電子音な声~傍にいてくれる少女~
少女との初めての出会いからそう長く年月が経つ前に
ある有名な学者がいろいろな物を生みだした。
その学者によって医療や発明などがこの国では他の国とは群を抜いて発展して行った。
僕の家は奇跡的に資産家だった、
そのため、僕の耳は最新の医療や機械などによって相手の伝えたいことが伝わるようになった。
僕の恋した少女の声も伝わる。
でもあくまでも伝わる。
僕の耳には電子音としてしか相手の声が伝わってこない。
強弱もなければ音程もない。
そんな声。
僕には音の強弱も音の音程も元から知らないケド・・・
きっと素晴らしいものなんだろう。
音が聞こえないという未完成な人間だった僕だけど・・・
完成に近づきつつある。
僕みたいに障害者と一般的に言われる人間はそう少なくはないだろう。
僕と同じ苦しみを味わった人間だっている。
そんな人たちは・・・やっぱり未完成なんだろうか?
ぼくと同じ未完成?
きっと違うんだろうな・・・
僕と同じ病気でもその人達は未完成なんかじゃない。
僕が・・・
ただ僕が未完成なんだ。
「ちょっとっ!蓮地聞いてるのっ?」
「うわぁっ!」
いつの間にか梓紗が話しかけてきていた。
「そんなにビックリすることないじゃんかーっ」
「・・・・・・・・・・・」
何て言っていいか分からない。
とりあえず謝った方がいいんだろうが~・・・
心臓がなんだか痛くて声がでない。
「また考えごとしてんでしょ~?」
「か・・・考え・・・ごとじゃない・・・」
やっと声がでた。
電子音として音が聞こえるようになってから人と話す様になったから
まだ言葉を上手く選べないし何て言っていいのか変わらない。
できてYESかNO程度・・・
「じゃあ何んでぼぉ~としてるの? 私の話しつまらない?」
「ちがっ・・・」
なんて言えば伝わるのだろう?
僕は一生懸命言葉を探す。
「・・・? ゆっくりでいいから言って」
伝える言葉を選らんでいるけど言葉が見つからない。
単語、単語でしか出てこない。
思い出。過去。出会い。少女。感謝。恋。
「・・・梓紗・・・との・・・こ・・と・」
あれ?
僕普通に梓紗に昔の思い出のこと思い出してたって言えばいいのに
自分から恥ずかしいこと言ってないか?
そう思えてくると僕の体温はどんどんと上がってきた。
「えぇ? 私がいるのに私のこと考えてたの?」
「そうなんだけ・・・ど・・・そうじゃないんです・・・」
あれ?
僕とうとう敬語になっちゃったよ、
どうしよう。
どう説明しようか・・・
「もう・・・はっきり良いなよ」
呆れた顔で僕を見てる。
いや・・・
ちょっとイラついてる?
伝えたいことが伝えられなくて涙がでてきそうになる。
「初め・・・て・・・会った・・・梓紗と。」
梓紗は最初は分からないという表情をしていたが、
数分で思い出したようすだった。
「ぁ・・・あれはまだ小さかったからっ///」
何のことを言っているのだろう?
確かに梓紗に出会った頃は小さかった。
まぁいまでも十分お互い子供だけど、
「あ・・・えぇ・・と」
なんのこと?
そう聞きたかったのだが・・・
「もうっ/// 昔のことなんだから忘れてよっ!」
そう言われて体を軽く押された
別に大した力じゃなかったケド僕はその力の受けた方向へ軽く倒れる。
「・・・えぇ?」
今僕にはおかしなことがおきている。
梓紗に押されて軽く後ろに倒れたのはいいけど・・・
その後ろは下がり階段だった・・・
押された力を打ち消す支えがないーーーーっ
「あっ!蓮地っ!!」
梓紗の声も虚しく
僕は階段の下へと落ちていった。
凄まじい音が辺りに鳴り響く。
何かが倒れる音と何かがぶつかる音。
傍にいた猫が凄い勢いで走って逃げていく。
「・・・・げふ・・・」
階段の一番下に着いてその凄まじい音は止んだ。
「・・・れ・・・蓮地~? 大丈夫だよねぇ~?」
なぜ最初から大丈夫だと決めつける・・・
まぁ大丈夫であって欲しいという願望だろうな・・・
「・・・・・・・痛い。」
「ありゃりゃ、ごめんねぇ~」
ゴメンねじゃないですよ・・・
梓紗さん・・・
まぁわざと階段から落とそうとしたんじゃないしいいですケド・・・
そんなことを心の中で思う。
「しょうがないから昔のおまじないしてやろう」
そう言いながら少しイジワルそうな笑みを浮かべ梓紗が近づいてくる。
梓紗が近づいてくるとまた少し心臓が痛くなった。
「・・・・・・・」
「・・・動くんじゃないわよ・・・」
どこまで近づいてくるのかと見ていたが・・・
かなり近い。
心臓の鼓動が増していく。
痛い。
顔も熱くなってきた。
僕は耐えきれなくなってそっと目を閉じた。
「起きろっ! できたぞっ」
別に寝てたわけじゃなんだけどなぁ~・・・
心の中でまた思う。
髪を手で触ってみると・・・
耳にばんそうこうが貼ってあった。
「・・・おまじない・・・ですね」
僕はきっと照れくさそうに笑っていたのだろう・・・
梓紗も照れくさそうに笑っていた。
「まったく、私も馬鹿よねぇ~小さかったからって耳にばんそうこうってぇ~」
あぁ・・・
僕は理解した。
梓紗が忘れて欲しいと言っていた昔のことって・・・
耳に怪我をしているんだと勘違いして耳にばんそうこうを貼ってしまったことだったんだ。
よかった・・・あの時の少女がまだあの日のことを覚えていてくれて・・・
「・・・・僕忘れない・・・ぼんそうこう」
少しイジワルな顔をして僕は梓紗に笑いかけた。
情景描写がないZEwwwwww