16話
予定では次回からの5話くらいで終わらせます。
桐村大佐も梁大佐も41歳と言う事にしときます。
派手な塗装をした梁のJ-37はと僚機は先制攻撃によって2機のF-35を撃墜、続いて桐村らのF-3小隊を捕捉、ドッグファイトを挑んだ。
だが、梁の発想は甘かった。
そう桐村と彼が率いる2機のF-3を操る2人の操縦士は飛行教導隊と自衛隊時代から存在する防空軍のアクロバットチームであるブルーインパルスのどちらかに所属した経験があり、桐村含む3人はアリゾナ及びアラスカで毎年行われるレッドフラグ演習にも5回以上参加しており、桐村自身もブルーインパルスと教導隊、どちらにも所属した経験がある猛者である。
更に言えば桐村は日韓戦争で2機撃墜の記録を保持しており、実戦経験と冷静沈着さを有している優秀な指揮官でもあった。
「貰った!!・・・・・・発射!」
梁がそう呟くと彼は握っていた愛機のトリガーを引き、PL-12空対空誘導弾を放ち、愛機J-37は急旋回をして回避行動へ移る。
一方、桐村らは・・・・・・
「ツルギ1よりツルギ2、3、敵ミサイルが来るぞ!注意しろ!」
『ツルギ2、了解!』『ツルギ3、了解!』
桐村の僚機であり、同期でもある北河内良樹中佐と親友でもある宮倉大輝中佐がそう言うと3機のF-3は息があった編隊機動を取っていた。
(タイミングを間違えたら一貫の終わりだ・・・・・・フレア射出!!)
桐村大佐が心中でそう呟くと2人の操縦するF-3も同様にフレアを放つ。
この3人は空中で息が合い、梁とその部下2人をかなり翻弄させ、その末に梁搭乗機含む3機を格闘戦の末に撃墜した。
この空戦が終わった数日後の佐渡島奪還作戦においてもこの3人は常に前に出て敵戦闘機の排除に努め、桐村は47歳と言う若い年齢で空軍少将へ進級するが、彼はデスクワークを拒み、その後も前線で戦闘機隊の指揮を執り続け、全空軍将校から信頼と尊敬を集めたという。
閑話休題、桐村らのF-3の放ったチャフにPL-12が見事に吸い寄せられると、桐村小隊はすぐさま反撃態勢に移った。
「ターゲット・・・・・・完全捕捉!!」
桐村の愛機であるF-3飛燕ⅡにはF-35シリーズ同様に従来型の照準装置が装備されていない。だが、その代わりとしてヘルメット自体が昇順装置として機能する様になっており、操縦者の見ている方角を始めとした様々な角度の目標に対して交戦が可能となっており、サイドセンサーによる捜索能力も相まって空中戦における死角は殆ど皆無といって等しい能力を持つ。
「ツルギ1、フォックス1!!」
桐村がそう叫ぶとメインウェポンベイからAAM-4Cが下に蹴られる様に射出され、目標である梁のJ-37に向けて飛翔する。
だが、桐村達がAAM-4を放ったのはAAM-4の最短有効射程もしくはやっと視程内もしくは視程外とも言える微妙な距離である30㎞付近だった言う事もあり、梁はチャフによってAAM-4を巻く事に成功した。
「敵さんも一筋縄ではいかないようだな・・・・・・」
敵がミサイルをかわす様子を眺めていた桐村が言うと、彼の愛機にも警報音が鳴り響き、彼のF-3はミサイルを振り切るべく、一気に急上昇をし、空中でそのまま宙返り(※1)をすると敵機の後方に近い方向へ向かった。
「・・・・・・ふっ、お前の実力は本物だ・・・・・・だが、勝負はここまでだ!ツルギ1、フォックス2!」
桐村がそう言うと彼の愛機であるF-3Aのサイドウェポンベイから1発のAAM-5が目標に向けて飛翔する。
梁は操縦桿を傾け、回避を試みたが、もう既に遅かった。
刹那、梁の搭乗するJ-37は空中で四散し、彼も戦死した。
「・・・・・・敵機撃墜!」
桐村はそう呟き、片手で落下するJ-37に敬礼していた。
そして彼の胸中には無念にも空へ散った空の勇士に対する敬意を表すると言う気持ちに溢れていた。
その桐村もまた、いつ戦死するかわからない、そうそれはどの戦闘機乗りも同じで、戦闘機乗りは戦って散った戦闘機乗りへ敬意を送るものである。
(それにしてもあの敵機の攻撃スタイルはアクロバット飛行隊に所属していた梁にそっくりだったな・・・・・・仕方あるまい、俺も彼も軍人だ)
彼は国が異なれど、友情を築いた友に対して冥福を祈った。
桐村はこの作戦を終え、小松基地に帰還すると、仲間たちに大歓声を浴びせられたが、彼自身はその歓声を冷ややかに感じていたと言う。
それは自らの手で葬った敵に対する鎮魂の念が彼にはあると言う事の表れでもある。
そして、その桐村自身、2024年に駐在武官として北京駐在の頃にある中国軍パイロットと家族ぐるみの友情を築いており、そのパイロットこそが今回、彼が交戦した中佐時代の梁陽翻大佐であった。
一方、マニラ防衛の為に中国軍の戦車や装甲車、駆逐艦やフリゲート、それに加えてJ-11及びJ-10戦闘機が市街地や港湾、空港に集結し地対空誘導弾陣地や対空砲陣地なども戦いに備えていた。
マニラ市内、中国軍防衛司令部
「パナイ島防衛部隊より入電、パナイ島が陥落しました!!」
「いよいよ我々も戦わねばならない事になりますな・・・・・・」
司令がそう言うと司令部と化した市庁舎の前に掘られた地下司令部へ降りて行った。
同じ頃、マニラ沖で停泊していた空母山東にJ-11Cが着艦し、山東はマニラ防衛の為にマニラ湾で警戒任務に就いていた。
※1 空中でそのまま宙返り
この機動はクルビットと言う、コブラが可能なSu-27等が得意とする。
実際は空中戦において無意味と言われているが、ここは敢えて空中戦のロマン的な描写が欲しかったので使用しましたw




