう返事をしつつ、魔法を使う意志を込めてリーゼリアを視線選択し、魔法を放つ。

 

「いくぞ! ―――マジックウェポン!」


 すると、リーゼリアの持つ武器……2本のカットラスが青白い光を発する。

 (さなが)ら、武器自体から青白いオーラが出ているように見える。

 どうやら、この魔法は対象者を選択すると、対象者が手に持つ武器全てに効果を発揮するもののようだ。


「っ?! ありがとうございます! はぁっ! せいっ! ……これならっ!」


 リーゼリアは俺にお礼を言うと、すぐに試すようにスケルトン達を切り裂く。

 2本のカットラスは青白い軌跡を残しながら振るわれ、魔法を掛ける前に比べ、確実にダメージ量が増えていた。

 リーゼリアはそのことを確認すると、嬉々として攻撃を重ね、順調にスケルトン達のHPを削っていく。


「あーっ! リアちゃんばっかりいいなー! リオンさーん、ボクにも下さーい!」


 リーゼリアに比べ、魔法無しではリーゼリアより与えるダメージは多かったものの、苦戦していることに変わりはないナギが、不満の声を上げる。


「そうしてやりたいが、まだリキャストタイムが終わってないから、すぐには支援できないぞ」


「えー、そんなー……」


「でしたら~、私の方で掛けますよ~? リオンさんが使ったのって~、武器による物理ダメージを魔法ダメージにする~、変換魔法ですよね~?」


「ああ、そうだ」


「ホント?! ユンファちゃん、やってやってー!」


「分かりました~、少々お待ちを~。…………いきますよ~? ―――ウォーターウェポン~!」


 すると、先程見たように、今度はナギの持つジャマダハル全体を覆うように、澄んだ青色のオーラが発せられる。

 魔法の名称からして恐らく、武器による物理ダメージを水属性の魔法ダメージに変換する魔法なのだろう。


「おお~! ユンファちゃん、ありがとう! いっくぞー! とりゃー!」


 ナギはユンファにお礼を言い、すぐ様スケルトン達に斬り掛かる。

 こちらも、魔法を掛ける前に比べると、目に見えてダメージ量が増え、着実にスケルトン達を追い詰めていっている。

 これなら、そう遠からずスケルトン達を倒し切ることもできそうだ。

 リキャストタイムのことがあるので、断続的になっているけど、ネロのシャドウブロウによる援護もあるしな。


 上空を見れば、スカルゴースト達をシエルが魔法で牽制兼、迎撃をしており、動きが鈍ったところをユンファとアリルが魔法で止めを刺すということしており、今はまだある程度問題という問題は起きていない。


 そう、今はまだ……。


 そう思いながら、回廊の奥から来る後続のアンデッド達の方を見てみると、まだ少し距離はあるものの、少なくとも50体は下らない程のスケルトンの団体が、やって来ているのが見えた。

 魔法による支援で前衛リーゼリアとナギの与ダメージ量は増えはしたが、後続のこの団体が追い着けば処理仕切れなくなり、前衛が瓦解(がかい)するのは目に見えている。


 ならば、どうするべきか?

 

 最良の手は、まだ接敵していなく、固まって移動している今に、ユニゾンマジックを団体の中央に()ち込み、一網打尽にすること。

 しかし、ソレをするには少なくとも今、後衛(シエル・アリル・ユンファ)が迎撃しているスカルゴーストをどうにかする必要があり、またこんな(せま)い空間で使うと、衝撃波や爆風の逃げ道も必然的に塞がれ、上の階層で放ったものより強いものになり、最悪死に戻る可能性も無くはない。


 普通ならフレンドリィファイアなんて有り得ないと思えるが、ネロに殴られた時は衝撃だけでなくHPも減っていたし、上の階層で発生した【ユニゾンマジック】:ブラスティックコロナの範囲内に居た時は、見切りのスキルも発動していたから、巻き込まれてHPが削られる可能性は大いに有り得る。


 なら次善の手は、何だろうか?

 前提条件としては、①スカルゴーストが居らず後衛勢がフリーであること、②アンデッドの団体をそのまま近付けさせないこと、③ユニゾンマジックや範囲魔法の影響や余波に(さら)されないこと、の3つかな?


 ①は、スカルゴーストの方は後衛勢が全て倒すまで待てば良いから、それ程難しくはない。

 ②は、アンデッドの団体をそのまま近付けさせないようにするには、妨害系か拘束系の魔法か、誰かが(おとり)兼、間引き役をこなせば良い。

 だが③は、難しい。


 ③を実行するには、後衛勢がスカルゴーストを倒し切るまで、アンデッドの団体を長時間足止めしなければならないからだ。

 長時間足止めをするなら、妨害系・拘束系魔法だけでは足りないだろうから、誰かが囮と間引きをしなければアンデッドの団体を押し止めることはできそうにない。

 そうすると囮と間引きをしている誰かが、ユニゾンマジックや範囲魔法が来た時に、その影響範囲から無事退避できる可能性は低い。


 だからできれば、ユニゾンマジックや範囲魔法で味方に撃っても問題無く、アンデッド等だけに効果を及ぼすものがあれば最高なんだけど…………ん? 味方に撃っても問題無い魔法?


