一章
【一章 なんだあれ】
恭輔は大学に今春入学したばかりの青年である。
最近はだんだん生活にも慣れ、そこそこ友人もでき
独り暮らしをしているのもあり友達の家に遊びに行ったり
友人を自宅に泊めたり泊まりに行ったりしていた。
しかしこの平凡すぎるが楽しい日常は悲しくも友人のマンションから帰宅するときに崩れ去ることになる。
黄昏時、恭輔が河川沿いのサイクリングロードを自転車で走っていると
ポケットから携帯端末の呼び出し音が鳴った。
「―もしもし??」
「あ、恭輔?」
電話の内容はテレビを見ていたら恭輔が普段電話主宅に行き来するのに通るサイクリングロードで人の首を刈る事件が多発していたため
別の道から帰った方が無難ではないかというものであった。
しかし人の話をきかない恭輔は電話を切るとそのままサイクリングロードを突っ走る。
なるほど暫く行くとなにやら人通りが激しく少ない…
しかも、なにやら異様な感覚に陥った。
どんな感覚だと言われても説明不能な感覚に。
流石におかしいと思い自転車から降りて辺りを見回したところ
真後ろ、それも張り付くような位置に人がいた。
いくら高校時代やんちゃだったとはいえ、停止直後の真後ろに人がいたら驚かずにはいられない。
「あんたさ、なんか用?」
聞くがそこいる人影はなにも喋らない。
と、思いきやいきなり何かを振りかざしてきた。
「――!?」
必死の回避で直撃を避けたが肩を掠めたそれは細長い陽炎のように歪み、半透明の何かであった。
おかしい。
すめただけのはずなのに異様に肩が痛いのは何故だ
それきり動かない人影を見て、いやはや人は極限になると何をするか分からないもので
痛みを和らげようと、恭輔は新しく煙草に火をつける。
大量に吸って一気に肺に入れるとクラクラしていい気分だ。
しかしそこで気づいてしまった、煙草の煙が昇らないことに。。。
肩の血が重力に逆らっていることに。。。
「お前、人間の癖によくやるな。」
そう言うと人影は消えていった。
また恭輔はなんださっきのあれは、と思うと同時に
肩の傷を見て
「あ〜あ。やっちゃった。」
とつぶやいた。