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ひよりが落ち着くまで、頭を撫でる。
図書館の隅の隅。
ぐずぐずと泣き続けるひより。
ひよりは甘えん坊だけれど、どこか一線引いていて、本当に悲しいとか、つらいとか、楽しいとか、
そういう本当の感情を見せることはない印象だった。
本当は強くて、しっかりしていて、はきはきしていてあまり踏み込んでくれるな、という空気をどこかで出していて。
だからこそひよりは頼りになって信頼出来ていた。
そんな子が甘えてくるのは不思議だったけど、お互いの寂しい部分を補っているような、そんな気持ちだったことに気づいた。入学して数ヶ月、ほんの3ヶ月程度、自分が思っていたひよりと違ったことが予想外で、驚いたのかもしれない。
でも、ひよりが。
普段弱いところを見せないひよりが泣いていて、おちゃらけて悲しんでいるひよりとは、いつものひよりとは違って。
心配だった。
心配という言葉では済ませないくらい、
心配で、動揺がおさまらなかった。
「ひより?
大丈夫??」
すんすんと、泣いている音が聞こえるが、こくりと頷いてくれた。
少し、安心した。
「何があったのか、…聞かないほうがいい?」
今度はふるふると首をふった。
相変わらず、私に抱きついたまま。
「はな、す、から…
ひっ…ちょと…まって…」
泣きすぎて上ずった震える声が下から聞こえてくる。
体の小さなひよりは160㎝ある私にすっぽりと包まれて、しばらく震えていた。