 ゲームによっては有ったり無かったりする無属性魔法が有ったんだ。

 だったらこれも試すべきじゃないか?

 幸い、まだアンデッドの団体は近くに来ていないし、ここで試したところで無くすものは俺のMPだけで、リスクも少ない。

 それに、賦活のスキルもあるから時間経過で回復することを考えれば、むしろリターンしかないような気がする。

 よし! それじゃ早速やってみることにしよう。


 そう思い、俺は回廊の奥から続々と近付いてくる団体の先頭付近にいるアンデッドの1体を狙い、魔法を放つ。


「ヒーリングボルト!」

 

 すると、狙ったアンデッドの頭上から青白い雷が落ち、その体全体を瞬時に青白い雷が縦横無尽に駆け巡り、そして消え去る。

 HPバーを確認してみると、思った通りHPが減少しており、俺の比較的低いMIDでも4割近いダメージを与えることができていた。


 やった! これならいける!

 なら後は、このことを皆に伝えて行動するのみだな。


 そうして、俺は念話を使い、これからのことを話していく。


『皆! 後続からのアンデッド達が追い着いて来たみたいだから、俺が囮兼、間引きをしてくるよ』


『え?! もう追い着いたんですか?! 早過ぎでしょう!』


『ですが、それだとリオンさんが、孤立する可能性が……』


『確かにその可能性はあるけど、このままここでぶつかると、前衛で抑え切れないだろ? そうすると、全滅することだって有り得るかもしれないんだから、できることはやって置いた方が良いと思うんだ。俺が抜けた穴は、ネロに任せれば大丈夫だし、それに何も勝算無しに言っている訳じゃない』


『勝算~、ですか~?』


『そういえばさっき、何か奥にいるアンデッドに魔法を撃ってたね。もしかして、アレが関係してるの?』


『ああ。簡単に言うと、あいつらアンデッドには、回復魔法でダメージが入るんだ』


『ええっ?! そうなんですか?!』


『これは盲点でしたね。回復薬ではアンデッド系にダメージを与えられなかったという情報はありましたが、魔法の方はダメージが入るとは……』


『と言いますか~、敵モンスターに回復魔法って掛けられたんですね~。知りませんでしたよ~』


『ん? そういえば、火と影以外の各属性の回復魔法って、対象を選択して発動するんだよね。ってことは、回復魔法なら必中ってことになるの?!』


『まぁそれも、アンデッド限定ではあるけどな。それで作戦というか、提案なんだけど、俺がアンデッドの団体の足止めと間引きしてる間に、アリル達後衛組みは、スカルゴーストを全滅させて欲しいんだ。スカルゴーストが居なくなれば、後衛組みの援護も受けられるようになるし、前だけ見て戦闘に集中できるからな。スカルゴーストを全滅させた後は、アリルはリーゼリア達の援護を、シエルとユンファには回復魔法を使って俺ごと周辺にいるアンデッド達を巻き込むようにして回復してくれ。そうすれば俺は回復して、アンデッド達にはダメージがいくからな』


『うん、わかったー!』


『なるほど~、それなら安心して撃てますね~。分かりました~』


『だね! その案採用!』


『それと流石にあの数を1人で足止めするのは無理だろうから、幾らかは取りこぼすはずだ。だからリーゼリアとナギ、それとネロにその迎撃を頼みたい。後衛組の手が空けば、戦況は好転するはずだしな』


『うん! まかせてー!』


『……確かに、それなら勝算は十分に有りそうですね。分かりました、私もその案に乗ります』


『ボクもさんせーい!』


『満場一致だな。それじゃ、足止めして来るから、後のことは頼むな』


 そうして、俺はその場から駆け出し、未だゆっくりと進んでいるアンデッドの団体の方へと突っ込んで行き、その道中、何時の間にか切れていた炎撃武攻を掛け直し、気休めのミラージュボディを掛け、自身を強化していく。

 そして、アンデッドの団体と接敵する寸前、左手を前方に掲げ、アンデッド達の気を引くように、範囲魔法を使い、強襲を掛ける。


「ダブルマジック」

「ショットガンボルト!」


「「「「「カカカカッ?!」」」」」


 左掌から発射された50前後の青白い雷散弾は、密集して行動していたスケルトン達にそのほとんどが当たり、狙い通りHPを2~4割り程減らしつつも、こちらに気を引くことに成功する。

 ダメージにより、一時的に動きが停止したスケルトン達に俺は素早く接敵し、一番近くに居たスケルトンの頤に拳を突き上げ、爆砕させる。


 頭蓋骨が爆発で砕け散り、次いで光の粒子へと変わっていったのを合図に、周囲にいた剣・槍・短剣・斧・槌等の武器を持つスケルトン達が一斉に襲い掛かって来る。

 襲い掛かって来るスケルトンの戦士達が視界に入ると、見切りのスキルによってスケルトン達による攻撃到達予測線が、赤いラインとして視覚化される。


 俺は視覚化はされても順番までは分からない攻撃を自己判断で取捨選択し、予測線から少しずれるよう最小の動きで避け、避け切れない場合は、スケルトン達の持つ武器に打撃を加え、爆発による反動で無理やり武器の軌道を変え、隙を見ては、頭蓋骨を殴り、蹴り、踏み潰し、爆砕させていく。


