Locus 91
……全治3ヶ月。
また折れてしまった。
この忙しい時期に……何故っ!
では、どうぞ。
ログインしました。
現在の時刻は、午後8時40分少し前。
ログインするとインフォメーションが流れた。
『メールボックスに未読メッセージが1件あります』
誰からだろう?
もしかしたら、ヴァルスか?
アリルが新しい杖の製作依頼をして、1日経たずに完成するみたいなこと言っていたから、有り得なくはないだろう。
まぁ、見てみれば分かるか。
そう思い、俺は素早くメニューを開き、送られてきたメールを開け、その内容を読み込んでいった。
予想は外れ、送信者はヴァルスではなかったが、その内容はある意味驚くべきものであった。
メールの差出人は料理ギルドのギルド員で、メールの内容は、ログアウト前に市場に出品するように納品した、7種類で総数110本のライフジュースが、全て完売したというものだった。
まだ、出品するように頼んでから2時間も経過してないのに、完売とかおかしいんじゃないだろうか?
まさか、悪戯か?とも思ったが、プレイヤーではないギルド員がそんなことをするはずが無いと、すぐに思い直す。
可能性は幾つか考えられるが、全て憶測に過ぎず、確たる情報も無いので、今は放って置くとしよう。
ブランドマークが押印されて、尚且つ市場への出品は料理ギルドの人がやってくれているので、俺が製作者であることは、まず分からないだろうからな。
それと、完売したライフジュースの代金は、料理ギルドにあるらしいので、なるべく早くに取りに来て欲しいとのこと。
市場に出品したアイテムの代金は、最大で1週間ギルドに保管されるが、1週間経っても取りに来ない場合、代金の受け取りを放棄したとみなされ、ギルド運営資金として使われるようだ。
幸い今居る場所は、料理ギルドから然程離れていないため、受け取りに行こうと思えば、すぐに行ける。
せっかくなので、代金を受け取るついでに、ライフジュースや串焼きに使う材料を、料理ギルド内にあった販売所で買い足しておこうと思う。
こんなに早く、出品したアイテムが売れると思わなかったので、少々考えていた予定が狂ったが、まぁたぶん大丈夫だろう。
それと万が一、デスドロップすることも考え、ライフジュースを作成したら、料理ギルドで作成したライフジュース全てにシンボルを押印し、全てを出品せずに、幾つかを自分用に持って置くことにしよう。
そうすれば、もしも死に戻った時に落としたとしても、ライフジュースの製作者=リオンという人物であると、バレることも無いだろうからな。
さて、果物や調味料は料理ギルド内にあった販売所で買えば良いとして、蒸留水や瓶等の器はどうだろうか?
ディパートの街では、蒸留水は酒場に売っていた。
料理ギルド内にあったバーカウンターの奥にも、多種多様な酒瓶や酒樽があったことから、扱っている可能性は十分にあると思われる。
器の方も、料理にとっては無くてはならない物の1つだから、取り扱っていてもいいはずだ。
まぁ無ければ、ディパートの道具屋で購入すれば良いだけだから、多少面倒ではあるけど、特に問題は無いな。
そうして俺は、ライフジュースの代金を受け取りに行くため、料理ギルドへと向かおうとして、ふと、あることに引っ掛かりを覚えた。
ん? ……蒸留、水? …………水? …………あっ!
そういえば俺、水を作り出すことができるようになったんだった。
魔力を水に変換するとあったけど、現実世界の水は、水素と酸素から成る化合物だ。
勝手な想像になるが、つまり魔力という不思議エネルギーで空気中の水素と酸素を結合させて水を生み出すことを、魔力を水に変換すると言い換えているように思える。
まぁ、真実がどうであれ、クリエイトウォーターで生み出される水が材料として使えれば、費用の節約になるので、味見がてら確かめてみるとしよう。
そう考え、俺は素早くスキルを入れ替え、ひとまずどの位の水勢で、生み出した水が出てくるか分からないので、右手の人指し指を路地の奥に向けて、魔法を使ってみる。
「クリエイトウォーター」
すると、人指し指の先に直径1cm程の青い光が灯り、次いで青い光と同じ直径位の水が放出される。
水勢は、ウォーターサーバーから出る水位で、誤って他者に当てたとしてもダメージは入らない程の弱さだった。
こんなに水勢が弱いと、大瓶や甕等に入れる時に、かなり時間が掛かりそうだな。
せめて、水が出るところがもう少し大きければ、何とかなるかもしれないけど……。
そう考えると、ふいに人指し指の先に灯った、青い光が大きくなった。
なるほど、俺の思考に合わせてある程度操作できるみたいだな。
なら、水勢の方はどうだ? っと考えてみるが、一考に水勢が強くなることはなかった。
ふむ、あくまで攻撃用にはできないということか。
まぁそれでも、放出する水量は増減させられると分かっただけ、良しとしよう。
そうやってクリエイトウォーターについて考察していると、人指し指の先に灯った青い光が、ふいに消え、青い光から出ていた水も止まった。
どうやら、今のステータスではこの量が限界らしい。
その後数回クリエイトウォーターを使い、水量の調節と水の止め方の練習をしていった。
そしてある程度思いのまま操作できるようになったところで、虚空庫から空のポーション瓶を取り出し、ポーション瓶の口に右手の人指し指を向けて魔法を使い、ポーション瓶がいっぱいになったところで、水を鑑定してみた。
素材・食材アイテム 不可思議な純水:魔力を変換し、生み出された純水。蒸留水に比べ、含まれる不純物が圧倒的に少ないにもかかわらず、変換前の魔力が高ければ高い程、美味くなるという不可思議な特性を持つ。
……うん、純水なのに味がするとか、ファンタジーだな。
純水は普通、浮遊物や不純物をできるだけ取り除いた水のことだ。
浮遊物の代表的なものは、ホコリやチリ、そして花粉等、空中に舞っているもので。
不純物の方は、水に溶けている塩類や無機塩類……カルシウム・カリウム・ナトリウム・マグネシウム・塩素・鉄等になる。
つまり純水とは、限り無く水分子だけで出来ている水で、言わば軟水であるとも言える。
そんな水が美味いかどうかは人の好みにもよるが、少なくとも味はほぼ無いはずだ。
それなのにこの水には、うま味があるとある。
まぁ、魔力なんていう現実には無い不思議エネルギーを変換させて生み出しているから、現実では有り得ない事象があっても、そうおかしいことでは無いのかもしれない。
それで味の方なのだが…………う~んなんだろう?
