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「唯ちゃんのお母さん、優しい人だね」
ひよりが保冷剤を受け取りながら言った。
「騒がしい親でごめんねー、なんか女子校の女の子に夢持っちゃってるみたいで!自分の娘だって女子校通ってんのに!」
まあでも、今でも人数が多く人気の女子校ではあるし、すごい子もたくさん通っているのだから変わり者からしとやかなお嬢様までたくさんいる。
母が夢見ているような女の子がいることも確かだ。
ふふふ、とひよりが笑う。
少し落ち着いたのかな…良かった。
あまりさっきの話は持ち返すべきじゃないだろうな、大したアドバイスになるような事も出来ないし、ただ頷くことしか出来ない。聞くようなことはすべきじゃないのだ。
ただただ普段通りの女子高生のように、テレビの話をしたり、宿題をしたりして過ごした。
「友達が泊まりに来てるってなんだかわくわくするね。楽しい」
「そしたら、今度は唯ちゃんが私の家に遊びに来てよ。私のお母さんもさっき言ってたよーお礼もしたいしって」
だんだんとひよりの口数も増え、いつも通りの様子になってきた。
「今日はごめんね。部活中だったのに…」
眠る前、私の部屋に来客用の布団を敷いている時に、ひよりが言った。
閉館チャイムがなり、鞄を取りに部室へ戻ったら、もう先輩は居なかったのだ。
「大丈夫だよー。戻ったら先輩も帰っちゃってたけど、時間も遅かったし。明日部活の時にまた話せるなら話したり、謝ったりする」
部活を出る前にさくらにしてしまったことを思い出す。
「謝るほど先輩気にしてないんじゃない?部室の施錠ってそんなに厳しくもないでしょ??」
ひよりは、私が部室でしてしまったことを知らない。
「うん。そうだといいな…とりあえず、また明日だね。あ、目覚まし、7時に鳴るようになってるから」
「おおお…いつもより一時間も多く寝れる…羨ましい近さだわ」
おやすみ、と声をかけお互い眠りに就いた。