 光の粒子と爆炎により視界がやや不明瞭(ふめいりょう)だが、気配感知のおかげで、何とか不意打ちをうけること無く迎撃することができている。

 

 俺は初日にあった極限状態での戦闘を思い出しつつ、思考が徐々に加速すること実感する。

 加速する思考の中、あの時のように、最小の動きで、敵の弱点部位に攻撃を仕掛け、討滅速度を上げていく。


 迫り来る斧の腹に打撃を入れ、軌道変化。

 がら空きになった懐に入り、横面を殴り、爆砕。


 突き入れられる武器を最小の動きで回避。

 避けながら、柄やその延長にある腕を強引に引き、引き倒す。


 横薙ぎに振られる武器を(かが)みながら躱しつつ、引き倒して転がっている頭蓋に、両拳を小指から落とし、爆砕。

 武器が振り切られたところで、両足のバネを解放するように前方へ跳躍。

 正面にある頭蓋骨に膝蹴りを入れ、爆砕。


 そのまま腰を(ひね)り、両手を広げるようにしながら、拳を握り、そのまま回転。

 頭蓋骨の側頭部に裏拳を入れ、爆砕。


 常に移動しながら攻撃し、周囲に居るスケルトン達を撹乱(かくらん)するように、避け、殴り、逸らし、蹴り、踏み潰しては、爆砕していく。

 

 そうやって、より多くのスケルトン達を巻き込むように攻撃しつつ、移動して行くと、何やら次第に統制のとれた動きをするスケルトンが多くなり、じわじわと攻撃が当たるようになってきた。


 おかしい……。

 確か普通は、下級の亡者に知能と呼べるものは存在せず、学習することもないはず。

 なのに、段々と俺の動きに合わせ、武器を振るうタイミングが良くなっている。

 となれば、考えられるのは、何かしら特殊な能力を持った個体でもいる可能性位か。

 

 俺はそう考えながら、そのままスケルトン達の猛攻から避けに(てっ)し、周囲に視線を走らせる。

 すると、回廊の一番奥側に位置する弓を持ったスケルトン達に守られるように立っている、今まで見てきたスケルトンとは少し違い、ボロボロではあるものの、元は良かった面影(おもかげ)が残る鎧を着たスケルトンが居ることに気が付く。


 俺はそのスケルトン等を視界に入れつつ、即座に識別を使って見てみる。


スケルトンアーチャーA・B・C・D:Lv20・属性:影・耐性:影・斬・突・弱点:火・光・打


スケルトンリーダー:Lv22・属性:影・耐性:影・斬・突・弱点:火・光・打


 ふむ、名前とレベルから察するに、弓を使うアンデッドとアンデッド達のリーダー格兼、統率者といったところかな。

 このスケルトンリーダーに近付く程、周囲のスケルトン達の動きが良くなっているように感じられるから、たぶんこのスケルトンリーダーが原因で間違い無いだろうな。


 ただ引き付けて間引くだけなら、こいつを狙う必要は無いが、後の脅威(きょうい)にならないとも限らない。

 さて、どうしたものか……。


 そう考えながらスケルトンリーダーの動向を(うかが)いつつ、回避に徹していると、攻勢に出られない付け入る隙と判断されたのか、スケルトンアーチャーから、矢が放たれるようになる。

 

 まずいな……。

 見切りのスキルが発動していれば、比較的避けるのは難しく無いが、常に矢の方を向いていられない上、気配を読もうにも他の攻撃に比べ気配の大きさが小さく、動く速さが速いため、対応仕切れない。

 仕方無い、迂闊(うかつ)にはリーダー格に近付きたくはなかったが、まずはスケルトンアーチャーを倒すことにしよう。


 そうして、俺はスケルトンリーダーを守るように、周囲を固めているスケルトンアーチャーの方へ移動していき、この排除(はいじょ)に取り掛かる。

 スケルトンアーチャーに近付く程、周囲からの攻撃精度は増し、より多くのダメージを受けるようになったが、牽制のための範囲魔法を撃つ等をして、更に距離を縮める。

 

 そしてスケルトンアーチャーに接敵した瞬間、拳や蹴り等の打撃をスケルトン系の弱点の頭部に入れ、素早くスケルトンアーチャーを爆砕し、光の粒子へと変えていく。

 HPを確認してみると、無理な移動の代償(だいしょう)なのか、既に残りHPが6割に差掛かろうとしていた。


 すると、俺がスケルトンアーチャー全てを倒し切るのと同時に、ソレは起こった。

 スケルトンリーダーが手に持っていた武器を上に掲げると、つい今し方まで攻撃を加えていたスケルトン達が攻撃を止め、手に持っていた武器をその場に落としたのだ。

 

 なんだ?


