表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃の果実を食べさせて  作者: 火垂
柘榴の実
19/22

19

彼女はとても、嬉しそうにしていた。



にこにこと近寄っては来るけれども、私のパーソナルスペースには絶対自分からは入ってこない彼女を少しずつ、信頼し始めた。



後輩とはこんなものなのだろうか、可愛い妹みたいなものだろうか。

人に、自分の好きな本を好きになってもらうのは、同意してもらうのは、とても嬉しいことだった。



私のことをすごいすごいと慕ってくれるのは、なんだか悪い気がしなかった。


床に座り込み一生懸命に読む姿は、去年の先輩には私はこう見えていたのかな、なんて思うこともあった。



夏の、季節になった。

夏服に袖を通した。

まだ梅雨に入ったばかりで蒸しっとしている。


一年生達はまだ夏服が届いていないらしく、すこし大きめのセーラー服をひらひらさせていた。



そんな紺色の制服を着た子に背中を触られびっくりしたのだ。

嫌ではなかったけれどとても恥ずかしかった。




図書館に出て、小さな子に抱きつかれながら、頭を撫でていたあの子をみて、

何故だかとてもショックだったし、また恥ずかしくなった。

いつもにこにこそわそわとしている唯とは、違う顔をしていた。友達だろうか恋人なのだろうか分からないが、違う顔をしていた。


好かれているなどと自惚れていたが、本当はあの子から気を遣われているだけで別に好かれている訳ではなかったのでは、と。

別にそんなに親しくないのだから、

後輩が、図書館の隅であんなことをしていても、ショックを受けるなんておかしい。


どちらにせよ、あれは私が見てはいけないものだったのだ。


ショックというほど私は苦しくなっていない、

ただびっくりしてしまっただけだ。と言い聞かせた。


びっくりして、頭から離れない。


戻ってきた彼女と自然に会話出来ない。

見てなかったように過ごさなければならないのだから不自然な状態で会っては行けない。


そう思い、唯が戻ってこないうちに、桜は荷物をまとめ先に部室から出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