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マリア様の出会い


私は茉莉乃亜美。通称マリア。

私は3日前、三木さんという人の携帯を拾い、届けた。

三木さんはカッコいいサラリーマンでお礼がしたいと私の住所を聞いた。

あれから3日…なんの音沙汰もなし。

私はクーラーのきいた自分の部屋へいた。

3日前、図書館から借りてきた本を読んでいる。

あの日は本を借りるために図書館へ出かける途中だった。

私は本が好きだ。

ジャンルや流行などは関係なく、面白そうな物はとにかく読んでみたい。

実際、この前借りてきたのは歴史小説とエッセイ。ちなみに今は外国の小説を読んでいる。

「…なんにもないじゃん…。」

わたしはそう呟きながら本から目をはなし、『う〜ん…』とのびをする。

別にお礼を期待していたわけじゃないけど、なんにもないという事に少しガッカリしていた。

ふと窓の外を見る。

今日も相変わらず暑い。

閉めきった窓の外では、セミが鳴いているのだろう。かすかに聞こえる。

今日は家に私一人だ。

お母さんは保育士をしていて、今日も仕事。

お兄ちゃんは大学のアウトドア同好会でキャンプ。妹は友達とプールへ行ってしまった。

お父さんは単身赴任で今年の4月からドイツ。

「あーあ。つまんないの。」

また声に出してみた。

すると、コンコンと窓を叩く音。

「またアイツか…」

私はぼやきなから窓へ近付く。

ガチャッと窓を開けた。

外のムンムンした空気が入り込む。

そして、窓の外へ立っている人物を見て、溜め息をつきつつわたしはぼやいた。

「やっぱり…。」

「なんだよその言い方!っていうか俺以外に来ないだろ。」

「…まぁ…。っていうか暑くなるから早く入って。」

「はいはい。お邪魔しまぁす。」

入って来たのは、幼馴染みの霧島煉(きりしま れん)。通称キリ。

「んで?」

私はうんざりしたように聞く。

「んでって?」

「んでって?じゃないわよ。用件は?」

「そんなに怖い顔すんなって。あのさ、ウチんち今改装中じゃん。」

「そうね。真っ昼間からいい近所迷惑だわ。」

わたしは皮肉を込めていい放つ。

「ひっでぇな。それで今クーラー使えないから涼みにきたの。」

キリはぬけぬけと言う。

「ったく…図々しい…」

「いいじゃん。今、一人なんだろ。」

「それが分かっててよく来れるわね。女子高生の部屋に。」

「マリア、そんな奴かよ。心配すんな別に何もしないよ。」

ふざけたようにわらうキリ。

「そんなことしたら炎天下のアスファルトの真上に放り出すわよ。」

わたしは冷たくいい放つ。

「おぉ怖い。そんなんだから彼氏出来ねぇんだぞ。」

「あんたもいないじゃん。ホラ、静かにしてよ。これから宿題するんだから。」

しっしっと手を振りながら私は勉強机へ向かう。

本当は本の続きが読みたかったけど、こいつの前では読みたくない。

どうせ、『また本読んでるのか?』とからかわれるのがオチだから…。

「宿題ねぇ…そんなに華風は厳しいのか?」

「私は計画的なのよ。それに華風と星修は違うの。」

「ふぅ〜ん…」

そう言いながらキリはぐるっと部屋を見渡し、

「ま、どーでもいいけどね。」

と言って横になる。

私は生まれた時からキリと一緒だ。

私とキリは同じ病院で生まれた。それも1日違いで…。

元々隣同士仲が良く、同い年ということで私たちは小さい頃からずっと遊んでいた。

また、屋根づたいでお互いの家を行き来できるのというのもよく遊ぶ原因だった。

キリにはお姉さんがいる。

綺麗で優しくて…私は大好きだったが今はお嫁に行ってしまい、いない。そのせいか近頃はよくやって来る。

寂しいんだろうな…と思う。

なんせお姉さんが嫁いだのはほんの1ヶ月前。まだ慣れないんだろう…。

そう思うと少し哀れな気もするが、生まれてから17年も一緒だとさすがにうんざりしてくる。