現実世界の水道水よりは美味しいけど、市販の硬水には若干劣る位かな?
まぁそれでも、蒸留水よりかは美味しいのだから、これからINTを上げていけばもっと美味しくなるのかもしれないな。
純水は蒸留水の上位互換に位置する水だから、これからは蒸留水を買う費用を別のことに回せるようになるから、嬉しい限りだ。
ただ、蒸留水を純水に変えることで、作成した薬水系アイテムや食品アイテム等の味や効果が変わるかもしれないから、後で必ず試しておかないといけないな。
それと火属性汎用魔法のイグナイトファイアも使ってみたいが、燃やす物も火を付ける用も無いのに、こんな路地裏使っているところを誰かに見られたら、絶対に怪しまれることになるだろうな。
もしも何かに引火でもしたら放火魔に間違えられること必至だろうから、街の外のセーフティエリアで使ってみるとしよう。
とりあえず今は、料理ギルドで売り上げ金を受け取って、その後料理ギルドで買い物かな?
どの位の品揃えかは分からないが、今から楽しみだ。
そうして俺は、路地裏で宿紋化を解除して、ネロに影へ入ってもらい、料理ギルドへと進んで行った。
◇◇◇
料理ギルドのカウンターでギルドカードを提示し、売り上げ金を受け取った。
所持金:21975R⇒83975R
その後、ギルド内にある食材・食器売り場へと行き、これから作るライフジュースや串焼き、それとアリル達にもらった食材アイテムを料理するのに必要になりそうな、食材や食器を購入した。
品揃えは豊富にあり、流石は料理のギルドなだけあると感心させられる程で、俺の欲しかったアイテムは全て買うことができた。
塩(100g)×5:1500R
胡椒(100g)×5:2500R
香草(1瓶)×5:2500R
砂糖(100g)×5:3000R
空き瓶(1個)×150:15000R
瓶(大)×10個:1000R
フライパン×1:1000R
オレンジ×20個:600R
ぶどう ×20個:800R
も も ×40個:2000R
ライム ×20個:400R
りんご ×20個:600R
所持金:83975R⇒53075R
結構買ったな。
でも、利益は出ているんだし、先行投資だと思えば大丈夫……なはず!
因みに、ももを少し多目に買ったのは、桃仁が入ったライフジュースと桃仁が入っていないライフジュースを作るためだ。
よし、それじゃそろそろエネルゲンマッシュルームの採取に行こうかな。
日付が変わるまであと3時間以上あるし、また戻って来てクエストを受けるのも面倒なので、先に受けてから西の森に行くことにしよう。
っといっても、日付が変わるまで遊ぶつもりは無いけどな。
それと、アリル達から聞いた罰則モンスターのこともあるから、ノココは極力倒さず、エネルゲンマッシュルームの採取だけにして置こう。
今では俺の種族レベルと西の森南部にいるノココのレベル差は5以上離れているはずだしな。
シエルとネロにも妨害だけを頼み、折を見て酔いどれオーガの討伐に行くとしよう。
妨害だけでも魔法のレベルは上がるのだし、それに格下を倒しても得られる経験値は微々たるものだから、時間の節約にも成り得るはずだ。
そうして俺は料理ギルドを後にし、冒険者ギルドで酔いどれオーガからドロップまたは、交換できるアイテムの納品クエストを受けてから、西の森に向かって行った。
◇◇◇
進行方向にいるモンスターをオーガスピリットやアクセルドライブを使いながら倒して行き、西の森に着く途中にセーフティエリアがあったので、そこでステータスの割り振りやドロップアイテムの鑑定をしていった。
現在の俺のステータスはこんな感じだ。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv20
job:冒険者 rank:E
class:マジックソードマンLv7
HP:496 MP:372
STR:134
VIT:61
AGI:132
INT:71
MID:65⇒68
DEX:118
LUK:52
STP:3⇒0
所持金:54075R 虚空庫 167/442
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕
専科スキル:〔魔法剣・無Lv7〕
装備スキル:〔STR増加Lv40〕、〔AGI増加Lv40〕、〔剣術Lv9〕、〔暗殺術Lv5〕、〔梟の目Lv44〕、〔見切りLv28〕、〔調教Lv27〕、〔賦活Lv7〕、〔気配感知Lv7〕、〔発見Lv27〕
控えスキル:〔鑑定Lv38〕、〔識別Lv38〕、〔料理Lv18〕、〔無属性魔法Lv18〕、〔虚空庫 rank3〕、〔錬成Lv0〕、〔詠唱破棄Master〕、〔毒耐性Lv2〕、〔麻痺耐性Lv3〕、〔汎用魔法〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕
称号スキル:〔念話Lv1〕、〔怪力乱心Lv3〕、〔韋駄天Lv3〕
固有スキル:〔狂化Lv23〕、〔軽業Lv8〕、〔頑健Lv8〕
ステータスポイントは、これからも頑健のレベルが上がっていくことを考え、MIDに全振りした。
MIDにプラス3で、65⇒68へ
次はドロップアイテムの鑑定だ。