 俺はスケルトン達が起こした突然の行動を(いぶか)しみつつ、次の行動に備え、足を止め迎撃の態勢を取る。

 しかし、結論から言えば、それが間違いだった。


 スケルトンリーダーが上に掲げていた武器を振り下ろすと、それを合図に武器をその場に落としたスケルトン達が一斉に、俺に纏わり付き、俺の動きを封じに掛かって来た。

 最初の4~5体は、弱点部位である頭蓋骨を爆砕させることができたが、幾つもの手で俺の手足を掴んで動きを妨害し、更に何体ものスケルトンが()し掛かり、俺を押し潰そうとしてくる。


「っく! この、離せ! ―――ショックボルト!」


「「「「「カカカカッ?!」」」」」

 

 俺は咄嗟(とっさ)に押し潰されまいと踏ん張りつつ、ゼロ距離攻性魔法で迎撃するが、今までのようにひるむことはなく、ただひたすらに淡々と掴み掛かってくる。

 リキャストタイムが終わり次第、再度ゼロ距離攻性魔法を使いダメージを与えていくが、段々とスケルトン達の重みに耐え切れず、膝を突き、手を突き、最終的には床に押し倒されるまでになってしまった。

 

 幸い……と言っていいか分からないが、スケルトン達に長時間触れても状態異常を受けたり、HPやMPが減っていくということはないようだった。

 しかし、現実とはかけ離れた異常な筋力を持っていようと、限界は確かにある訳で。

 その限界に挑戦するかのように、次々とスケルトン達が俺の上に飛び乗って行き、どんどんと加重していく。

 

 スケルトンが1体飛び乗り加重されていくたびに、小さな振動が纏わり付いているスケルトンを伝わってくる。

 小さな振動を数えて30を過ぎたあたりで、HPが極僅(ごくわず)かずつ減少し始めるが、賦活の効果でそれもすぐに回復する。

 ざっと見た感じ、既に50体以上は俺の拘束のために纏わり付いているようで、(はた)から見れば、恐らく様々な種族で出来た骨の山のようになっていることだろう。


 成人した人間の骨の重さの総量の平均は、およそ7kgと言われているから、少なくとも現在俺の体に350kg以上の重さが圧し掛かっている計算になる。

 現実だったら既に潰れていてもおかしくはないが、このゲームでは、筋力値……つまりSTRの値によって載積(さいせき)限界量が決まるので、現在の筋力値が初期値の20倍以上のおかげで、まだ潰れないでいられるのだと思われる。


 さて、これ程の数のスケルトンに乗られると、流石に身動きはほとんどできないが、反撃が出来ない訳じゃない。

 だけど未だスケルトンが俺の上に飛び乗る振動が伝わってくるから、何時賦活の回復効果を超過する加重ダメージを受けるか分からない。

 だから、反撃して少しでもスケルトンによる載積量が減れば、結果的により長く俺に注意を向け、拘束するための戦力(スケルトン)を多く引き付けて置くこともできるようになる。

 まぁ、賦活の回復効果を超過する加重ダメージを受けるようになったら、自前で回復魔法を使えば、もう少し長く時間稼ぎができそうではあるけどな。


 そうしてまた、ゼロ距離攻性魔法での反撃をしようとすると、ふいに俺が待っていた声が掛かってくる。


『おまたせ~! こっちはおわったよー!』


『お待たせしました~。何やらすごいことになってますが~、大丈夫ですか~?』


『ああ、どうにかな。まぁそれも、何時までかは分からないけど……』


『それでは~、すぐに助けますね~。少々お待ち下さい~』


 そうユンファに言われた後、ユンファとシエルの魔法の詠唱が聞こえ始め、少しして魔法が放たれる。


『いっくよー! ―――キュアライトサークル!』


 ……しかし、見える範囲で魔法が発動した様子は見られなかった。

 あれ? 不発か、指定場所でもミスったのかな?

 

 そう思いながら、唯一自由に動かせる首を巡らせ、視線を走らせる。

 すると、俺の上に折り重なるようにして、(うずたか)く積もったスケルトン達の骨の間から、丁度俺の真上に位置する天井付近の所に、ライトシールドを大きくしたような光の円があるのが見えた。

 

 何であんな場所に発動を?

 スケルトンが一番密集している場所は、俺の周辺なんだから、あんな高い所じゃなくて床付近にすれば良いのに……。

 あ、もしかして!


 俺がある考えに行き着くと、それを肯定(こうてい)するかのように、ユンファから魔法が放たれる。


「ここです~! ―――キュアレイン~!」


 ヒィィィイイイイイン―――ポチャンッ! ―――ザァァァアアアアアー!


「「「「「カカカッ?!」」」」」


 頭上の大きな光の円を注視していると、ユンファが魔法を発動するのと同時に、耳鳴りに近いような音が鳴り、次いで水滴が水面に落ちるような音が響き渡り、頭上の光の円の中心から波紋が生じる。

 波紋が光の円の外周にまで達すると、次の瞬間、光の円が唐突にその形を崩し、光の雨となって俺を拘束している、スケルトン達に降り注ぐ。


 大量の光の雨は、スケルトン達に触れると、まるで砂に水を撒くように浸透していき、そのHPを急速に奪い去り、HPが0になると、光の粒子へと変わっていった。

 逆に、俺に光の雨が触れるたび、HPが少しずつ回復していく。

 スケルトンが光の粒子に変わるたびに、俺に掛かっていたスケルトン達の重さが段々と減っていくの実感しつつ、そのまましばらく待ち、俺を拘束していたスケルトン達が全て消えるのを確認した後、素早く立ち上がり、周囲を見渡す。


 すると、シエルを先頭にアリルとユンファが、こちらに向かって小走りで近付いてくるのが見えた。

 しかし、何故か後衛組を守っていた、リーゼリアとナギとネロの姿は無かった。

 あれ? 何処に行ったんだ?


