3話
最初はベトナムでの戦闘です。
因みに軍艦の名前は国防軍になった際に漢字表記に戻しました。
ベトナム中部、越国軍陣地
「何て数だ・・・・・・さっき第3小隊からの連絡が途絶えた、いよいよ我々が最後の希望かもしれんな・・・・・・」
ある小隊を率いる若い中尉がそう呟くと握っていたソ連製のAK―74突撃機関銃を突撃してくる中国軍兵士に向けて放った。
中国軍のベトナム侵攻は僅か3日の電撃的な作戦であったが、ベトナム陸空軍に甚大な打撃を与え、同国占領には充分過ぎる兵力を投入していた。
だがその日、洋上ではある悲劇が起きたのである。
中国海軍駆逐艦南京
「この辺は味方哨戒機の防衛ラインだ、流石に敵潜はいないだろう」
艦長がそう言った直後だった、南京が護衛していた揚陸艦に突如2本の水柱が上がり、揚陸艦は傾斜し、航行不能に陥ったのである
「対潜戦闘、対潜ロケット発射準備完了次第、撃て!!」
艦長がそう言った次の瞬間だった、もう1発の魚雷が近くを航行していた補給艦に命中し、補給艦は一瞬にして大爆発を起こし、沈没したのである。
そしてその数秒後には南京ともう1隻のフリゲートにも魚雷が命中し、2隻とも5秒もしない内に海底へ引きずり込まれたのである。
ベトナム海軍・キロ級潜水艦ハノイ指揮所
「ふぅ・・・・・・海軍総司令部宛に打電”我、中国揚陸艦隊に甚大な被害を与える”と!!」
艦長の言った事を通信長が電文にしてホーチミン市内の臨時海軍司令部へ打電し、再びこの船は海中深くへ消えていった。
横須賀日本海軍艦隊総本部
「南シナ海の制海権は連中の手に落ちたか・・・・・・」
机に敷かれた地図を見ながら白髪交じりの50代後半の男がそう呟いた。
彼の名は西村勇、階級は中将で、日本国海軍設立時に初代第1戦闘艦隊司令に就任した男で、今は国防艦隊の総司令を務めている。
「司令、中韓合同軍の主力がマニラを制圧、米豪連合軍も多大な犠牲によりフィリピンより撤収しました、もしパプアやインドネシアまで陥落するような事態が起きればそれは我が国にとって今以上に危険な事になります」
通信士官がそう報告すると西村は静かに命じた。
「そうか・・・・・・翔鶴機動部隊には必要に応じてフィリピンの米豪軍の撤収をサポートしつつ、南シナ海で遊弋するように伝えとけ」
西村はそう命じると苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべていた。
その頃、翔鶴機動部隊はと言うと・・・・・・
「司令、本部より入電です!!」
「ふむ・・・・・・わかった、これより米豪軍撤収作戦支援のためにフィリピン南部へ急行し、上空支援を行えと言う事か・・・・・・いいだろう」
しょうかく機動部隊を率いる三木原少将がそう言うと翔鶴の艦内はにわかに慌ただしくなり、甲板上に駐機していた同艦搭載の戦闘攻撃機であるF―35C”陣風”が射出機に固定される。
護衛のスサノオ巡洋艦紀伊やイージス巡洋艦足柄、霧島に汎用ミサイル巡洋艦照月、秋月も対空戦闘に備えて準備を終えていた。
紀伊CIC
「目標感知、中国軍J-20戦闘攻撃機複数!!」
「恐らく対艦ミサイルを搭載している・・・・・・SM―6発射準備完了次第、SM―6を小型高速物体およびJ―20に向け発射せよ!」
「了解・・・・・・敵機より高速飛翔物体分離!!対艦ミサイルが我が艦隊へ向け発射された模様!!」
「SM―6、4番から8番斉射!!」
『こちら翔鶴第1中隊、これより敵を邀撃する!』
「紀伊了解!!これより敵情を送信する!」
翔鶴搭載のF―35に紀伊のスサノオシステムで探知した情報ががリンク16によって情報が送信され、F―35に対して紀伊が邀撃管制を行う。
実は日本版エア・シーバトル構想においては紀伊型巡洋艦に邀撃管制能力を付加し、空母は必要時以外は邀撃管制を行わないという事になっている。
「中国軍機が放ったASM9発中6発の撃墜を確認、3発は依然として接近中!我これより攻撃を開始する!ショー1、フォックス2!!」
因みにショーとは翔鶴第1中隊のコールサインである。
これによって翔鶴機動艦隊は被弾を免れたが、中国側は翔鶴機動艦隊が中国の領海内に侵入したから攻撃したと声明を発表し、翌日、波照間島に対し弾道ミサイル攻撃を実施、これによって日中戦争の幕が開いたのである。
ロシアは現在、表向きでは中韓と東南アジア各国及び日米豪に対し中立を保っているが、その反面、越空軍にSu-50(史実のPAK-FA)の、タイに対してはT―90の改良型の売却を約束しているなど、どちらかと言えば東南アジア及び日米豪寄りであり、日本に対しても新造されたMi-24を売却し、中央即応隊やレンジャー部隊が支援機材として導入している。
兎も角、東南アジア戦争、後に第3次世界大戦と呼称された限定地域戦争は遂にアジア全体を巻き込むものとなろうとしてた・・・・・・