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がらり、
と意を決してドアを開けた。
ドアの音がしたことでこちらを見たのであろう先輩と目が合った。
昨日、ふらふらと追いかけてしまった生徒。
「入部希望者ですか?でしたらそこの箱に紙を提出していって下されば大丈夫です」
部室には少しの棚と、会議室にあるような長机。
書庫の一角を部室と呼んでいるような、申し訳程度の小部屋である。
長机の端には箱が置いてあり、すでに何枚かの入部届が中に入っていた。
「あの、今、何人くらいいるんですか?えっと、部員が」
「入部届なら20枚近くはもらったかな…
ここは本を読むだけなので、部活らしいことをしたいのなら文芸部をお勧めしますよ。図書委員と同じようなことをたまに頼まれることもあるので、雑用が嫌いならやめたほうがいいです。図書だよりみたいな広報もやりたかったら文芸部か図書委員になった方がいいですね。
あとは、本を読むだけですが、とくにこの部屋で読まなきゃいけないこともないので、家で読めばいいし、入部してることにして幽霊でも特に問題ないです」
少し追い出したさげな、何度も説明しているであろう言葉をつらつらと発していた。
先輩の声は、想像していたような声がした。
「部長さん…ですか?
あの、私ここに入ります。本もここで読んで大丈夫ですか?」
「そうですか、じゃあ、入部届はそこにお願いします。部長です。桐原桜といいます」
「相沢唯です。よろしくお願いします」
お互いにぺこり、と頭を下げた。