結ばれたマリア様
私はマリア。キリが好き。でも、同じくらいシンも好き…。
でも、この前キリと二人で花火をしたとき…すごくドキドキした。…私はキリが好きなのかな…。
夏休みも終りに近付いてきたある日、携帯に1通のメールが届いた。シンからだった。
『話たいことがあるから会えない?もし良かったら図書館に来て。』
という内容だった。
話たいこと…なんだろう…。
そう思って用意をしていると、キリがやって来た。
「どっか行くの?」
相変わらず人の家も自分の家みたいにしている。
「そうよ。」
ワザとあっさり返す。
「誰と会うんだ?もしかしてシンか?」
…カンのいいヤツめ…。
「…まぁ…呼び出されたんだ…。」
なぜかシンに会うことがキリに悪い気がして目をそらした。
しかしキリは以外にも
「ふ〜ん…あっそ…。」
と興味薄だった。
ま、別にいいんだけど…。
ちょっと拍子抜けしたけど、私は家を出た。シンが私にしたい話…なんだろう…。
私は待ち合わせ場所の図書館へ急いだ。
入ってスグの所にある、読書スペースでシンは本を読んでいた。入ってきた私を見つけ、近づいて来た。
「やぁ、来てくれたんだ。ありがとう。」
「ううん…。別に、ヒマだったし。」
「そう…んじゃ、でよっか?この本はもう借りたし。」
「うん。」
そうして私たちは図書館を出た。
ギラギラと陽射しが眩しい。夏休みも終わりとはいえ、まだまだ夏だった。
「んでっ?話ってなあに?」
私はシンに聞いた。
「…えっと…。」
シンは少しうろたえる。でも、こっちを真っ直ぐ見て一言告げた。
「マリア、好きだよ。初めて会った時から…。」
…えっ?!…
「シン…?今…何て…?」
「マリアが好きだよって…言った…。」
「…シン…。」
これは現実なんだろうか?本当にシンが言っているの?
「…マリアは…俺がキライ?」
「キライじゃないよ。…ただ…」
「…ただ…?」
なぜか分からないけど口が勝手に動いていた。
「…ごめん…。シンとは付き合えない…。」
…なんで?私…。
シンの事、好きなはずじゃない…。なのに…。
でも、心の底で、それはダメと止める声がする。なぜだろう…。
そんな私に、シンが問いかけた。
「…なんで?やっぱりマリアは…キリが好きなんだね。」
少し寂しそうな顔。
「…よく分からないの…。…でも、シンとは付き合うとか…何か違う気がする。」
「…そう…。」
そう言うと、シンは急に怖い顔で言った。
「…マリアは知ってるの?オレとキリの事…。」
「シンは生徒会長でキリは反生徒会の会長なんでしょ?」
「そう…。マリアは…どう思う?」
「どうって…私は星修の事はよく分からないけど…。生徒会は…やりすぎなんじゃない?」
「…そっか…。マリアもそう思うのか。…残念だよ…。」
そう言ってシンは目を背けた。
「…だって…謹慎の事とか…。他にもイロイロやってるんでしょ?」
「俺はね、」
シンは話だした。
「キチンと出来ないヤツが嫌いなんだよ。服装だって、学校生活だって…だから、ちょっと手を加えただけさ。なのに…マリアにそう言われるなんて…心外だよ。」
「…シン…。」
「もういいさ。マリアがそっち側の人間だって分かっただけで諦めがついた。」
シンは私に背を向けて歩き出した。
「じゃあね。マリア。」
手をヒラヒラと振り、こっちを振り向きもしない。
なぜか、その姿を見て、ホッとした。…私はこの人を選ばなくて良かった…と。
シンへは不思議と怒りや悲しみは無い。かえって清々しい。
そして、今、はっきりと分かった…。
―…私はキリが好きなんだ…!―
私は電車に飛び乗り、急いで家へと帰った。
…どうしてかは分からないが、今、スグにキリの顔がみたい…!
必死に走った。夕暮れは大分涼しくなったけど、汗が吹き出す。
「おい、マリア…?」
いきなり後ろから声がした。―…キリだった。
「キリ!」
「どうしたんだよ…?汗びっしょりじゃないか…。」
キリは心配そうに私の顔を覗きこむ。私は息を整える。
「…マリア…?」
…言おう。
今、言おう。
今、言わなきゃ。
「…キリ…」
私は顔が熱いことに気付いた。多分理由は二つ。走ったからと…キリのせい…。
「私、この前キリに告白されたとき、ことわったじゃない…。」
「えっ…。うん…。」
「…あの時は気付いてなかったの。…でも…でもね、あの日から、キリの事、ただの幼馴染みに見えなくなったの。」
「…マリア…それって…!」
「…キリ、私、キリのこと、好きみたい。もし、まだ私を好きでいてくれるなら…私が好きだったら…付き合って下さい!!」
…言った…!!
…言えた…!!
私はキリを見つめる。キリも私を見てる。
「…オレ、優しくないぞ。無器用だし、アイツみたいに…シンみたいには出来ないぞ…それでも良いのか…?」
「それでいい。キリはそうしてくれるほうが良い!」
私は笑顔で答えた。
…キリは…私を抱きしめた…。
「マリア…。オレ、すっごく嬉しい…。ありがとな。」
「…キリ…。」
私たちは、こうして付き合うことになった。
ちなみに、このあと星修高校と華風高校は学校同士が合併し、星華高校となった。
そのため星修の内部争いは自然消滅し、生徒会と反生徒会との争いもなくなった。
…でも…これは私たちが卒業した次の年から。
でも、シンは私とキリが付き合ったと知ったら、前ほど無茶な校則は作らなくなったらしい…。
―おわり―
「マリア様に恋して!」、今回で最終話です。いかがでしたか?
初めは3話程で終るかな…と思っていましたが、結構続きました☆
私自身楽しみながら執筆できて、良かったです。
それではこの辺で。また別の作品でお会いしましょう。