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「先輩」
前にいる先輩が、振り向く。
「相沢さん」
愛想笑いに程度に、にこ、と微笑む。
少し内気そうな態度が、可愛い。
先輩に追いつくためにぱたぱたと小走りで廊下を進み、
並んで二人で部室まで歩いた。
「本、最後まで読み終わらなかったけど、読みやすいです!ありがとうございます」
にこ、と先輩が笑い返してくれた。
椅子に座りむずむずと本を読んでいると、桜の姿勢の良さが目につく。
「はぁー」
ぐで、と脱力した後、立ち上がり桜の横まで行き、床に座りこんだ。
桜が驚き、唯の動きを見ていた。
「先輩は本当に姿勢よく座りますね、私、机に向かうってあまり好きじゃなくて、
床に座ったり転がりながら読んだ方が落ち着きます」
むぅーとしながら先輩の隣に座り込む。
「私も家だとそんな感じよ。でも、ここには椅子もあるし、埃っぽいから。お尻も痛くなっちゃうしね」
相沢さんは意外と意思表示をしっかりする子なのね、とくすくす笑った。
椅子に座る桜の隣に、床に座った唯。
唯の髪を控えめにぽん、と撫でると、
椅子から立ち上がり、部室に置かれている棚の扉をあけ、少し汚れた座布団を出してきた。
「私もね、たまに床に座るの。一年生の時にね、家から持ってきて…埃で少し汚れてしまっているけれど…よかったら使って」
きっと妹がいるってこんな感じなのね
先輩が、優しい。
前回から続き少し近づけて居るんだろうな、と嬉しくなった。
「わ、本当だ、掃除してても、やっぱり埃ぽいですね」
埃で白くなったスカートをはたく。
座布団を受け取る。