素材アイテム 溶解井守の耐酸皮:ディザルヴニュートの皮。透き通るような青色が美しく、酸耐性を持つことから、鎧から鞄、小物まで様々な物の材料に使われる。
素材・食材アイテム 溶解井守の肉:ディザルヴニュートの肉。脂質が少ない良質なタンパク質なため、女性に人気が高い。黒焼きにすることで強壮剤の材料になるが、特殊な処理を施すことで媚薬の材料にもなると言われている。
素材アイテム 溶解井守の溶解液:ディザルヴニュートの溶解液。脱色剤や薬の材料にもなり、そのまま投げ付けることで、対象にダメージを与えることもできる。加熱することで酸性を失い、粘着力の強い液体に変化する特性を持つ。
【部位破壊ボーナス】
食材アイテム 溶解井守の尾肉:ディザルヴニュートの尻尾肉。高い栄養価を含むゼラチン質なため、美容に良く、古来より高い身分の女性に献上される品の一つ。この食材でできた食品を食することで、肌年齢が10歳前後若返ると言われている。
強化アイテムは鍛錬石が2個だったので、ついでに今まで入手した鍛錬石を使って、アドヴァンスドソードを強化して置く。
【製作者:リオン】
武器アイテム:剣 名称:アドヴァンスドソード+8 ランク:2 強化上限回数:7回
ATK38 DEF23 AGI23 M・ATK23 M・DEF23 DEX23 LUK23
要求STR:23 耐久値:∞ バインド属性
与DP倍率:斬1.0 打0.5 突0.3 魔1.0
クリエイトボーナス:MP+50
能力継承:【HP+5%】
これでよしっと。
それじゃ、西の森南部に行くとしよう。
そうして俺はセーフティエリアを出て行き、再び西の森南部に向かって行った。
◇◇◇
西の森南部に少し入ってからシエルを装飾化から解き、念話でシエルとネロにこれからの予定を話す。
『シエル、ネロ。今回この西の森南部に来たのはノココからの採取が目的だ。だから、ノココもそうだけど、モンスターは極力倒さずにいくから、そのつもりでな』
『そうなの~? わかったー!』
『はーい!』
『あーでも、なるべく安全に採取したいから、視界を塞ぐ妨害はしてもらいたいな。それで、合図したらシエルにはフラッシュライトを、ネロにはブラインドシャドーをノココに撃ってもらいたいんだ。頼めるか?』
『うん! まっかせてー!』
『やってみるー!』
『ああ、それとネロ。この森ではあのストライフオウルが出るから、兎型でいるなら影の中にいた方が良いと思うぞ?』
『にゅぁ?!』
ネロは俺が指摘すると、ビクッっと体を震わせ、思念で変な声を上げた。
『まぁ、影装変化すればそんなことも無いだろうけど……移動に適する登録影が無いから、専化影装が無難だとは思うけどな』
『そ、そうするー』
ネロはストライフオウルに攫われた時の恐怖が蘇ったのか、若干つっかえながらも返事を返してくる。
すると、ふいにネロの影が膨張していき、ネロを包むようにして直径1m程の影の繭を形成する。
そして次の瞬間、繭の外殻が弾け飛び、中から黒を基調とした青色の斑点模様の付いた青い目のストライフオウルが姿を現す。
『じゅんびできたよー』
『分かった。それじゃ、シエル、ネロ行こうか』
『『はーい!』』
その後、俺達は俺の気配感知やネロの索敵を使いながら、ノココらしきモンスターを探して西の森南部を移動して行った。
◇◇◇
西の森南部に入りおよそ1時間が経過した頃、ノココから採取できたエネルゲンマッシュルームは29個まで集まった。
当初の予定通り、モンスターは極力倒さない方針で採取していったおかげか、未だ罰則モンスターとは遭遇していない。
まだ時間もあることだし、このまま続行するべきか、それとも1度切り上げ、酔いどれオーガの方に行くべきか……迷うなぁ。
そうやって少し悩んでいると、ふいにファンファーレが鳴りインフォメーションが流れた。
『ピロン! パパーン♪ これまでの行動により、〔称号:剥ぎ取り上手〕を入手しました』
剥ぎ取り上手? 何か少し嫌な響きの称号だな。
まぁ、とりあえず説明を見てみるとするか。
〔称号:剥ぎ取り上手〕:対象を倒さずに、素材・食材アイテムを多数獲得した者の証。
効果:アーツ<レヴィ>が使用可能になる。
□ レヴィ:視認した対象から対象を倒さずに取れる、素材・食材アイテムを獲得することができる。
このアーツの精度はINT・DEX・LUK の値に依存し、また失敗した時は何も得ることができない。
但し、このアーツを使用できるのは、既に1度、自力で同一種から素材・食材アイテムを獲得したことがある場合に限る。
消費MP:10 リキャストタイム:10秒
ふむ、称号名はアレだけど、アーツ自体は結構良さそうだな。
ただ、既に1度、自力で同一種から素材・食材アイテムを取ったことがないと使えないというのが、何とも残念だけど、これからは手間が省けて、罰則モンスターと遭遇する可能性が減ると思えば、大分マシではあるかな。
さて、それじゃ丁度次で30個になるし、このアーツを試してから酔いどれオーガを討伐しに行くとしよう。
そうして俺はシエルとネロに念話で話し、気配感知を使って再びノココを探し始めて行った。
しばらくさ迷い歩いて行くと、気配感知にノココ位の大きさの気配が引っ掛かった。
俺は念話でシエルとネロにそのことを告げ、その気配へと近付いていく。
