19話
21話で終わりにします
蒼空を切り裂く様に多数の空対空誘導弾が日米混成航空部隊と中国海空軍混成航空部隊から互いに向けて放たれ多数の白い煙が目標へ向かう。
その数、なんと200以上、史上最大の空中戦と言っても過言では無いだろう。
『スノークラウドより作戦中の各隊、ミサイルは順調に敵編隊へ向けて飛翔中、尚、敵ミサイル接近につき注意されたし!』
『フェニックス1、了解!』『レインボー1了解!』『ハンター1、了解!』『バスター1、了解!』
どうやら各大隊長も報告を聞いて内容を理解しているようだ。
「イーブン1、了解!」
「イーブン1より各隊に告ぐ、敵ミサイルが来ているぞ!ブレイク!」
イーブン1ことジャック・シムス大佐がそう叫ぶと彼は愛機を旋回させた。
無論、彼の僚機や日米の各隊も密集している事による被弾のリスクを下げる為に一斉に散開し、編隊は一斉にバラバラになる。
一方、中国海空軍混成航空隊も・・・・・・
「来やがったか・・・・・・各機、散開し再攻撃態勢に就け!」
中国海空軍混成飛行隊168機を率いる宋勇燕大佐がそう叫んだ。
「目標・・・・・・捕捉!!・・・・・・PL-12、自律誘導にセット・・・・・・あとは待つだけだ!」
宋がそう言うと愛機、J-37のHMDに描かれた十字線が敵機が居ると思われる未来予想位置に合わさり、完全捕捉と表示される。
「・・・・・・発射!!」
宋がトリガーを引くと愛機、J-37のウェポンベイから2発のPL-12が放たれ、彼は即座に愛機を下降させ敵機の攻撃に備える。
そして3分後、彼のJ-37が放ったPL-12は日本のF-15と米軍のF-16をそれぞれ撃墜し、彼は格闘戦に備えてレーダーを切り替える。
「距離30、もうすぐ格闘戦になるぞ!各機、格闘戦に備えろ!」
そう彼がレシーバーに叫んだ次の瞬間、彼の率いる大隊である上海防空部隊第81戦闘機大隊の2番機で、訓練学校の後輩でもある陵明昆中佐の登場するJ-37が砕け散り、陵の悲鳴が無線機越しで聞こえてきた。
「くそ!八一2が撃墜された!!」
彼が無線機越しでそう叫ぶと続いて厦門方面の基地に所属していた第245航空隊所属のJ-11が砕け散り、海面へと落下していった。
「くそ・・・・・・敵も一筋縄ではいかないエリートさんと言う事か!」
彼がそう呟いた次の瞬間、1機のF-3が彼の乗機の後ろへ回り込んだ。
そのF-3を操るのは日韓戦争のエースパイロットで、レッドフラグ演習や飛行教導隊で好成績を修めた北見誠吾中佐であった。
「目標完全捕捉!・・・・・・・フェニックス1、フォックス2!!」
北見中佐がそう叫ぶと彼のF-3のサイドウェポンベイからAAM-7が飛翔し、ターゲットである宋のJ-37に向けて飛翔する。
(くそっ!!頼むぜ!鳳凰、お前の力にかかってる!!)
既に宋の愛機にフレアが無く、回避すべく彼は思いっきりスロットルレバーを引くと愛機を一気に上昇させた。
しかし・・・・・・
空中で巨大な爆発が起きると彼のJ-37は砕け散り、彼もその機体と運命を共にして戦死したのである。
「敵機撃墜・・・・・・凄い奴だったな・・・・・・」
北見はそう報告し、落ちていく敵機の残骸に敬礼した。
だが、他の部隊も大きな被害を蒙り、米軍は計30機のF-35及びF-22、F/A-18、F-15C/D、F-16と引き換えに35機のJ-31、J-11、J-10、J-30を撃墜、日本防空軍は計31機のF-15、F-35、F-2と引き換えに37機のJ-11やJ-20、J-37を撃墜する記録を出したが、ほぼ日米と中国航空隊のキルレシオは1:1で互角であり、史上最大の空中戦は8月25日午後2時54分に集結した。
そして半数近くを喪失した日米混成航空隊は種子島や奄美大島、徳之島、沖永良部島の空港へそれぞれ着陸し、空母翔鶴やG・フォードのF-35は理由は不明だが、何故か翔鶴へ着艦したのである。
東シナ海海上、巡洋艦紀伊CIC
「敵対艦ミサイル飛来、数・・・・・・70以上です!」
「ソ連式の無差別飽和攻撃か・・・・・・全艦、対空戦闘用意!」
加賀の艦長がそう命じるとディスプレーに表示された赤い光点に次々とミサイルの照準がなされた事を示す十字がつく。
「日米合同艦隊各艦へ告ぐ、本艦及びサンジャシントの戦闘統制システムに従って、対空誘導弾を発射せよ!」
『フィッツジェラルドCIC、了解!』『金剛CIC、了解!』『カーチス・ウィルバーCIC、了解』『愛宕CIC、了解!』
イージス艦に加えてFCS-3を搭載した青葉や秋月からもデータリンクによって情報が転送されて来て、確実な対空迎撃網が整う。
「各艦、撃ち方始め!一斉斉射!!」
紀伊の艦長がそう叫ぶと多数の艦艇から凄まじい数のミサイルが目標である中国海軍の対艦ミサイルに向けて飛翔していく。
無論、70発以上撃たれているから全てを防げる確信はないが・・・・・・
防げなかった場合、やがて悲劇が訪れるのは間違いない。
艦長は胸中で不吉な予感がしていて何かが詰まっていた。
そして5分後、それが現実のものとなり、味方艦が大破する光景を目の当たりにする事になるのである。