『おつかれさまー! あんなにたくさんのほねのしたじきになってたけど、どこかいたくない? だいじょぶ?』

 

「シエルもお疲れ様。特に痛い所や傷めた所は無いな。シエル、心配してくれてありがとな」


『えへへー。どういたしましてー!』


 そうやってシエルに答えていると、アリルとユンファも(ねぎら)いの声を掛けて来る。


「お兄ちゃん、囮役と間引き、お疲れ様ー! アライアンスメンバーの簡易ステータスはチャックしてたから、死んでないのは分かってたけど……すごいことになってね!」


「リオンさん~、お疲れ様です~。確かに~、人骨の山ができた時は~、びっくりしましたよ~。どうして~、あんなことになったんですか~?」


「ああ、アリル達もお疲れ様。あんなことになったのは、スケルトン達の中にスケルトンリーダーっていう統率個体がいて、たぶんだけど、周囲にいたスケルトン達に何かしらの指示を出したからだと思う。現に、スケルトンリーダーが居る所に近付いたら、周囲のスケルトン達の動きが良くなっていったから、まず間違い無いはずだ」


「統率個体かー……。ちょっと厄介かも、だね」


「ですね~」


「そういえば、リーゼリア達は何処に行ったんだ? さっきから姿が見えないんだけど……」


「ああ。リアちゃん達なら、さっきの戦闘で逃げたスケルトンを追い掛けて行ったよ。3人(?)で行ったから、もうそろそろ戻って来るんじゃないかな?」


 そう言われ、俺はすぐに気配感知を使い、周囲の気配を探る。

 すると、少し離れた場所で3つの人間大の気配と小さな気配が1つあり、少しして人間大の気配が1つ消えた。

 その後、3つの気配は移動を始め、回廊にあった横道の1つから出て来て、その姿を現す。


「どうやら~、無事に倒せたみたいですね~。よかったです~」


「だね!」


「だな」


 そうやって話しながら移動して行き、リーゼリア達と合流し、先程の戦闘の事を互いに労っていく。

 労いが終わると、先程の戦闘で逃げたスケルトンが逃げ込んだ先の小部屋に、上の階層でも見た、背中合わせに立つ、祈りを捧げているように手を組んだ2人の女性像を見つけたらしい。

 なので、念のため何かしらの仕掛けが無いか調べるため、隊列を組みつつ、回廊を移動して行く。


 少し回廊を道なりに行き、この階層に下りた時にも見た、無数の髑髏が収められている棚で出来た曲がり角を進んで行き、件の小部屋へと向かって行く。

 小部屋は、幅6~7m、高さ3m強、奥行き5m程で、全ての壁が石造りの棚になっており、その全ての棚に所狭しと、様々な種族の髑髏が収められていた。

 そして、小部屋の中央には、上の階層にもあった、台座の上に立つ2人の女性像があった。


 俺は早速、女性像に近付いて行き、発見のスキルを使い、様々な方向から女性像を見ていき、何かしら隠されたものが無いか調べていく。

 すると、女性像の一部……黒髪の女性像の(ひざ)から足裏までが赤く光っているのが見えた。


 俺はそのことをナギに伝え、罠の有無を調べてもらう。

 罠が無いことが分かった後、赤く光って見えた場所に触れながら、様々な方向に力を入れてみると、赤く光った場所が女性像から取れた。


「あ、取れた」


「え?! あ、ホントだ。取れてる!」


「ちょっ!? お兄ちゃん! 取ってどうするの!?」


「いや、どうするって言われてもなぁ」


「壊れちゃったんでしょうか~?」


「いえ、見たところ壊れた様子はありませんし、女性像と台座にレールのようなものがありますから、元々取れるものだったのでは?」


「まぁ、その可能性が高いだろうな。そうすると、何のために取れる必要があるか、だけど……」


 俺はそう言いつつ、取れた女性像の一部を鑑定してみる。


イベントアイテム  分かたれた女神像・①:8つに分割された女神像の欠片の1つ。分割された欠片を全て集め、正しき形に戻し、対応する場所に置くことで、何かが起こる……かもしれない。

 

 

 ふむ、この文面は前に見たことがあるな。

 説明文に従うなら、分割された女神像の欠片を集めて、女神像を作って、何処かにある対応する場所に置けば、良いってことになるのかな?。

 まぁ、十中八九次の階層なり、部屋なりに入るための鍵、と考えるのが妥当なところだろう。 


 そうなると、これからやるべきことは、分割された女神像の欠片の回収と、完成した女神像を置く場所を探すことだろうか?


