13話
予定では残った2隻の中国空母を無力化し、フィリピン本土と制海権を奪還して、中国側がベトナムからも撤収して終わりにしたいと思います。
中国軍ヘリを捕捉した3か国合同軍の戦闘ヘリが次々にAIM-92を放ち積極攻勢に入り、対する中国軍ヘリはフレアを射出し、低空に降下し、ミサイル回避機動をとって応戦しようとはしない。
しかし、性能で劣るとは言え中国軍のヘリの方が数が多く、日米豪合同軍のヘリはミサイルを撃ち尽くしたら撤収するしかなかった。
だが中国軍のヘリはここぞと言うタイミングで積極攻勢に入った。
3か国合同軍のヘリに対して一斉に中国軍のZ-10攻撃ヘリが対空誘導弾を放ち、AH-64EJ、AH-1Z、EC665を蹴散らす。
「くっ・・・・・・中国軍の連中も手ごわいな!!」
後に中国軍のセスナ含む7機の撃墜記録を持ち、世界で唯一のヘリパイ撃墜王と称される事になる田倉少佐が愛機のコックピットで呟いた。
警報、警報・・・・・・敵ミサイル接近中・・・・・・
「吉田!右へ旋回したら3秒後にフレアを撃て!」
「任せて下さい!!・・・・・・3、2、1・・・・・・射出」
コパイロット兼射撃手の吉田中尉がそう言うとAH-64EJの機体右舷から多数の閃光が飛び散り、更には強力なローターフォッシュにより形成された強風で舞い上がった砂埃とフレアが合わさり、中国軍のミサイルはその砂埃の中へ消えていったのである。
砂埃の煙幕のおかげで田倉と2機の米軍AH-1Zが無事に揚陸艦にたどり着く事が出来たが、この戦いで50機投入された内の、実に7割に匹敵する33機が中国軍の攻撃により喪失したのである。
空挺隊員を乗せたヘリは戦闘ヘリが身を挺して中国軍の戦闘ヘリを迎え撃つ中、護衛の戦闘ヘリ12機と共にダバオ市上空へ到達した。
だが、中国軍の激しい対空砲火に阻まれ、HH-53が撃墜され、多数の米陸軍降下隊員が戦死したのを皮切りに輸送ヘリが被弾による損傷などによって降下を断念せざるを得なくなった。
無論、戦闘ヘリが対空火力の鎮圧にあたるが、所詮は多勢に無勢、強力な中国軍対空火力の前に次々と撃墜されたのである。
地上でも中国軍戦車が日米豪軍の戦車の進撃を阻害、90式戦車7台含む実に21台もの戦車を撃破し、34名の戦死者が生じたのである。
そして中国軍の恐ろしさは歩兵隊にあったのである。
そう、朝鮮戦争で米軍兵士を恐怖に陥れた人海戦術である。
上空のヘリの援護や戦車隊も苦戦する中、装甲戦闘車搭載の機銃などで迎え撃つにしても数が多すぎて弾が不足する。
それは機銃を持って迎え撃つにしても同様だ。
中国軍は人海戦術を用いてダバオ奪還を目指す自由フィリピン軍と日米豪軍に大打撃を与えたが、7月26日午前5時20分に状況は一転した。
その時刻、薄明るくなりつつあるダバオ湾には中国軍の哨戒を擦り抜けて同湾への侵入に成功した4隻の大型水上艦の姿が認められた。
先頭を走るのは艦橋と船体前部にある台形をした砲塔と上部構造物の後ろにある四角い砲塔と1本の砲身以外に突起物は無く、後ろにはヘリ甲板と思しき広い空間がある船で、名前は扶桑と言う。
その後ろを航行するのは巡洋艦大波、巻波、漣と言い、どちらも2000年代に完成した、まさに脂の乗った時期を迎えた護衛艦もとい巡洋艦だ。
巡洋艦扶桑戦闘指揮所
「艦長、主砲SAB装填完了しました!」
砲術長がそう報告すると艦長の大野大佐が射撃命令を下した。
「そうか・・・・・・1番、目標ダバオ市郊外の中国軍陣地!撃て!」
艦長が射撃命令を下すとステルスシールドを施した15㎝AGSが火を噴き、1発の砲弾がタバオ市郊外に向けて飛翔する。
30秒後、扶桑の主砲から放たれた特殊な砲弾は手品の様に中国軍の野戦陣地に15㎝砲弾が直撃、通信設備や野営テントを吹き飛ばし、ここの部隊の指揮を執っていた宋大佐以下上層部を破片によって殺傷した。
「えいっ、攻撃ヘリは離陸し、砲撃のあった方角へ向かわせろ!」
司令が爆死した直後、副官がそれを聞いてZ-10攻撃ヘリに対戦車用の武装を施して砲撃のあった方角へ向かわせた。
「に、日本軍の水上艦艇です!!」
観測員の余大尉がそう報告した直後、水平線の彼方から多数のミサイルが飛来し、彼の乗機の真横を通り過ぎる。
日本国防海軍の最新鋭超音速巡航ミサイルSGM-21梅花だ。
梅花巡航ミサイルはダバオ市内にある市役所へ向かっていた。
いや、市役所というよりは今は中国軍の野戦司令部と言った所か。
5分後には中国軍の野戦司令部となった旧ダバオ市役所に梅花巡航ミサイルが命中し、孫少将以下24名が死亡もしくは意識不明の重体になるなどしたのである。
セレベス海、中国艦隊
空母山東戦闘指揮所
「各戦闘機は発艦し、3か国合同軍に対し攻撃を加えよ!!」
山東打撃部隊司令である金政軍中将がそう命じると、ただでさえ慌ただしい艦上がより慌ただしくなり、多数のJ-15が準備に就く。
一方、日本側も空母翔鶴の艦上が慌ただしくなっていた。




