3
次の日から毎日部室へ向かった。
校舎の隅にある図書館の、隅にある書庫。
明かりがついていれば、中に先輩がいた。
先輩は好きだったが、読書が好きなわけではなかった。
読む本に悩んだ結果、昨日先輩が読んでいた本を探した。
同じ本は見つからなかったが、同じ作者の短編集を手に取り、部室へ向かった。
始めの一週間ほどは入部届けを持った人達がちらほらきたが、4月末にもなってくるとそういう人達は来なくなっていた。
本当に本を読む人は、図書館内のソファで読んでいたり、自宅に帰るようで、部活で本を読むのは桜と唯しかいなかった。
図書館の閉館時間まで部活で本を読み、閉館時間には先輩と共に帰った。
さようなら、程度の挨拶をする程度だったが、唯は一緒にいる時間を楽しんでいた。
桜の対応はあまり変わらなかったが、少しずつ近づければいいと期待していた。
先輩の本は数日置きに変わったが、唯は最初に手にした短編集をずっと読んでいた。
ゴールデンウィーク中は部活は休みになる。
「…はぁ」
「唯ちゃん!どしたの?」
昼休みのこと。先輩に会えないことを残念に思っていると、玉子焼を頬張りながらクラスメイトの牧野ひよりが話しかけてきた。
「明日から図書館にいけないー!先輩に会えない…」唯がどんよりしていると、
「ほわーそれは残念だねぇ、唯ちゃん、先輩さん大好きだもんねー」
大げさでどこかぼーっとした反応をしながら、ひよりが相槌をうってくる。
背が低く、子供のようにいつもにこにこしている少しだけ耳の大きな小動物のような雰囲気の同級生に少し、むしゃくしゃした。
「うーるさい」
べちっとおでこを叩く。
この子くらい人懐こければ、すぐに先輩とも仲良くなれるんだろうな…
あうあっ
とびっくりしてすっとんきょうな声をひよりが出した。