 そうやって先程入手したイベントアイテムについて考えていると、聞き覚えのある音が鳴り、インフォメーションが流れた。


『ピロリン♪ 条件を満たしたことにより、新たな派生進化先が出現しました。スキルの進化は別途スキル画面から行って下さい』


 スキルの進化か……新たな派生進化先が出現するのは、これで2度目だな。

 以前は剣術スキルの時だっけ。

 できればすぐにでもスキルを進化させたいところだが、今は団体行動中。

 あまり個人の都合で待ってもらうのも悪いし、スキルの進化はやり直しが効かないから、時間を掛けてじっくりと考えたいところだ。

 なので、ここは後回しにするとしよう。

 急いで事を仕損じるなんてことはしたくないし、スキルの進化は一生ものだしな。


 その後、俺はこのアイテムがイベントアイテムで、以前にこの手のアイテムをインスタンスダンジョンで見たことを話す。


「なるほど。それではこれ以外の欠片を探索・回収しなければいけませんね」


「それに対応する場所っていうのも見つけなきゃだね。置く場所が分からないと、置く物を持ってても意味無いしね」


「ですね~」


「それじゃ、他の小部屋も見て回ろっか。見た感じ小部屋はたくさんありそうだけど、待ち伏せや遭遇(そうぐう)戦になっても困るから、全員で手早く巡回していこう!」


「だな」


『はーい!』


「キュキュウ!」


 そうして俺達は、回廊にある小部屋を順に調べて行き、イベントアイテムである分かたれた女神像を探して行った。

 しかし、全ての小部屋を回ったにも関わらず、イベントアイテムは3つしか(そろ)わなかった。


「あれ? もう行ってない小部屋は無いよね?」


「そのはずですよ~?」


「だな。だからたぶん、このイベントアイテムを使う場所はもっと奥にあるんじゃないかな? それでその道中に、このイベントアイテムがあったような小部屋が、またいくつかあるんだと思うぞ」


「つまり、まだこの先がある。そういうことですね」


「あんなにアンデッドが居て、まだいるのかぁ。大量の死傷者が出たって聞いたけど、多すぎない?」


「確かに。ですが、これはそういうクエストですし、事前に大量のというヒントがあったのですから、まだ常識の範囲内だと思いますよ」


「そうそう! ノーヒントで不意打ちぎみに大量のアンデッドと戦わされるより、よっぽど親切だと思うよ。クエストによっては、0から考えて答えを出すってものもある位だし。こんなことで(くじ)けてちゃ、一流のゲーマーへの道のりは遠いよ」


「そんなものかねぇ?」


「まぁ、とにかく! まだ続きがあるって分かったことだし、ちゃっちゃと移動していこうよ。タイムアタックって訳じゃないけど、日没までに入り口まで戻らないと、入り口閉められちゃうからね」


「そういえば~、そうでしたね~」


 そうして、俺達は回廊へと戻って行き、回廊の奥へと足を運んで行った。


 回廊を道なりにしばらく進んで行くと、回廊は終わっており、行き止まりに突き当たった。

 行き止まりの壁には、上の階層でもあったように、一部材質が異なるつるりとした壁があり、またその壁の中心部には、恐らく上の階層でも見たと思しき壁画が9等分されて、並びをグチャグチャにしたものが()め込まれているようだった。

 

 よく見ると、9等分された壁画の中心にあるはずの1枚が外されており、壁にある壁画の壁板は8枚しかなかった。

 壁に残されている8枚の壁板には各辺に、壁画の外枠の一部と思しき模様が付いており、また外されている場所の窪みには、何かの出っ張りを(ひね)り込むようにして固定するレールが設置されていた。

 

「ふ~っむ。これは……パズル的な仕掛けなのかな?」


「恐らくそうなのでしょうが、数が足りませんね」


「今まで回ったところに無かったから、地下水路で入手した制御球みたいに、モンスタードロップって可能性もあるんじゃないか?」


「あぁー! なるほど。それじゃ、ちょっと見てみようよ」


「ですね~」


 その後、全員でドロップアイテムの確認をしたところ、案の定、それらしき?板?というアイテムがあり、そのアイテムを実体化し、鑑定を使ってみる。

 

イベントアイテム  壁画の欠片・中央部:9等分に分割された壁画の欠片の1つ。正しき形に戻した後、対応する場所に嵌め込むことで、何かが起こる……かもしれない。


 壁画の欠片の大きさは、縦横7~8cm程の正方形をしており、壁画の欠片の表には、数字の6と9が組み合わさったような形の渦の部分が掘り込まれていた。

 裏には、壁画にある窪みに嵌め込むための出っ張りが付いている。


「説明を見た感じだと、やっぱりこの壁画のパズルを完成させないといけないみたいだね」


「そのようですね。ですが、この並びを元に戻すのが厄介ですね。外すことができれば楽なのですが……それはできないようですし」


「でも~、縦横には~、スライドできるみたいですよ~。たぶんですけど~、1枚ずつ動かして~、壁画を完成させるんじゃないでしょうか~?」


「それっぽいね! このモンスタードロップの1枚を嵌め込むと動かなくなっちゃうから最後にして、まずはこの8枚を正しい位置に戻すのが先だね」


「それと、壁に嵌っている8枚の各辺には、壁画の外枠の一部が付いているから、それをヒントに動かしていけば、分かり易いだろうな」


「なるほど~。あ、お兄ちゃんはどうするの?」


「俺は見学しとくよ。アリル達がやりたそうなのは、見てれば分かるし。それに、その壁画を動かすならあまり大人数で近付くのは難しそうだしな。多くても3人位が限度じゃないか?」