幼稚園から中学まで同じ学校、同じクラスだった。嫌がらせかと思うほどに…

高校はさすがに離れたいと思い、あえて女子高にしたが、キリは男子高だった。

高校生になって、それまでよりは会わなくなったものの、今でも朝は同じ電車だし、高校も近くだ。

おまけにお姉さんの事と夏休みが重なって、また最近はよく一緒にいる。

キリは嫌いではないが、私をからかうキリは嫌いだった。

マリアというあだ名もキリが付けた。キリは私が名付けたけど…。

そんな事を考えていると、玄関からチャイムが聞こえてきた。

「誰か来たみたい…。」

「新聞の勧誘じゃないの?」

キリがふざける。

「はいはい。どーでもいいけど行ってくるから。」

そう言いながら2階の私の部屋を出て、玄関へ行く。熱風が私を包む。

「はぁい…。」

ドアを開けると、男の子が立っていた。

妹・美野里(みのり)の彼氏かと思った。

美野里は2つ年下だが私よりマセているから…。

ところが、男の子は意外な事を言った。

「えっと…茉莉乃亜美さんはおられますか?」

「亜美は私ですが?」

「あ、三木慎弥(みき しんや)と言います。先日は父がお世話になりました。」

そう言って男の子は頭を下げる。

私はびっくりした。

あの若そうなサラリーマンに、こんな大きな子供がいたなんて…。

男の子は私をよそに話を続ける。

「それで、これ、お礼と言ってはなんですが…良かったら使ってください。」

そう言って紙袋を私に渡す。

「本来なら父が直接来ればいいんですが、急に1ヶ月海外出張になってしまって…。」

「そうなんですか…ありがとうございます。」

男の子を見てみる。

なるほど、どこかあの三木さんに似ている。

目だろうか…でも三木さんよりしっかりしていそうな印象。

「あの…」

「はい?」

失礼だとは思ったが、気になったので聞いてみた。

「失礼ですが…お父さんっていくつの方ですか?すごく若く見えて…。」

「あぁ、39歳です。来月で40歳…。若いですか?」

「えぇ。30代前半に見えました。」

「ははは。父に伝えておきます。亜美さんは何年生です?」

「私は高2です。」

「あ、ならタメですね。俺は星修高校の2年です」

「星修?わたしは華風華風です。近くですね。」

「ほんとですね。あ、それではこの辺で失礼します。今回は本当にありがとうございました。」

「いえ。こちらこそ気を使わせてしまって…お父さんにお礼言っておいてください。」

「はい。それでは。」

そう言って、慎弥君は去っていった。

爽やかで、いまどき珍しい礼儀正しい人だ。

紙袋の中をみる。形からしてハンカチかなにかだろう。

慎弥…この名前…どこかで聞いた気がする。

「あっ…電話の…」

電話の着信表示にあった"慎弥"は彼で、三木さんは息子の携帯で電話をかけていたのだ。

納得しながら私は部屋へ戻る。

慎弥君か…。カッコよかった。

階段の踊り場に、キリがいた。少し不機嫌そう。

「今の男、誰?」

「えっ?聞いてた?この前電車で携帯拾って届けたら、息子って人がお礼に来てくれたの。」

「三木慎弥…」

「なんだ、キリ、知ってるの?そっか、同じ学校だもんね。」

「…俺、アイツ嫌いだ。」

そう言いながらキリは階段を下りる。

「あれ?帰るの?」

「トイレ。」

そう言ってそそくさとおりてしまった。

そっけないな…。ま、いっか。

お礼ももらったし、"慎弥"も見れたし。

茉莉乃亜美。ちょっといつもと違う夏の予感がする、高校2年の夏休み1日目だった。

第2話にしてやっと重要な人物が出せました…が、まだ恋愛っぽくないですね…3話では必ず…!

ご感想・アドバイス、励みになります!あれば是非下さい!(もちろん、ご指摘も励みになります!)

それではまた3話でお会いしましょう!



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