視認できる距離になってから、発見のスキルを使い、見つけたノココの内の1体に隠された採取ポイントがあるのを確認する。
『それじゃ、シエル、ネロ。俺は少し試してみたいことがあるから、ノココには近付かないけど。念のため、今まで通りノココの視界を塞いでくれ』
『はーい!』
『わかったー!』
その後、シエルのフラッシュライトとネロのブラインドシャドーでノココ達に盲目のバッドステータスアイコンが付いたのを確認してから、俺は隠された採取ポイントを持つノココを視界に入れつつ、アーツを使ってみる。
「レヴィ」
すると、目の前で淡い光が急速に収束していき、光の球体を形作っていく。
光の球体が直径5cm程になると同時に『パチンッ』っと弾け、中から何かが現れ、重力に従って落ちる。
「おっと」
俺は何とか、光の球体から出て来たものを地面スレスレで掴み取ることに成功する。
掴んだものを見てみると、ソレは実体化されたエネルゲンマッシュルームだった。
俺は隠された採取ポイントを持っていたノココに視線を向けると、そのノココはやや前傾姿勢になりつつ、何処となく疲れているように見えた。
HPバーを見てみれば残りが1割程しか残っていないことから、恐らく先程俺に抜き取られたエネルゲンマッシュルームが原因なのだろう。
なるほど、こういう風に取れるのか。
精度ってあったから少し不安だったが、レベルが5つ以上も離れているんだし、そうそう失敗するはずないよな。
それでも確証が欲しくもあるから、本当はもう2~3回試してみたいところだけど……まぁこんなに簡単に取れるなら、酔いどれオーガを討伐した後でもいいよな。
そう考え、俺はシエルとネロに念話で知らせ、視線の先にいるノココ達に気取られないよう慎重に、その場を離れ、マップデータ上にある黄色い光点を目指しながら、西の森北部へと向かって行った。
◇◇◇
気配感知を使いモンスターを避けつつ移動し、マップデータ上の黄色い光点を目指してしばらく歩いていくと、岩壁に面したセーフティエリアに辿り着いた。
セーフティエリアには誰もおらず、しかし今まで見た夜のセーフティエリア同様、焚き火が焚かれ、周囲を仄かに照らし出していた。
焚き火の周辺には、腰掛の代わりのような丸太が四方に、焚き火を取り囲むように置かれている。
岩壁の高さは目測で5m程で、岩壁の上にはよく生い茂った草木が生えてのが見える。
岩壁の横幅は視界いっぱいに広がっており、夜の暗さも伴い、岩壁の端がどこまであるかは分からない。
えっと……黄色い光点はこの岩壁の先なんだよな。
ってことは、何処かにこの岩壁を抜ける道があるのかな?
無い場合は最悪、この岩壁を自力で登らなきゃならないから、そんな人を選ぶような意地の悪いクエストではないと思いたい。
依頼書にはそんな但し書きもなかったし、それにカインさんも特に何も言っていなかったから、たぶんそんなことはないはずだ。
まぁ、本気でジャンプして、岩壁にアドヴァンスドソードを突き立てられれば…………うん、不可能ではないな。
そう考えつつ、岩壁に近付いて行き、岩壁に視線を走らせていく。
すると、セーフティエリアにある木々の後ろに、まるで人目から隠すように開いている穴が、岩壁にあるのを発見する。
穴はアーチ状に開いており、高さ2m強、幅1m程で、穴の中を覗き込んで見れば、長さは7~8m位であり、その先からは月や星々明かりにより照らされ、丈の低い草が生えているのが確認できた。
どうやらこの穴が向こう側に通じる、通路になっているようだ。
さて、黄色い光点へ進む道が確認できたことだし、ココで1度カインさんに聞いた情報を再確認して置くとしよう。
そう思い、俺はカインさんから聞いた情報を、後で書き出したメモを見てみる。
①:酔いどれオーガは常に状態異常『酩酊』に掛かっており、魔法全般に高い耐性があるが、戦闘中は一定時間で棒立ちになり、数秒間無防備になる。
②:パーティメンバーの数により、酔いどれオーガのLvが変化する。
基本は、パーティ内で一番種族Lvが高いプレイヤーと同じで、パーティメンバーが1人増えるごとに、Lvが1増加する。
③:HPが3割を切ると激昂状態になり、攻撃力と素早さが上がるが、酔いが回るのが早くなり、棒立ちになる頻度が多くなる。
④:③の棒立ち中に腹の辺りを打属性の攻撃で一定以上のダメージを与えると、虹色に輝くゲロを吐き、3~5分程の間衰弱状態になり、酩酊状態も解除され、魔法が効くようになる。
衰弱状態中は全ステータスが半減しているので、与えるダメージも2倍になり、一気に倒すチャンスでもある。
⑤:酔いどれオーガからのドロップアイテムは、パーティメンバーの人数によって変化する。
1人の場合:クエストアイテム+酒樽(5ℓ)〔度数ランダム〕
2~3人の場合:クエストアイテム+酒瓶(2ℓ)〔度数ランダム〕
4~5人の場合:クエストアイテム+酒菜(2~3個)〔種類ランダム〕
6人以上の場合:クエストアイテムのみ
⑦:クエストをクリアしない限り、何度でも酔いどれオーガと戦うことができ、死なない自信があるなら、連続して戦った方が時間の節約になる。
ふむ、お酒はたくさん欲しいところではあるが、今はキークエスト中だから、無理はしない方がいいかな。
