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断罪された悪役令嬢は押しかけ女房~第二の王都と呼ばれる辺境領地で、彼女の夢を応援してたら第二の国になりました~  作者: 寿明結未(旧・うどん五段)
その後のわたくし達と言えば、色々な出来事がありましたのよ!

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第83話 後日談編 ホッと安堵したのも束の間、また一難でしてよ①

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 シャルダン王国の事は、私を怒らせたこともあり国民を想えばこそ残念な結果となりましたが、ドグ達が前を向けて良かったと思います。

 それはリコネルも同じで、椅子に座りお腹を冷やさぬよう温めながら二人でゆっくりと会話を楽しみました。



「ドグ達が前を向けて良かったですわ。あの子達を仮の親として導く使命は出来ましたけれど」

「ええ、子供を導くとは何かと苦労が多いものですからね……。私の様な仮の親でも模範的な親になれると良いのですが」

「ダーリンでしたら大丈夫ですわ。自信をお持ちになって」

「それならリコネルも大丈夫ですよ。何時ものリコネルでいてくれることが、きっと子供達も安心する事でしょう」



 お互い寄り添い合い、そう語り合う時間。

 理想的な親――と言うのは難しいのです。

 子供一人一人にとって、理想の親が違うのですから。

 ただ、多くは強い父親に優しい母親……と言うのが理想なのでしょうね。

 私達の場合、どうなのでしょう。

 普通とはやはり違いますから、そこはどうしても変わってきますが。



「言える事は、子供たちに差別があってはならないという事ですね」

「そうですわね。子供が多いとどうしても可愛い子と、そうではない子が出来てしまうとお聞きしますわ」

「そうならぬよう、私も細心の注意を払っていきましょう」

「ええ! 皆可愛い我が子。それに差別があってはなりませんものね」

「シャルもドグにはとても懐いているようですし、ドグは良い宰相になりそうです」

「アルフォルト王国も安泰ですわね!」



 嬉しそうに語るリコネルに、私もニッコリ微笑んで答えます。

 しかし、男の子にとって母親とは理想の女性になりやすいとも聞きます。

 リコネルの様な女性を好きになった場合、とても大変ですね。

 見た目だけではなく、性格も一等美しいですから、結婚が遅くなりそうで不安です。

 そう伝えると、リコネルはクスクス笑い「それでしたら」と口に為さいました。



「娘とは父親に似た男性を選ぶと一般的には聞きますわ? ジュリアス様の様な男性を探すのも一苦労でしてよ?」

「む、そうでしょうか?」

「ええ、ありきたりな男性とでもお思いでして?」

「ええ……私はそう思っていますが」

「それは間違いですわ。貴方のように心根の優しい男性は、早々いませんもの」

「リコネル……」

「貴方は得難い男性ですわ……」



 そう言って頬を撫でるリコネルに、チュッとキスをすると「貴女も得難い女性ですよ」声を掛け、2人寄り添い合う……。

 お互いが得難い存在だからこそ、愛し合ったからこそ――尊重し合うのです。

 どちらが片方だけが偉そうにすることは、家庭的にも不幸を招きます。

 お互いに尊重し合い、話合い、愛し合い、手と手を取り合ってこそ――。

 そんな姿を見て育つ子供こそ、一番の幸福なのでしょうね。

 その一歩は、私たちは出来ているように思います。

 お互いを尊重し合い、助け合い、愛し合い……国民の幸せを実現することに頑張っているのですから。



 ――それから数日後。

 リコネルの悪阻が本格化し、寝悪阻らしく一日眠って過ごす事が多くなり、リコネルのするべき仕事はクリスタルが代行してくれることになりました。

 お腹の子優先ですから当たり前と言えば当たり前なのですが、暫くの業務やリコネル商会についてはクリスタルが受け持ち、公務に関しても王妃代理としてクリスタルが来てくれた為、助かりました。



 そんな中、隣のドナルン王国より、視察の依頼が来たのです。

 それはドナルン王国の王が変わってから、初めての訪問でした。



「そう言えばリコネルに執着していた王が変わり、王弟殿下であらせられたラディアス様が国王になったのでしたね。無論受け入れましょう」

『とはいえ、またリコネルに熱を上げて貰っても困るがのう』

「そう言う国王なのですか?」



 不安になりクリスタルにそう問い掛けると、クスクスと笑いつつ『ラディアス国王陛下はそう言うお方ではないと聞いておるわい』と言われホッと安堵しました。



『ただ、リコネルの美しさは王族を含め目を引くのは確かじゃ。他国の王妃たちもリコネルに倣い商売をしようとして失敗している者が多いと聞く。また国王も他国の王妃が商売をして成功を収めているのなら、自分の王妃も出来るだろうと簡単におもっておる節があるのう』

「それはまた、商売のノウハウを知らなければ失敗するのは目に見えておりますでしょうに」

『まぁ、真似をしたくなる気持ちは分からなくもない。聡明で美しく、気高いアルフォルト王国の王妃が商売で成功までしている。それだけではなく、聡明さゆえに国民の為にあらゆる政策を打ち出し、国王と共に国を発展させている……ともなれば、他国の王妃たちの焦りも嫌程伝わろう?』



 そう言われればそうですが、リコネルに敵意が向かなければいいですが……。



「しかし、何故その話を?」

『ラディアス国王の妻がそれで商売を失敗し、ラディアス国王が打ち出す政策に口を挟み、国内は荒れているそうじゃ』

「なんと……」

『今回その件の王妃も視察に同行するらしくてな。リコネルは妊娠のお陰でその王妃に会わなくて済みそうじゃが、一波乱ありそうじゃなと思ってな』

「そうですね……」

『国母が国民を苦しめてどうするのかと……我の方から聞いてやろう』



 そう勝気に微笑むクリスタルに「穏便にはいかなそうですね」と溜息を吐くと、クスクスと笑っていましたが、実際穏便には行きそうにありません。



「せめて、夫婦仲が宜しければ救いようがあるのですけどね」

『それは無理じゃな。あちらのクリスタルの情報では、王妃が好き勝手している事が多く、このままでは托卵までされそうじゃと言っておったわ』

「托卵……ラディアス王はその事については何か知っているのですか?」

『国の混乱に便乗して結婚したのが運の尽きだと思っているようじゃが、ラディアス王は聡明なお方じゃからな。そろそろ何か問題を起こせば――王妃との離縁を考えておるようじゃ。それも含めた、ある種の訪問となる事は頭に入れておいた方がよいじゃろうな』

「だからと言って、我が国で問題を起こされても困るのですがね」

『そこについては、心より謝罪が来るじゃろう。一肌脱いでやれ』

「やれやれ」



 幸いにしてリコネルに被害がないのであれば、私はなんともありませんが……。

 一難去ってまた一難。

 心休まる日は、中々訪れないものですね……。


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