第87話 後日談編 クリスタルの怒号響くお部屋があるそうですわ
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――クリスタルside――
ドナルン王国の王妃の名は国では【悪名高きアルジェンヌ王妃】と呼ばれておるようじゃ。悪名高きとついている時点で大体察するところじゃが、国内でも随分と嫌われておる王妃のようじゃの。
「それにしても残念ですわ~! リコネル王妃と会えると思っていましたのに。体調が優れないなんて……。お身体の具合がとても悪いのね」
『病気ではないのだがの。お主にはとても合わせられんわ』
「まぁ! 心の病でして!?」
『それはお主ではないのか?』
「ま、まぁ! く、クリスタル様は面白い事を仰るのね!」
『ははは! 我が国の王妃を悪く言いう事しか出来ぬ病気であろう? 流石国でも悪名高いアルジェンヌと呼ばれているだけの事はある!』
「なっ!」
『国民から素晴らしき国母と呼ばれているリコネルとは大違いだのう! はっはっは!』
そう心底面白いとばかりに笑うと、アルジェンヌはプルプルと扇子を震わせながら歯をむき出しにして怒りを露わにしておったわ。
何ともブサイクな顔じゃの。
ラクダの顔の方がまだ可愛げのある顔をしておるぞ。
『なんじゃそのブサイクな顔は。顔が喋りたがっておるぞ』
「ブサ……! し、失礼ではありません事!?」
『これから先、楽しい事が一切なくなるじゃろうが、そんな時は自分の顔を鏡で見てみるといい。面白い顔が映っておるぞ』
「――クリスタル様!」
『なんぞ悪い事でも言ったか? 我は事実しか口にしておらんぞ?』
そうにこやかに答えると、アルジェンヌは震えながら椅子に座り唇を嚙みしめて怒りに震えておったわ。
まだまだ追撃は終わらんぞ?
トコトン迄このアルファルト王国にいる間は精神的に追い詰めてやろう。
『ほうほう、国王とは体の関係がないのに、随分と男遊びが激しいようじゃの』
「!?」
『それで妊娠しても、托卵と思われるのは当たり前じゃな』
「なななな、何のお話しかしら?」
『また随分と股のゆるい王妃じゃのう……ドナルン王国はお主が王妃である間は発展は見込めんな。まぁ、そう嘆くこともあるまい。国に帰れば離縁は決定しておる』
「そんなの許しませんわ!」
『クリスタルの言葉の重みを知らぬようだな。今ここでそなたを罰してもよいのじゃぞ』
「ヒッ」
そう言えば瞬時に大人しくなるアルジェンヌに、我は紅茶のお代わりを貰い優雅に飲む。
悪妻アルジェンヌも紅茶を振るえる手で飲みながら、目は血走り顔は笑顔をなんとか貼り付けておる状態じゃ。
クリスタルを偽る事は不可能。
故に、クリスタルである我が離縁じゃと言えば、国は反対等出来ぬのと同義じゃ。
つまり【悪妻アルジェンヌ王妃は、最早ドナルン王国の王妃に非ず】と言う事じゃ。
『まぁ、この国にいる間まではドナルン王国の王妃として過ごせばよい。と言っても下っ端妃と言う立ち位置じゃろうがな』
「あ、あたくしは唯一の王妃でしてよ!」
『それもドナルン王国になれば家に帰され、後は規律の高い修道院にぶち込まれるだけの人生じゃろ?』
「ななな……」
『もう少し王妃としての素質があれば問題なかったんじゃがのう……。お主に王妃の素質も資格も無いわ』
そう吐き捨てるように言うと、カチャン! とコップを置き怒りに震えるアルジェンヌ王妃がおり、ワシは勝気に微笑んだ。
『お主など国に帰れば処刑されないだけマシなだけの人生じゃ。最期のバカンスとでも思ってこの国で過ごすがいい』
「どうすれば王妃のままでいれますの?」
『無理じゃな、お主に王妃としての全てが足りておらん』
「な……」
『何もかもが無いない尽くしじゃ。残念じゃがのう? 実に残念じゃのう?』
ここまで言えば、どれ程頭が馬鹿でも、クリスタルに「己に王妃としての資格なし」と言われている事くらいは、嫌でも理解するじゃろう。
所がじゃ。
「では、国王としての資格が御座いますのね!」
等と、寝言を言い出したのじゃ。
『そんなものある筈無かろう。お主の様な者が国王になると言うのなら、クリスタルから身を焼かれるぞ』
「身を焼かれ……る?」
『身の程を知るがいい!』
「ヒイイイイイ!」
何処迄も権力にしがみ付いて居たい王妃の様じゃの。
それも、もう直ぐ終わるのじゃが……行かせん、こ奴は頭が悪い。
リコネルとは大違いじゃ。
『お主のこの国での扱いは、一国の王妃ではない。一国の下っ端妃であると自覚せよ』
「い、嫌よ……あたくしは」
『自覚せぬのなら、今ここで貴様の命を終わらせてやろう』
「……従います」
『では、下っ端妃としての扱いを受けながら一週間過ごすがいい。可笑しな気を起こせば直ぐ殺してやろう』
そう言うと我は席を立ち、風呂の準備も何も言わずに部屋を出た。
途端雄叫びを上げてモノを壊している音が聞こえきたが、元より物を壊す王妃として有名な為、安物の食器しか使っておらぬ。
『やれやれ、リコネルにあって癒して貰おうかのう……骨が折れたわい』
こうして我は最もたる王妃に相応しく、その名に恥じぬリコネルの元へと向かったのであった。
それからの日々はと言うと――ジュリアスとラディアス王は各場所の視察に忙しく、アルジェンヌ王妃は余の監視の元外に行くことも許されず過ごす訳じゃが――。
もう1つやるべきことがあって、ジュリアスとラディアス王は離縁に向けても動き出しておった。
そんな事も知らぬアルジェンヌは我の監視の元、徐々に元気をなくしていき、我は実に楽しい気分を味わいつつ過ごしてたのじゃが――。