でもそうすると、2人(?)以上のパーティで挑むことになって、酔いどれオーガのレベルが上がることになる。
今の俺の種族レベルが20だから、2人パーティなら酔いどれオーガのレベルは21に、3人パーティなら酔いどれオーガのレベルが22になる。
シエルは進化してるけど、実質の換算レベルはネロと同じ18だから、3人パーティにすると、4レベルも離れた相手になってしまう。
だからといって2人パーティにすると、もしも大ダメージを受けた場合、ネロと組んだ時は回復魔法による援護なしで戦わなければならず、賦活だけでは到底心元無い。
回復薬はあるにはあるが、レベルの低いネロを囮にするのは少し心配だし、かといって回復無しではたぶんきついことになりそうだ。
魔法を使えばまだ何とかなる可能性もあるが、夕方アリルと約束した手前、例え誰も見ていなくともすぐに約束を破るのは、気が引ける。
うーん……難しいな。
ストライフオウルの時でさえ、シエルとネロのレベル差は3だったはずで、追尾性の有る魔法による攻撃も悉く避けられていたんだよな。
今ではその辺のことも踏まえて、DEXを高めにしてはあるけれど、今回は状態異常酩酊の効果で、魔法に対する高い耐性があるのがネックだ。
まぁ、それでも塵も積もれば山となると言うし、今回は死なないことを優先して、全員で戦うことにしよう。
いくらなんでも空は飛ばないはずなので、シエルには常に上空から、ネロには影の中からか上空から攻撃するようにすれば、少なくとも反撃には会わないで済むはずだ。
後は戦法だけど……俺が前衛で攻撃兼囮。ネロは遊撃で攻撃の援護と妨害。シエルは後衛で回復と攻撃の援護で、後は臨機応変にといったところかな。
よし! 方針も決まったことだし、そろそろ向こう側に行くとするか。
念のため回復薬も幾つか実体化させて、持って置こう。
万が一シエルの回復が間に合わない時があるといけないから、備えあれば何とやらだ。
そうして、俺はセーフティエリア内で追いかけっこをしているシエルとネロにこれからの戦闘方針を伝え、岩壁に開いている通路の先へと移動していった。
◇◇◇
通路を抜けるとそこには、丈の短い草木が生い茂り、その少し先には若干緑の密度が高い森が広がっていた。
マップデータを見てみると、黄色い光点はこの先の森を指している。
ふむ、この奥か……。
そう思いつつ俺は目の前に広がる鬱蒼とした森の中へと入っていく。
森の中に入って少しすると、やや開けた場所に出た。
開けた場所は漏斗状をしており、漏斗の上部分に位置する広場は目測で幅20m弱、奥行き10m強はありそうだった。
またその開けた場所の最奥には岩壁があり、岩壁の一部には洞穴の部屋のようなものがあった。
その部屋の方を見ると、その部屋の中の何かが松明の光を受け、怪しく蠢いているのが見える。
アレが酔いどれオーガかな?っと更に注視すると、梟の目の効果で部屋の中の景色がズームアップされる。
部屋の中にいたのは、赤銅色の肌を持った大男で、頭に2本の円錐状の角を持ち、大きな甕の傍らに座り、時折その中に椰子の実を半分に割ったような杯を入れ、手酌で甕の中の液体を汲み出し、美味そうに飲んでいる。
因みに、服装は腰布1枚で、頭髪は赤茶けたモヒカンだ。
俺はさっそく識別を使って、その大男を見てみる。
酔いどれオーガ:Lv22・属性:-・耐性:突・弱点:斬・火
うん、こいつが今回のターゲットで間違い無いみたいだな。
なら、遠慮はいらないよな。
そう思いながら、俺は素早くアドヴァンスドソードを抜剣すると、酔いどれオーガは訝しむように顔を上げ、俺達の方へ視線を向ける。
何か気付かれたっぽいな、条件は……武器を抜くことか?
奇襲はできなさそうだけど、まだ距離もあるし、事前にできることはやって置こう。
「ウィークネスアイ」
すると酔いどれオーガの弱点部位が赤く発光する。
発光したのは大抵の生物にとっての弱点である、頭・首・心臓・鳩尾に加え、頭部にある2本の角だった。
なるほど、やっぱり人型なだけあってほとんど人にとっての急所と変わらないみたいだな。
それなら、やりようも色々とあるから、この機会に試してみるとしよう。
それに、角は力の象徴や制御なんかの器官だって何処かで見た覚えがあるから、まぁ妥当なところなのかもしれない。
もっともその分、角自体が強固で頑丈って可能性も否めないから、もしも狙うならそのことを踏まえて攻撃するとしよう。
万一自分で攻撃した反動をもろに受けて、アドヴァンスドソードがすっぽ抜けでもしたら、危ないしな。
「それじゃ、シエル、ネロ、行くぞ!」
『はーい!』
「ホオォォォー!」
俺が声を掛けるとその声を合図に、シエルとネロ上空へ上昇して行く。
そんな2人(?)を横目に、俺もすぐ様駆け出し、酔いどれオーガがいる洞窟へ近寄って行く。
「ゴガァァァーーー!!」
すると、酔いどれオーガは部屋の壁に立て掛けてあった棍棒を手に取り、威嚇するように雄叫びを上げてから、洞穴の部屋から出て来て、迎撃の態勢を取る。
酔いどれオーガの全長はおよそ3m弱で、手に持った棍棒は2m位はありそうだった。
俺は彼我の距離が残り10mを切ったところで、アーツを使いダメージの底上げを図り、更に牽制のため攻撃を放つ。
「リベレイトフォース・ソード!」
ヒィィィン!
