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マリア様と携帯電話


『マリア』。

わたしのあだ名。

茉莉乃亜美(まりの あみ)を縮めてマリア。

そして私、マリアは悩んでいた。


目の前には携帯電話。

私のではない。わたしのはポッケにちゃんとしまっている。

なぜここに自分のではない携帯があるのかというと、10分前に遡る。

10分前、私は電車に乗っていた。休日だというのにがらがらの車内。

そのなかの空いた席に座る。

すると、いきなりバイブ音がした。

「?!」

ビックリする私。

携帯の存在すら気付いていなかったのでものすごく驚いた。

なぜか無意識に周辺に人が居ないか見回す。

居ない。

まだバイブは止まらない。

「で…出るべきなの?」

思わず声に出てしまう焦り。

するとバイブは止まった。

少しホッとして携帯を手に取る。

黒い外装。

私と同じ会社の携帯だ。

開いてみると、携帯に元から入っていたと思われる画像の待ち受け画面。

さっきの着歴をみた。

『慎弥』とその下に『課長』という表示。男の…サラリーマンの物らしい。

「どうしよう…駅員さんに届けるべきかな…」

こういう場合は、やはり警察よりも駅員だろう。

降りた駅で渡そう…と思っていると、手元から振動が…

着信だ。見ると先程の『慎弥』という人から。

出てみるか…この人の事を知っている人かもしれない。

「…はい。」

「あの…どちら様ですか?」

若いんだか中年だか判断に困る様な微妙な声。

私は恐る恐る返す。

「すいません、私、電車の中で携帯を拾った者でして…持ち主ではないのですが…。」

すると電話の主は嬉しそうな声で、

「そうですか!その携帯、私のなんです!」

…本人?

「そうなんですか?さっき見つけて電話があったので出たんです。」

「そうでしたか。ところで、今はどこに?」

「これから県立図書館に行くところだったんですが…」

「そうなんですか!私の会社、近くなんです。図書館で良いので渡して頂けないですかね?」

「はい。分かりました。今からだと10分ぐらいかかりそうですが…良いですか?」

「構いません。では、10分後に図書館の前で。失礼ですがお名前を…」

「あ、茉莉乃亜美といいます。」

「茉莉乃さんですね。私は三木といいます。ではまた後で。」

「はい。」

通話終了…。ビックリした…。

10分後…あと2分程で駅に着く。そこから図書館までは5分程。

本当はさっさと涼しい図書館に行きたかったけど…

「ま、いっか。」

…そして今に至る。

暑くて汗が出る。セミはうるさいぐらいに泣いている。


すると、少し遠くの方から足早に近付いてくる人が見える。

男の人。もしかしたら…。

手を振りながらこっちへ近付いてくる。まちがいない。

「やぁ、茉莉乃さん?」

「はい。三木さんですか?」

「そうです。ありがとうございます。いやぁ、助かりました。午後から取引先から大事な電話がかかってくるんだったんで。」

三木さんは本当に嬉しそうだ。

「そうだったんですか。あの…じゃあ、コレ…」

私はカバンから携帯を取り出して三木さんに手渡す。

そして、そっと顔を見てみる。

結構カッコいい。

年は…30代前半だろうか…おじさんというよりはお兄さんという言葉の方がふさわしいように思える。

「あ、そうだ…」そう言いながら三木さんはポッケからメモ帳を取り出した。

「ここに住所と名前を書いてくれませんか?」

「えっ…」

「あ、別に変なことに使う訳じゃなくて、お礼がしたいんです。」

「えっ…そんな…別に大した事してないですし…」


「いや、本当に助かったんです。そう言わすに…」

三木さんはメモ帳とペンを差し出す。

…書かないと返してもらえないな…。

私はペンを受取り、メモ帳に住所と名前を書く。

「それじゃあ、これで…」

「ありがとうございます。それじゃあ、また後日。」

「はい。それでは。」

…変な日…。

立ち去る三木さんを見ながら私はそう思った。

「そうだ、図書館図書館。」

そう言いながら私は図書館へ向かった。

ジリジリと日が照りつける、暑い暑い休日。

茉莉乃亜美。高校2年生。なにかが始まりそうな、夏休み前の休日だった。


新連載です。1話だけだと、『どこが恋愛小説だ!』と怒られそうですが、2話からだんだんそれらしくなります。話数を重ねる事に恋愛小説らしくなるようにがんばります!

ご感想やアドバイス、是非下さい。それではまた2話で…。


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