「そうですね。それでは私も見学で。アリル達が解けなかった場合は、私とリオンさんが交代するということでは、どうでしょうか?」


「……うん、人数的にもその方が良さそうだね。アリルちゃん、ナギちゃん、がんばって解こう!」


「うん!」


「はいです~!」


 そうして、アリルとナギとユンファは縦横にスライドする壁画を正しい位置に直すべく奮闘していく。

 あーでもない、こーでもないと相談しながら、壁画の欠片を動かして、一喜一憂しつつ楽しそうにパズルを動かす。


 その間、手持ち無沙汰になった俺は、アリル達が動かす壁画を横目に、先程のインフォメーションの内容を確認していった。

 すると、新たな派生進化先の他に、各スキルの正統(?)進化先も複数出ていることが分かった。


〔梟の目Master〕▽

〔PS〕パッシブスキル:〔神秘の瞳Lv0〕

80+(SLv)分DEXにプラス補正。

SLv上昇と共に、昼夜問わずより遠くを見通せるようになり、視認対象の魔力の流れが分かるようになる。  MAXSLv100


〔発見Master〕▽

〔PS〕パッシブスキル:〔見破りLv0〕

SLv上昇と共に、より巧妙(こうみょう)に隠されたものや、見つけにくいもの、偽装されたものが視界に入っていれば赤く光って見える。  MAXSLv50


〔見切りMaster〕▽

〔PS〕パッシブスキル:〔予見Lv0〕

対象の攻撃動作を自動予測し、自身が取るべき最適の動作を視認化することができる。

SLv上昇と共に、自動予測の精度が上昇し、稀に視界内に無い攻撃をも予見することがある。  MAXSLv50


NEW

〔梟の目Master〕+〔発見Master〕+〔見切りMaster〕▽

〔PS〕パッシブスキル:〔天眼Lv0〕

様々な事象を見通すことができる、超自然的な知覚能力。

100+(SLv)分DEXにプラス補正。

ベースになった各能力が強力になり、限定的な過去を見通すことができる。  MAXSLv100



 う~ん、迷うなぁ。

 各スキルの正統進化先に進化すると、新しい能力が付加されるみたいなんだよな。

 特に、神秘の瞳の視認対象の魔力の流れが分かるというのが、すごく気になる。

 だけど、こっちの天眼の方も限定的な過去を見通すというのも捨てがたいし、こっちにすると、ベースになった各能力の強化だけになっちゃう代わりに、スキル枠が1つに統合されるからスキル枠が空くようになる。


 そういえば、予見のスキルには、稀に視界内に無い攻撃をも予見することがあるとあるけど、これって俺1人だけで行動していれば、すごく重宝しそうだけど、シエルやネロが居ればそこのところをカバーできそうだよな。

 というか、既に何度かそういうことがあったはずだ。


 そう考えてみれば、今までの能力が強化されるだけでも特に不都合は感じないな。

 偽装を見抜く力や視認対象の魔力の流れが分かるというのもできれば体験してみたかったが、大局を見れば、天眼に進化させた方が色々と便利ではあるんだよな。


 ……よし。

 ここは天眼に統合進化させることにしよう。

 新しい能力付加は魅力的ではあるけど、その内の1つはシエルとネロが居れば代替(だいたい)可能だし、それに元は同じスキルから派生した能力なので、天眼が進化することがあれば、同じような能力を獲得できるかもしれないしな。

 まぁ、できなければ運が無かったと、潔く諦めることにしよう。


〔PS〕パッシブスキル:〔梟の目Master〕+〔PS〕パッシブスキル:〔発見Master〕+〔PS〕パッシブスキル:〔見切りMaster〕=統合進化⇒〔PS〕パッシブスキル:〔天眼Lv0〕

 

〔PS〕パッシブスキル:〔天眼Lv0〕

様々な事象を見通すことができる、超自然的な知覚能力。

100+(SLv)分DEXにプラス補正。

【梟の目RF】【発見RF】【見切りRF】

限定的な過去を見通すことができる。  MAXSLv100


【梟の目RF】▼

SLv上昇と共に、昼夜(ちゅうや)問わず、また霧の中でも、より遠くを見通せるようになる。


【発見RF】▼

SLv上昇と共に、より巧妙(こうみょう)に隠されたものや、見つけ難いものが、光って見える。

害するものであれば赤く、無害のものであれば青く、有益なものであれば緑色に光る。


【見切りRF】▼

敵の攻撃動作を自動予測し、自身が取るべき最適な動作と敵からの攻撃範囲も視覚化することができる。

SLv上昇と共に、自動予測の精度が上昇する。


 それじゃ、空いたスキル枠に別のスキルを入れてっと。


name:リオン 

sex:男

age:16

race:人族(ハーフドラゴン)Lv24

job:冒険者(エクスプローラー) rank:E

class:マジックソードマンLv12

HP:616  MP:412

STR:158 

VIT:73

AGI:156 

INT:75

MID:80

DEX:224

LUK:60


所持金:54075R  虚空庫 169/626 


種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕


専科スキル:〔魔法剣・無Lv12〕


装備スキル:〔STR増加Lv54〕、〔AGI増加Lv54〕、〔暗殺術Lv17〕、〔無属性魔法Lv21〕、〔天眼Lv0〕、〔調教Lv34〕、〔賦活Lv8〕、〔詠唱破棄Master〕、〔気配感知Lv16〕、〔識別Lv42〕