アドヴァンスドソードの剣身から鋭い音が発生し、次の瞬間まるで水に濡れたような透明な輝きを剣身に宿す。
「リープスラッシュ!」
「ゴガァ!」
バキャシャァンッ!
牽制のために放ったリープスラッシュは、横薙ぎにした棍棒により掻き消され、ダメージを負わせることはできなかったが、酔いどれオーガは棍棒を振り抜いたことにより、迎撃の態勢が崩れる。
俺はその機に一気に近付き、攻撃を仕掛ける。
すると返す棍棒で、俺を迎え撃つつもりなのか酔いどれオーガの動きが視界に入ると、見切りのスキルによって酔いどれオーガの攻撃到達予測線が、赤いラインとして視覚化される。
俺はそのラインを潜るようにして避け、下から上へ、上から下へと斬り付け、更に×の字にアーツを使って攻撃する。
「ダブルスラッシュ!」
「クロススラッシュ!」
「ゴガァゥッ!」
酔いどれオーガは痛がるような素振りを見せ、2~3歩後退する。
『いっくよー! ―――リリース! レイビーム!』
「ホホオォーーー!」
そしてその隙に追い討ちを掛けるように、上空から3つ光線と酔いどれオーガの足元から幾つもの黒い剣身が襲い掛かる。
「ガギャァァァ!!」
HPバーを確認してみれば、残り8割強と多く。
やはり格上なだけあり防御が硬く、魔法の方も酩酊のせいであまりダメージを与えられていなかった。
「ゴガァァァーーー!」
酔いどれオーガは雄叫びを上げつつ、一番近くにいた俺に棍棒で殴り掛かってくる。
俺はその攻撃を見切りのスキルで上手く避け、隙を見ては内側の肘や膝、手首等の間接付近を切り付けていく。
すると、次第に酔いどれオーガの息が荒くなっていき、およそ十数の攻撃後両腕をダランとさせ、動きが止まる。
なるほど、カインさんの情報通りだな。
なら、この内にダメージを稼ぐのが良さそうか。
そう考え、すぐ様念話でシエルとネロに追撃要請を出し、シエルとネロの魔法攻撃に巻き込まれないよう、後方へ飛び退りながらリープスラッシュを使い、ダメージを与えることも忘れない。
そうやってしばらくダメージを積み重ね、酔いどれオーガのHPが3割に差し掛かると、それは起こった。
「ゴガァァァーーー!!」
酔いどれオーガは怒り心頭といった感じで咆哮を上げると、何時か見たような赤と緑が入り混じったオーラを纏う。
それに伴い、元々赤っぽかった肌が更に赤みを増し、目は血走るように赤く光り出し、額や顔、頭にはもちろん、体全体の様々な場所に血管が浮き出していき、まるでいけない薬を打ってドーピングしたような形相へと、変貌していく。
HPバーを確認してみれば、赤黒い炎を背負った、肩上の人型の頭に3つと4つの大きな血管マークとが付いた……激昂のバッドステータスアイコンが付いているのが確認できた。
お! コレもカインさんの情報通りだな。
問題はどの位スピードと攻撃力が上がるかだけど……。
「ゴガァッ!」
そう考えていると、酔いどれオーガは今までより数段早く動いて俺に接近し、棍棒をめちゃくちゃに振り回して来た。
うわっ! はや!
俺は、見切りのスキルによって視認化された赤いラインに沿って避けるが、今までの攻撃より素早く振り回される棍棒から発せられる暴力的な風圧により、HPがジワジワと削られていく。
風圧だけでダメージが来るとか、出鱈目すぎるだろ!
もし直撃したら、どんだけダメージが出るんだよ!
ってかそれより、このスピードで攻められると回避も難しいな。
もう少し待てば、息切れを起こして棒立ちになるだろうけど、その頃には下手をすればHPが削りきられている可能性もある。
なら、こちらもスピードを上げて、棒立ちになるまでこの猛攻を凌ぐのがベスト!
そう思い、俺は即座にアーツを使い、AGIを上げる。
「ソードダンス!」
すると、俺の体全体と武器が銀白色の燐光に包まれ、代わりに今まで剣身に宿っていた水に濡れたような輝きが消え去る。
そういえば、ソードダンスは剣系アーツと同時には使えないんだっけ。
まぁ、まだレベルも低いリベレイトフォース・ソードより強いから、別に問題は無いんだけどな。
そんなことを考えながら回避に専念すると、先程より余裕を持って動くことができるようになった。
互いの得物が棍棒と剣だから、剣で棍棒の軌道を逸らしたり、弾いたり、ましてや受けたりはできないが、ただ回避するだけなら、激昂前の戦闘時よりも楽に避けられるようになったのだから、やはり素早さを上げる選択は間違っていなかったのだろう。
そうして、ただひたすら回避していると、待ちに待った時がやってくる。
酔いどれオーガは肩を激しく上下させ、喘息の呼吸音のような『ゼヒュー、ゼヒュー』という音を響かせ、その動きを止める。
『ネロ! 今だ!』
『わかった! いくよー! ―――シャドウブロー!』
「ゴバァッ!? ―――ッグ、ブブッ………………ボォウエェーーー。」
俺がネロに合図を出すと、酔いどれオーガの影が酔いどれオーガの前方に不自然に膨張していき、その影の中から常人の2倍はある拳が勢い良く飛び出し、前傾姿勢になりつつ休んでいた酔いどれオーガの鳩尾の若干下……丁度胃がある辺りを強打する。
すると酔いどれオーガは何かを堪えるような変な表情になり、口元に手を当てるが……次第に我慢ができなくなったのか手を離し、orzの格好になって口から虹色の液体を吐き出していく。
