【プロットタイプ】疲れてるだろ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
一緒に居なかったから、分からないんだよ。
ガチャリ、と扉が開く。その後もゴソゴソと物音が遠くから響き渡る。床を歩き回る音、衣擦れの音、物を動かす音。洗濯機の機械音。そうして俺が居るリビングの扉が開いた。
「ただいま。瑠衣たん」
同居人が帰って来た。顔は少し窶れていた。声も少し掠れていた。無理して笑う姿は、一昨日夜を共に過ごした輩と同一人物とは思え無かった。
「おかえり」
今回は返事の必要があると思う。
延々と続くチャットのお陰で、彼奴が今何をしているのか手に取る様に分かった。祭を楽しんでいた事も、カラオケで喉を枯らした事も、罪悪感を込めて参拝を行った事も、好きな甘味処が休業だった事も、銭湯に訪れたあと転んだ事も、昼飯を食べる為に一時間待った事も。全て知っている。
それでもその場に俺は居なかった。居なかったからこそ、表情や雰囲気、話し方まで全てを理解しては居なかった。
「瑠衣たん。風呂に上がりに膝枕して欲しいんだ」
そう言って、この場を後にした。
風呂に入り終えた後、ドライヤーで乾かしたとはいえやや湿気った髪が膝の上に乗る。気が抜けたのか、瞼を閉ざしたまま、うつらうつら語り掛ける。
「今日ね……お土産………チーズケーキ。奇数だから、一つ多く瑠衣たんが食べて良いよ……」
「あぁ」
まだ水気のある髪に手を当て、軽く撫でてやる。根元の部分に爪を立て、根元から梳く。上側が何時もよりもパサついているのは、話していた『シャンプーが合わない』事が原因なのか、それとも『汗』なのか。けれども毛先はしっとりしている。それは水気から来るものではなく、髪の艶から来るものだ。
手入れをしたのだろう。念入りに、リンスやトリートメントを塗り込んで、これ以上、パサつかない様に。
「疲れているだろ」
「……」
返事がない。代わりに微かな寝息が聞こえてきた。どうやら眠ってしまったらしい。そのままでいろ。洗濯機が鳴るまで、そのままで。
俺はお前の様に子守唄を歌ってやる事は出来ないから。
そ、今回は瑠衣が一緒に居ないんですよ。
爆弾チャットやってたけど、鏡花の一人旅。
旅行をしたのは、『俺に構わなくて良い』、『気にするな』、『たまにも一人は悪くない』とか言われたから。
慣れない土地、祭という非日常、炎天下の中歩き詰め。
気遣ってくれる人が近くに居ないからこそ、平気で無理が出来てしまう。
其れを感じたから、少しだけ優しいんです。
膝枕してくれたり、髪を撫でてくれたり、気遣ってくれたり。
瑠衣は疲れている人に優しいから。
今は寝てていいよって。やつれるなんてらしくないって。