第90話 後日談編 結果として、自分のしてきた事しか返ってこないのですわ
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結局、一週間と言う滞在期間の間、ラディアス王と共に各地に視察に出かけましたが、アルジェンヌ王妃は一度もついて来ることなく終わりました。
ずっと部屋に閉じこもり「体調悪い」と言って出てこなかったのです。
体調が悪いのならと医師を呼び、診察して貰った所……恐ろしい事が判明しました。
なんと、アルジェンヌ王妃は妊娠していたのです。
無論、ラディアス王の子ではありません。
「これは、離縁確実ですね」
「ええ、誰の子かも分からぬ子を妊娠した彼女をこのまま王妃に添えている訳にはまいりませんので」
『托卵させようとした者も斬首刑でいいじゃろう。子の相手は護衛騎士団の1人のようじゃ』
「全く頭の痛い問題です」
帰国する前に判明したアルジェンヌ王妃の妊娠。
しかも托卵と言う有様。
最早離縁のみしか彼女には残っていませんでした。
生まれる子供には罪はありませんので、子を産んでからの斬首刑となりますが、アルジェンヌ王妃は顔色を青くして部屋で震えていると言います。
「明日には帰国でしたね……。書類は既に整っているのと……こちらが我が国の医師が診たアルジェンヌ王妃の妊娠の記録です」
「持ち帰らせて頂きます。これで何の憂いもなく離縁できそうで安心しました」
「そうですね……。王家にとって、托卵等許せる筈がありません」
『これであの者も終わりじゃな』
「ええ、全くですね」
「最後のトドメが、自分のしてきた行いと言うのが、全く以て彼女らしい」
そう言って明日には帰国……となったのですが、アルジェンヌ王妃は明日の帰国を拒みました。
帰れば離縁されるのが解っているからでしょう。
しかし翌日。
女騎士に連行されるように馬車に入れ込まれ、泣き叫びぶアルジェンヌ王妃とは反対に、晴れやかな笑顔でのラディアス王は自国、ドナルン王国へ帰って行きました。
「悪女王妃は、結局自分で王妃でいる事が出来ない状態になりましたね」
『王の子でない子供を妊娠したんじゃ。侯爵家もタダでは済むまい』
「後の事はラディアス王が何とかするでしょう。その為に色々と私も動きましたからね。後はクリスタル、あなた方の言動次第です」
『うむ。そこは全く問題はない。あちらのクリスタルも王妃に非ずと言う考えは一致しておる』
「なら安心ですね。ホッとしましたし、やっとリコネルとの時間が取れそうです」
『ならば、我々も行くとするかのう。愛しいリコネルに会いに』
こうして私とクリスタルはリコネルの部屋に向かい、今回の事の顛末を語ると驚いていました。
それもそうでしょう。
一国の王妃が王の子ではなく、他の者の子を妊娠したのですから大問題です。
国内が荒れるのも時間の問題でしょう。
それでも、ラディアス王は清々しい顔で帰って行かれました。
国が一時期荒れようとも、アルジェンヌと離縁出来る事が嬉しいんのでしょうね。
理解は出来ます。
確かにそうでしょう。
「では、子供は孤児院に預けられる事になるのかしら?」
「無事に生まれれば……の話ですがね。流石に罪のない命まではとらぬとの仰せでした」
「そうでしたの……。わたくしが動けない間、色々な事がありましたのね」
『リコネルが悪名高きアルジェンヌの事を気にする事はない。あの者は本当に駄目な女だったぞ』
「そうですね……」
「ジュリアス様が言うくらいですから相当ですわね」
「あのような妻を貰っていたら人生真っ黒でしょうね」
「まぁ!」
「私の愛妻であり国母がリコネルで良かったと本当に痛感させられました。貴女と一緒に過ごす時間とは、まさに人生薔薇色です」
「まぁ! 嬉しいですわ」
そう言って花の咲くような笑顔を見せるリコネルに胸がキュンとなりつつも、やはり妻はリコネルしか考えられないですし、リコネルが他の男性と……となったら、相手の男を徹底的に潰すでしょうね。
まぁ、リコネルに関してはその心配は一切ないのですが。
『人間してきた事しか自分には返ってこぬわ。あの者はそれらが全て返ってきたようなものじゃろう』
「それが托卵と言う形だった訳ですのね」
「本来ならラディアス王はショックで……となる所ですが、ドナルン王国でも2人の仲が冷めきっていて絶望的だと知らない人はいないそうですので」
「なら、托卵が解ればアルジェンヌ様は大変ですわね」
「侯爵家お取り潰しもあり得るでしょうね」
『本当に馬鹿な事をしたものじゃな』
幸いにして、ラディアス王はアルジェンヌ王妃を抱いたのは1度きりで、後は全く手を着けなかったと言っていました。
その1度も本当に苦痛だったと聞いて居るので、余程辛かったのでしょうね。
ここだけの話、アルジェンヌ王妃は嫁いできた時には、既に初めてではなかったようです。
貴族子女とは結婚まで身持ちが固くなければならない。
なのに、王妃となったアルジェンヌはそれが無かった。
それも冷めた原因の1つでしょう。
その結果として、身持ちが軽く他の男性の子を宿したのだから笑えない話ですね。
「今後、国で裁判を行い離縁するとの事でした。証拠は充分、更に私からの口添えとクリスタルからの言葉。最早彼女に未来等ないのですよ」
「本当に……馬鹿な真似をした元王妃でしたのね」
『ま、後はラディアス王が何とかするじゃろう。あの者は聡明じゃ』
その言葉通り、ラディアス王たちがドナルン王国に到着してから直ぐ、国内は荒れたようです。
王妃の托卵は余りにも国民にとってもショックが大きかったようで、「王妃を断罪すべき。子と托卵相手と一緒に斬首刑に‼」と大荒れだったようですが、ドナルン王国のクリスタルの『アルジェンヌと腹の子の父親は断頭台にて処刑する』と言う言葉と『生まれる子供に罪はない為、規律厳しい教会の修道院で一生生活させる』と言う事が決まりました。
これに国民は一応納得し、まず初めにアルジェンヌを孕ませた父親である護衛騎士は、アルジェンヌの前で断頭台で首を落とされました。
気を失ったアルジェンヌは牢屋に投げこまれ、出産までの間、牢の中で暮らします。
その結果――寒い冬の時期に肺炎となり、腹の子諸共、アルジェンヌは死亡しました。
断頭台に上がる前に病死したのです。
既に離縁していた為、罪人の墓にて埋葬され、彼女の生家である侯爵家はお取り潰しになり、平民に落とされました。
彼らがその後どうなったのかは――誰も知りません。
それから一年後。
ラディアス王は新たに聡明なる王妃を娶り、国を支えていく事になります。
新たな歴史の一歩が踏み出せた……そんなドナルン王国の話でした。
本日にて完結です。
夜の更新にて、完結致します。