実際に見てみると、かなりシュールな光景だが、リアルなゲロを見たい訳でもないので、あまり気にしないで置く。
少しして虹色の液体がでなくなった頃、酔いどれオーガのHPバーを見てみると、ALL×0.5というアイコンが付いていた。
酔いどれオーガの方を見てみれば、顔は青褪め、唇は青紫になり、だるそうに両腕をダランと垂れ下げ、背筋も猫背に変わっており、動き自体もかなり緩慢な様子になった。
コレも情報通りだったな。
なら、この状態が続いている内にさっさと仕留めるとしよう。
この衰弱中なら、魔法も普通に効くらしいから、結構すぐにいけると思うしな。
そうして俺はシエルとネロに念話で合図を出し、シエルとネロが魔法で攻撃中はリープスラッシュで追撃を掛け、魔法が途絶えたら、接近して連続でアーツを叩き込みんだ後に距離を取り、またシエルとネロの魔法を打ち込むということをして、難なく酔いどれオーガを倒すことに成功する。
酔いどれオーガを倒した後、ステータスを見てみると、流石格上なだけあって俺の種族レベルは1上がり、シエルとネロのレベルは2上昇していた。
俺は素早くステータスポイントを割り振ると今度はドロップアイテムを見てみた。
情報通り、目当てのアイテムのは入手できたが、ものを漬け込むのに適さない度数だった。
時間の方を見てみると、攻略法が分かっていたからか、十数分で倒すことができ、ログアウトする時間まで後1時間位あることが分かった。
ふむ、まだ時間は結構あるな。
この分だと、後3回…………いや、1回戦って対処方法も分かったから、4回はいけるはずだから、このまま連戦するとしよう。
2ℓだけじゃ材料が全然足らないし、量があればやりようはあるので、できるだけ取って置きたいのが心情だ。
それに、格上相手だからレベル上げにもなって、丁度良いしな。
そうしてしばらくして、再湧出した酔いどれオーガを倒していき、レベル上げ兼材料集めをしていった。
繰り返し酔いどれオーガと戦うことで、戦闘行動が洗練されていき、最終的には初戦を含め6連戦するまでになった。
その結果、俺の種族レベルは24に上がり、新たなアーツを2つ習得し、シエルのレベルは13に、ネロのレベルは23まで上昇して、新たな魔法を習得した。
現在の俺のステータスはこんな感じだ。
name:リオン
sex:男
age:16
race:人族Lv24
job:冒険者 rank:E
class:マジックソードマンLv9
HP:596 MP:412
STR:150
VIT:71
AGI:148
INT:75
MID:72⇒80
DEX:127
LUK:56⇒60
STP:12⇒0
所持金:54075R 虚空庫 169/626
種族スキル:〔混血・竜の息吹(光)〕、〔竜言語Lv1〕
専科スキル:〔魔法剣・無Lv9〕
装備スキル:〔STR増加Lv52〕、〔AGI増加Lv52〕、〔剣術Lv15〕、〔暗殺術Lv11〕、〔梟の目Lv49〕、〔見切りLv29〕、〔調教Lv32〕、〔賦活Lv8〕、〔気配感知Lv13〕、〔識別Lv40〕
控えスキル:〔鑑定Lv40〕、〔料理Lv18〕、〔無属性魔法Lv18〕、〔虚空庫 rank3〕、〔錬成Lv0〕、〔詠唱破棄Master〕、〔毒耐性Lv2〕、〔麻痺耐性Lv3〕、〔汎用魔法〕、〔発見Lv29〕
称号:〔思慮深き者〕、〔戦女神の洗礼〕、〔ウルフバスター〕、〔剣舞士〕、〔二刀の心得〕、〔初めての友誼〕、〔知恵を絞りし者〕、〔先駆けの宿主〕、〔解放せし者〕、〔初心者の心得〕、〔異常なる怪力者〕、〔異常なる俊足者〕、〔愚かなる探求者〕、〔踏破せし者達〕、〔完全なる攻略者〕、〔容赦無き掃討者達〕、〔剥ぎ取り上手〕
称号スキル:〔念話Lv3〕、〔怪力乱心Lv3〕、〔韋駄天Lv3〕
固有スキル:〔狂化Lv23〕、〔軽業Lv8〕、〔頑健Lv14〕
ステータスポイントは、これからも頑健のレベルが上がっていくことを考え、MIDに8ポイント割り振り、最も低かったLUKに4ポイント割り振った。
MIDにプラス8で、72⇒80へ
LUKにプラス4で、56⇒60へ
□ ナーヴブレイク:的確に腱や筋にダメージを与え、対象の行動力や精細さを削ぐ技。
一定時間対象のAGIとDEXにマイナス補正を与える。
但し、回復アーツや魔法、回復アイテムによってこの効果を消すことが可能。
消費MP8 リキャストタイム:15秒
□ ドッジムーブ:素早く巧みに躱す技法。
特定方向に避ける瞬間のみAGIとDEXが倍化し、退避距離が伸びる。
退避距離の長さは元のAGI・DEX・LUK の値に依存する。
消費MP:20 リキャストタイム:5分
因みに、ナーヴブレイクは剣術のアーツで、ドッジムーブは暗殺術のアーツになる。
次はシエルのステータスだ。
name:シエル
sex:女
race:サニー・スピリットLv13
HP:250 MP:322
STR:0
VIT:46≫78
AGI:44⇒50≫82
INT:47⇒50≫82
MID:46⇒47≫79
DEX:44⇒50≫82
LUK:36⇒40≫72
STP:20⇒0
≫調教の効果を加算した値
種族スキル:〔陽光活性(昼)〕、〔物理半減〕