控えスキル:〔鑑定Lv40〕、〔剣術Lv15〕、〔料理Lv21〕、〔虚空庫 rank3〕、〔錬成Lv13〕、〔毒耐性Lv2〕、〔麻痺耐性Lv3〕、〔汎用魔法〕


称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕、〔剥ぎ取り上手〕、〔医食同源〕


称号スキル:〔念話Lv5〕、〔怪力乱心Lv4〕、〔韋駄天Lv4〕、〔薬膳Lv0〕


固有スキル:〔狂化Lv24〕、〔軽業Lv9〕、〔頑健Lv16〕


 こんな感じかな。


 さて、アリル達の方はどうかな?

 そう思いつつ壁画の方を見ると、まだパズルを解いていた。

 よく見てみると、右上の3枚までは揃えられたようで、残りの6枚を動かして悪戦苦闘している最中だった。

 まだ、ギブアップを聞いていないし、リーゼリアも助けに入る素振りは無いので、まだ掛かるのだろう。


 その後再びメニューにあるスキルの詳細を見ていくと、料理スキルに新たなアーツがあるのに気が付いたので、その説明を読み込んでいく。


□  冷却:指定したアイテムを冷やすことができる。

威力はINT・MID・LUKの値に依存する。

但し、指定したアイテムを何度冷やしても、0度以下にはならない。

消費MP:20  リキャストタイム:10秒


 冷却かぁ、これでまた料理の幅が広がるな。

 冷やして美味しいものといえば、スポーツドリンクや炭酸飲料、プリンやゼリー等だろうか?

 本当はアイスも作ってみたいが、氷がなければできないだろうし、ここはまだ我慢するしかないかなさそうだ。


 そうやって今後の料理について考えていると、パズルが解けたのか、アリル達の方から歓声が上がる。


「できたー!」


「ちょっと難しかったけど、楽しかったね」


「ですね~。いつもこういう仕掛けなら~、いいんですけどね~。リドルは性に合いませんから~」


「あー、それはボクも同意かな。ナゾナゾみたいな問い掛けって、ある程度知識が無いと解けないからねー」


「まぁそのあたりは向き不向きがあるから、仕方無いんじゃないかな? それより今は、これで先に進めるかどうかが問題だよ! 壁画が完成しても何の反応も無いみたいだしさ」


 その後、完成した壁画の絵を調べてみると、地上の慰霊碑の裏にあった仕掛けと同じように、動かすことができるようになっていた。

 仕掛けを動かすと、またモンスターを倒した時のように壁画を含む、つるりとした壁が光の粒子となって消え去り、その先になだらかな階段が付いた新たな通路があった。

 なだらかな階段が付いた通路の先には、また回廊があり、時折剣や斧、槍等を持つアンデッドが通路を横切って行くのが見える。


「まだ先があるのは分かってはいたけど……また回廊だとはね」


「でも、アンデッドが戦闘音で寄って来るってことと、回復魔法でダメージが入るって分かったから、さっきの戦闘よりうまく立ち回れると思うよ。なんたって、前衛の被害を気にしなくて魔法を撃つことができる訳だしね」


「確かに。そうすると、アリルには私達前衛と共に、前線で戦ってもらった方がいいかもしれませんね。風の回復魔法は術者を中心に一定範囲内の任意の相手を回復するものでしたから、アンデッドごと回復すれば、一石二鳥ですし」


「とすると、俺とリーゼリア、ナギはアリルを守りながらスケルトンを食い止めて、ネロには押し寄せてくるであろうアンデッドの移動妨害と前衛の援護。シエルとユンファにはスカルゴーストを単発回復魔法で優先的に倒しつつ、隙をみて範囲回復魔法のユニゾンマジックで、前衛を巻き込むように撃っていくってところか?」


「ですね~」


 そうして、ある程度の作戦が固まったところで隊列を組み、新たな通路を通り、この地下墓地攻略に向け、アンデッドが横行する回廊へと移動して行った。



『キークエスト【復活! 古の遺構】  1/3


・第1クエストクリア!  ●●●


・地下墓地に出没するモンスターを9割以上倒せ  51/100%  ○○○


・?????                                                                                                     』



因みに、今回出てきたユニゾンマジックは……

 

〔光〕キュアライトサークル+〔水〕キュアレイン⇒【ユニゾンマジック】:ライブリーレイン


となっており、【RF】はレインフォース…強化という意味です。

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