スキル:〔光魔法Lv37〕、〔光耐性Lv9〕、〔影耐性Lv7〕、〔浮遊飛空Lv21〕、〔装飾化Lv8〕、〔念動Lv5〕、〔再生Lv9〕、〔再精Master〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv3〕
固有スキル:〔STR返上〕
ステータスポイントは、種族スキルの物理半減があるので、VIT以外のステータスにそれぞれ割り振った。
AGIにプラス6で、44⇒50へ
INTにプラス3で、47⇒50へ
MIDにプラス1で、46⇒47へ
DEXにプラス6で、44⇒50へ
LUKにプラス4で、36⇒40へ
最後はネロのステータスだ。
name:ネロ
sex:女
race:シャドービーストLv23
HP:330 MP:430
STR:46
VIT:46
AGI:49⇒54
INT:56⇒61
MID:46
DEX:56⇒61
LUK:46
STP:15⇒0
種族スキル:〔影装変化〕、〔影記憶〕
スキル:〔影魔法Lv32〕、〔影抵抗Lv1〕、〔影耐性Lv5〕、〔潜影移行Lv17〕、〔宿紋化Lv2〕、〔潜伏Lv25〕、〔賦活Lv4〕、〔索敵Lv21〕、〔毒耐性Lv4〕、〔麻痺耐性Lv3〕
固有スキル:〔専化影装〕
ステータスポイントは、影装変化すればステータスの並びが変わることから、素の状態の素早さ、器用さ、魔法の威力とを上げるために、AGI・INT・DEXにそれぞれ5ポイントずつ割り振った。
AGIにプラス5で、49⇒54へ
INTにプラス5で、56⇒61へ
DEXにプラス5で、56⇒61へ
□ シャドーライブズ:影に魔力を作用させ、癒しの効果がある影へと性質変換させた回復魔法。
使用者に対してのみ、生命力を回復させることができる。
この魔法の威力は、MID・LUK の値に依存する。
消費MP:10 リキャストタイム:10秒
また、ネロの種族レベルが20に達したことにより、影記憶のストック枠が1つ増えたので、試しに1度酔いどれオーガに変化してもらった。
多少人より大きいが、もしかしたら念話無しでも意思の疎通ができるかもしれないし、実際に戦ってみたことで、戦力的にも事前情報がなければかなり強い部類に入るから、新たな戦力になればとかなり期待しながら影装変化してもらった。
しかし、意思疎通はおろか影装変化後のステータスを見てみれば、パッシブスキルとして【酩酊】が存在し、激しい動きをすると、酔いが回り、すぐに棒立ちになることが分かった。
まぁ、名前が【酔いどれ】オーガだから仕方ないのかもしれないけどな。
それなら、スキルのオンオフを切り替え、オフにすれば良いと思ったが、影装変化中に自動で追加されるパッシブスキルは切り替えることができず、影記憶に登録することを断念した。
まさか、影装変化にこんなデメリットが存在するなんて思いもしなかったが、今回のことでこのデメリットのことが分かったので、影を記憶させる時には自動で追加されるパッシブスキルをよく見て、選択するよう心掛けよう。
因みに、酔いどれオーガに影装変化したネロの姿は、褐色の肌に、青み掛かった黒の腰まであるざんばら髪で、目の色は青。
服装はチューブトップ風に巻かれた布と、ビキニのようなパンツに、パレオのように巻かれた腰布があるだけだった。
若干目のやり場に困るような服装な上、酩酊状態なせいもあり、常にトロンっとした潤んだ瞳と紅潮した頬。
酒のせいで呼吸も浅く、酒の微かなフローラルの香りが汗に混じり、何とも言いようの無い女性特有の甘い匂いが鼻をくすぐり、誰に見られても絶対に誤解されるような外見をしていた。
更には、シエルの影響か言動が幼く、背丈が高いせいもあり、前屈みになりながら上目づかいで見上げたり、大きくなったことが嬉しいのか無邪気に飛び跳ねたりと、際どい格好に頓着が無く、見ている俺の精神を容赦無く削りにくるという、天然の罠が発動する始末。
まぁ俺の好みでもなかったというのもあるにはあるが、俺の精神衛生のためと、何よりこんな姿をした獣魔を持っていると知れたら、絶対体裁も悪いし、悪目立ちすること必至なため、影記憶はまたの機会に持ち越すことにしたのだ。
―――その後。
俺はディパートへと戻って行き、酔いどれオーガから出たクエストアイテムを納品してからログアウトしていった。
もちろん、帰りの道中レヴィを使い、エネルゲンマッシュルームの採取も忘れずに。
所持金:53075R⇒83075R
酔いどれオーガの納品クエストの報酬でではあるが、さっき先行投資分として消費したお金は無事回収できた。
それと、コレは後から分かったことだが、どうやら酔いどれオーガの上昇するレベルには上限があったようで、酔いどれオーガのレベルが25に達してからは、それ以上レベルが上昇することがなくなった。
まぁ、Dランクのクエストでレベル上限∞なんていうことがあったら、ゲームバランスが崩壊してしまうので、ある意味当然と言えば当然な処理だな。
明日はいよいよ獣魔屋の開店日だ。
そして午後からだが、シエルとネロを自由に外に出してやる約束の日でもある。
キークエストのこともあるし、他の獣魔がどんな姿なのかも気になるし、とても楽しみだ。
作者:ネロさんの小悪魔っぷりが半端無いです!
シエル:バインバインのバルンバルンだったねー!
リオン:ネロ……頼むからもっと自重してくれ。(汗
ネロ:キュウ?(首を横に傾げるしぐさ